FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百三章・裏:『師』の参戦

「……こんなになるまで……戦う必要、あったんか?」

 

 疲労困憊のまま、地面に腰を下ろす……背後で膨らむ、とんでもない殺気から目を背けつつ。辛うじて、アサシンと式部さんが抑えてくれているが、下手な説明されたら割と鱗とかに傷とかちゃんとついてるゴルゴーンさんとかの不満が爆発しかねない。

 

 その辺りは……目の前の、紅い槍を構えたサーヴァントにかかっている。

 端麗な顔に僅かな微笑みを浮かべ――小枝でも扱うかのように、余りにも容易く、くるり、と槍を回して。人を超えた域の女武者は口を開いた。

 

「当然。儂が単独で動いた方が良いか、それとも、お主らに力を貸した方が効率が良いかを試すには、コレが一番。手加減しての馴れ合いで、実力が確かめられる訳でもなかろう?」

 

 ……実に、シンプルで、分かりやすい理屈だ。

 力を貸す、貸さない、と言うその判断基準を戦って決める。

 

 いや。戦うまでもなく、力を合わせて戦った方が効率いいに決まってるだろう、一体何言ってるんだこの人……と、普通なら考えるだろう。

 だがサーヴァントになる様な『英霊』は、そんな常識が通用しない場合もある。足を引っ張る相手と歩調を合わせるくらいなら、自分一人で行動した方が上手くいく場合も幾らだってある。

 

 ましてや目の前の彼女は、その中でもとびっきりの超人。下手に誰かとつるむより一人の方がよっぽど気軽に動けて、強い……それも当たり前か、何せ彼女は、あの、クー・フーリンの師匠なのだから。

 

「まぁそれに、実力も良く分からぬ相手が力を貸す、と言ったとしても、それは良かったならば力を貸してくれ……と、お主たち、なるか? 特に後ろの娘は」

「……いやぁ……」

 

 ……と言うのを実感したのは、今、俺達が必死にやり合った後だからなので。

 確かに、あの時声をかけてきて、彼女がケルト側だと知れていたら……どんな反応をしていたかは、まぁ、うん。

 普段なら、まぁ別に誰が味方になろうが関係ない、邪魔さえしなければ、的なドライな感じなのがゴルゴーンさんだ。

 

 しかしながら、ここ最近はと言えば……ケルト、ケルト、ケルト。兎も角前線に押し寄せるケルトの敵を殴り倒しまくり。数ばかり多い奴らをプチプチと叩き潰す地道な作業を繰り返していた……かなり気が立っていたと思う。

 冷静な判断、出来ただろうか……うーむ。

 

「とまぁ、些か乱暴な手を使ったのは否めんが、此方は実力を示した。其方の実力を見る事も出来た。お互いに組む利点を示しただけの事。」

「……成程な」

 

 理由は分かった。こっちと不和が起きないように、思い切ったやり方をしたのも。ちゃんとした理由があったというのも。

 

 ……んで。

俺は納得出来た。これだけの力を持った英霊が力を貸してくれるのであれば心強い。いや、向こうが矛を引いて、敵意がない事を示してくれた時点で、まぁそこまでこう、不満があった訳でもないし。

 

 最大の問題はと言えば……

 

「多分、その理由じゃ後ろのお嬢さんは納得しませんね」

「左様か」

「うん。って事で……後で、あの、千切れた脚とか治療して貰えたら。ありがたいっすわスカサハさん。今からちょっと……死地に入るんで」

 

 背後のゴルゴーンさんは、絶対に納得してくれない事が、確定した事くらいだろうか。

 

 

 

 

 

 

「……あげ、あげげげ……っ」

「ふん」

 

 えー……暫しゴルゴーンさんの髪の皆様に玩具にされながら必死に説得する事で、漸く彼女もおさまりが付いた模様です。ここまで積み上げてきた絆が無かったら多分餌になってた気がする。というか、俺ちゃんと四肢体についてる? 大丈夫? 頬に感じる地面の硬さと、全身の痛みしか感じないんだけど。

 

「……私が言うのも何だが、お主とサーヴァントの関係はどうなっている?」

「い、いっつもこんなんだよ……あででっ……」

 

 基本的に、こっちは力を貸してもらっている立場なのだから、マスターとか偉そうな肩書がついていても要するに彼女達が現世に居座る為の楔役に過ぎない。寧ろ扱いはこんなもんでも良いのだ。うん。

 

 ……取り敢えず、突っ伏した状態から、何とか体を起こす。

 全身ぼろ雑巾見たくなってる。痛い。辛い……ふら付いた所で、式部さんがそっと体を支えてくれた。ありがたい。うん。別にゴルゴーンさんが俺達の普通って訳でもないし。式部さんはずっとこうやって俺の事気遣ってくれる優しい人だし。

 

「大丈夫ですか、マスター」

「うん……大丈夫。ありがとうな、式部さん」

「ボロボロやねぇ。此処とか、痛い?」

「痛いから突くな。勘弁してくれ」

 

 ……そしてアサシンは楽しそうに俺の体を突いてる。うん。良いんだよ。こうやって色々なサーヴァントとの交流の形がある、で。

 

式部さんに礼を一つ言ってから、改めてしっかりと立ち直し……ダ・ヴィンチちゃんに通信を入れる。ケルトをそれなりに叩けたし、結構な戦力も引き入れる事が出来た。個人的に大ダメージも負ってるし、ここが引き時だろうと判断した。

 ……ゴルゴーンさんは、未だ不機嫌ではあるが。彼女も含めてサーヴァントの皆も撤退には賛成してくれたようで。これで、大手を振って帰れる。

 

 あのクー・フーリンの師匠を味方に引き入れた、なんて。これは大戦果だなぁ、なんて内心ちょっとほくそえんでると……こちらを見つめるスカサハの紅い瞳と目があった。

 

「……まぁ、良好な関係を築いている、と思う事にしておくか」

「……なんか言ったか?」

「いいや、何も……それより、ほれ。傷を見せて見ろ。儂にも一応責任はあるからな。要望通り、治療してやろうではないか」

「えっ? マジで?」

 

 彼女は、じーっと此方を見つめてから……そう口を開いた。治療をしてくれる、というその言葉に、ちょっと驚いてしまう。

さっきのは冗談のつもりだったんだが。アレだけ戦えるのに、それだけじゃなくて治療も出来んのか。その多芸ぶりに、素直に感心してしまうと同時、とてもありがたい。

 

礼を言おうと、口を開こうとした――その一瞬、一歩スカサハは此方に踏み込んで来る。驚いた所で、ぴとりと、額に彼女の指先が触れる。閉じた口の代わりに、彼女の口が再び開く。

 

「――それに、その体では、上手く扱えんであろう?」

「……!」

「厄介な物を背負ってるな、お主」

 

 ……一瞬、ちらりと周りを見た。

 さっきの戦いの中で、下手に突っかかって頭に血でも登ろうものなら、そこからあっさり切り崩されかねない。その危険から、一切『血』を目覚めさせてはいなかった。

 なんだかんだ言って、あの状態になるとブレーキが緩まってしまうのは自覚しているし……そこをスカサハに突かれそうな勢いではあったから。

 

 であれば、三人の中の誰かがその事を口にしたのを聞いたのか、と思った、が。マスターの俺と違い、別にそういう要らんことを無駄に言わない、思慮深い頼もしい人達である事を思い返して、即座にその可能性を切り捨てた。

 

「……良く分かるもんだ。見せてもいないってのに」

「隠しても『そう言う匂い』は分かるものだ」

「獣じゃねぇんだから」

 

 ……尋常の嗅覚じゃ測り切れないだろう。絶対。

 戦いに、治療、そして俺みたいな奴を嗅ぎ分けるだけの知識まで。本当に多芸だ。底知れなさ、と言う一点だけで言うのであれば……あのカルナ以上に恐ろしい。

 だが、彼女が力を貸してくれる、と言うのであれば。その恐ろしさは、心強さにそっくり変わる。現金ではあるが。

 

「くくっ、手を貸す一環として、助言の一つでもいるか? そう言った類の事も、ある程度なら経験はあるが」

「――いや、それは大丈夫。間に合ってる」

 

 とはいえ、そっち方面で頼る事はしないが。

 ジェロニモさんにも言われたから……なのかどうかは分からないが。あの日に式部さんに割と素直に打ち明ける事が出来て。その後、ちゃんと時間を取って、話をしようと言う事になっている。

 早ければ、この特異点の中でも、少しずつ。話をしようと思っていた所だ。

 

 割とはっきりと断ると、スカサハは少し目を見開いてから……にやり、と笑った。

 

「付き合い方は心得ている、と言う訳か。成程、小僧に見えてしっかりしている」

「ま、精神は兎も角、体の傷の治療は是非ともお願いしたい。今も、これからも。アメリカ側とケルトとの大戦、結構激しい事になりそうだからな。傷を癒してくれる人は何人いても困らん――これから、宜しく」

「……加えて、私を衛生兵扱いか。くくっ、中々に豪胆なマスターではないか」

 

 此方から差し出す手に、彼女はその笑顔のままに応じてくれる。認められた、かどうかは微妙な所だが。まぁ、そこそこの信頼は得た、と言ってもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 尚、スカサハさんに治療して貰えばまだやれる、と言う事がバレてしまった結果、憂さ晴らしとばかりゴルゴーンさんに更なるケルト狩りに連れ回される事が確定したのはご愛敬である。

 




おっぱいタイツ師匠好き。
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