FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第八十六章:討鬼の巻・その五

 打ち抜いた、感触があった。

息が荒い。結果を見る事も出来ないままに――とさり、と僅かな音と共に、何かが倒れるような音が、耳に聞こえる。

 

 それがどういう意味かをしっかりと考える間もなく。

 足から力が抜けて、地面に尻餅突いて崩れ落ち。直後全身が、どぅ、と、まるで鉛の如く重くなった気がして。

 

 そのまま、自分も――同じように、青天向いて倒れているアサシンの様に、大の字になって地面に転がった。

 もう限界だった。

 

「――あぁ」

 

 勝った。

 勝てた。

 勝ったかもしれない……いや、ほぼ負けかもしれない。正直、抱きつかれて締め上げられた時点で大分体はボロボロになっていた。正直、大分息も苦しくなってきている。

 

 しかもその上で、テンション上がってアサシンと殆ど真正面から殴り合いをしてしまったという。立てないのは痛いのと疲れたのと関節がボロボロなのと……まぁ全部だ。

 

 ちょっとアルミ板を巻いたレベルで頑丈になったからって、重量級エンジン積んでの総金属製のスーパーカーと正面衝突なんぞしようもんならそりゃあ重症も必須だよね、という話で。はい。

 

「……ちったぁ手加減しろよ」

「無理やねぇ」

「そうかい」

 

 思わず口を突いて出た愚痴は、しかし我がサーヴァント様には通じないらしい。というかまだ喋れるのかアサシン。手応えあった、喋ることも出来ない位に、砕いた、と思っていたのだけれども。

 流石は鬼の首魁、酒呑童子と言うべきか。まだ喋るだけの余力を残しているとは。流石に、立ち上がって来る様子はないが。

 

「――あぁ、負けや負け……悪ないなぁ、ここまで盛大に負けたら」

 

 そんなアサシンが、ポツリとつぶやいた声が。二人して倒れ伏した俺達の間で、酷くハッキリと聞こえた。

 

「……そうかい」

「まぁ、元気なまんま暴れられたら、それがよかったんやけど」

「冗談キツイぜ……お前の本気とか、引きちぎられて終わりだ」

 

 まだガス欠のアサシンだったからこそ、なんとか戦えただけだ。しかも余裕なんざ全くなかった。それを考えると、あの時の本気のアサシンの事を考えてみると……あーいや無理無理カタツムリ。瞬殺が良い所だろう。

 それで『おっ、そうなん!?』とかテンション上がる程、馬鹿じゃねぇんだよ俺だってさぁ……

 

「……んふふ、やっぱり分かってへんかったんやね?」

「何がだよ」

「うち、一応そこら辺の黒子で胎ァ満たしてたんよ。全開、って程やないけど。それなりには、やれたやろ?」

 

 ……おい。ちょっと待て。

 

「ちょ、ちょっと……えっ? 補給してたの?」

「うん」

 

 ……コラ。おい、コラ。

 それが本当だとすると。弱体化の規模が、予想よりも全然小さくない? こっちはガス欠想定だったのが、燃料切れのピンチ位だったって事だろ? イイ所二、三割と思ってたのが四割以上……下手すりゃ六割近くって事も……

 

 いや、なんか。『コレで弱体化してんのかー』って思うレベルで、動きが良いとは思ってたんだ。でもそれは、戦う時に勢いづいて、テンポよく暴れてたから、そう見えて居るし実際気持ちの有無は大きいっていう事かと。

 

「お、おまっ……なっ、あの……騙した、って言うのも変だけどよぉ!? なぁ!」

「だぁって。旦那はん、存外ヘタレやし? うちがまだまだやれるって思ってたら、突っ込んできてくれた?」

「いや……俺だって明らかな自殺は流石にしたくないし……?」

 

 ……ここで『おうやってやるよ』って言えないのが俺のクズな所だよなぁ本当に。

 

 しかし。しかしだ。その状態のアサシンに、俺は勝てたわけか。なんというか、サーヴァントの圧倒的な力を知ってただけに。凄い事をした、っていう事は、分かるんだが。困惑の方が、ちょっとデカい、気がする。

 いやホントなんで勝てたんだ俺

 

「……俺の血筋って本当にすごかったりする?」

「そんな事、うちは知らへんよ」

 

 あぁごもっともすぎて何も言えない。

 そりゃあ、まぁ、アサシンがそこまで知ってたら『お前が最早黒幕だろ』って事になってしまうから、流石に知らなくてよかったとは思うんだけども。

 

「そこは自分で調べるか……」

 

 いや、まぁ全てが終わって、気持ちの整理がついたら、だけども……今はいいだろう。兎も角。勝った……いや、勝ったは良いんだけど。ちょっと、マズくねぇかコレ。

 

 アサシンに勝つために、全部費やしたぞ。でもまだ聖杯手に入れてねぇぞ。ここからもう一波乱とか、今度はこっちがガス欠なんだけれども。やべぇなぁ……金時さんにもうひと踏ん張りしてもらうしかないか……

 

 いや、諦めるには早い。取り敢えず、アサシンに聞いてみるか。

 

「なぁ、アサシン」

「んー?」

「『聖杯』って、持ってるか」

「ほい」

 

 その声に応えるように。ぽーん、と向こうから飛んできた金の盃を、その手に受け止めた。どうやら、コレらしい。

 

「お前が持ってたのか?」

「んーん。拾った。もうあの法師、尻尾巻いて帰ったみたいやねぇ」

 

 成程。計画が滅茶苦茶になった時点で、この特異点には見切りをつけていたのか。

 いや助かった。正直、まだ居残られてたら大ピンチだったし。とはいえ、綿密に立ててた計画が盛大にぽしゃったら、撤退するのも止む無しってやつか。

よし分かった。後は……えっと。あ、あったあった。コレだコレ。このお札をペタリと貼れば……よし。コレで封印、というかは完了、だったかな。

 

「回収完了、かな」

 

 本当は式部さんと一緒にこれやるつもりだったんだけどなぁ……っと、そう言えば大切な事を確認しないと。

 

「式部さん達は?」

 

 正直、考えない様にはしてた。

 記憶をボヤかしたアサシンを俺の偽のサーヴァントとして付ける、という計画なら。邪魔なサーヴァントが二人いる。彼女達とは、未だこの特異点では出会えていない。そしてここまで出会えていないなら、来ていない、と考えるのが普通だろう。

 

 そして……事と次第によっちゃ、俺は……アサシンを召喚した法師様を。無数の肉片に引き裂いて、その肉片全部、改めて塵にする誓いを立てなきゃならん。

 

 うん。絶対やろう。せめてお二人の鎮魂に……ならんかな。ならいいや、自分でやる。どうせなら、鬼らしく、好き勝手に。気に入らんから。綺麗か、醜いか。いずれにせよ、その顔が二度と思い出せなくなるくらい、惨い最期を迎えさせよう。決めた。

 

「カルデアにとんぼ返り。ほんまは、ここに来た時点で分断して始末するつもりやったらしいけど、うちの事でそこまでやる余裕なかったみたいやねぇ」

「――そうか。なら二重でお前に感謝しないとなぁ」

 

 よかった。二人が無事なら、一発顔面に拳叩き込むだけでいいや。

 

 しかし。

 もし、アサシンが敵を裏切ってなかったら。俺の物語は残念ながらここまでだった、っていう事だ。いやまぁ、リンボの奴がアサシンを刺客として選んだ時点で、必然の大失敗だったのかもしれないし。なんだったらコイツ、徹頭徹尾、俺を助けようとかそんな事を考えてたわけでもないし……

 

 って事は、不安材料もない。コレで。全部終わりか。

 青い空を見上げている。もう直ぐ、この特異点を去る事に、少し……寂寥感を覚え始めていた。金時とも、お別れか。アサシンよりも更に短い間でも、俺と戦ってくれた快男児は……無事だろうか。

 

「――大丈夫か、大将!?」

 

 聞こえて来た元気そうな声に、あぁ、全然杞憂だったな、とちょっと微笑みながら。顔を金時の方に傾ける。

 

「あぁ、男前が、上がったよ……」

「……へっ、そうだな。酷ぇ顔してやがる」

「言い方ぁ」

 

 取り敢えず、無事でよかった。

正直、アレだけの数のシャドウサーヴァントを全部任せてしまった事には、大分申し訳なさがあった。苦労を掛けてしまったなぁ、という思いが――

 

「……そっちは大丈夫そうだな、金時サン」

「あたぼうよ! 任せてもらったからなァ、オイラ、ついはり切っちまった!」

 

 ――こみ上げてすぐにどっか行った。そこに立っている、戦いによって出来た僅かな傷どころか、白いシャツに対し汚れ一つもない金時を見て、おいおい冗談だろうアンタとしか言えなくなってしまった。

 少なくとも、シャドウサーヴァント、どっさりいた筈なんですけれども。あっさりと突破できるような人数じゃない筈なんですけれども。

 

 そんな『ついはり切っちまった!』でどうにか出来るんですか。そうですかそうですかいやはやはっはっはっ……

 

「……源氏武者、やべぇ」

 




強さアップ!
血の気もアップ!
残虐性も(無意識に)アップ!
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