FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第九十三章・裏:陽動作戦 前編

 伸ばした拳には――手ごたえアリ。

 

ぐらり、とバケツみたいな頭が後ろへと傾ぐ。

 そのまま、踏みとどまる様子もない。ちいとばかり大柄だったから、通じるかどうか不安だったが、どうやらちゃんと相手の意識は刈り取れた……らしい。

 

『Oh! なんとバイオレンス……!』

 

 最後にそれだけ言い残して……鋼鉄の巨体が、地面にズシン、と倒れ伏し。そのまま動く様子無し――やっぱり、アメリカさんってそういう感じなんだろうか、デカめの機械兵士を見ながら思う。絶対違う。

 

 そして。アレだけのゴツイ機械を、普通に殴り倒した自分の拳を見つめる。当然だがあんなデカい鋼鉄の塊に、ガッツリ拳の跡を残せるのは、ただの一般人と言える段階を超えてるとしか言えない。

 ううむ、チンピラ相手にしていた頃を思えば、随分と遠くまで来たもんだ。

 

「――大体、ご婦人に鋼の塊が飛び掛かる方がバイオレンスだろう常識的に考えて……」

「ありがとうございました、マスター。お怪我は?」

「ん? うん、全然ヘーキヘーキ、そっちこそ大丈夫? 式部さん」

「は、はい」

 

 まぁ、ただの日本人高校生だった俺が、こんな綺麗なご婦人のエスコートがなんてやってるんだから遠くにも来るだろうという話だが。エスコートっていうよりはSPなんだけれどもね。

 

「んもう、しつこい」

 

――が ごん

 

 ……まぁ、俺の周りはそれこそエスコートなんて必要ない位パワフルな人が殆どなんだけれどもね。あぁ今も、その小さなあんよで、蹴鞠の如く気軽に鉄の塊を蹴っ転がした童女が目に映っておりますし。アレは、まぁ生きてる、かなぁ。

 

 んで向こうで光線の余波で吹っ飛んでる機械化兵士君はもう生きているかの保証は出来ない。一応原型留めてる辺り、まだ本気を出すつもりもないだろう。

 

 そんな風に暴れている

 

「旦那はーん、こっちにも襲い掛かって来てるんやけど」

「まぁ、襲い掛かられてるけど……俺が守る前に吹っ飛ばしてるじゃん」

「せやねぇ。怖いし」

 

 いやそんな『当然じゃない?』みたいな顔されても。そこまで強い奴エスコートして何の意味があるって話。というか……怖いて。

その感情とは一番無縁なのがお前さんだろうに。

 

「ったく、そんな冗談飛ばすだけの元気があるなら大丈夫だろ」

「ふぅん? 守ってくれへんの?」

「――お前を生中な心意気で守るなんて言う方が失礼だ」

 

 まぁ、そういうコイツの人となりを知ってるから――たかが陽動作戦一つで、無駄に心配する方がアウトだろう、って事は分かる。確かにアメリカ機械化兵団は間違いなく脅威ではあるが……アサシンが相手にしてきた源氏武者と比べてしまうと、物足りないどころの話ではない。

 

 故に。コレで心配する=舐めているというのと同義。

 アサシンのおちょくりは気にせず、このまま作戦続行、である。

 

「ま、本当にピンチなら、お前に首喰い千切られてでも助けるから安心しろ」

「――ふふっ、言うやないの。期待しとるで?」

 

 とはいえ。

 

 エジソンの築き上げた機械化兵団の強さは、間違いなく並じゃない。俺はあくまで、アサシンとゴルゴーンさんの二人の大暴れから抜け出して、式部さんに向かって来るお零れだけを相手にしてるから、ギリギリ何とかなっているんであって。

 

 俺だって割と人間やめてるところまで来てるけど、それでも数体相手が若干きついレベル。十体になればまぁ普通に負けるだろう。

 アサシンとて、この機械化兵士相手であれば、思わぬ足の掬われ方をすることだってあるかもしれない、と言う話だ。

 

「……鬼の首魁、酒吞童子がそのような窮地に陥るでしょうか」

「強いけど、案外脆い所もあるから、万が一があるさ――特に、これからやって来る野郎を考えるとね」

 

 ちらり。と、目の前に築き上げられた、巨大な城砦を眺める。

 いや、マジでデカい。ちょっとした小山くらいあるかもしれない……この機械兵団もフルに使って作ったのだろうか、っていう仕上がり。

 そしてこの巨大な城砦に相応しい『英雄』がやってくるのを、俺達はその城の真ん前で暴れながらも待っている。

 

 待っている、とは。陽動作戦だってのに、おかしな話だとは思う。。

 ダ・ヴィンチちゃんも、あんまりヤバい相手が出てくるようなら、直ぐにでも撤退しろと言っていた……だがしかし。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、反応どうだい?」

『今のところは……本当にやるのかい?』

「うちの麗しの女神さまが、ね」

 

 此度、残念ながら逃げる、と言う選択肢は今の俺には存在しないのだ。

視線を……もう一度、彼女の方へと向ける。先程から、無駄な力を使わない様にかなり気を使ってる。それが結果として陽動としての最適な動きになっているが。

 しかし、あのランサーが現われたなら、即座に貯め込んでいた力を爆発させた後に――文字通り、怪力乱神と暴れ回るだろう。

 

 ゴルゴーンさんにとって。別にカルナは因縁の相手でも何でもない。ただ一つだけ。ある一点が、気に障った。

 

『――あの宝具、アレは、奴の本気の一発ではない』

 

 向こうからして本気でなくても制圧は可能だ、と思われたのが至極気に入らないとの事である。さらに正確に言うのであれば……ゴルゴーンさん曰く、向こうも本気を出しているつもりではあるのだろうが、それでも本気の中の本気、ではないとの事。

 

 まぁ要するに……。

 ゴルゴーンさん的にカルナに手を抜かれてナメられたのが非常に気に入らないらしい。

 

 ノリは田舎のヤンキーに近い。一応は一緒の生活圏内にいたから分かるのだが、アイツら面子とプライドで暴走してるような連中ばっかりで、ナメた真似をされると即瞬間湯沸かし機と化す。

 まぁ、ギリシャ的にもナメられるのは絶対に許されないようで。ただし、ゴルゴーンさんの場合は、若気の至りとかそんな生易しいものじゃなくて、自分の存在意義を賭けて強さ誇ってるんだから、ナメられる=自分の人生諸共馬鹿にされる、位の勢いだ。

 

 お前なんか本気を出すまでもない……と言われたのと同然。ゴルゴーンさんにとっては顔面にノータイムで泥叩きつけられたのとほぼ同意。許すまじと、とんでもない勢いで大噴火の直前だ。

 

『――勇士風情にその程度の怪物、等と侮られるなどと、屈辱以外の何者でもない。分かったら、口を、閉じろ。囀るな』

 

 ……と言ったような感じ。正直、どうして俺はあの時『まーまーゴルゴーンさんちょっと落ち着いて』位の気持ちで声をかけてしまったのか。多分今まで頑張ってコミュニケーション取って来たから、アレで済んだんだと思ってる。

 

「この前の一回以来、大分神経尖らせてる……この前のエジソンの一件でも、機嫌悪かったろ?」

『あれってそう言うのも含めて、だったのかい?』

「エジソンが起爆剤だったのは間違いないけどね。フラストレーションを貯めてくれたのは、あの黄金のランサーだ。それで……まぁ、俺はゴルゴーンさんを甘やかしちゃう悪いマスターって事で」

 

 んで、今回の()()に舵を切ったのは……まぁその迂闊な聞き方したお詫び代わりだ。

 

『全く……サーヴァントを体張って庇う、サーヴァントに助ける宣言する、サーヴァントを甘やかす、か。身の程知らずにも限度があるんじゃないか?』

「世界を救うならそれ位酔狂じゃないとな。んで?」

『――感アリだ。漸くお出ましみたいだよ』

 

 時の到来をしらせるダ・ヴィンチちゃんの報告に、首を軽く一回転。グキリと音がするくらい、軽く解しながら……傍らの式部さんに軽く頭を下げる。正直、このお礼参りに関しては、俺とゴルゴーンさんの二人でするのが一番の筈なんだが。

 

「巻き込んでごめんなさいね。まぁ、最悪スタコラサッサするから、絶滅戦争するつもりはないから、その辺りは安心して貰えれば」

 

 正直今更ではあるが、一言でも謝っておきたかった。そもそもバリバリに戦うタイプのサーヴァントではない……それを、最も危険なサーヴァントとの殴り合いに連れてくるなど正気の沙汰ではないだろう。マスターのワガママに付き合わせる等、ロクでもない。

 

 でも、そんな不甲斐ないマスターに……式部さんは、微笑みかけてくれた。

 

「いえ。陽動作戦、なのですから。寧ろ派手にやった方が宜しいかと」

「そう言ってもらえると、ありがたいねぇ……」

 

 流石。歴史に名を残した偉人というのは、例え文系の人だろうと、戦い一つに怯える様な胆力ではないのだろうか。それとも……怖くとも、そう口にしているのか。

 いずれにせよ、彼女が頑張ってくれている事に疑いはない。胸に感謝の気持ちを改めてしっかり刻み込んでから――声を張り上げる。

 

「ゴルゴーンさん、来るぞ!」

 

 その一言に。

 

 先ほどまで適当に振り回していたその爪をぴたりと止めてから……彼女は、此方に向けて振り返った。

 冷ややかに、見下すように、敵を睨めつけていたであろうその瞳に――熱が灯るのが、見て取れる。

 

「――漸くか」

「リベンジマッチだ。令呪いるか」

「必要ない。どうせこの戦場だ、奴も大掛かりな宝具は使うまいよ。その上で、膂力でねじ伏せてやる」

「あいあい」

 

 どうやら、本番に向けて適度に力を抜いていても、内の気合いは十分に高まっているらしい。口元をふっと緩めているというのに、その瞳のギラギラとした光を見ていると、背筋が実に寒い。間違いなく、噴火寸前だ。

 

 そして、その瞳が――不意に、空の一点を見つめる。

 何を感じ取ったのか。今更、それを考える程馬鹿ではない。来たのだろう、待ち人が。

 

 ゴルゴーンさんの見やる場所へと、俺も視線を向ける。その先に、滲む金の輝き。日の輝きを照り返す程に豪奢なその鎧に、携えた槍は……間違いなく、此方を一発で分断せしめたあのサーヴァントの物に、間違いない。

 ジェット機の如く、焔を上げて飛んでくるその姿に、彼女の口元が――裂けたが如く、吊り上がった。

 

 そのまま、突撃してくる――かと思いきや。

 此方から少し離れた辺りの位置で、炎を逆噴射。費消してきた勢いを強引に殺し減速して……降りるときの足音すら静かに、酷く穏やかに目の前に降り立って見せ――ガチリとその姿に、金色の爪が、かちゃりと威嚇するように鳴る。

 

「――そこまでにして貰おうか」

 

 大英雄カルナが。再び、俺達の目の前に降り立ったのだ。

 




ゴルゴーンさんがそんなヤンキー見たく切れやすい訳ないだろ!!
ゴルゴーンさんが勇士にナメた真似されてブチ切れない訳ないだろ!!

どっちが正解なのか……分からない……(震え声)
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