FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

25 / 373
第十二章・裏:断頭台に立つ男

「ちぃっ! 恨んで良いかいホント! 余計な事を言ってくれて!」

「腐り果てて消え去るよりは大分マシだと思いたいねぇ!」

「だからって覚醒させる意味あるかい!?」

「……ないっ!」

 

 近寄らせたら終わり。とばかりに、此方から飛び交う無数の弾丸。アマデウス様の指揮棒に合わせて踊る紫の音の塊、そして、私の呪力の弾丸。二つで、何とか相手を近寄らせないようにしてはいるのですが。

 

「――ふん」

 

 正直、何方も戦いにおいては素人同然。

 全てが当たるという訳でもなく……そして、バーサーク・アサシン、シャルル=アンリ・サンソンもそれも理解しているのでしょう。最初から無理に距離を詰めるような事をせずに、ゆっくりと歩みを進めつつ、自分に直撃する物だけを見極めて……確実に切り払う。

 

 しかも、それを顔色一つ変えず、涼しげな顔で行っている、というのが恐ろしいのです。

 

「チクショウ、あんな歴戦の剣士みたいな真似出来るタイプじゃないだろうに!」

「あぁ、だから君達の弾幕を切り払って進むのは無理だ。こうして、自分への直撃を避けつつ、ジリジリと進むのが精いっぱいだよ」

「そもそも処刑人は弾幕を切り払わないんだよ!」

「今の僕の感覚は、酷く澄み渡っている。その弾丸も、切り落とすべき首の練習台と考えれば外さない」

「は、そんな微笑みで恐ろしい事を言うな!」

 

 ――凄腕の剣士であれば、無駄に相手に付き合わず、速攻で近寄って切り捨てる。

 そう言う話を、聞いた事があります。であれば、今のサンソンの動きは、確かに剣士として褒められた動きでは無いのでしょうが……彼は、処刑人。

 本来、動くことのない相手の首を、一刀にて切り捨てるのが役割。ならば、寧ろ自分が激しく動く必要は無く、自分の邪魔をするものに、ゆっくりと狙いを定め切り捨てる。今のやり方に帰結するのは、彼にとって当然なのかもしれません。

 

「僕はクライアントの命令を果たすだけだ。気に入らないのであれば、僕を真っ向から討ち果たせばいい」

「出来ればもうやってる!」

 

 そのブレぬ切っ先と、鋭い刃にアマデウス様は明らかに辟易となさっています。私も冷たい物が背筋を通り抜けますが。しかし。

 

「そんな状況で……良く笑ってられるな! 君は!」

 

 ただ一人。マスターだけは……寧ろ、笑っていらしたのです。

 悠々と歩いて来る、サンソンのその姿に対して……にやにやと、この戦場には似つかわしくない、そんな何処か楽し気な、悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべて。

 

「だってなぁ。自分の憧れの英雄が、イメージ通りの姿でいるんだからそりゃあニコニコにもなるだろうよ」

「ホント趣味悪いな!!」

「悪かったな! でもしょうがないでしょうに! アンタだって、マリーさんが酷い顔してたら発破かけるでしょ!? 実際かけたし!!」

「――ノーコメントだ!」

 

 アマデウス様がその返事と共に放つ弾丸に合わせ、私も一射、二射程。正直弾幕を絶やさぬようにしているだけなのです。兎も角、近寄らせてはいけない、というだけの意識で撃っているに過ぎません。

 どうしてマスターは、笑っているのでしょうか。

 

「しかし、アレをどうやって叩き潰す! キツイぞ!」

「なあに、恐るべき怪物を潰すやり方なんて、昔から決まってるだろうが! 相手に毒の餌を喰わせるのさ!」

「――はぁ!? 毒の餌!?」

「ここに居るだろう? どれだけ罠と分かっても、喰いつかざるを得ない餌がよ!」

 

 ――しかし、それ以上に目を見開いてしまうのも無理はなく。

 マスターが、餌と呼んで指差したのは……自分でした。間違いなく、それは、つまりどういう事かと言えば。

 

「君、正気かい?」

「そりゃあ目覚めさせたのは俺だからなぁ! 責任を取らないといけないんだよ!」

「しかし、マスターが死んでは……!」

「どうせここで負けたら俺も死ぬんだ! まだまだ先は長いんだろう? だったらここで自分の命捨てる位の経験をしておくのも悪くない」

 

 ――確かに、マスターを前に出して、そこに食らいついたサンソンを仕留めるのは真っ当な一手だと思われます。

 しかし、余りにも現状、露骨過ぎる一手なのは間違いありません。今までずっと私達の後ろに居たマスターを、急に前に出す……若しくは、マスターから離れるなど、不自然なのは、戦下手の私でも分かります。

 

「かかると思うか?」

「――確信がある。コレを見逃したら、処刑人じゃねぇよって一手がな」

「何?」

「俺だってここで終わるつもりもない。死にたくないし、無事にお家に帰るかは……まぁ兎も角として、だ! さぁ、覚悟決めろよ偉人様方! こっからが勝負時だぜ!」

 

 

 

 ――悠々とマスターが前に出ました。ゆっくりと。

 そして、アマデウス様と、私はマスターの傍をゆっくりと離れます。それを見て、彼は少し眉を顰めました。余りにも露骨に過ぎる誘いです。誰だってこんな誘いに誰が乗るかと、言われるかもしれません。きっと。

 

「――諦めた訳でもないだろうに。陳腐な誘いを」

「おっと、直球な上に余計な一言も無しと来た。良い切れ味だ」

「ふ、流石に僕だって節穴じゃない。そんなに『何かやってやる』と言ってる目を見て諦めた、なんて……たとえ面と向かって言われても信じないよ」

 

 ……やはり、無謀なのではないでしょうか。

 

「はは、そう言わずになぁ。ムッシュ・ド・パリ。一つ、俺の話を聞いてくれや」

「何の話を、だい?」

「アンタは誇り高い処刑人。俺は……そうだな。アンタに相対するなら、薄汚い罪人が良い所か。なら、俺はそういう役割らしく、一つ汚い手でも打とうかな、と」

 

 私達は、双方に分かれ、サンソンを挟み込む様に、動いていきます。今だ彼に動く様子はございません。そもそも、私達から目線を離していません。

 ここまで全く相手が動揺していないと、そう思ってしまうのも……

 

「汚い手、とは。随分と堂々と言ったものだ」

「そりゃあそうさ。アンタをハメて、潰そうってんだから」

「それを言って、僕が引っ掛かると思っているなら……どれだけの間抜けだと思われているのだろうね」

「間抜けなんてとんでもない……アンタが優秀な処刑人だからこそ。俺はこの手を打とうと思えたんだから、寧ろ誇って欲しいな」

 

 ――そう思った時でした。

 マスターが一歩、無防備に足を踏み出し……そして、二歩目にてゆっくりと、地面に膝を突いたのです。

 

 私達は、当然驚きました。幾ら囮とはいえ、膝を突くなんて。咄嗟に逃げる事も難しい姿勢に……しかし、そう思っていたのも束の間で。更に。

 マスターはそのまま、サンソンの前に首をゆっくりと垂れたのです。

 私は、声を上げない様にするので精一杯で。しかし驚いているのは此方だけでは無く。

 

「な……なにを!?」

 

 目の前の彼も、同様でした。

 のけぞり、一歩下がって。狂化されているとは思えぬ反応でした。

 

「見ての通りさ。()()()()()()()()のさ。処刑人に」

「……そんな、それは……」

 

 ――その姿勢に気が付きました。

 

 サンソンが動揺するのもう不思議ではありません。

 両膝を突いて、首を差し出すそれは、間違いなく……処刑人にその首を打ち落とされる直前の罪人の姿。俯いて、項垂れて。希望も何もない、と言いたげに、全てを諦めたその様子。

 彼が恐らく、一番見て来た光景に間違いありません。

 

「――っ!」

「処刑人は罪人の首を刎ねるもんだ。そうだろうムッシュ・ド・パリ。目の前の首を見逃して、何が処刑人か。ましてや俺はマスターだぜ? 討ち取れば……サーヴァントは弱体化する。何を躊躇う、何時もの仕事だ」

 

 仕事をしろ。

 そうマスターは堂々と宣言しました。

 英霊というのは、自らの生き方を人理に焼き付けて、そこより生まれ出でた影法師。故にこそ、自分の生前の生き方に縛られ、そして自らの死因に縛られもします。

 ならば、今のこの状況は……例え、狂わされて居ようと。いえ、全てを殺すように仕向けられているからこそ。避けようがありません。

 

 自らの生き方に沿い、そして、今こそ首を落とすべき、と言われているようなこの、この現状であれば。

 

「……なんとまぁ、甘美な一言を告げる」

「処刑人が殺すように告げられてる。そして目の前に罪人の首が……ある。ならやる事は一つだろう」

「そうか。そうか。成程、悪辣、というのは間違いないかな。ここまでお膳立てされた状況を断っては、処刑人としては死んだも同じ……ならば、仕方ないか」

 

 ゆっくりと、彼が近寄ります。

 マスターの傍ら、差し出された首に拳を振り下ろしやすい場所に。そして……私達が最も挟み討ちをしやすい場所に。

 

「……一つ、聞く」

「なんだい」

「君は、首が落されるべきと。する程の罪の自覚があるのかい」

「人間罪なんて誰しも犯してるもんだろ……違うか?」

「愚問、という奴かな。ありがとう……ならば僕もまた、断頭台に立つとしよう」

 

 ただ一言。

 そう言葉を交わして。私も、アマデウス様も、既に撃つ準備を構えています。たとえ相手がどんな動きをしようと、一歩先んじる事は難しくありません。

 確かに、マスターの言うとおり、これはサンソンにとって……避けようのない一手。

 

「――見事だ。カルデアのマスター。例えそれが悪辣な一手だったにせよ……」

「……」

「悪に徹した処刑人には、お似合いの結末だ」

 

 目の前の首を落とすべく。その剣を振り上げたサンソン。

 その一瞬……がら空きになった胴体に、アマデウス様と、私の一撃が突き刺さります。相手は強固な霊基を誇るという訳でもなく……この一撃に耐えられる訳もございません。二つの弾丸は、間違いなく、彼の霊核を砕き――

 

「――ここに、僕の切るべき首は、無かった……それだけの、事だ。あぁ」

 

「それだけの事が、こんなにも、嬉しい――」

 

 彼を、黄金の光へと還したのでした。

 

 

 

「ったく、君って自殺志願者なのかい? ヘタレに加えて」

「ヘタレじゃないって言ってんでしょうが。ヘタレだったらあんなやり方しないし~」

「は、どうだか……しかし、これで何とか……やったか!」

「えぇ、後は他の方の救援に……」

「あー、いや、僕無理。疲れたし」

「えぇぇぇ!?」

 

「……切るべき首なら、()()にあったよ。ムッシュ・ド・パリ」

 

「――え?」

「ん? いやいや、何でもねぇさ。じゃあそこのサボりたがりは放っておいて、救援に行こうぜ。ファブニールはまだ潰れてないんだから……さ」

 




メイヴちゃんがチーズで普通に死ぬので、処刑してくれ、って言う人を多分サンソン君は見逃せないのではないかと思ったゆえの今回です。

因みにホモ君が本気だったかどうかはノーコメントです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。