FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
『以上が、此方で確認したアメリカ西部合衆国の現状だよ』
……正直、目を丸くすることが多すぎる。
夜の森の中、燃える薪を囲んで、聞いていた話は、『藤丸が体験したアメリカ西部合衆国の真実』である。
小市民の俺は兎も角、式部さんが眉間を抑え、ゴルゴーンさん嫌そうなを越えて肥溜めを見るような視線になり、アサシンは大爆笑して腹をつらせていると来た。
それ位に何というか……ザッツ・カオスと言うべきか。
「――いやー……ちょっと、衝撃的過ぎたなこりゃあ」
アメリカ西部合衆国の長。大統王を名乗るは、かの発明王トーマス・アルバ・エジソンなのだという。俺だって知ってるレベルの超有名人だ。エジソンと言えば。
輝かしい栄光の中を歩んだ人生や、人としてどうなん? っていうエピソードの数々も後世では有名に過ぎて『エジソンって素直に尊敬できる人じゃないよね!』っていう評価もあながち間違いない感じになって……ああいや、今は関係ないかそこは。
それだけでも十分に驚きなんだが。その上に頭が……うん。
「ライオンかぁ……ライオンかぁ」
真っ白なライオンだった。
俺が頭を押さえて、式部さんが眉間を抑えている理由の半分くらいは多分これ。アサシンはその有様を見た時点でツボにはまったらしく、声こそ出していないが、それでもまぁ笑いまくって動けなくなった。
そう。かのエジソン。王なんぞと言うそんな大層な職業について、カッコよく、理知的に名乗り上げた割にはまぁ。理性とは真逆で顔が獣性そのものなのである。
快活に笑うのも、神妙な顔をするのも、睨むのも。人間が行う仕草が全部ライオンナイズされて、何というか違和感とか諸々が緊迫した空気を全て粉砕してしまってまぁとんでもない空気になってしまっているというか。
いやまぁもっと身も蓋もない事を言ってしまうと、あのライオン頭、たま~に吠えるのだ。
『――グォオオオオオオッ!』
……俺が聞いた彼の『鳴き声』がこれである。
もう一度言う。雄々しく、百獣の王の如く、堂々と、吠えるのだ。
結果、それを聞いたアサシンの腹は見事に砕け散った。まぁ笑えるのも気持ちは分かる気がする。ちょっと鳴き声が迫真に過ぎて、シリアスを保てない……
「百獣の王だから大統王ってか? センスねぇなぁ……」
「――ふん。下らん。なんと名乗ろうと、その下の汚い腹の色は変わらぬわ」
とはいえ。そんな呑気な感想を抱いてる奴らばかりではない。ゴルゴーンさんは非っ常
にご機嫌斜め。まぁ……ゴルゴーンさんは基本的に人間が大っ嫌いっていうのがある。マスターの俺ですら利用される形で一応関係を結べているだけだし。
んで、マスター君の偏見塗れの人物評で考えてみると……エジソンは、ゴルゴーンさんはまぁ嫌いそうなタイプだろうと思う。
そもそも理屈っぽい上に、相手を一見してまず批評(批判ではない)から入る。ドクターの通信を『古臭い』と言ったし。藤丸に対しても、自分の下で働かないかと、しょっぱなから上から目線、マジで王様気取ってる気がする。
いやまぁ、相手はアメリカを統率する立場だし、こっちは現地調査員だし……って言うのもある。ドクターの通信を古臭い技術、と言った後、その詳細を聞けばそれがどれだけ有能が技術なのかを見抜き評価し直す……という冷静で有能な部分もある。
だが『人間大嫌い』なゴルゴーンさんにとっては、そこよりも悪い部分が目立って見えるというのもある。いや、別に有能な部分だってあるって事は分かっているだろう、この人は人間よりもよっぽど『賢い』人だ。
分かっていて、それでも自分とは反りが合わない、気に入らないという部分を優先しているだけだろう。……なんていうか、やっぱりアサシンもそうだし、ゴルゴーンさんもそうだが、基本人外な人たちは、自分に合うか合わないかを優先する部分がある気がする。
「いやまぁ、中身は兎も角として……いや中身も凄まじくて無視は出来ねぇか」
「そう、ですね。まさかアメリカ以外の世界を全て見捨てて、アメリカだけを救う事に視線を合わせるとは」
でもまぁ、自分勝手な部分は向こうも同じだ。人理を救うとかは置いておいて、ピンチのアメリカだけを綺麗に救うプランでいっております――なんて普通通らん。こちとらアメリカ出身一人もいないんだし、お前の政策に誰が頷くかっていう。
「兎も角……エジソンがああいう方針であれば救出した後の俺らの方針も確定になる」
つまりは、向こうさんとは絶対に相いれない。それは藤丸も分かっていて、気持ちが良いまでの啖呵切って交渉決裂と来た。
自分の国だけを救う方針のアメリカ、そのアメリカ曰く『野蛮人』の集まりの東の『ケルト』。その二つもどっちも駄目と来た。であれば、俺達は自然とアウトローになる。
「アウトローの群れに身を寄せるのも、自然な流れだろ――ジェロニモさん」
「……アウトローという言い方は些か心外だがね」
んで。そんなアウトロー連中を纏め、三つ目の勢力である『レジスタンス』を率いているのが、目の前のジェロニモさんだった。アメリカの英雄であり、歴史に残る程に苛烈な戦いにて伝説を打ち立てた、アパッチ族の戦士……らしい。俺は知らんかった。
でも、それを言ったら『私の血濡れた名が有名でない事は良い事だ。後の世が平和である証だろう』って笑って言ってくれた。凄い好きになれた。
『改めて、此方から申し出をさせてもらいたい。ジェロニモ。私達の仲間を助けるのに力を貸して欲しい』
「――元よりそのつもりだ。よろしく頼む」
好ましい人には礼を尽くしたい。手を伸ばし、しっかりと握手。
……先ほどゴルゴーンさんとアサシンの事を言っていたが、俺も人の事を言えない気がする。エジソンとジェロニモさんに対する態度の露骨な差とか。
比較してはいない。寧ろ比較するまでもなく、どちらも凄い偉人だとは思うし。
でも『自分と合うかどうか』って言うのは、その何れの要素とも関係ない。
……アサシンや、ゴルゴーンさんが見ている世界は、こんな感じなんだろうか。
別に、二人の見ている世界を共有したい、って訳じゃない。それは二人のモノだから共有なんて土台無理だし。でも。
自分は、人間だ。でも、過ぎた力を体に宿している。それとどう付き合っていくか。一応は、アサシンが指針を示してはくれた。でも……答えは出ていない。
キッチリと答えを出さないと、いけない気が、最近している。故に……答えのヒントになりそうなものは、少しでも考えたいと思っている。
俺の血に流れる大本……魔性の人達の視野とかは、そういうモノになりえるんじゃないかと思っているのだけれども……
「……ふむ」
「ん? なんすか、そんな見つめて。頭気になります?」
「いや。その禿頭ではなく……遠目からは確認できなかったが、君には随分と不思議なモノがやどっているのだね。そら、額から漏れてるぞ」
「え゛」
ハッとして額を触る。ぱちっ、と痺れる感触があった。
なんてこった、自分の血の事について考えてたら、勝手に角が生えてた。いかんいかんコレは。幾らある程度は制御できるようになったっつったって、気を抜きすぎてる。
「あ、あはは……お恥ずかしいモノを……あ、握手痛かったすか!?」
「いや、そんな事はないよ」
「ならよかった……」
「――しかし。うん、なんというか……」
そんな様子を、ジェロニモさんはジーっと見ている。いや、見つめてるっていうか、ジロジロ観察されているというか……なんか、恥ずかしくなってくるレベルで見られて、ちょっと、額とか隠してしまう。
「な、なんすか……?」
「そうだな。コレはただの老人のお節介だと思って欲しいのだが」
「はぁ」
「君の姿勢は間違ってはいない。正しい付き合い方ではある……だが最善ではない」
そう言われ、思わず目の前の人を見る。
周りに揺れる木々みたいに、とても静かな瞳をしていた。
「魔と付き合うには、先ず寄り添い、そしてその流れに乗る……正しい事だ。恐れ、抑え込もうとするだけでは、寧ろ自らを焼くだけだろう」
「……」
「大人しく暮らすのであれば、それで十分だろう……だが、これから先にも君たちには苦しい旅路が待ち受けている。それならば、更に先へ進むのも、考えてみると良い」
……アサシンと出会って、一度は自分の血に流れる『鬼』と言うモノに向き合って。その美しさに惹かれ、その中に呑まれ――その流れに自ら乗るかの如く、向き合う術を見つけた。
そしてその先に、俺が何かを探しているかを。
その瞳は、静かに見透かしている様な気がした。
「……」
「魔と寄り添うだけではなく。人と語り合うと良い。その相手は――そうだな。そちらのご婦人など、良いのではないかね」
そう言われ。彼が視線で示す、後ろを振り向いた。
目が合った。俺のサーヴァント――初めて召喚したサーヴァントの式部さんが、そこに居る。
彼女と語り合う。それが、どういう意味を持つのか。俺には分からなかったけど。その言葉は……何となく、脳の奥に、刻まれた気がした。
日本のイタコ、アメリカのシャーマン、共通点は多い。不思議。
今回の投稿はここまででお終いです。
この小説の次回の投稿は、10月になりそうですが……もしかしたら11月になるかもしれません。再開したら『あ、また更新してる』位のお気軽な感覚で見て頂ければと思います。
それでは。