FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百四章・裏:眠れぬ夜を

 ちらりと、部屋の中を見回す。俺の部屋とも色々差異があり、そして寝床としては急ごしらえな印象である事が共通している辺り、このデンバーの城が『戦時用』に作られた物である事を意識させてくれる。

 

「こうやって話すのも、結構久しぶりな気がするなぁ」

「お互い忙しかったしね……アメリカ軍と協力体制を敷けたって聞いた時はびっくりしたよ、ホントに」

「まぁそこに関しては流れと勢いだよな」

 

 ここは、藤丸の部屋だ。俺の方から、尋ねた。今度こそ式部さんと話すタイミング……かと思ったのだが、しかしながら先ほど『極東の術師、オンミョウジの意見も聞きたいの』とエレナさんに連れていかれてしまった。

 

 砦の中は、本当に忙しく、くるくると皆、働いている。俺達がこうして休んでいられるのは、ここまでに結構働いて『休むタイミングだろう』と言われたからで。先ほどまでは俺達も労働にいそしんでいた。

 

「まぁその分、お互いのサーヴァントをフルで働かせるレベルの事になってる訳だが。まさか式部さんがアドバイザーとして連れて行かれるとはなぁ」

「物理的なブースター以外にも、魔術的なブースターも使うらしいしね」

「あらゆる手段をつぎ込んでるって感じだな……巌窟王は?」

「夜の偵察。敵さん、結構な数の密偵を送り込んで来てるって。サーヴァントを一兵卒クラスの密偵相手へのカウンターに送るなんて、贅沢にも程があるってドクター笑ってた」

 

 ……んで、そんな僅かな一瞬の休息の間にも、両軍の小競り合いが終わっていない事に思わず苦笑いしてしまう。最終決戦直前らしい、何ともひりついた空気じゃないか、と。

 

「……贅沢、って言えば。凄いサーヴァントを味方に引き入れたって」

「スカサハさんな。まぁ贅沢の極みたいなもんだよ。アレだけの怪物がこっちの最後のセーフティラインになってくれるってのは」

「大活躍じゃない、康友」

 

 俺と藤丸、カルデアの二人のマスター以下、サーヴァント達も全員集結。アメリカ軍の機械化兵団はエジソンの狂気的なまでの奮起とサーヴァントの皆の協力で、フルまでがっつり強化済み。新たなるサーヴァントを味方に引き入れ、質も量も万全。

そして……

 

「そっちこそ、俺達がこっちでアメリカ軍とわちゃわちゃやってる間にも、ケルトの将二人を討ち取って帰るとは」

「いやぁ、皆が頑張ってくれただけだから。巌窟王も、リリィも、マシュも……それに誰よりも……ラーマが、物凄い、頑張ってた」

「……そっか」

 

 ついにラーマが十全な状態になって、帰って来たのだ。最終決戦に、間に合った。

 

アルカトラズにて、どうやらラーマは無事に奥方と再会する事が出来た……らしい。藤丸から聞いただけだから、俺自身はその時の詳しい事は全然知らない。

ただ……望んだ形の再会ではなかった、と言う事と。

そして、望まなかった離別が訪れた、と言う事は、聞いた。

 

「……奥さんに、恥じるような戦いはしたくなかったって事かねぇ」

「胸を張りたかったっていうのもあると思うよ」

「あぁ……そうか。そうだな。そうだろうな」

 

 ……そこで足を止めなかった事を、素直に凄いと思う。と言うか、大切な半身を失った後なら、止まっても、誰も責めない筈、だってのに。

 

「そんな事されたら、どっかから見てくれてる奥方も、そりゃあ嬉しいだろうな」

「うん。きっと、そうだね」

「……だから、今日も張り切ってたのかねぇ」

「あー……ゴルゴーンさん、抑えるの大変そうだったね」

「あぁ。理知的だけど、英雄が英雄してると『生意気』がどうしても抑えられないっぽいんだよなあ。まぁあの人の逸話考えるとしゃーないし、切っ掛け自体は向こう三人が悪いから、我慢させるのが申し訳なるんだけど」

 

 デンバーに戻って来たラーマからは、そんな素振りなんて一切見られなかったし。寧ろ次回の攻勢に向けて、とんでもないやる気を見せていた。

 

 昼間のカルナとの手合わせなんか、既に神話の大戦がはじまりそうな勢いのド派手なバトルで、兵士の皆は大盛り上がりだったし。

鍛えてやるという口実で始まったスカサハとの一戦は、目まぐるしい攻防の入れ替わりと一瞬の剣戟の音の甲高い切れ味鋭いサムライアクションと化していた。

因みにその三名の大暴れの余波を受けて、うろこが嫌と言う程に砂まみれになったゴルゴーンさんはキレた。んで、三人纏めてKOしそうな所を、また俺が止める羽目になったのだけれども。

 

 兎も角。そう言った色んな余波が広がるくらいには……ラーマはやる気だ。

それに触発されて、エジソンも、その麾下のアメリカ兵たちも物凄いやる気で鼻息荒く、あのロビンフッドですら、一言もしゃべらず、真剣な眼で、徹底的に弓の整備を行う熱血集中ぶりで。

 

「……一度、負けてるっていうのもあるのかもしれない」

「クー・フーリンか」

「うん……明日の決戦は、最後は俺達が彼を討ち取れるかにかかってる。その役割を任されたから。以前負けた時のリベンジで」

「流石英雄。そう言う所は血の気は多いわなぁ」

 

 天井を仰ぐ。

 

 ラーマが。エジソンが。俺達の仲間のサーヴァントの皆も。この特異点に喚ばれたサーヴァントの皆も。此方の陣営が皆、一丸となって。決戦の準備が整いつつある。

 コレをぶつければ、まぁ苦労せず勝てるんじゃねぇか……なんて。

 

 油断を出来ないのが、特異点と言う場所だ。

 何が起きるか、分かったもんじゃない。

 狂王、クー・フーリンはそんなラーマが一度敗れた相手。スカサハ曰く『自分でも正面からでは殺し切れない化け物』と太鼓判を押す程で……そんな王の傍に侍る女王、メイヴっていうのがどれだけのモノなのかも未知数だ。

 

 向こう側に残っている将で判明しているのは、アルカトラズを守っていたっていうベオウルフ一人だが……それこそ、クー・フーリンに匹敵するレベルのとんでもない強さのサーヴァントが、急に現れたって不思議じゃない。

 かつて、俺が経験したローマの激戦の時は――最後の最後に、レフが凄まじい破壊の体現者を召喚して見せた。そんなちゃぶ台返しだって、幾らでもあり得る。

 

「一番キツいのが『そっち』だっていう自覚もあるんだろ。自分の恩人達が、共にそんな修羅場に殴り込む……今度こそ、理想王として恥ずかしくない活躍を見せるってな」

「あはは。キツイのはどっちも同じでしょうに」

「……いや、こっちは気楽なもんだぜ? こっちは無限に湧く敵を出来る限り削ればいいだけだ。RPGの作業みたいなもんだよ」

 

 そう言った敵方の理不尽な『最後の切り札』を浴びせかけられる可能性が高いのは、藤丸の方でもある……のだが。

 エジソンは、会議の時に、敢えて全員には話していなかったけど。会議の終わり際にある事を、俺に対して口にした。

 

『……例のサムライだが、未だに被害が納まっていない。寧ろ、その規模が広がっているという報告もある。かのサムライが戦場に殴り込んで来ようものなら、混乱は必至といっていいだろう。そして当然……狙われるのは、君だ』

 

 ……思わず、変な薄い笑いが漏れてしまった。

 

 どっから刃が伸びてくるかも分からない。酷い戦場だ。囮役も、特攻役も、どっちも普通に散りかねない。今までの特異点の戦いが、これ以下だったというしかない様な、規模と過激な戦いが、明日の決戦だ。

 

「……だからって、気を抜いたりはしないけど、な」

「うん。だね。それでどうする? 人員、他に割いて欲しいとかある?」

「いんにゃ、これで完璧なんじゃねぇの?」

 

 んで、そんな事をどうして改めて確認しているのかって話だけども。

 いやまぁ……本当にただの雑談をしているだけなのだ。俺ももちろん、藤丸も多分、そうだろうと思う。

 

「明日からは、ラーマとお前が、ワシントンに切り込むんだ。その間、俺達が精々敵を引き付けておいてやる。しっかりやれよ」

「……うん、そっちは任せるよ」

 

 弱音を吐くだとか、意気込みを語るだとか、そんな事は出来なかった。

 

 そう言う事が無い訳じゃない。だけど、そんな言葉を吐いて結果が変わる程、明日の戦場は甘くない。ちょっとした事を雑談代わりに、緊張の一つでも解せれば、明日は全力が出せるんじゃないかっていう。おまじない代わり。

 

 ……明日に向けて、やれる事をやる。

 人類最後のマスター二人が。迫る明日の決戦に向けて。

 

 休めと言われているのに。体を休めるどころか。何とも無様に、足掻いているのに、思わず、静かな笑いが漏れた。

 

 

 

 

 

 

「あとやれる事、なんかあったかなー……」

 

 休め、と言われて休めるなら簡単な事はない。

 ああして話している時も、全力で『休もう』と気負っているのだ。俺達は。結局のところは、休むどころか変に緊張感深めて休むどころではなかった。

 

 部屋に戻る気にもならず、何となく城砦の中を見て回っている。誰か、アサシンやゴルゴーンさん、カルデアのサーヴァントの一人と話せれば……と思っていた所で。

 

「――ミスター、待ちなさい」

「それは無理な相談だ」

 

 歩く視線の先。

 

 深い緑のコートと、真っ赤な軍服が――視界に入った。

 




えぇ!? 本編の案内役と最後の最後で漸く絡むFGO二次創作があるんですか!?
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