FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「――下がれ下がれ! 無理すんな! いくら強化したからって、アイツら相手は分が悪いぞ! こっちかエジソン、エレナさんの方向に回せ! 後、皇帝陛下に置かれましてはもう少し一緒にお下がりいただければ!」
「むっ!? 余は駄目なのか!?」
「突出し過ぎなんだよ! ベール切られてんぞ花嫁!」
「むむむっ!?」
混迷、渾沌、混乱。正しく乱戦極まりない戦場の中で、針の隙間を縫うようにして白い花嫁に近寄って来た不埒な黒い影法師の咢をぶん殴って、吹っ飛ばす。
「うーむ。確かに突き出し過ぎておるか……すまぬなカルデアのマスター!」
「いいさ、ここは引き受けるから問題も無く撤退しなさいな!」
……その一瞬の隙間を塗って、ネロ陛下は撤退していく。此方の用事のついでに回収できて良かった。しかしながら……
咄嗟の拳がクリーンヒットした結果、天を仰いで倒れ伏してるシャドウサーヴァントを見ていると、なんだか……複雑な気分になって来る。
自分、なんでこんな乱戦の中、的確に相手のアゴを捉えて殴り飛ばせてしまうんだろうかと。一応、昔は適当に当たればいいかなくらいの気持ちで拳を振っていた覚えがあるんだけれども。こんな狙いを付けられるように……
「戦乱の味、覚えちゃったなぁ……」
「しみじみしてる暇、あるん?」
――とか思ってたら、目の前に銀一閃。すぱんと突っ込んで来ていたシャドウサーヴァントの首が飛んだ。ぱちくりと瞬き一つ、ちらりと傍らを見つめれば、アサシンが立っている。片手には……ぽとん、と堕ちてきた黒い首一つが。
「油断しとったらあかんよ? よそ見しとったら、こうやって首がぽぉんっと、なってしまうやもしれへんからねぇ」
「あっはい」
せんらんのあじ、おぼえてませんでした。
いや、諫める為とは言えいきなり目の前で大剣ぶん回して首をぽーんと刎ね飛ばすのは些か以上にちょっと血なまぐさい味付け過ぎない……?
そう思いながら、雄叫びと槍を挙げて突っ込んで来たお髭のおじさんを明後日に向けて蹴っ飛ばす。よし、無事返品完了。
「はいはい、上手上手……んで、どないするん? アレ」
「いやぁ……脱出したいのは山々なんだけど……っ!」
視線が合った。ヤバイ。来る。
「アサシン手ぇ貸してくれ離脱する! ゴルゴーンさん! 四時の方向に援護!!」
「はぁい」
言い終えるか、言い終えないか……そのタイミングで、思い切り上に向けて引っ張られて、体が宙を舞う。アサシンの跳躍力、正しく化生のそれである。そして、その真下で。
突っ込んで来た敵に向けて、あらぬ方向から飛んで来た紫紺の光が収束し。
――二回、爆ぜた。
巻き込まれたのは、周辺に居たケルト、及びシャドウサーヴァントの一団と……アイツに切り倒されて倒れていた、アメリカ兵――の抜け殻の装甲。既に、中身は離脱済みだから大丈夫だけども。離脱していなかったら、多分……
「ぎりぎり……間に合わなかったか! っていうか、良く躱したなアレ! 俺に突っ込んで来た所で他所からの援護だぞ! 避けるな!」
「しゃあないやん。アレも尋常のソレとちゃうし?」
「分かってるつもりだったがなぁ!」
……正直な話、態々敵の多い方向に突っ込んで来たのはこれが原因だ。相も変わらずあの剣客、一点集中、こちらにゾッコンラブ、らしい。
俺と目が合ったらあらゆるものをなぎ倒しながら突っ込んで来る、あの猪武者も生温いレベルの弾丸武者の巻き添えをアメリカの皆様に喰わせるわけにはいかん、と思って、敵方に来ている。のだが。
「……二回目のアレ、カルナとアルジュナか」
「せやねぇ」
「向こうに突っ込んだ方が良かったかこりゃ?」
そう思った直後、再び上がる爆炎と――頭の上を掠める、緋色の弾丸。
先ほど、ゴルゴーンさんの援護射撃の着弾直前に、降って湧いて来て、二重の爆発を引き起こした正体が――あれだ。二人が交わした魔力の弾丸?
否、彼らは最低限周りを巻き込まない様な射線の取り方くらいしてる。
アレはそれでもどうにもならない……いわば、ただの『余波』だ。
「ったく、互いの攻撃を弾いて、撃ち落として……その魔力の余波であれかよ」
「言うて、見た目派手なだけやで」
「分かってる。ゴルゴーンさんの一発とは比べるのもおこがましいのは分かってるが」
それでも尚、周りの兵士達を傷つけるのには十分すぎる威力があるのは間違いない。
……ちらりと視線を向ける彼方で、俺達以上に巻き添え出してそうなおインドサーヴァント達を見てると、こうして努力しているのがほぼ無意味みたいな感じになって、若干虚しくもなる。それ程の、苛烈な攻防。
「……それにしても……っ! ああもう、まだ来るかよっ!」
「ええやん。遊び放題やで?」
「お前は戦いも楽しめるからいいけどな、アサシン……生憎、根っこは穏やかな現代っ子だよ俺は! おいゴラっ、テメェも逃げんなっ! 拳もってけ!」
「……血の気の多い鬼っ子の間違いちゃう?」
……それはどこもかしこも同じことではあるが。
アルジュナ、カルナのインド組の爆炎巻き上げる衝突。アメリカ、ケルトの軍同士の、機関銃と槍での小競り合い。その中を縫うように……俺達と、女武者との衝突も千々に混ざり合う。考える事が……考える事が……多い……!
この場合、囮役というのが逆に宜しくない。俺達の役割は、此方に出来るだけ敵を引き付ける事であり、少なくとも、相手を後退させる様な戦い方は出来ない。
お陰でじっくり耐えて、真っ向から戦わなきゃいけない……こういう時に、敵の数が無限だというのは本当に地獄だ。倒しても倒しても湧いてくるとかいう、終わりの見えない耐久を、人はクソゲーと言うのである。
「……ま、そのクソゲー状態が、今の俺達にとっては理想なんだけどな……っと!」
とはいえ。決戦に向けて強化しまくったアメリカ軍総戦力をもってして、数の暴力で無理くりに拮抗状況を作られている、というのは……正に此方の理想通り。この時間が長引けば長引く程に、敵戦力を引き付ける事が出来ている。
その分、『二つ』の別動隊は楽に動ける、と言う話だ。いくら無限に湧いていようと、湧いた傍から全部をこっちに引き付けちまえば、向こうの脅威にはなり得ない。
「――ダ・ヴィンチちゃん、藤丸の方はどうだ!」
『今の所、順調にワシントンに近づけてる。敵の襲撃も最小限だ』
「そいつは何より……周囲に、アイツら以外のサーヴァントの反応は」
『今のところない。スカサハも、仕事をしてくれてると信じよう』
……一つは、藤丸率いる『本隊』。もう一つは……たった一人。スカサハが、クー・フーリンの暗殺に向けて、動いている。
此方を試せるだけの、単騎での強さ……そこから導き出される、分かりやすい彼女の運用方法、それは――ソロによる単騎駆け。下手に大人数で行かせるよりも、一人だけでこっそりとワシントンまで隠密行し、一撃を見舞う。それが元も効果的だという結論に、エジソン率いる首脳陣と、スカサハの意見が一致した。
本隊と合わせて進行するサブプラン。しくじった時の保険にも、本隊が首尾よく事を運んでいる時の、ダメ押しにもなる『二の手』。ついでに道中の強敵くらいは始末しておいてやろう、とカッコいいお言葉もいただいている。
『私がここに召喚された事は、奴もまだ気づいてはいまい……今こそが、奴の心臓を影より抉り出す最大の機会よ』
……とても戦士の台詞ではない、と思ったが曰く、『古い戦士というのは、誰もこういうモノだ』とニヒルに笑って返された。実に頼もしい。
「……頼むぜ。こっちもいつまでもは持たねぇからな」
「別に何とでもなるやろ。こうやってずーっと、耐えてるのがアカンのとちゃう?」
「いやそこを突っ込むな!!」
……ああ、うん。まぁ、そうですよね。
ちらり、と背後に視線をやる。
藤丸も、スカサハも頑張ってる。こっちも……何らか、成果と言うか。諸々を上げないといけない。それぞれ、戦うべき相手とやり合ってるとなると……やっぱり、俺の担当はずっとこっちを追いかけてる、あの武者になるかぁ……!
……クーちゃんって、存在も把握してない師匠からのガチ不意打ちって避けられるもんなんですか?(プロット崩壊の予感)