FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「残念ながら、心当たりはないな。俺達は結構コソコソやってるもんで、運よく遭遇しなかったのかもしんねぇなぁ」
「そう、か……ありがとな」
再びの空振りに、半分諦めの気持ちになりながらも話を切り上げた。
レジスタンスへのあいさつ回りがてら、例のサーヴァントについて話を聞いてみようと足掻きに足掻いて。だが、全く以て手ごたえはない。
否、手ごたえが無いというか。手ごたえはあっても、そこから全く情報を得られないっていう方が正しいのだろうか。
「……」
知らない、と言う奴は先ずいない。全員がとは言わないが、少なくない数のレジスタンスの奴らが『その現場』を見た事があるのだという。
アメリカ、ケルト、そして……自分達の仲間も少し。いずれにせよ、その兵隊達が、無残な姿で野風に晒されているのを。
機械の鎧を着こんでいたアメリカ兵など、機械と肉が、まるで……
「……やめよ、想像するだけ吐き気がしてくる」
……兎も角、敵を機械的に刻み、ボロボロにした挙句、それを見せつけるようにそのままにして去っていく。彼らとしては……知っていても、少なくとも関わり合いになりたいお相手じゃないのだろう。
それを、はっきりと口に出されて言われる事もあった。『あれは普通じゃない。荒野を彷徨う悪霊の類だ。話すのも呪われそうで嫌だ』と。
そんな、脳裏に刻まれた恐怖の印象だけが分かる対応をされまくった事を思い出しつつ……結局、収穫無しのままに合流地点に辿り着いてしまった。
少し考えながら、頭を掻いて……すたり、すたりと。誰かの歩み寄ってくる音に、そちらを振り向いた。
「ただいま戻りました、マスター」
そこには、俺と共に聞き込みをしてくれていた麗しのサーヴァントが一人。土埃舞うこんな場所でご婦人に聞き込みさせるとか、なんて思う。だが今更ではあるか、と意識を切り替えて……手を振った。
「お疲れさまー。どうだった?」
「申し訳ありません、手応えがない、と申し上げればよいのか……手応えはあれど、その正体は、どうにも掴みかねる、と申しますか」
どうやら――式部さんの方も、余り良い情報は仕入れられなかったらしい。
そもそもあまり見かけない、というのもあるだろうが。運よく遭遇しなかった、という言い方に現れている。アレに直接会った事はないが、しかしながら……首やら体やらを無残にも真っ二つにされた死体には、よく遭遇するらしいのだ。
その事で、『なんかヤバい奴が居る』という認識自体は、このレジスタンス達の中にも広がっている。彼女の方でも、凡そ同じ反応が返って来たとの事だった。
「……出会ってもいない相手まで恐れさせるとはなぁ」
「はい。どうやら、かなり苛烈な武人の方なのでしょうね」
「残った痕跡が死体の山だけなんざ、相当気合入ってるな」
思い出すのは……あの時戦った、源頼光。
少なくとも、容赦のなさは彼女以上である、という印象だ。
……全く見当がついていないって訳でもない。こっちのカルデアでも、正直、色々な意見が出て来てはいる。『魔術王ソロモンを名乗る敵が用意した刺客なのではないか』というモノもあれば、『シャドウサーヴァントを操っている一味の一人なのではないか』と言うモノもあって。
今のところは、ケルトからアメリカまで全部の敵を切り殺し、そして俺を積極的に狙っている事から、シャドウサーヴァント側の勢力なのではないか、という意見が、強いっちゃ強いが……確証はない。
確証を得るには、一つ、確かめにゃならんところも、ある。
「んじゃ、行くかー」
「どちらへ?」
「藤丸ん処。結局、合流した後、ゆっくり話も出来てねーしな」
「成程なぁ……んで、何時の間にやら離脱してた巌窟王が、突如として見張りの兵隊を倒して、カギを開けて。ジェロニモさんと合流して逃げられた、と」
「うん。凄かったよ。エレナさんの意識が反れた一瞬で」
「そしてその後も大活躍で敵を蹴散らされた、と。正に、八面六臂、でございますね」
「いや、その後は『伏兵がいれば厄介極まりない。偵察に行く』ってどっか行っちゃってたけど……」
……ちょっと何言ってるか分からないですね。いや分かるけど。だからって再びマスターを置いていくなよ。単独行動が過ぎるだろうあの兄ちゃん。ちょっと苦笑いしながら式部さんと顔を合わせた。
まぁ兎も角、藤丸の方も中々にカオスな状況だったらしい。と言うかその状況下でも拳銃ブッパして牢屋を削ろうとするナイチンゲール女史とかが主なカオスの原因だけども。
「あ、話それちゃったけど……兎も角、俺達の方でも話題にはなってたけど……やっぱり話したくもない、っていう感想の方が大きい、かな。詳しい事は全然」
「ふーむ、そうか」
「お話、ありがとうございます。藤丸様」
まぁそんなカオスの中でも、流石に情報収集は欠かしていなかったようで。寧ろ、レジスタンス側の奴らに話を聞いてた俺達よりも、アメリカ側の人達から色々と聞き出しているようだった。
「――しかし、不思議な話だ」
「不思議、ですか?」
「何が?」
「もしあの武者野郎がシャドウサーヴァントの一味だったとして、だ。これまで俺達と戦って来た奴らよりも、過激すぎやしないか?」
その話を聞いて……俺の中のその思いはよりはっきりとした形を持った。
アメリカ兵、レジスタンスの人員は勿論。何方の側で話を聞いても、『ケルト側も巻き込んで』という話を必ず聞く。間違いなく、あの武者は無差別に攻撃を仕掛けている。それも、無差別に恐怖をばらまく様に。
今までも、現地人に時折襲い掛かったりもしていた事は有った。あったがしかしながらここまでだったか? 敵も味方も、関係なく切り殺すようなやり方をしていたか? こんな目立つやり方を。
「言い方は悪いが、完全に後先考えない同士討ち同然だ」
「それは……確かに、そうですね」
「もしシャドウサーヴァント側の勢力じゃなけりゃ、ただの野良と判断してもいいかもしれないけどな」
その今までの違いを解き明かせば、何処についているかは、容易に分かるだろう。だが何処についているかの応え、それがどう転ぶかによっては、もう一つの疑問が湧いてくることになる。
「――シャドウサーヴァント側の勢力だった場合。今までのやり方から、方針を変えたのはなんでだ?」
「……俺達に対して更なる戦力を送り込むだけなら分かる……けど!」
「味方していた筈の、魔術王側の戦力まで巻き込む意味は? 奴らの中にも、
それは……俺達にとって、福音とは到底なり得ないだろう。
「……まだ、推論に過ぎねぇが」
「頭の片隅に入れて、行動した方がいいのかもしれない」
――暫し後。
藤丸は、改めてジェロニモや、マシュやリリィと言った自分のチームのサーヴァント達と話をする、と言って歩き出していって。俺と式部さんは、それを見送る事となった。今は、色々な人の意見を聞きたい、との事であった。
一つ、呼吸をする。
さて。藤丸からの情報は聞けた。ならば藤丸のように、もう一つ……アイツとは別視点からの叡智も欲しい所か。カルデアの中で、源氏、と言うモノに恨み骨髄、っていう感じだったあの感じを知っているとすればただ一人だろうか。乾いた空気の中、転がっていくタンブルウィードを眺めながら、ポツリと、零すように言葉を落とす。
「アンタの意見も聞かせて貰えれば、ありがたいんだけど――復讐者殿」
「……ふん、貴様が欲しているのは、奴の属している勢力が何処かの確証であって。奴自身の恩讐の在り方ではあるまいに。無理に知りたがるのは、人間の悪癖に他ならん」
その言葉に応えるように、空中……というか、虚空から、黒い霧の様な物を纏って男が一人、地面に降り立つ。ポークハットにマントと、絡みつく黒く重い気配に……式部さんは、思わずしてごくりと唾を飲み込んでいた。
全く、一々出方がおどろおどろしいというか。
「巌窟王様……」
エドモンが『偵察』に行った理由はお察し。