FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第九十七章・裏:忘れ得ぬ郷愁

「……」

「……」

 

 めっちゃ見てる。

 ちょっと前を歩くリリィを――ロビン・フッドがめっちゃ見てる。

 睨んでるだとか、観察してるとか。そういう感じでもない。なんというか……目元が優しいというか。

 

うーん……俺は、まぁ見た事はないんだけれども。立派になった孫を眩しそうに眺めるおばあちゃんと言うか。はたまた、遠くにある理想がもう手に入らなくなって、それでも羨む事を辞められない老兵……的な。感じだろうか。

 いや、ここでここまではっきり言えるって事は、どっかでそう言うのを見た事があるんだろうか……分からん。

 

 うーむ、一度考えだすと気になる。うし。声かけてみっか。しかし、小さい頃呼んだ絵本の登場人物が、こうして目の前に現れるとはなぁ……ちょっと、アレだ。あんまり気安過ぎないように……難しいな。

 

「……あの、すいません」

「うぉっ!? な、なんだ……禿げた方のマスターか」

「おう遺言はそれでいいんだな優男。テメェそんな呼び方されたの久しぶりだよ……アタマに来ちまった、こっち来てくれや」

 

 ははっ、いきなり敬語を使おうとって気が失せちまうとはなぁ。流石はアウトローな義賊様だ……圧制者を煽る手練手管にも長けてるってかぁ!? 上等だ、今の俺の禿げ頭がどれだけサーヴァントに通じるかって言うのを、試したかったところだぜ……丁度な!!

 

「ちょちょっ、待て待て落ち着け、いきなりそんな目くじら立てなくたってよぉ」

「ハゲっていうのは別に気にしてねぇんだ。安心しろ。だが『ハゲ』という括りで雑に表されたのだけが気に入らんだけだ。アンタだっていきなり緑の人、とか呼ばれたら複雑だろう? ううん?」

「い、いやまぁそうだけどよ……待て! 悪かった! 謝る! だから、一旦その頭の物騒なもん引っ込めろ!! ツーかなんだそりゃ!? なんでそんなもん生えてる!?」

 

 ったく……謝るくらいならはじめっから言うんじゃねぇや!!

 

「……一応人間だよ。混じりモンだけどな」

「あー、そういう系……重ね重ね申し訳ないね」

「別に。もうそんな気にしても居ねぇから平気だけどさ」

 

 しかし。こういう反応新鮮だな。ジェロニモさんとか割と寛容だったし、今までの特典でも、頭から角生えてても全然驚いたり、反応する人の方が少なかったしな……あれ? 急に目の前のアーチャーが小物に見えてきたような。

 

「気になるかい?」

「いやぁ、そりゃあ……見るからに一般人、って感じの兄ちゃんから角生えてきたら誰だってビックリもするでしょ」

「今までの特異点ではあんまり驚かれなかったけど?」

「嘘じゃん……」

 

 ……いや、小物って言うか。目の前のサーヴァントが意外と常人よりというか。いやまぁあんなえげつない動きしておいて常人とか鼻で笑うレベルではあるけど、でも精神的に言えばまぁ、って感じだけど。

 いやそうじゃない。なんで俺は目の前の緑のサーヴァントの、人と也とを考察してるんだ。最初の疑問はそこじゃないだろうに。

 

「――おーい、二人とも、何やってんだ?」

「「あっすみません……」」

 

 そして更に言えばなんでこんな棒立ちになったまま話をしてるんだろうか。置いて行かれるヤバイヤバイ……いや、そもそもこの人が案内してる以上、俺達が足止めた時点で全員が足止めるか。

 

 取り敢えず、二人して藤丸に向けて頭を下げてから歩き出しながら……改めて、ロビンに向けて口を開く。

 

「……んで、なんでリリィ見てたの」

「あん?」

「見てたでしょ。ずっと」

「あー……最初に声かけてきたのって、それかもしかして」

「それだよ。アレだけ熱心に見てて、なんも理由なしはねぇだろ流石に」

 

 ……若干、ロビンはばつが悪そうに頬を掻いた。どうやらリリィを見ていた自覚はあったらしい。そして、その上で……ロビンは、もう一度、リリィの方に視線を向ける。

 流石にさっきの今だ、自分を見ている事に直ぐに気が付いて。リリィは、にこやかに笑うと、ぺこりとロビンに向けて頭を下げた。何時もの事ながら、俺から見てもなんと華やかな少女騎士だろう、と思う。なんというか――

 

「……ったく、村娘かよ。あんなに屈託なく笑いやがってさぁ」

 

 そんな少女の笑顔に……ロビンは、若干、戸惑いながら、ぽりぽりと頭を搔いていた。嫌がっている、というよりも。敵わない、とでも言いたげな表情だった。

 

「村娘?」

「そーだよ。穢れを知らない、っていうか……もし知ってても、それでも、信じたいって口にする的な……何とも、眩しいというか、ね」

「……」

 

 ちらり、とリリィをもう一度見てみる。今度はこっちにも手を振ってくれた。アイドルかな? 小さく手を振り返した。にこにこ笑ってる。天使かな? うーんコレは完璧で極限な少女騎士ですねぇ……

 うん。気持ちが分かってくる。あんな顔をどうしてしたのか。なんか、眩しいよねやっぱり。リリィちゃん。思い出されるものがあるよ、本当……奥の奥に息衝いてる……柔らかい所を、ごりって……うぅ。

 

「……アンタも似たような顔してんじゃねぇか」

「うるしえ。眩しいんだよ……」

「……ホントにな。正しいと思った事を信じて疑わない、少女騎士様とかよ……俺にとっちゃ目に毒だぜホント」

 

 あぁ、凄いデカいため息吐いちゃう。

 

「……っていうか、なんでアンタまでそんなしみじみしてんだよ。そんなしみじみするような年でもないでしょ。お兄さんと違って」

「あー、その、ね」

 

 まぁ、この特異点で出会った彼らは、俺の事情なんか知らんか……んー……ジェロニモさんにも、話してみろって言われてたっけなぁ……そうだなぁ……うん。良し。

 式部さんに話す時の予行演習くらいはしておかないとな。いきなり話しだしてどもって上手に話せないとかめっちゃカッコ悪いしねぇ。うん。まぁ、ちょっとくらいなら。

 

「……妹がね。居たのよ。あんな感じで、溌溂とした感じの」

「ほーん」

「ホント、可愛くてなぁ。我が妹ながら、どんな男だって一目見ればイチコロ、な可愛さしてたよ。勿論、オレもな?」

「贔屓目って奴だな。分かる分かる。やっぱ身内ってのは可愛く見えるもんだよ」

「否定したいけど、しかねるのがなぁ……他の子と比較する機会も無かったし」

 

 ちらり、と。此方を見る目と視線が合う。

 まぁ、自分でも、普通に考えると妙なこと言った自覚はある。でもそれが事実と申しますか……ねぇ? うん。

 だがそれにしたって、何言ってんだ、とかそういう目じゃなく。理解した上で、若干引っ掛かった、と言ったような。そんな感じだ。

 

「……その妹さん以外の子は、その辺りにはいらっしゃらなかった、と」

「何なら男子も俺だけじゃなかったかな。明確に直系っていえるのは」

「ほーん。まぁ随分と、典型的に終わってる……村? でいいのか?」

「集落ですらねぇなぁ。屋敷だ屋敷」

 

 あーホント。つい最近キッチリ思い出されられたからなぁ……もう詳細まで言えるよマジで。山の中の周りに集落も無いぽつんとした一軒屋敷。無駄にデカいから、ちょっとした村くらいの人数はいた気はしないでもないけど。

 

「……まぁ、じゃあ余計にって奴か?」

「そうだなぁ。まぁデカくなってから他の子と比べても、もっときれいに育ってたろうなぁ、って思ったけれどもね」

「はっ……綺麗な思い出にはもう何者も勝てねぇだろうに」

「全くなぁ」

 

 天を仰いで。その思い出に、一つ溜息……それに合わせるように、ぽんぽんと背中を叩かれた。ちらりと横を見ると、ロビンは、此方を見ながらへらりとした顔で緩く笑っている。同情した態度も、何もなく。

 ……正直、それが一番、助かる。これが『どういう話』なのかをちゃんと理解した上で変に気遣わない。マジでイイ男だなコイツ。

 

「……好きだったんだな」

「うん。最期まで……ホント。目に焼き付く位な」

 

 ……その最期が、自分にとっても、彼女にとっても、幸福な思い出かは、また別の事だけれども、な。

 本当に……()()()()()()()()()くらい可愛い、妹だったんだよ。

 




不穏な感じに見えます? 大丈夫、ちゃんと不穏な感じです。
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