FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第九十八章・裏:米国乱れ舞い剣閃 中編

 ……状況は、此方が優勢だと思う。いや、確実に優勢な筈だ。

 

 僅かな隙を作る可能性があったケルトの勇士達は、最初の衝突で結構な数が四方八方に飛ばされた挙句に、その殆どがゴルゴーンさんやら、俺やらに殴り飛ばされて殆どゲームオーバー。数もそれなりに目減りしている。

 おまけに残った奴らもフェルグスからは引き離されて、今はゴルゴーンさんと、序に俺にも叩かれているのだから、連携を取る事も難しい。

 

 ……と言っている間にも、またもや突っ込んで来た男の顔面に、ドストレートの拳をプレゼントして吹っ飛ばしてやった。

 

「あらよっと! ふぅ……式部さん、酒吞はどう?」

「……特に問題はないかと、思います」

「そう。ならいいんだけど」

 

 翻ってこっちは、式部さんの援護が、酒吞と戦っているフェルグスに飛んで。その邪魔をさせない様に、こうして突撃してくるケルト野郎を俺が始末する盤石な体勢。

怪物退治はお手の物の勇士だろうが。とはいえ二対一、術師の的確な援護まで入った状態は初めてだろう。

 

「ぬぐぅっ……!?」

「うーん。やっぱ、あんまそそらへんねぇ……一方的に嬲るやなんて」

 

 そう言いつつ、酒吞の爪がフェルグスの筋肉に傷を残すのはコレで幾度目か。

まるで悪役染みてケルトのヒーローを削るのは、些か以上に微妙な気分ではある。式部さんの顔色も、なんだか若干暗い。

 

 とはいえ、ここで容赦しても、恐らく一瞬の油断に付け込んで、酒吞を切り裂き、そのままの勢いで式部さんの薄い体を塗れ紙を破るみたく容易く千切る事も想像できる。

 ……時折、俺と目が合う辺り、俺のみを狙って切り捨てるプランもあると見える。それだけの一手を打つだけの体力も残しているのだろうか。

 

「……意外と完全なワンサイドでもないってか」

 

 流石にここで一発逆転を許して敗訴はシャレにもならないので、周辺、変な茶々を入れる奴が居ないか、出来るだけ気を付けて戦場を見てはいる。

 とはいえ、今のところ、おかしな事をしている奴も特に見えない。

 

「ま……流石に勝ったか?」

 

 ここまで順調そのもの。フェルグスは確実に袋小路に追い込んでいる。万が一の一発逆転だけに気を付ければ余裕だろう。そう、余程の不安要素が無ければ――

 

「……貴様、腑抜けるのをやめろ。油断している暇があるか」

「腑抜けちゃいない。街の至る所に目は配ってる……だけど、伏兵らしい奴も見えないし目の前の事に集中するくらいは良いだろ」

「そう言う事を言っているのではない。貴様、忘れたのか。あの武者のサーヴァントが何時襲ってくるのかも分からんのだぞ」

 

 ……それが、存在していない訳でもないのは重々理解しているつもりだ。

 

 ラーマ、エリザベートとはぐれサーヴァントを回収して行っていて、もう大分経つ。そして。あのサーヴァントと遭遇したのも、かなり前だ。

 恨み骨髄と言わんばかりに……次こそは、必ず、と。

そう口にしたあの武者の襲撃の可能性を、まるで考えていなかった訳ではない。

 

「……このタイミングで、襲ってくる可能性も全然ある、か」

「少なくとも、貴様がその可能性を頭から外していたのは事実だろう」

「そうだけど……」

 

 ちらりと、戦場の風景を眺める。ゴルゴーンさんの言う通りの事が起きたなら、確かに今は一番まずい。一応、今は此方が圧倒しているのは間違いないとはいえ、絶対的な差ではないのだ。

 

 もしあの武者のサーヴァントがここで乱入してこようものなら……間違いなく、この状況は混沌に陥る。そこを、あのフェルグスが突いてきたら――

 

「……そうなったら、真面目に」

 

 ――からん

 

「……!?」

 

 ふと。

 固い、木の音がした気がした。それは、まるで、下駄のような甲高くも柔らかい、そんな音で――

 

 思い出す。そう言えば、あの武者のサーヴァントは、確か高下駄を履いていたのではないだろうか。それこそ、平安の武者のようなあの格好に良く似合う、黒塗りの赤い鼻緒の高下駄を……

 

 はっとして、振り返る。下駄の音がしたのは、なんだかそっちの方からな気がして、ある意味――反射的な動きで、そして。

 視界に……僅かな、鋼のきらめきを、見た。

 

「――ゴルゴーンさん!!」

「ちぃいいいっ!!」

 

 多分、今まで一番素早い反応だった。腑抜けていたという言葉を返上してやりたいと僅かに思ったが――今は、そんな事を言っている場合じゃない。

 瞬間、振り抜かれていた二刀は、割って入ったゴルゴーンさんの五爪に受け止められていた。その二刀の先には……狐面の、二刀使いの武者の姿。

 

「邪魔だ……っ!」

「人間風情が、誰に向かって口を聞いている……!」

 

 最悪の予感は当たってしまったらしい――それなら。

 隣を見る。突如の不意打ちに、僅かにたじろいでよろめいていた式部さんの肩を、軽く叩いて正気に戻した。

 

「すまん式部さん任務変更! 雑兵は俺が相手する! 二人の援護頼む!」

「す、すみません……了解しました!」

 

 ゴルゴーンさんが背後を受けてくれている事で、位置的には、ゴルゴーンさん、俺と式部さん、そして……少し離れて、ゴルゴーンさんの蹂躙を受けていた兵士達となった。圧倒的な暴力を受けながらも、まだまだ数は残っているようだった。

 

「ったく、仕方ねぇ……っ!」

 

 雄叫びが聞こえる。裂帛の気合いと共に、折れた槍を投げ捨てて。その代わりに誰かの落とした短剣を拾って、ケルト兵士が吶喊してくる。体は無事とは言えない有様で尚、雄叫び上げて突撃を止めないその顔面に――

 

 思い切り伸ばした足先を叩き込んでやる。

 額からばちり、と爆ぜる雷電の音。立ち上る高揚感。多分よくない高揚感ではあるのだろうけど……これにノって振り切るくらいじゃないと、制御しきれないのだ。仕方ない。

 

「ゴルゴーンさん、マジで頼むぜ……おらっしゃぁあ!」

 

 全身から立ち上る熱に任せて、兎も角前進。蹴り飛ばされて後ろに倒れていく兵士を更にぶっ飛ばして、更に奥へと。出来る限り、俺に視線を向けろ、と言わんばかりに前へと踏み出していく。

 

「マスターっ!?」

「崩れたら立て直せねぇ! 今はここが命の張り時だ! 大丈夫、死にやしねぇよ!」

 

 ……いやまぁぶっちゃけた話をすると、だ。

 特異点を戦って来ると、ドラゴンやら、デカいヒトデやら、石の塊のゴーレムやら。ここに来てからは、機械を纏ったロボまでも。人間以外相手に体張る事しかなかった。まぁ正直、キツイ。何せ多少喧嘩慣れしてるって言ったって、大抵相手は人間だったもので。

 そこから考えると、相手が人型である今の状況は……

 

「――ふっ!!」

 

 こうして殴り飛ばしやすいし、突っ込みやすいってもんだ。人間のどこら辺が急所なのかも良く分かるし……後は、体を突き動かす衝動に合わせてやれば――

 

「おらぁ!!」

 

 アッパーカットで空に向けてぶっ飛ばす事も、訳ない。

 相手がちょっと人間やめ気味なおっさんなだけで、あくまで人間相手の喧嘩の延長線上にあるのは間違いない。弱ったとはいえ、死ぬ気でやれば酒吞相手でも戦えたんだ。

 ここでしくじろうものなら、酒吞にも失礼ってもんだろう!

 

「ふぅ……っし」

 

 ぐるり、俺を取り囲んで得物を構える兵士共を首を使って見回しながら……腰を落として適当に拳を構えておく。

 これでこいつ等の目は此方に釘付けに出来た。酒吞の邪魔もさせてない。取り敢えず、一発形勢逆転は阻止できた。後は、俺がこの中で生き残ってる間に、皆がサーヴァント達を倒してくれれば……という事を願うしかない。

 

 ちらり、とゴルゴーンさんの方に目を向ける。

 

「……わぁお」

 

 目に入って来たのは、叩きつけられる極太の尻尾。飛びあがった武者のサーヴァントに向けて殺到する無数の蛇――細かく爪で引き裂く、なんてちゃちな真似はしない。全身を文字通り凶器として、薙ぎ払い、叩き潰し、押しつぶす。巨大な体を存分に生かしたパワープレイで、武者のサーヴァントを寄せ付けず、逃しもしない。

 

 建物諸共、敵を粉砕する勢い。最早式部さんの援護が必要ないんじゃないだろうかってレベルの暴威。アレを心配する方が頭悪いだろう。

 

「酒吞の方も……フェルグスは逃がしてない。やっぱヤバイのは……」

 

 俺だろうな、と。再び突っ込んで来た兵士さんに足の裏を御馳走しながら思う。ここで俺がこの兵士共にダメージを受けて隙を晒そうものなら、どちらの敵サーヴァントからも強襲を受ける可能性は、十分にある。

 

 特に、あの武者のサーヴァントに関して言えば……俺も、出来るだけ気を遣わないといけないだろう。ゴルゴーンさんが、式部さんの援護ありで引き受けてくれているにしたって何時、無茶な突撃を繰り出すかは分からないのだから――

 

「――っ!?」

 

 目があった。

 ちらりと、ゴルゴーンさんの様子を伺おうとした、その一瞬。

 狐面のその奥、琥珀色の瞳と、視線がかち合った。背筋が凍る。マズい、油断したか。ツッコんで来る。回避行動――と、そこまで考えた所で。

 

「……あれ?」

 

 気が付く。あの時、森の中で遭遇した時に、遠くからでも分かる程に睨まれている、そう思っていたのが……違う。

 寧ろ、ゴルゴーンさんから距離を取り。刀をだらんと下げて、口を引き結んでじっと此方を見つめる姿は何処か――本調子であるように見えない。

 

 闘争の場に酷く不釣り合いな、戸惑ったようなその姿に。軽く、額を撫でながら、首をひねった。

 

「何なんだアイツ……?」

 




フェルグスの影が薄い? 貴殿の気のせいであろう……

タイトルを修正しました、申し訳ありません(土下座)
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