FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百五章・裏:危鬼決戦 中

 がぎゃ

 

「「――っ!!」」

 

 ぎ ぎぎぎっ

 

 衝突。衝撃。金属音。突進した影を、もう片方の影がどっしりと受け止めた瞬間、四方へと広がっていく――激突の余波。

 突進したのは、やはり女武者の方。一方のアサシンは――大地に大剣の切っ先を深々と突き刺し、刃を壁の様に立てて受け止めて見せる……いや、暗殺者のクラス、とは言うがあんな風に真っ向から攻撃を凌ぐ暗殺者が何処にいるというのか。

 

 しかし、意外と言えば意外だ。速攻でアサシンを無視して、俺の首を取りに来ると思っていたのだが……もしくは。

 

「――将を射るなら、先ずは馬から、だ」

「うち、別に野暮天を蹴り殺したりせぇへんけどねぇ……まぁ、アンタなら、蹴り殺してもええんちゃうか?」

 

 ――アサシンを、明確な脅威と判断したか。

 

 引き絞られた姿勢から、前傾姿勢で突っ込んで来た顔面目掛け飛び出すのは、シンプルかつ、モーションの少ない前蹴り――が、くるり、と一回転、宙に飛び下がられて避けられてしまう。

 しかし、下がった後は。ゆっくりと刀を構えるばかりで、続けざまに突っ込んでは、来ない。冷静だ。

 

「蹴らせる暇も与えん――その目を抜いてくれる」

「うちの目ぇがお好みなん?」

「はっ、抜かせ。人を人として見ぬような人外の目など、願い下げだ」

 

 一歩、また一歩、と。此方に距離を詰める動きも、実にゆっくりとしたものだ。アサシンの様子を伺いながらの接近、やはり、実に冷静だ。

 先ほどまでの動きが、疾風の如き突進だったせいか。その動きが、酷く緩慢に見えて来てしまう。じりじりと、ゆっくりと距離を詰める動きに、じれったさすら感じ始め――

 

「――しっ」

 

 かちん

 

「……髪の毛一本程か」

「その一本が、ええ塩梅に遠いさかい……楽しみにしとき」

 

 そう思っていた一瞬だった。

 太刀が、アサシンの、眼孔に――焦りそうになったが、しかし血の一滴も垂れてはいない。どうやら素手で受け止めたらしく、無造作に突き出された切っ先を掴んだからか、そちらからは赤い雫が滴っている。

 聞こえた音は、掴んだ時に刃と爪がぶつかる音だったらしい。

 

「ちっ……」

 

 舌打ちと共に、ゆっくりと太刀が引き戻される。追撃しないのか――なんて馬鹿な事は言わない。さっきの動きの異常な加速を考えれば、迂闊に手を伸ばせば、手首から先を持っていかれているかもしれないだろう。

 

 ……下げた剣の切っ先は、ゆらりと弧を描き。その動きに合わせるように、アサシンが大剣を握り直す――直後に、太刀の円の動きは、きらめきが一本の線になる程に、急速に加速して行って。

 

「しっ……ハァッ!」

 

 ぎっ! ぎぎぎっ!

 

「んもう、じれったいわぁ……!」

 

 踏み込み。

一撃の後に、次いで三連。最早、速いだけではない。此方にも認識できるほどに『遅い』一撃すら組み込んで。いる。

 

素早い斬撃に目が慣れていると……アレは、キツいんじゃないのか。俺達でも見えるってコトは、アサシンに取っちゃ大きな付け込む隙にしか見えないんだろう……が。それを晒すか? 目の前の相手が。

 

 だからこそ、アサシンは時折顔を歪めて体をこわばらせている、ように見える……その時折は、やはり唐突に挟まれる、遅速な斬撃の時だ。要するに――罠と言う事だろう。

 

「……っぱ、普通だったらアサシンでも確実に勝てる、とはいかんな。」

 

 人間以上の力、人間以上の疾さ、人間以上の反射真剣、人間以上の頑丈さ――ちょっとした災害じみた脅威、そんなアサシン相手に、躊躇いも無く間合いに踏み込める疾さ。そして――それを大胆にも捨てて、アサシンに迂闊な一手を打たせる隙を作る度胸も。

 斬撃だけじゃない。突撃してくる時にも、速さの緩急を織り交ぜて来たなら――確かにこの閉じられた狭さ、突っ込んで来るか緩めるかの僅かな判断の差が、首が飛ぶという結果にもつながるだろう。

 

「――式部さん」

「はい」

 

 成程、このフィールド……エレナさん、式部さんの両名の魔力で補強した、絶対的な硬度を誇る結界を、自分の為に誂えられた舞台と、豪語するだけはあるだろうさ。

 『遅さを活かす』……こちらと、ある種似通った考えに至るとは。

 

 さて――では試してみよう。向こうにとって誂えたような理想的な舞台の中で。『此方が仕掛けた一手』から、絶対に逃れられない状況下で、どれだけ耐えられるか。

 

「そろそろ始めてくれ――念を押すようだが……」

「はい、大丈夫です。巻き込むような事は、決して」

 

 式部さんの指先に、光が灯る。

 空間に描かれる文言は――呪詛。相手を傷つけるのではなく、触れた相手に呪いを与える類の業。決して相手に致命打は与えられないのだが……

 

「――」

 

 ぴくり、と仮面の下の頬が僅かに動いた。視線が一瞬此方に向いたような気もする。やはり気づかれるか、とは思う。だが……関係ない。気づかれようが、気づかれまいが、この一手は――

 

 確実に、その羽の生えたような軽やかな跳躍を。

 地を風の様に走るその軽い足取りを。

その全てを纏めて絡めとるための、蜘蛛の糸のようなモノだ。

 

「――これが終わったら、うち、お楽しみさせてもらえるんやと」

「……何の話だ」

「せやから……堪忍やで? こっからアンタ――羽捥がれてしもた、ちょうちょうさんみたいになってまうから」

 

 ――にやり。

憐れむように、女武者をアサシンが、嗤う。それに合わせるように。

 

 ふわり、と……呪詛が空中に漂い始める。それも一つや二つではない、先ずは、六つほど、纏めて。アサシンの背後から、それこそ、蝶のように、華やかな輝きと共に、四方へ向けて広がっていく。

 当然、自分狙いだろうと思ったのだろう、アサシンに振り下ろそうとしていた太刀を一旦、腰貯めに構え直して、一歩下がろうとした所で――

 

「……何っ?」

 

 それを見た、武者の目が見開かれる。

驚いただろう、自分に向かって飛んでくる、そうとばかり思っていた呪詛の弾丸がまるで――こっちに突っ込んでこない。その上……実に、遅いのだから。

 

そう、全く以て、この呪詛は素早くはない。

 寧ろその逆で……酷く、緩慢だ。それこそ、歩いていれば、一呼吸もしない内に抜かせるだろうと言えるほどに、亀の歩みと言うのすら躊躇われる程に。空中に留まっているのではないか、と錯覚するほどに、だ。

 ゆっくり、ゆっくりと空間を漂う動きは……更に。実に、無軌道で、自分を狙うような意志をまるで感じないと来ている。

 

「これ、は……!?」

「はっ、そう驚くな。お楽しみはこっからだぜ……式部さん、もう一発!」

「は、はいっ!」

 

 ――そんな弾丸が、更にもう一段。

 

 再び、広がったそれは、同じように、穏やかに空中を漂い始める。

 

 一歩下がった所で、女武者は……呆然とそれを見ている。まるで殺意の無い攻撃。やる気のない援護――そう見えているのだろう。ならば、一つ。

 ここらで絶望を見せてやろうか。

 

「アサシン!」

「――ふふっ」

 

 十二の弾丸、それが漂う空間の中に……狩人を、解き放つ。躊躇わず、爪を構えて突っ込むアサシン。その姿に女武者は――明確に、狼狽えて見せた。

 

「なにっ!?」

「もーろた♪」

 

 伸びる指先、空中に漂う呪詛、焦りを見せたそのまま――首に向けて飛んでくる切っ先を、払いのけて見せた。流石に見事な反応だ。奇襲を仕掛けても、やはり生中なやり方では苦しんですらくれないらしい。

 だが――

 

「……そう言う事かっ……!」

 

 寧ろ、払いのけた事で、武者の顔に滲む焦りは。

 

 更に、深まった。

 

 視線の先――爪の一撃を大きく払いのけられ、体制を崩し……そのままに、空中を漂う呪詛に触れたアサシンは。

 何事も無かったかのように、それを、『すり抜け』……当たり前のように、何の苦しそうな様子もなく、立って見せる。

 

 これがどういう意味か、分からない程にバカじゃないだろう。

 

「……っ!」

「さーて、こっからは電撃イライラ棒の時間だ……プレッシャーによる思わぬミスにご注意くださいってなぁ!!」

 




めっちゃ投稿遅れて申し訳ありません……! クソほど難産してました……! 
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