FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第九十一章・裏:太陽の如く

「一つ聞いて良いかい、お嬢さん」

「なぁに? 頭のてかりの眩しい殿方」

「てかっ……!?」

 

 ……なんと惨い。マスターが一瞬で崩れ落ちました。

当世風に言うのであれば、あまりにも『どすとれーと』な一言というしか……! いえ只管真っ直ぐという訳ではありませんが、しかし的確にマスターの特徴的な部分を捉える鋭い一刺しです。

今まで、禿等とは色々言われて気にしてもいなかったのでしょうが……しかしテカるというのは些か、効いたようで。地面の上に四つん這いで項垂れて――

 

「……俺そんなテカってる?」

 

 その姿勢から。そう勢いよく振り返りながら聞かれまして。余程気になっているのでしょう。一瞬、言うべきかを迷いましたが……しかし。

 

「い、いえ! マスターはお若いですし、常識の範疇かと!」

 

 頭皮と髪は、古来より人の美点でもあり、同時に弱点でもあります。下手にあげつられれば、心の傷も深くなります。故にここは明確に事実として、気にする事は無いとはっきりと伝えるべきです。

 

「……テカってるはテカってるんだ……」

「あぁっ!? しまった!?」

 

 しくじりましたっ! 追い打ちをかける形に!

 

「ご、ごめんなさい」

「……大丈夫、大丈夫、そんな苦しくない。うん大丈夫だから」

「茶番は終わったかしら?」

 

 ……さて。

顔をしわくちゃにさせながら立ち上がる姿はとても大丈夫そうには見えませんが。兎も角。マスターは立ち上がりながら、そのエレナさんの言葉に頷きました。

 とはいえ、マスターとしては頭を何度か撫ぜている辺り、決して終わったとは思っていないようですけれども。

 

「ふっ……いきなりこっちの出鼻を鋭い言葉で挫くとはやってくれるねぇ」

「そんな落ち込むような事でも無かろうマスター。ただの事実だろうが……ふんっ」

 

 ばきぃっ

 

「まぁ事実かは、事実かは! 兎も角としてな。さて、後ろの光景は見えるだろう?」

「……えぇ。よく見えるわ。こっちの機械化歩兵の銃が、貴方のサーヴァントの手と言うか尾っぽによって、粉々にされたわね」

「そうだ。んで、今ので、そっちの戦える兵は二桁を切った」

 

 ……もしかすれば、エレナ・ブラヴァツキーがマスターを刺すような一言を放ったのは決して、彼を悪戯に傷つける悪意に溢れたではなく。ある種の仕返しの意味があったのかもしれません。彼女の少し呆れたような、困ったような顔を見れば、そんな気持ちが見て取れる、様な。

 

 彼女が展開した機械化歩兵は……我々の手によって既に制圧されています。

ここら一体を包囲するその数は驚くべきものだったのですが。しかしながら、此方も万全にて。マシュ様を先頭に、リリィ様と酒吞童子様が切り込み。三人の動きに搔き乱されて敵方が混乱した所で、更なる鉄槌としてゴルゴーン様と巌窟王様が吶喊。

私も微力ながら背後から力添えをいたし……結果として、ナイチンゲール様が動く暇もなく。

 

「ゴルゴーンはん、殺したらあかんよ? 言うとったやろ? 後々が面倒になるって」

「大丈夫ですよアサシンさん! ゴルゴーンさん、ちゃんと手加減してますよ!」

「ふん、と言っても半殺し(ミディアムレア)も良い所だがな……」

「手加減できる相手ではありませんでしたし……アメリカ西部合衆国の皆さん、凄い練度だったかと思います」

 

 敵方の戦力は壊滅。流石に、決着がこうもあっさりと付いたことで、向こうとしても嫌味の一つでも言いたくなっても、不思議ではないかと思います。

 

「サーヴァントが六騎って。聖杯戦争じゃないんだから、溜まったもんじゃないわね」

「これだって『聖杯』を求めてやりあう戦争には変わりねぇだろ?」

「ま、そうなんだけどね……」

 

 それでもマスターが『まだやるか』と声をかけたのは。恐らくは……エレナ・ブラヴァツキーが『余裕』を持っているのを、見抜いたからでしょうか。

 呆れにも、困ったような表情にも。彼女の確かな微笑みが混じっているのです。余裕がなくとも笑うような、闘志を鼓舞するようなモノではなく。勝ちを疑っていない、そんな表情の様な……

 

「とか言って愚痴ってるのに、余裕を保っているのが解せないけど」

 

 当然の疑問符を浮かべるのは、藤丸様。

 ダ・ヴィンチ様にお願いして、周辺の探知をしていただいていますがしかし……追加の機械化兵の反応も、別のサーヴァントの接近反応も見られません。

 

 彼女は、ほぼ孤立無援と言っても、不思議ではない、気がするのですが。

 

「まぁ、私がやる必要があったのは、時間稼ぎだし」

「時間稼ぎ? でも、近くに援軍は……」

「案外早く来てくれて助かったー。それじゃ――」

 

「後は任せるわ、カルナ!」

 

 ――その瞬間の事。

 

「「――っ」」

『うわっ!? なんだ!? 真上!? コレ真上に反応無いかいレオナルド!?』

『あるよ! 強制転移だとぅ……!? ええいどんなチートをやったんだいコレ!?』

 

 天を仰いだのは、巌窟王様と、酒吞童子様の二人。

 そして同じタイミングで、管制室のお二人が焦り出したのが分かりました。真上、その言葉に、天を仰げば、そこに――

 

「――了解した」

 

 それは、降りてきました。

体を溶かし尽くしてしまうと錯覚する程、此方の肌に汗をにじませてくる程、そんな中でも、背筋が凍りつくような、寒気が体に走る程に。ジリジリと、全身が焼け付くような魔力を身に纏いながら――

 

『――な、んだ、この零基数値……トップクラス!? いや、コレは更に……!?』

 

雪よりも白い髪に、同じくらい白い肌は、余りにも人離れした色。太陽の如き輝きを自ら放つ黄金の鎧と、そして武具とは思えぬ、美術品と言えるほどの見事な装飾の槍を一振り、携えて。

同じ人型なのに、そこに居るだけで、同じ生き物とは思えぬ程の『圧力』が、身体にかかる気がします。巨人と相まみえたのかと思う程のそれと、熱と、光。まるで、そこに居る青年は――

 

「太陽……?」

 

 ぽつり、と言葉が口から零れます。

そう、まるで、天より日輪が人の形を取って降りて来たかのような。恵みの日のそれではなく、余りにも矮小な人を容赦なく焼き尽くす、暴威の化身として、形を成して。

 

「異邦からの客人よ、加減はしない」

 

 そこで、ハッとしました。

アレは、エレナ・ブラヴァツキーが引き連れて来た援軍。敵なのです。見ているだけではいけません、逃げるにしろ、戦うにしろ。

 しかし。

 

 既に高まりつつある魔力。最早それは、熱だけではなく……魔力そのものが焔の如く、揺らめく程に濃密に、そして更に高温に、高まりつつありました。宝具による攻撃である事は明確。もう間に合わない、という絶望的な事実が頭を過り――

 

「――悪いなロマニ、自己判断だ! 令呪をもって我がサーヴァントに命じる! ゴルゴーン! 宝具を解放しろ!」

「良いだろう、その命令、今は従ってやる……!!」

 

 ――それに応えるように。

 

 膨大な魔力が、背後から吹き上りました。振り返れば、天に拳を掲げるマスターの姿。その手から……一画、令呪が消えています。

承認は得ていませんが、その前に令呪を解放したのでしょう。魔力を注ぎ込まれ、そしてそれを呼び水に、更なる力の撃鉄を起こす、ゴルゴーン様の姿が

 それはあの太陽にも負けぬ程に高まる、呪詛の気配。

 

「そっちの奴が切り札らしいなぁ……!」

「ゴルゴーンって……ウソ!? ギリシャ神話でもトップクラスの怪物じゃない!?」

「だがこっちも『力』と『格』なら負けてねぇってんだ! いっちょこっちの偉大なるお方と、力比べと行こうぜ、大英雄!」

 

 伸びた髪が螺旋の如く絡まり、そして……巨大な生き物の如く形を成す。

 その姿に――一瞬、天上のサーヴァントが、目を細めたように見えました。

 

「――貴様らの呪いを返してやろう」

「成程……道理だ。此方にあるものが、そちらに無いとは言いきれぬのは――良いだろう」

「その無駄に眩しい装飾ごと、溶かし尽くしてくれる……!」

 

 天上に太陽。

 地上に暗黒。

 

 二つの力が、ぶつかってもいないのに、火花を散らす程、吹き荒れているのです。最早一歩も動けません。

 迂闊に動けば。それだけで、全てが吹き飛ばされる如き、この圧力の中で。

 

「墜ちよ英雄……『強制封印・万魔神殿』!!」

「『梵天よ、地を覆え』!!」

「や、やばっ……マシュっ! 防御を!」

 

 その、圧力が弾けた、その瞬間。

 私は――意識を飛ばしてしまいました。

 

 それ程の、衝撃だったのです。しかし……確かに、記憶には残っています。

 目を焼く真夏の日差しにも勝る程に、眩く輝く一条の熱線が、天より撃ち降ろされ。そしてその輝きを呑み込まんとする赤黒い呪詛の咆哮が、天に向かって叛逆するかの如く上り。

 

 文字通り。

 天を割く程の、激突を見せたのを。

 




カルナさんも対軍宝具、ゴルゴーンさんも対軍宝具。そんなものをぶつけるんじゃない!!
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