FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百二章・裏:逢瀬二人

 掌の下……ベッドの感触、普通にふかふか。良し。

 

「あ゛ー……」

 

 どさり、と背中からベッドに飛び込んで、天井を見上げる。

 このアメリカに来てから、初めてじゃないだろうか。こんなマトモなベッドに背を預けるのは……ずーと野宿、屋内だがベッド無し、っていうのを繰り返すクソローテだったからなぁ。ベッドの上で蠢けば、ゴキゴキ体も鳴っている。

 明日は久しぶりに泥のように眠れる……と思いたいが残念ながら、明日からは俺はアメリカ軍の攻勢準備が終わるまで戦線維持に出向かにゃならん。まぁ、良いベッドならいい睡眠もとれるし、起きるのに支障はなさそうだけども。

 

 まぁ強いて問題があるとすれば……

 

「……」(チラッ)

「あの……なんでしょうか。酒吞童子、様」

「んー? 別にぃ?」

「……」

 

 ……完全な個室でも。大人数での雑魚寝でもなく。チームごとの部屋になってしまった事くらいだろうか。うん。こういう分け方になったのは実は初めてである。

 前者よりも後者よりも、なんというか。微妙な気持ちになる。人理修復にクソみたいないやがらせ、ある程度過去と向き合ってみる……とか、いろいろしていた所為で自覚していなかったのだが。

 

 こうして目の前にずらりと揃うと分かる。俺と契約してるサーヴァント、全員女性な上にとんでもねぇ美人だ。いや誰も彼も美人さんだなぁとかは、まぁ今まではまんじりと理解してはいたのだが、それがどういう意味なのかをここで思い知る。

 

「……勘違いするやつ出てきそうだなぁ……」

「……何をぶつくさ言ってる」

「いえなんでも」

 

 儚げなお清楚お姉さんな式部さん。

 色々デカいグラマラス女神のゴルゴーンさん。

 色っぽさ全一な鬼娘、アサシン。

 

 ……自分中心のハーレムみたいだなぁ、なんて。サーヴァントのマスターとして論外な勘違いを。俺じゃなかったらそれもいいかもしれない、とか思っていても仕方ないような環境だろう。

 頭が痛くなってくる。特に一番最後。気も可笑しくなりそうだ……いや、頭を痛めてるのは俺だけじゃないっぽいけども。

 

「うぅ……」

「んー、なんやろなぁ。こんな素直に怯える反応久しぶりやねぇ。やっぱりこういうのも悪ないわぁ……ほれほれ」

「あっ、あのっ、爪で服の端を摘まむのは、あのっ」

 

 平安京の住人。鬼への脅威を知ってる式部さんにとっては、アサシンの存在はまぁそう簡単には受け入れがたいだろう。まぁだからって、信用できないと牙を剥くような事は、賢明な彼女はしていないのだが。

 ここまで見てきて、特に問題はないように……見える。見えるけど、やっぱり式部さんが話しかけるのは、どっちかと言えばゴルゴーンさんの方が多いというか。

 

 多分脅威としてはどっこいどっこいだが、それでも生前から知っているイメージっていうのはそう簡単に覆せないのだろうとは思う。

 さて。マスターとして、放っておくのは簡単だけども。サーヴァント同士の連携が取れやすく出来るように仲を取り持つ――は、流石にお節介にせよ。最低限、連携が取りやすいように、ある程度は何かしないと。

 

「アサシン。その辺りにしておいてくれ。美女同士の絡みは、男にはちと目に毒だ」

「……そんな言うほど絡んでへんけど?」

「色々あんだよ……それに、俺も彼女に用向きがある。出来れば……二人きりで、な?」

 

 ……と言う事で、ちょっとした助け船と共に、美女をデートに誘う準備でもするとしよう。式部さんに視線を向けると……ちょっとだけ、キョトンとしながら俺を見ている。暫くすると、何かに気が付いたように、ちょっと頬を赤らめて、口元を押えて……いや何その表情?

 

 

 

 

 

 

 ちらりと上を眺める。

 排気ガスも夜の明かりも無く、良く見える満天の星空が、実にロマンチック。女性とのデートなら完璧なシチュエーションなのだが……残念ながら、隣を歩く彼女は人妻で宮仕えの貴ぶべきお方である。

 前提から俺が誘えるようなお相手でも無いし、そんな俗っぽい事を、こんな綺麗な人に提案する事自体、気が引けるし。無いわなぁ、と思いつつ。

 

「……それで、どうなさったのですか?」

「話すタイミングだと思っただけだよ……少し前の事を、さ」

 

 ちらりと、今度は隣の彼女を見る。

 普段結んでいる髪を下ろしているのはちょっと新鮮だ。つやつやの黒髪が、夜風に靡いて余りにも綺麗だ。そんなつもりなくても、見惚れてしまうのは雄の本能か。

 なんでか知らないけど、俺が誘ったあたりで『あ、あのちょっとお待ちください』と言って部屋を出ていってから

 そこから暫くしてから、ほこほこしつつ髪を下ろして戻って来たのだ。

 

 んで、初めの内はなんかもじもじと恥ずかしそうに俺について来ていたのだが……暫くすると、その態度も次第に鳴りを潜めていって。今は、とても落ち着いた様子で。真剣な瞳を向けている

 

「それは……酒吞童子様との?」

「それもある……あるけど、まぁそれだけじゃないというか」

 

 ……思い出す。そして、出来るだけ……冷静に。口を開く。

 

 平安での強力な敵との激突。俺がアサシンとどういう風に知り合ったのか……そして戦いの最中、アサシンに気づかされた事。ある種の覚悟を決められた事。

 いや、これで式部さんの不安を払拭しきれるとは思わない。けど。

 生前の恐ろしい鬼と言うイメージから、少しでも視点を変えるきっかけくらいにはなれば、と……恩があり、信頼があり、共に戦える事については、嬉しい、と言うのとも違うけど、まぁ。悪くは思ってはいない、と言う事を。

 

「……アイツがいなけりゃ、多分、俺はこのカラダに流れる血との、向き合い方も分からなかった。んで……過去に目を向ける気にも、なれなかった」

 

 見張り台を繋ぐ石造り通路、その欄干にもたれかかる様にして。割と長々と語った。それを……式部さんは、後ろで、特に何か言う訳でもなく。静かに聞いてくれていた。

 

「……不思議、ですね」

「何が?」

「私が聞き及んでいた、鬼と言う者は……傍若無人で、人に仇なす邪悪なる怪物。都でも被害を受けた方は多く、そう言った人達の話を聞いただけでも、私の背筋が冷えてしまうような……ですが。マスターの話を聞いていると……」

 

 否定から、入る事は無かった。不思議、と言う言葉は、零れだしたみたいだった。

 不思議、というのは、間違っていないだろう。確かに、俺が見たアイツは……共に轡を並べて戦い。頼光が奪った雷光に憤り。そして裏切った後も、俺と真っ向からぶつかりあった。何処か、人間臭いというか。

 

「良い奴ではないよ。警戒が必要じゃないって訳でもない」

「……でも、警戒するのと同じくらい、貴方は信じている」

「ん。まぁ、な。突飛に裏切る事もあるだろうけど……それが『今』ではない事だけは流石に分かる。だったら、それで十分だ」

 

 ……僅かに空を見上げてから、くるりと振り返る。僅かに、不安そうな色は抜けない。まぁ、それでも別に全てを疑ってかかってしまうようなところからは、抜け出したとは流石に思いたい。思えるだろうか。分からない。

 これ以上は、言葉を尽くしても、変に不安をあおるだけかもしれない。ならちょっと話題を変える意味でも、ちょっと揶揄ってみようか。

 

「それに、アサシンのお陰で式部さんに心配かけなくても良くなったのは事実だし?」

「……えっ?」

 

 俺の一言に、式部さんは一瞬小首をかしげてから……またちょっとだけ、頬を赤らめてしまう。

 

「……え、えっと……」

「俺がちょっとおかしくなってた時……結構式部さん心配してくれていた、と思うんだけど。もしかして自惚れだったりする?」

「あ、いえいえ! あの、そうなのですが……」

「気づいてないと思ってた? いやー、結構顔に出てたし、あの状態でも案外わかりやすかったぜ」

 

 あぁぁ……と、声にならない様な小さな鳴き声を漏らし、顔を包んで俯いてしまう式部さん。うーん可愛らしい。彼女的には、そんな余裕のない俺ですら分かりやすい位に表情に出てしまっていたのが、恥ずかしいのだろう……あれっ、なんかしゃがみにまで移行したんだけど、どした?

 

「……か、可愛らしっ……なんてぇ……」

「あ、心読んじゃった? でも事実だし?」

「うぅ……っ」

 

 式部さんの読心能力はこういう時にも暴発するのか。いやホント、生きにくそうだなぁこの人……いや、まぁ空気が切り替わるいいきっかけにはなったか。

 

「……まぁでも、いくら可愛らしくても、またぞろあんな状態になって、あんたに心配かけるのも、流石に避けたい訳で……だからさ」

「……なんですか」

 

「いい加減、この血だけじゃなくて、昔にも向き直ってみようと思うんだ」

 

 ……ここで、そう口にしたのは。

 目の前に、彼女がいるから。俺と同じ人間で。思いを綴る英霊の……式部さんが、いるから。彼女に……手伝ってもらいたいと、思ったからだ。

 




式部さんがそんなエロ同人みたいな勘違いするわけないだろ! と言いたいが、平安時代にあの小説を書いた式部さんだぞ!? と思う自分もいる。
心が二つある~……!!
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