FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第十一章・裏:マスターとしての

『……式部さん。サーヴァントとのサシでの戦いは、初めてになる、と思う』

『今までは、他のサーヴァント達が居たから、その人達に合わせて戦ってればよかった』

『でもまぁ、今回はそうはいかない。俺は……アンタと、あんまり未だ親しいって訳じゃないし、サーヴァントとマスターとして、連携が上手く取れるか……分からん』

『負けたくないんだ、俺は。だから……頼む』

 

『俺を信じて、手を貸してくれ』

 

 

 

「僕の相手は……君達か」

 

『俺達が相手するのは、あのサーヴァント二人のどっちかだ。あの二人を急いで倒してから、他の皆に加勢する』

 

 そう言った藤丸様の言葉に、マスターは、一呼吸入れる間もなく。目の前に立つ、バーサーク・セイバーと戦う事を選びました。逃がした相手は、ここで確実にぶん殴る、とだけ告げて。

 

「あぁ。あの白い髪の親父とお前。どっちかと言えば因縁があるのはアンタの方だ」

「――ふふ、この前よりは落ち着いているね。そこに油を注いで着火するような真似はあんまりしたくないんだけど。君達との正々堂々の決戦、という訳にはいかないんだ」

「あぁ、分かってるよ……後ろにいらっしゃる、ポン刀構えたヤクザ者の方々も加勢するんだろう?」

 

 白い剣士の後ろに並ぶ……黒い剣客達。幾度となく我々と交戦したあのシャドウサーヴァントは、今回は最も多い、四人程

 

「――流石に、不利っちゃ不利か?」

「そうだろうね。だけど容赦はするつもりはないよ」

「そんなん要らん。要らんが……お前が負ける前に、一つ聞かせろセイバー」

「なんだい?」

「その後ろの黒い奴ら。他の所には居ないな……なんで俺らの所だけ、そんな黒い奴らが居るんだ? 他に応援に回せばいいんじゃないか?」

 

 そう聞かれたセイバーは……酷く、奇妙な表情をしました。

 

「それに関しては……僕も知らないんだ。ただ、ジル・ド・レェ……まぁ、僕らの参謀役の様な男が居るんだけど。ソイツから君を確保するように言われてるんだけど」

「……そんな奴は知らん」

「そうみたいだね。僕としては、君が彼に個人的な恨みを買っていると思っていたんだけど。だからこっちの方が驚きなんだ。なぜ彼が君を狙うのか、余計に分からなくなった」

 

 ――敵の言う事を鵜呑みにする、という訳ではありませんが……そんな嘘を吐いてもマスターを捕まえやすくなる、という事はないでしょう。そんな事する意味はバーサーク・セイバーにはない様に、私には見えました。

 

「マスター……」

「あぁ、分かってる。嘘じゃないのは。俺だって、馬鹿って訳じゃないんだ」

「逆に聞きたいんだが、君に狙われる心当たりはないのかい?」

「あったら聞いてねぇよ」

「――それもそうか。で? 質問はそれで終わりかい?」

「あぁ、ありがとうよ。後は決着をつけるだけだな。この前は、まんまと取り逃がした。次は……逃がさねぇ」

 

 そう言ったその直後、バーサーク・セイバーは華のように微笑み……その剣の切っ先を天へと掲げました。その動きに合わせ、後ろのシャドウサーヴァントが、ゆらりとだらりと下げていた切っ先を構え――

 

「その言葉を待っていたよ。お喋りばかりしていては腕を振るう機会がない」

「多数で攻めて来ておいてよく言うぜ……まぁいい。そこの黒子共が他に散らないだけマシって奴だからなぁ」

「安心したまえ、彼らと一緒には戦わないさ――纏めて切り裂いてしまっては、折角付けてくれたジル元帥に少々と申し訳ないから」

 

 ――その一瞬、マスターとバーサーク・セイバーのその視線が交わったように、見えました。生まれる間。お互いの出方を伺う、一瞬の時間。

 

「――令呪を持って、俺のサーヴァントに命じる! 宝具を解放しろ!!」

 

 先陣を切ったのは、マスターでした。

 戦闘前に伝えられた令呪の仕様と、その運用。私に流れ込む大量の魔力。そしてそれを見て目を一瞬見開いたバーサーク・セイバーは、如何な理由か、再び微笑み、そして。ゆらり、天に掲げた切っ先を……

 

「 限りあれば 薄墨衣 浅けれど 」

 

「突撃せよ。切り裂け」

 

 振り下ろしました。

 しかし、それよりも早く、私は宝具の発動に踏み切る事が出来ました。詩を詠むのは生前から、慣れた行いだった故に……後は、宝具が決まるまでの一瞬を。如何にして稼ぐのかという事。

 

 私が読み上げた後、間髪入れずに、ぐい、と横抱きに担ぎ上げられたのは、マスターの手によって。黒い影が距離を詰めるより前に、ほんの僅か。全ての動きを決めていた私達の動きが先手を取ったのです。

 私を抱えたマスターが相手から距離を取ります。一気に飛び込んで切り裂こう、と考えていた黒い影は一歩足りず、更にもう一歩を踏み込もうとして。その時にはもう、マスターは更に一歩下がる態勢に。

 

 反応してから行動する相手の動きと、もう下がる事を既に取り決めていたマスターと私の動きでは。向こうの方が如何に早くとも、どう足掻いても一歩及ばず。。

 

「 涙ぞ袖を 淵となしける 」

 

 黒い影が我々の元へとたどり着く迄に、既に私の詠唱は終わり……そして、目の前で剣を振り上げたその果敢なる姿に、あはれを覚えました。

 私の詩は、彼らの滅びを招く、詩でございますれば。

 

『――』

 

 その剣が振り下ろされる前に、黒いその影は、私の目の前で、滲む様に溶けて消えて行ってしまいました。

 

「――源氏物語・葵・物の怪

 

 私達の敵は残り、ただ一人。後方にて戦いの成り行きを見守ろうとしていたのであろうバーサーク・セイバーただ一人だけです。

 

「これは、これは……まさか最初に宝具を切って来るとは」

「俺も初めて宝具見たけど、こりゃあすげぇ。派手じゃないのが、逆に恐ろしいなぁオイ。コレが、想いと言葉の力って奴?」

「……この歌は、些か曰く付きですので」

「怪談かなにか? まあ良いけど……さて? 漸くこれで、サシでの勝負だなぁ。バーサーク・セイバーさんよぉ!」

 

 ゆっくりとマスターは私を地面に降ろし……改めてバーサーク・セイバーと向き直りました。バーサーク・セイバーは近接を得手とし、私などではマトモに戦えるかも分からない剣士のサーヴァント。

 

「そうだね。これで、漸く条件としては対等だ……でも私とそこのご婦人とでは些かと力の差があり過ぎるんじゃないかな? 見た所、キャスターだろう?」

「そうだなぁ。キャスターだ。近距離戦は得意じゃないとは、当人もおっしゃってた。だけどまぁ、勝てる様にサポートするのがマスターの仕事だろうし……お前に勝たせるくらいなら、そう難しくもねぇさ」

「――言ってくれる」

 

 そのまま剣を胸元に引き寄せ、低く伏せて構える。全身のばねを使って、一撃を持って貫く積りなのでしょう。恐らくは、私ではきっと……避けられません。

 逃げるべきでしょうか。それでも、マスターに『信じてくれ』と頼まれました。サーヴァントとして、マスターの命を聞くのはおかしなことではありませんし。勝ち目の無い無謀な戦い……という訳でもありません。

 

 それでも、私が意識するのはたった一つの事。

 

「ならば、決着を付けようじゃないか」

「決闘って奴だな。ハンカチでもくれてやろうか?」

「必要ないよ。届く前に……」

 

 ぐ、と。

 セイバーが僅かに、身を縮めた、気がして。

 

「――っ!?」

「届く前に。なんだ? バーサーク・セイバーさん?」

 

 その直後に私は、その斬撃から僅かに、体をよじって逸れて居ました。やった覚えはありません。しかし……マスターの礼装が私を、その様に動かしたのでしょう。

 緊急回避。サーヴァントの身体能力、特に敏捷性を向上させ、そこに『相手の攻撃を回避する』という行動を強制させるギアスという魔術を組み合わせた、マスターの礼装の機能。戦士だけでは無く、私の様に動く事を得意としないサーヴァントでも、僅かな間だけ敵の攻撃を回避できるようにサポートできるとの事でした。

 

「――式部さん、やっちゃってくださいよぉ!!」

 

 返事を返す間もなく、私の指は既に虚空に触れました。

 ずっと考えて、そして構えていたのは……攻撃の為。回避する事を考えず、回避が終わった後に何をするか。それだけを考えていました。

 黒い弾丸が三つ、私の指先に生まれます。陰陽の術は、何時もよりも力強く、そして濃く。瞬間強化の機能が既に働いています。緊急回避で相手の攻撃を捌いてからの、カウンター。単純明快な作戦でした。

 

 相手が如何に歴戦の戦士であろうと。

 後出しで、後手を封じる先手として放つならば。如何様になろうとも、私の一撃が先んじる。反撃も、間に合いません!

 

「……見事だ」

 

 三発の弾丸は、大きな隙を晒した側面、それも胴体を捉え。

 バーサーク・セイバーを、地面へと打ち倒しました。

 

 

 

「――やりましたね」

「そうだなぁ。うん。なんだろうな」

「はい」

「初めて。マスターっぽい仕事した気がするわ」

「ふふ、えぇ。大変見事なお手前でございました。マスター」

「ありがとさん」

 




取り敢えず、リメイク前よりもコンパクトに第一特異点を終わらせられそうで安心している筆者です。
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