FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百一章・裏:二凶騒乱 前編

「――■■■■■■■■■ッ!!!」

「来るよ! 後退ッ!」

 

 絶叫。と共に、近くの仲間達に合わせ、一歩後退。手の中には、式部さんを抱えて。

 尖った切っ先が、空気を引き裂いて――そのまま地面に、こん棒の様に叩きつけられ。硬く乾いたアメリカの大地を、蜘蛛の巣状に引き裂いていく。

 到底技術で成す技ではない。それを示すかのような有様を、目の前の男は見せている。

 

「っぶねぇ……マジで血濡れの凶行だな! 血に濡れてるの暴れてる本人なんだけど!」

「アレで倒れない辺り、本当にサーヴァントだよねぇ……!」

 

 ビリーが俺のボヤキに応えてくれるくらいに、李書文は全身から噴き出す血液で、朱色の服が紅く染まり切っていて。

既に死にかけではないかと言わんばかりの有様になっている。アレがこっちの返り血ならまだましだ。体に絡みつき、服に染みる生臭いあの血漿は、全部、自らの体から噴き出したモノなのだ。

 

全身を躍動させて……どころか、全身を、巨大な手に握られて振り回されているかのようにぶん回して、狂ったように飛び回り、跳ねて、叩きつけて、武器を振るう。

体が千切れそうな程に暴れると表現する事はあるが、しかし本当に体が裂ける程に暴れ狂うとは、いったいどれ程の力で武器を振るっているのだろうか。

 

「はぁっ!!」

「――カァアアアッ!!」

 

 ご ぎ ん!

 

「っ……ほんま、出鱈目な振りをしとるわぁ……!」

 

 ……少なくとも、背後からの奇襲、そこから酒吞が先んじて振り下ろした大剣が、後から礫の様に吹っ飛んできた槍の先に弾き飛ばされるくらいには、異常な膂力によって加速が乗っている。

 しかも大剣の切っ先だけではなく、酒吞自身すら槍の振りで大きく吹っ飛ばされる始末である。体を破壊するというデメリットと引き換えに振るう暴力の凄まじいこと。

 

「――合わせようか」

「やめといた方がええわ。うち、そう言うの苦手やし」

「まぁ通りではある、君の本質は『荒ぶるもの』だからな……仕方ない、機を信じて堪えるしかないか」

 

 ジェロニモさんの方は、じっくりと隙を伺っているが、絶え間ない暴力の嵐にそんなものが現われるかと言えば……まぁお察しだ。

 まるで暴力装置。こんな風にサーヴァントを『使う』奴の気が知れない。間違いなく品もクソもない冷徹な化け物がやっているに違いない。

 

「……」

「ハァッ! ハッ! ……あー駄目だ! 全部弾かれる! 銃弾を弾くとかなんなんだよホントあのサーヴァント!」

「どんな反射神経してるんですかねぇ……何、その苦虫噛み潰したみたいな顔は」

「いや、クソみたいな心当たりを思い出しただけで……」

 

 ロクでもねぇ心当たりを。スゲェな、敵の術師がここまで分かりやすく『悪』貫いているのも珍しいよ。っていうか、あんなひどい有様なのに、飛んで来た弾丸も矢も、的確に撃ち落とすとか人間業じゃねぇなぁ……いや、元が神槍って謡われる程の武人だからアレくらいは暴走していてもやれて当然、くらいのレベルのなのか。

 

 もしくは暴走していない、とか……いや、今はそこは気にしなくても良いか。気にするべきはあのランサーをどうやって止めるべきか、だな……

 

この状況下で。

思考を落ち着けて、改めて……拳を構えて、じっと周りを見据える。刺客は、かのランサーだけではない。当然のように俺を付け狙う刺客さんがもう一人来ている。

 

「一応聞くけど式部さん。アレを拘束して何秒くらい持つ?」

「……拘束できないと思います」

「でしょうなぁ。弾丸ばらまいて、それが当たるのを狙うか……望み薄そうだけど」

 

 ビリーの銃弾がまぁ何発も散らされてるし……それに、もうここから動けない以上、出来るだけ援護してもらいたい所もあるし。

 

 がきん、と甲高い衝突音。それに合わせるように、式部さんの手から放たれる黒い光芒が、三発。音のした方向には……ゴルゴーンさんが。

 彼女を狙ったのでは、当然ない。狙いはその先……彼女の押し寄せる蛇髪すらも、水面を跳ねるが如き軽業で躱す――『武者』。襲い来るゴルゴーンさんの物量に加えて、三発で囲むようにぶっ放したのだから一発くらいは……そう思ったが。

 

「――温いわっ!」

 

 しかし、結界の如く四方八方に飛ぶ刀の軌道が……三つの弾丸を散り散りに切り飛ばして、近寄らせもしない。うん。完全に調子を取り戻している。ゴルゴーンさんを相手にしてなお、俺の首を切り取ってやる、っていう熱意に溢れてる。

 ああなったら俺はもうここに釘付け。んでもって、流石に周りに一切の護衛無しっていうのもアレなので、式部さんも俺の傍から離れられない……最悪だ。

 咄嗟の事だった。ゴルゴーンさんとジェロニモさんを前衛に、ビリーとロビンで援護してあのサーヴァントを迎撃しようと思ったところで――

 

『――最早任は果たせず! 後は貴様の首一つ!』

 

 瞬間、飛び掛かって来たのはあの武者のサーヴァント。ランサーを抑えようとしていたゴルゴーンさんが、代わって迎撃する事となって……完全に、こっちが万全の態勢を築こうとしていた、その一瞬を突かれた。

 お陰で、あのランサーを討ち取るのも、今は厳しい状況だ。『武者』を追って戻って来た酒吞に、咄嗟に迎撃を頼みはしたが……このように、二人に完全に翻弄されていてカルデアのアキレス腱である俺に、切っ先が付きつけられている状況である。

これを引き起こしている原因として、余りにも情けない話だ、実に苦しい。

 

「ったく……王二人はまだ到着せんのかい!?」

「俺達がボコったんでしょうが……そう簡単に復活も出来ませんよ」

「正に正論!」

 

 ……現状、アイツらと戦ってるのは、俺達だけだ。東部アメリカ側は動いていない。

 周囲のアメリカ兵は、こっちに手出しこそしていないが、それはカルナとエレナの二人がアメリカ兵を取りまとめてくれているからで。

 結果、邪魔はしないが味方もしない、と言う状況になっている。

 

あの二人も、状況を考えて一旦戦いを止めて味方してくれようとはした。したのだが問題は兵士の方だ。急に乱入してきた敵に襲われ被害も出てる上、先ほどまで衝突していた俺らとすぐさま協力しろ、と言うのは難しい。将に対応は出来ても、一兵士にそこまで完璧な対応しろと言われても無理、っぽい。

 となれば大統王の口から命令してくれるのが手っ取り早いのだが、俺達が一旦ボコった後に急いで出て来いとは流石に酷に過ぎる……向こうの連携が取れていない事が、最大の救いだろうか。

 

 というか、どっちも好き勝手暴れてるだけだから、連携もクソもないというか。あの二人とも実力者、しかも片方の化け物染みた出力は折り紙付きだから、キッチリ連携とられたらきつい筈なのだが

 

「ええい……っ! このような狂犬と肩を並べるような事に成ろうとは……!」

 

 うん。ゴルゴーンさんの爪を掻い潜りながら、寧ろ舌打ちをしてる。

上手くやったら何とか同士討ちしてくれたりしないだろうか、と思ってしまう位に『武者』は向こうのランサーにイラついてる。

いや、狂犬とは言うが、あんたも大分狂犬染みてるし、こっちから見ても大して変わらんように見えるけど。同族嫌悪か……?

 

だからまぁ、ギリギリの所なのだ。一手……なんか一手があれば、状況も変わるんだけれども。

 

「……ん?」

 

 ふと。

 機械化兵ばかりの周囲に、一人生身の人間を見つけた。走って向かっている先は……どうやらカルナと、エレナの二人、らしい。

 表情は……凄い焦ってる。急いでこの報告を届けねば、っていう感じ……おや?

 

 ……にやり、と口の端が吊り上がるのを自覚する。どうやら、その状況を変え得るタイミングが、漸く巡って来たらしい。となれば……とん、とんと目の前の『武者』に気を配りつつも、ランサーへの援護も行ってくれているロビンの肩を叩く。

 

「ん? なんすか、今ちょっと余裕が……」

「合図に合わせて、ランサーの方に攻撃集中頼む。来たぜ、反撃のタイミング」

「はぁ? ……あぁ! 成程ねぇ、いいタイミングで、来てくれたじゃないの」

 

 此方に振り向いたロビンの視線が、俺が指さす先に向かい……俺と同じことを悟ったのか、揃ってニヤリと笑ってしまう。

 兵士の何らかの報告を受けたエレナの表情が……僅かに、緩んでから。凛々しい笑顔に彩られたのが、見えた。

 

 その視線が此方へと向かい――俺の目と会った。一瞬、目を見開く彼女に、軽く手を振り返してから……そのまま、くるりと手を回し、親指で軽く『武者』の方を指さす。

 エレナは、深く頷いて俺に返し……その手から、携えていた本が浮かび、開いたページの間から……光が漏れ出して来るのが見える。確認完了!

 

「――撃て!」

 

 直後に叫ぶ。ロビンが一転、ランサーに向けて狙いを定める。その瞬間の『武者』の動きは、実に露骨。カバーしていた一人の意識が完全に逸れたのだ。ここぞとばかりに首を切ろうと、ぐるん、と体を回し、此方に飛び掛かろうと――

 

 その顔面の前を、一条のレーザーが飛び去って行く。

 

「なにっ!?」

「遅い」

 

 その一撃に怯んだ、その一瞬だった。エレナの傍らにいた黄金の鎧をまとった白い戦士が、武者の前へと降り立って――その槍を一閃、振り回す。

その切っ先が、鎧諸共に胴を薙ぎ払う……と思われたが、『武者』の方も何とか両手の刀で斬撃を受け、斬撃を受け流すように一歩後退して難を逃れた……が。

 

顔が歪む。

後ろのランサーをぎろり、力を込めて睨みつけてから、その戦士、カルナにその鋭い視線を向け直した。

 

「ええい、あの狂犬め……せめて傷の一つでも入れておけなかったか……!」

「――あら、同じ陣営なのに、随分と仲が悪そうね」

「此方は命令があれば、禍根は関係なく協力する故に、違いが目立つだけだろう」

「もうちょっと言い方を考えましょうねカルナ……って事で! 王様から許可も下りたし力貸すわよ! うん! やっぱり仲良きことはとってもいいわね!」

 




カルナさんエミュ精度を高めるためにCCCをやるべきか否か。
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