FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「巌窟王様……」
「……その呼び方は、やめろ。エドモン、で良い」
雰囲気たっぷりに登場した復讐者殿であったが。
しかしその鼻先、素直に口から飛び出した式部さんのお言葉がクリーンヒット。しっかりと顔を顰めて、出鼻をくじかれたと言わんばかりに眉をひそめている。そりゃあまぁ、巌窟王様じゃマジでなんか悪い権力者っぽいもんな。分かるよ。
いやー全然姿が見えないけど、もしかしたら藤丸の近くならいるんじゃないかって半ば空振り前提で口にしたんだけれども。マジでいてちょっとビックリしてる。相当真面目に藤丸の事を守ってるなこの復讐者。
……ってあれ? なんかすごい睨まれてるんですけれども……なんでそんな顔を成されていらっしゃるので?
「半分当て感で呼び出されただからな、こうもなろうよ」
「あ、それはお分かりだったので……」
「貴様が分かりやすいだけだ」
……それ前も言われた気がすんなぁ。
「そんな分かりやすいか? 俺」
「はい」
そんな式部さん、断定するくらいにはフランクになってくれたのね。うん。そこを喜ぼうかな、素直に……いや喜んでいいのか? 絶対だめだよ多分だけど。もうちょっと服芸とか出来るようにならないとね本造院君。努力しよう。
……いや、それは良い。今話したい所は、そこじゃないんだ。
「まぁ、分かりやすいのは追々として……それで、出て来てくれたって事は、何かしら叡智を授けてくださるって事でいいのかい?」
「……ふん、俺がファリア神父の真似事など、ゾッとせんがな」
「悪いね。んで……」
意外な面倒見の良さに付け込む様に、俺は口を開く。
「率直に聞く――あれは、あの剣士が好きでやってるのか? それとも、そういう風に動くように指示をしているのか? アンタは、どう思う?」
正直な話、ここが分かれ目だ。
前者なら、ただの野良サーヴァントと同等と判断して動く。正直な話……自分の感情のままに、あんな残虐な行為を繰り返していたのなら……恐ろしくもなんともない。血に酔って暴れてるだけなら、言い方は悪いがお山の獣と変わらん。
なんだったら、マスターの俺ですら対処できるかもしれない。いやサーヴァント相手にフカした。調子乗り過ぎだろ、アレの目の前に立ったら一秒と持たないわ。
まぁ兎も角、前者ならいいんだ――問題は。
「もし後者だったら……間違いなく、その裏の奴らは、意図して動いている筈だ。俺はそれが……相手の思惑が進んだからの、変化じゃないか、って思う」
……素人考えだが。
魔術王を名乗る存在と俺を狙っている勢力が、協力して動いていたのがほぼ間違いない以上は。協力していたのは、『利』があったからだ。それを投げ捨てる様な凶行に出る等と、ただの気まぐれとは思えない。
今までとは違う行動を取ったなら、そこにもまた『理』がある、そう考えるのは普通の事だろう。そして……それが、相手の何かしらの不利によって起きた、と楽観的に考えられる程、この旅はイージーモードじゃないんだ。
「――奴がただの獣である、と言う可能性を最初から排除している物言いだな」
「俺は、そうは思っていないからな」
「根拠は」
「……アレだけ狂気じみたやり方をしているのに、全く正体が割れていない事……これは、奴がこの凶行をやってる、っていう事の証拠にもなるが」
そう。
これだけ派手に殺し、バラして……寧ろ目立つ殺し方だ。何処かしらから、何かの情報が漏れても不思議じゃないというのに。しかしながら、まるで尻尾すら……否、影すら踏ませないというべきか。
「――運が良いだけ……と言う発想もあるけど、普通はどう考える? 式部さん」
「……慣れている? 不意を打ち、各個撃破するような、動きに」
「うん。俺もそっちの方がしっくりくるなぁ。アレは、手慣れた奴の動きだ。そして各個撃破、ゲリラ戦って言うのは……」
「ケダモノの発想ではない、か」
「……ま、素人なりにだけど。山に住んでた頃の経験から、推測してみた」
俺が今まで、この大陸で出会って来たケルトでもアメリカでも、レジスタンス側でもない敵は、二人。槍使いと、あの武者
片方は、文字通り狂犬そのものだ。あんなクレバーなやり方が出来るかは、怪しいもんだ。そして……消去法的にも、戦った時の印象的にも、それが出来るのは、あの鎧武者の方だと思う。
そして。奴があの凶行を行っている下手人だと仮定して――
「もう一つ……俺の個人的な考えだが」
「……」
「俺から見て……あの剣士野郎は、あんな辻切りして、血を見るのを楽しむタイプにゃ見えない。もっと。執念深く、冷酷に、たった一つを追い求める、いっちばん……恐ろしい類の人種だ」
獣の発想ではない、と巌窟王は言ったが。
いるんだ。獣の中にも……血に酔わず、本能に奔らず、そして冷徹に獲物を狩るタイプのキレた奴らが。そう言うのは本当に厄介で。こっちも冷静に対処しないと、逆にこっちが獲物にされかねない。
奴は、アサシンと戦っている間も、ずっと奴は俺から意識を逸らしていなかった。文字通り一瞬の隙を見せれば俺の喉首に食らいつく……抜け目の無さは、山の中の油断できない獣そのものだ。
「……ああいう手合いは、冷静に、そして冷徹に目的を果たすまで、無駄な体力を使うどころか、下手に獲物を追う事すらせずに、機を待って、じっとしている。何の目的もなく、首を狩る、なんてしない、と思う」
実際、奴は俺らを追いかけて来ていたアメリカ兵を切り殺した時も……一瞬で、首を切り捨てて、文字通りに、最小限のやり方で済ませていた。
本当に無駄のない暴力……本来は、ああなんだ。阻む敵を最小限の労力で殺し。たった一つ、自らの狙う獲物だけを目指して突っ込んでくる。
あの剣士が、下手人とするならば。
「アレには、何か目的があったり、とかじゃないのか?」
「――恐らくは、な。話を聞く限り、楽しむ事は愚か、寧ろ心を殺すが如く、無心で切り殺しているのだろうよ」
……そこを解き明かすのには、彼の視座がいる。
世界でもっとも有名な復讐者。どん底から這い上がり、自らの暗い焔の命じるままに悲願を成し遂げた者。彼にしか見えない、視点がある。
「無心で?」
「く……クハハハハハハハッ!!」
エドモンは、あざ笑うように、けたたましい笑い声を響かせた。酷く大きな音の筈なのに、乾いた街の静寂に、何処か寂しく響く。
ぎろり、と此方に向けられた目には――正に、獲物を狙う虎の如く、煌々としたギラツキが宿る!
震えが来るぜ。
これが巌窟王、モンテクリスト伯か――
「――我々は、この身を薪として恩讐の焔を滾らせる暴走する機関車にも等しい! それが道草を食う暇がある等と、思うか!?」
「じゃあ、あの派手な殺人は?」
「見せしめにしても、些か以上に『荒い』! 自らの暗い炎に薪をくべられず、軋み交じりに苛立ちを抑え込んでいるのが聞こえてくるようだな! 半ば八つ当たりの如く、切り殺しているのだろうよ……与えられた命を、渋々果たすために!!」
その言葉は。彼の意見を端的に表していた。
そして……今までの誰よりも、その意見は。感情的であり。しかしながら。誰よりも冷徹に、敵の武者の思考を読み取って紡ぎ出した、答えでもある。
ちらり、と式部さんと目を合わせる。彼女も、こくりと頷いた。
彼女が『そう』と頷いてくれるなら、心強い。心の機微についちゃ、この人以上に参考になる人もいないだろう。
「――ダ・ヴィンチちゃんに報告かね。今度はこっちからソロプレイ志願したいってな」
「という事は、マスター」
「シャドウサーヴァント側の勢力、その大物サーヴァントが来た――漸く、向こうが尻尾を見せる位の大きな動きを見せた」
……今まで、さんざやられっぱなしだった。アサシンの時も、ライネスちゃん達と協力した時も。随分とこっちの過去を抉る真似をしてくれた。
許す訳がねぇ、一発。ぶち込んでやりたいとはずっと思ってたんだ。
「向こうが漸く姿を見せてくれたんだからなぁ。そろそろ、反撃に打って出ても、誰も怒らねぇだろうよ……!」
本来はソロプレイに移行するつもりはありませんでした(半ギレ)