FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第九十四章・裏:シャーマンにして戦士 前編

 ご ぎ ん

 

「――っふぅ♪」

「ちぃっ……」

 

 二刀と大剣の衝突と共に、そこから二人のサーヴァントが飛び下がる。

 

 知らなかった。鋼と鋼が最高速でぶつかり合うと、こんな音がするのか。また一つ、賢くなってしまった。

金属同士の奏でる甲高い音がするかと思いきや……酷く重たく、低く、そして……確実にあの間に入ったら死ぬことを、聞いただけで想像出来るような、こんな音がするとは思わなかった。

 

 最後の一撃に至るまで、どれだけあの二人の打ち合いが激しくなっていったのかを。当人達ではない此方ですら、想像するのは余りにも容易かった。

 

「やるねぇ……」

 

カルナとゴルゴーンさんのつぶし合い見た後だと、大抵のサーヴァントがちょっと怖くないみたいに錯覚しそうだったけど、気のせいだ。

 

「ちぃっ……シャァッ!!」

「ふふふっ、ええ顔しよる、なんや都の武者を思い出すわぁ……!」

 

 疾風の如く、木々の間を駆け抜け。

木立の合間、僅かな隙間で散る火花が、二人が戦った軌跡と僅かに残る。

 

 状況は……恐らくは、互角と言っていいか。

アサシンの俊敏さは文字通り人間離れしたモノで、先ず滅多な事では追いきれないだろうに……しかし、襲い掛かって来た敵の二刀の冴え、その身のこなしの素早さは、獣ですら追いつけない程のアサシンの鋭敏な動きに、ついて来ている……

 

否、寧ろ時折、アサシンよりも素早く、目の前に回り込んでいる様にも見える程で。

 

 アサシンを援護すべきか、一歩を踏み出そうとした所で――

 

「――っ!」

 

 鋭いまなざしが、此方に向けて突き刺さり、踏み出そうとした一歩を縫い留められる。どれだけアサシンと激しく剣を打ち合わせ、爪の強襲を凌いでいようとも。欠片たりとも俺に向けられた意識は反れないし、締め付けは緩まない。

 ゴルゴーンさんはつまらなさそうにしているが、大変申し訳ないが、ここは堪えて貰わないと……いや、俺も別に『加勢したい』と思っていない訳でも無ければ、寧ろ積極的に殴り合いたい所なんですけれども。

 

『本造院くぅん?』

「あ、すみません姉御……」

『誰が姉御か。まぁ綺麗な姉さん女房かもしれないけど……』

「アンタを女房にする奴は相当度胸あるなぁ」

 

 このように私、マスター本造院。この中で立場が最も低い故に、最高責任者のお言葉は受け入れないといけない……という事で。大人しくしている。

 

『良いかい? あのサーヴァントの君への入れ込み方は尋常じゃないんだ。もしアサシンがカバーできない所まで君が踏み出した時点で――もう一度、命をかけて……いや、命を捨てて挑みかかって来るぞ』

 

 というより、大人しくしてないとマズい事くらいは、分かる。

 先ほど――襲い掛かって来た奴の動きは、正に狂的だった。

 

 自ら切り殺した兵士の身体を蹴散らし、文字通り弾丸の様に突撃して来た。真正面、当然、ゴルゴーンさんもアサシンも、式部さんも、当然、突っ込んできた奴を、迎撃したのだ――だがしかし。

 

 一切、奴はソレを気にしなかった。振りかぶったアサシンの大剣を受け止める以外、ゴルゴーンさんの魔力光線も、式部さんの拘束する為の術も……全部、避ける素振りすら見せようとせず、受けたのだ。

正直、その時点で面食らったのは確かだが――問題はそこからだ。

 

サーヴァントからの攻撃をほぼ無防備な状態で喰らって、ダメージも生中なもんじゃない筈……だというのに。あのサムライは、真っすぐ此方との距離を詰めようと、突進しようとすらしてきたのだ。

 

『な、なんと……!?』

『本造院君、下がれ! どうやら、あのサーヴァントの狙いは――』

『俺かよっ!?』

 

 その時……奴は、対面しているアサシンの顔すら一瞥だにしなかった。鍔迫り合いの最中ですら、仮面の奥から見ていたのは俺だけ。間違いなく傷だらけで、痛みに顔をしかめたっておかしくないのに――その瞳は、寧ろギラギラと、輝いていた気すらする。

 怒りか? 違う、そんな分かりやすい感情なら、俺は『怯えない』。

 

 あの時――俺は。

 その瞳に見えた『喜悦』の感情に、どうしようもなく、ビビらされた。

 

 喜悦、だけじゃない。その奥に、何かもっと、激しい感情があるのは、流石に分かる。じゃないと、こっちの攻撃受けて、顔色一つ変えず押し込んで来る、なんて出来る訳がないとは思う。

 しかし、その激情が……待ち望んでいたおもちゃを与えられた子供みたく、純粋な『喜び』となって現れるなんて、そんなの聞いたことも無い。

 

『漸くだ……漸く……!』

『――旦那はん、下がった方がええと思うよ。コレ、首刎ねても、顎だけで食らいついてきよるから』

 

――アサシンだけが彼女と打ち合っているのは。単純明快。あのサーヴァントの圧力が文字通りの『脅威』だったという事。

 

『君が死んだ時点で、カルデアは大きく戦力を減ずることになる……流石に、死兵となった相手に、君をあてがうわけにはいかないからね』

 

万が一にも、俺を前線に出すわけにはいかない。それがダ・ヴィンチちゃんの判断だった。こちらもサーヴァント三騎、絶対にも近い守りと言っていいが……

 

しかしながら、相手だって現状サーヴァントと鎬を削っている強敵。文字通り、自身全てを薪に、殺意を燃やして特攻されれば、如何に三対一とてそれを凌ぎ切れるとは限らない……そのダ・ヴィンチちゃんの言葉を、笑い飛ばせないだけの凄まじい迫力が、目の前の武者には存在していた。

 

 故に……カルナ戦で消耗の激しいゴルゴーンさん、接近戦を得意とする奴とぶつけるのは無謀に過ぎる式部さん二人は、援護等せず守りに専念……消耗も少なく、同じく接近戦を得意とするアサシンが、奴を相手取る事となり――

 

 その二人の戦いは、未だ大きな動きを見せておらず。こっちとしては……手痛い足止めを喰らっている。

 

「……ダ・ヴィンチちゃん、反応は」

『ない。ないけど……このままここに貼り付けにされてたら、補足される可能性は全然ある……まだ、安全地帯と呼べる位置じゃないからね、ここらあたりは』

 

 そう。

 この場所は、アメリ側の、デンバー拠点から、大きく距離を取った場所、とは言えないし全然、相手が追い付いてくる距離でもある。一応、林の中で見通しは悪いが、向こうの数は尋常ではないし……人海戦術を駆使されたら、普通に見つかりかねない。

 

 一番まずいのは、復活したカルナ辺りが、もう一度襲撃をかけてくること。敵地に飛び込んだ事で間接的に宝具を封じ、ゴルゴーンさんとの単純な力比べに持ち込んだ事で何とか勝ちを拾ったが。

 巻き添えを気にしないで良い場所で奴と戦って勝てると言えば。正直、苦いというしかないだろう。ゴルゴーンさんが弱い訳ではない、だが。アレは……尋常の強さじゃない。そもそも、人間ではないゴルゴーンさんと、単純な力比べで競り合う方が可笑しいと言えば可笑しいのだ。

 

 故に……状況は、奴の有利に傾いている。もしも、アメリカ側が追い付いて来たりしようものなら、場は混沌とし出す。その混乱に乗じ、あのサーヴァントが、俺の首を真っすぐに刎ねに来るのは、容易に想像できちまう。

 

 ……解決策は、一つ。

 

『藤丸君からは、こっちに向かってくれた、っていう連絡があったんだけど……』

「流石に向こうとは距離があったからな……間に合ってくれることを祈るしかないって言うのは、存外、歯がゆいもんだねェ……」

 

 藤丸は駄目だ。三人のサーヴァントの足並み揃えて動くのは当然目立つ。

 であるならば……一応、こっちと協力関係を結んでくれている――

 

「――遅くなった」

 

 彼に頼るのが、一番だろう。

 

 その声に振り向けば、木々の中から進み出てくる男が一人。

 接近にすら気づかぬ、『借りた宝具』での隠密行動。しかしながら、それを最大限に生かせるのは、本人の技量あってこそだろうと思う。

 

「……悪いなジェロニモさん、無茶させちまって」

「君たちとは、協力すると言ったのだ。この程度気にすることはない」

 

 構えたナイフと、傍らに浮かぶ不思議な人形は……彼の戦闘態勢が整っている事を示している、のだろうか。彼が戦っている場面を見た事ないから、分からんけれども……でも、少なくとも頼もしく見える事は確か。

 

 此方に向けて軽く笑ってから――ジェロニモさんは、木々を見つめつつ笑った。

 

「木々の力を借り受け、彼女を罠に嵌める……少し手間取るが、構わないかね」

「おう。でもなるべく早めで頼みます」

「承知した」

 




ジェロニモさんのターン!!
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