FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第八十七章・裏:『三騎目』

気にしいと言われてしまえば、それまでなのだけれど。

 

「……そこんところ鯖たらしの藤丸さんはどう思います?」

「いや、俺としてはお前の方が違和感あるんだけど……いきなりそんな、曇天だったのが快晴になるとか」

「えっ」

 

 いや、台風が過ぎ去った後とか、全然あるじゃん。嵐模様から晴天に一気に空模様が変わるとか。それで綺麗になった空に『わぁー』とか言ってみんな注目する、とか……ああいやダメだこの理屈だとこの状況を補強してしまう。

 もうちょっとなんか良い言い方ないかなぁ。と頭をひねっていると。というか、と藤丸の方からジト目で見つめ返された。

 

「なんだよ鯖たらしって」

「えぇだってー……そんな怖いお兄さんまで何時の間にか味方に付けちゃって」

「怖いお兄さん呼ばわり!? ちょ、エドモンに失礼だよ……!」

 

 ……いや、アンタの後ろのポークハット、なんも気にせずコーヒー飲んでるけど。なんだったら怖いお兄さんの辺りでちょっと笑ったけど、そこのエドモン。

 

 俺らは、なんでか知らんけども。

 それぞれ背後にサーヴァントを背負って、会話していた。

 

「こういう所、来ないと思ってたけどな。アンタ」

「ハッ、サーヴァントに食事も、休息も必要はない……と言ったのだがな」

「居ないと心配になるから、最低でも食堂には顔出して、って」

 

 あー。成程。一々言われるのも面倒だから、取り敢えず顔出しだけはしてる、と。これアレだ、本当に照れ隠しとか何でもなく、『言われたから顔出してるだけ』だ。んでコーヒーは完全に趣味だ。

 んで、なんで俺らの近くにいるかって言えば。

 

「……うぅ、タイミングを逸しました……マシュ・キリエライト、最大の不覚です」

「ま、マシュさん。もうちょっとだけ待ちましょう。同じ藤丸さんのサーヴァントとして相互に……とはいかずとも、理解するのは大切ですから!」

 

 さっきから、ちらりと偶に視線をやってる方向が原因だろう。マシュと、リリィが二人して食堂の入り口からチラチラこっちを見ているのが視界に入る。

 恐らくは、ここ最近の新入りである巌窟王と話がしたいのだろう。どんなサーヴァント相手でも、先ずは話してみようと思うのは彼女達の素直な美徳だと思う。

 

 だがしかし。雰囲気が独特な巌窟王相手に、一体どうやって話せばいいのか……それに苦心している、と言ったところだろうか。さもあらん。俺だってこんなバリバリ『ダークです』っていう雰囲気の奴に『どる~ん♪ 待った~?』とか声は掛けにくい。

 

「……んで、その防波堤にここを使ってるってか?」

「何の話だ。ククク」

「自覚あんじゃねぇか……」

 

 んで巌窟王としては、ああいう初心でピュアな視線は慣れないし、別に彼女達が嫌いという訳でもないけど、特別話す事も無いから。こうやって俺たちの会話に混ざっているフリをする事で、唯一のお話しできるタイミングで近づかれるのを避けている、と。

 うーんこれは巌窟王の知啓……なのだろうか。

 

「……やっぱり、二人は苦手?」

「――些かに、眩しいのは否定はせんがな」

「そっか。まぁ……気が向いたらで良いから、話してみて欲しい、かな」

 

 しかし残念。藤丸のサーヴァントになった時点で、その防護も何処まで続くかは微妙な所だ。コイツは確かにサーヴァントに配慮するだけのデリカシーはある――だがしかしそれをあえて無視するだけの度胸もある。

 そう言う所を気に入ったのなら、それを分かっているだろう……巌窟王は、少しばかり疲れたようにため息を吐いていた。

 

「なァ藤丸。この調子で、この後の召喚の間も見られてるっていうのは、ちょいと具合が悪いんだよ」

 

 そんな巌窟王にとっては、朗報か、悲報か、何方かになるのだが……これから少し後位に、俺が三騎目のサーヴァントの召喚を行う事になっている。

 立香は、三騎目のサーヴァントの召喚を行っている。そして今回は、俺に対する戦力増強も同時に行うらしい。

 

『我がカルデアは、キミが敵勢力の標的である、という事に対する対策を……考えたけどでも根本的な解決は無理!!! 情報が足らないからね!!!』

 

 と、ダ・ヴィンチちゃんに豪快に言われ……まぁ、そうだろうなと思った。

 カルデアに無数にあるハイテクと魔術の融合した最新機器を用いた(嘘発見器も希望して使ってもらった)ヒアリングの結果。俺には、まぁさっぱりと、(俺が知っている事も自覚していない事も、両方関係なく)心当たりがない事が分かった。

 ならばご実家の方に何かあるか、という事になったのだが残念ながら我が家はただいま大炎上中である。

 

 ……その途中で、家の中の事も、話そうと思った。

 藤丸の事で、ごたごたしていて話せなかった、あの特異点の事……その中で見た景色。何か関係があるかも、とヒアリングが終わってから。

 全てを話す、勇気はない。迂闊に口を滑らせて、変な事を話してしまう。嫌な想像ばかりが先行していた。

 

 それでも。狙われているのが自分である、という事ならば……隠しておくのは、何となく嫌だった。自分が、そうしたいと思ったなら。恐れも何も、捻じ伏せて。口を開こうと思って――

 

『いいや、それは良いさ』

 

 しかし、それはダ・ヴィンチちゃんに止められた。

 

『言いたくない事なんだろう? なら話さなくていい。このダ・ヴィンチちゃん謹製のスーパーマイ・ガジェット達が君に一切の心当たりがない、と判断した。であれば、この天才にとってそれ以上の事実は必要ない』

 

 椅子に腰かけた俺の前に、まるで小さな子供と視線を合わせるようにしゃがみこんで。口に指先を当てて……クスリと笑った。

 

『私達だって節穴じゃない。藤丸君も勿論……君も、必死に体を張って前線で戦ってくれている事に、疑いはないよ。そんな君たちにこれ以上の負担をかけてまで知りたい程の情報じゃない――なぁに、カルデアは強いんだ。情報不足程度じゃ、へこたれないよ』

 

今まで得た情報からでも、まだ何か分かる事もあるだろう。とケラケラ笑いながら。

なんというか。初めて、ダ・ヴィンチちゃんがちゃんとした『大人』に見えた気がしていた。いや別に、今までも普通に大人としてバックアップしてくれていたんだけれども。先の特異点などは、不眠不休で助けてくれたのだというし。

 

でも……それ以上に。

輪をかけて、目の前の天才が、頼れる存在に見えたと言えば良いのか。

 

『とはいえ、コレから先、敵の攻勢も、キミに対するアプローチも、過激なモノになっていくのは想像しやすいからねー……』

『――そんな第五特異点に向けて、戦力増強をしておきたい所だね。リソースも溜まった。新たなるサーヴァント召喚と行こうじゃないか!』

 

 ……まぁ、そんな彼から出てきたのはとんでもないお力業だったんですけれども。お陰でこの後、召喚を行う事になっている、訳なのだが。

 せっかくここに来て下さった英霊の方に、チンピラじみたマスターの背後からじーっとその背中を熱心に見つめる美人の和風美人という光景を見せて『あれ……? もしかしてここって……?』的な疑念を持たせるのは忍びなく。

 

「なんとかならんかね?」

「なんともならんだろ……ちゃんと顔つき合わせて話しなさいよ」

「話せと言われても、なぁ……」

 

 そして始まるまで……それこそ後三十分くらいしか時間は無いという事実を踏まえ。その僅かな間に何とかもろもろの特異点の事を圧縮して話すことが出来るかと言えばちょっと内容濃すぎて無理という事を悟って……そういえばコミュニケーション能力の鬼である男が近くにいたなぁ、と思ったので。

 

 とはいえそんなコミュの塊でも。どうやらチチンプイプイ、とはいかないようだった。

 

 

 

 

 

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ――繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 コレで三度目、いい加減この舌噛みそうな呪文も慣れて来るというモノ。

 ばちばちと流れる魔力の奔流は、周りに控える皆の髪を、服を、たなびく位に激しく揺らす程に、強い。因みに俺に髪は無し、礼装もぴっちりとしたスーツなのであんまり関係ない……寂しい。

 いや、寂しくはないか。こんな中でも、やっぱり熱視線(広義)はずぅっと俺の背中側から飛んで来てる訳だし。

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」

 

 それは兎も角。

 この召喚の時……自分は、奇妙な手応え、と言うモノを感じている。

式部さんの時は、焼けそうな周囲の熱の中に、静かで、しかし確かな勢いを持っている川の流れを、想起させる感覚が。

 ゴルゴーンさんの時は、こっちを深淵に引きずり込んでいくような、底知れない力強いモノが腕に伸し掛かって来た。

 

 どう表現すりゃあいいのか。釣りとも、握手ともいえるような……まぁ兎も角。本当にこれから召喚するサーヴァントが想像できるような、個性的なモノであることは間違いないと思う。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

 今、感じているのは……ゴルゴーンさんに近い。しかし、以前感じたそれよりも何処か此方に親しみ、というか。そんな物を感じる。此方の手を掴んで、水底から飛び出して来るような。そんな感覚がある。

 

 にやり、とした。

 この力強さは……どうやら、本当に鉞担いで来てくれたのだな、と。確信できるものだった。サークルが、黄金の輝きを持ってグルグルと回っている。

 

「こ、これは……大物が来るんじゃないかい!?」

「あぁ、とんでもない。神霊クラスとは言わないけど、それに匹敵するくらいの――!」

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 黄金は、奴の色を表しているのか、それとも単純にエネルギーの高まり故か。どっちでもイイ。あの快男児が来てくれるのなら、頼もしい。

 話を聞かせて貰おう。アサシンの。

 そう……こんな風に、酒の香りでも、二人の間でさせながら。オイラ未成年だけどもなはっはっはっ……はっ?

 

 酒の、香り?

 

 ……力強い感触に混じる。()()()()()()()()()

 他の人は気づいてもいない、俺だけが感じているこれは……おいちょっと待て。

 

「――冗談だろ!?」

 

 極限まで煮詰まって、そして――花開くように、惑わすように、酔わすように。芳醇に目の前で咲いた。稲妻の如く、ぴしりとしたモノではない。魔性の……魅力に満ちた、危険な感覚と共に。

 集まった輝きが――一つの形を、小柄な形を成す。

 

「――アサシン。酒吞童子。ふふふっ、呼ばれたからきたで? 旦那はん♡」

「お、おまっ……」

 

 アジアンビューティフル、とテンションを上げるダ・ヴィンチちゃんや。ふん、と鼻を鳴らすゴルゴーンさん。背後で息を吞んだのが分かる式部さん。他のみんなの反応の中で……みっともなく、狼狽えている俺がいた。

 

「小僧やと思てたん? ざぁんねん……ふふっ、こんなおもろいもん、手放すの、もったいないわぁ」

 

 ……サーヴァントは、記憶を受け継がない。

 だけども。そんな事を感じさせない程に。酷く気安く話しかけてくる、目の前の着物の鬼の童女に違和感を抱けなかったのは……その酒精に、酔わされていた故なのだろうか。

 




金時君「What!?」

よく考えれば、物理的に長い時間一緒にいたのはこっちと言う。
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