FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百二章・裏:歪みを解くなら

「――今じゃなくても、この大仕事が終わってからでもイイって話なんだけどな」

 

俺が、自分の過去に向きあう、なんて物はまぁ……本来であればこの人理修復の大仕事にはまるで関係ないのは間違いない。終わって平和になった後、自分探しと一緒にやっていてくれ、と俺自身も思う位だ。

 

「けど情けない話……向こうがこっちの過去に関して、揺さぶりかけてくれて、まぁ割とあっさり、ああなっちまうとなぁ……」

 

 流石に、無視は出来なくなってくる。

 

「情けなくは、ないとは思いますが。過去を掘り返される、と言うのは、誰しも良い気持ちはしないと思いますし」

「にしたって、今このタイミングでヘラるのはよろしくない」

 

 ……もしかしたらまたぞろ同じような手を取って、こっちの邪魔してくるかもしれないんだ。こちとらご丁寧な手順を踏んでまで一人で隔離された挙句にあんな真似をやられたのだ。二回、三回とやられないという保証は何処にもない訳だ。

 一応、ある程度は区切りというか、立て直しというか……まぁ、一回見て焼き付いた所から、ここまで来たから。二回目は……それなりに、耐えられる自信は、ある。いや、正確に言うなら、前回の様にはならない、と言う事だけには自信を持てる、か。

 

 とはいえ、もう一回やられて平静を保てるかってなると……んで、その状態で十全な指揮が取れるかとなると。いや、正直な話、キツイ。

 

「……それで判断ミスしようもんなら、被害が行くのは俺だけじゃない。かといって、自分で言うのもアレだが、無視できるような浅いもんじゃないし」

 

 正直な話。

 この前、一人で特異点に飛ばされた時は、相手の事故と、殆ど自分一人だったから、暴走気味に行っても特に他に迷惑をかける事は無かった。

ある意味、どれだけミスっても被害が行くのは『俺だけ』な訳だ。その事実に気が付いた時は、気が楽な事この上なかった。

 

だが……これからはそうはいかない。俺のミスは、全員の致命傷になりかねない。俺の精神的動揺は、俺の問題では済まされなくなってしまった。

 

「つまり……相手に過去を突かれ、動揺するというのなら、その前に」

「自分の昔についての区切りを……ちゃんと答えを出して、何をされても笑い飛ばせるくらいになるのが、理想かね」

 

 まぁあくまで理想ではあるが……少なくとも、吹っ切ったつもりで、結局ハッキリともしない今の現状を脱却しなければならない。少なくとも、何を見せられても、自分で納得して、暗雲を自力で振り払えるくらいの答えを出さなきゃ、まぁキツイ。

 

「ですが、それなら先ずはロマニ様に……」

「いや、これはあくまで『昔の俺の問題』だからな。この旅で起きた問題なら、あの人に素直に預けたいんだが……藤丸についてもドクターは考えにゃならんし。諸々の理由込みで、ドクターの手を借りずに解決するのが一番効率が良い」

 

 カルデアは潤沢な物資と人材に恵まれてる訳じゃない。

 ないない尽くしで、これ以上自分に何かしらのリソースを割かせるのも良くない。プロに任せないで自己判断とは何事かとお医者様には怒られるかもしれないが……非常に残念な事に、何もかもが足りないのだ。

 

 結局プロに任せた方が早かった、と言うのは十分な時間とリソースがあれば言える事。プロの時間も何もかも、絶対的に限られているのなら、自己治療だって選択肢に入れなければ。

 

「と言う事で、式部さんに白羽の矢が立ちましたんでよろしく」

「あわわわわわわわわどうしてですかぁっ!?」

 

 うん。

 そんな反応になるのも分かる。というか、寧ろいきなりこんな事頼まれて、困らない訳がないし。でも……割と消去法で行くと貴女しかいないのよなぁ。

 

「まぁ、落ち着いて聞いて欲しいんだ。先ず思いつくのはダ・ヴィンチちゃん……なんだけど。良い人だけど、どっちかと言えば人の心の機微に詳しいかって言うと……」

「……」

 

 うん。式部さんも思わず黙り込む。と言う事で、それが答えで先ず一人。

 んで、そこからは最早消化試合。藤丸、及び彼のチームのサーヴァントは、まぁ藤丸のサポートに回って貰うのがいい。態々俺に回してもらうのは余りにも無理を言っているのは分かる。

 

 では我がチームのサーヴァント二人は?

 単純な戦力と考えれば、どんな人よりも間違いなく頼りになるお二人ではある。生中な精神攻撃なんざ屁でもないし、寧ろそんな舐めた真似をした奴を喰らい潰してくださる頼もし過ぎて怖い位の人達だ。

 けどまぁ、相談してみた所で……

 

『――それで? 貴様、私に何を求めているというのだ?』

『んー……悩むのも、ええんちゃう? そう言う顔も乙やで?』

 

 ……反応は凡そ想像できてしまう。多分この場合に限って、この二人はカルデアに置いて最も頼りにならないだろうという確信が俺にはあった。

 

 後はカルデアの職員の皆様がいるが……多分この現状で俺と同じかそれ以上にいっぱいいっぱいだと思う。寧ろ相談したらその人の精神的負担になりかねない。そんな酷い事は流石に出来ない。

 

「……と言う事で、式部さんしかおらんのです」

「あぁぁぁぁぁ……」

 

 床に手を突いて崩れ落ちる式部さん。そりゃあまぁ、余りにも無慈悲かつ分かりやすい結論過ぎてそうもなろうなぁ……

 

「いやまぁ、ただ消去法って訳でもないんだよ。式部さんでは、人の感情だとか精神性だとか、そう言うのに関しては、多分このカルデア内ではロマニに次ぐスペシャリストだと言っても過言では……」

「過言です!」

 

 いやいや式部先生、そんなご謙遜を。

やっぱり、あの時代、アレだけの刺激的な小説を書くってなると、色んな人に取材もしたでしょう。更に言えば、宮中内で色んな悲喜こもごも、愛憎劇をご覧になってきた事でしょう。

 

「若造の精神分析の一つや二つ、ねぇ?」

「一つや二つじゃないです! 知っているからこそ、どれだけ人の心が複雑で、気軽に類推してはいけないというのは身に染みておりますし……!」

「だったら丁寧にやってくれるでしょ。自分一人でやるよりは余程心強い……」

 

 それに、ここで何もしないというのは、ある種戦犯になりかねない。自分の弱点を放置したままではいられない。夢見る少年ではいられない。見てるのは悪夢だけど。

 この弱点は、自分の最も深い部分に根付くもの。ある種、俺の原点になった記憶だ。コレが無ければ今の自分は存在しない。

 

 ……自分ですら、触れ難いモノ。

 

「……いや、俺一人じゃ、絶対に触れられない、っていうのが、正しいか。式部さんと一緒じゃなきゃ多分無理なんだよ」

 

 ぽつり、と。零すように漏らした言葉を聞いてか。式部さんが顔を上げて、此方を見つめてくる。ちょっと恥ずかしくて、誤魔化すようにそっぽを向いた。

 

「私と?」

「うん。まぁ……情けない話だけど。俺も、出来れば触れるのが嫌でたまらない、本当に怖い所でさ。一人だと、触れようと思うのすら、不安になって来る」

 

 あぁそうだ。結局の所、答えはそこに帰結する。

 アレは、俺の明確な傷だ。深い所に出来て、刻まれて、ねじれて、柱の一部となって巻き込まれてしまった……厄介な歪み。もしもそこが開けば、俺自身、どうなるかも分からない幼い頃のトラウマ。見せられて取り乱すしか出来なかったもの。

 

「誰かが傍にいてくれなきゃ、泣いて取り乱して、みっともなく逃げ出しかねない……だから、頼むなら、貴女に」

 

 ……特異点Fで、命を救われてからずっと一緒に駆け抜けてきた。

無茶をする時は、基本的に式部さんが傍にいて。最近は、俺の事を叱ってくれるようになる位に打ち解けた。戦力的にとは別に、多分一番信頼しているのは、間違いなく式部さんだ。

 

 最早、自分の家族は、人理修復の旅を終えても尚、この世界の何処にもいない。でも家族と同じくらい、背を預けられる人が、目の前にいる。

 

「……酷く情けない話だとは、自分でも思うけど……出来れば、助けてくれないか。式部さん……」

 

 手を合わせ、深く頭を下げる。

 何も彼女に対する利を示す事は出来ない。みっともなく、こうして助けてと頼む事しか出来ない自分が、重ねて情けなくてたまらない。

 

 受けてくれなくても不思議でも何でもない。その時は、最悪俺一人で苦しめばまぁ、何とかなるだろう……そう成る時を想像し、歯を食いしばって、答えをじっくりと待つ。

 

「――」

 

 ……暫し後。

 合わされた俺の両の掌を。柔らかな女性の掌が、優しく包み込んでくれた――

 




理由七割、感情三割くらいで書いているつもりです。

今月の投稿はここまでとなります。再開は、三月からになりそうです。次回も、お暇があればご覧になっていただければ、幸いです。
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