FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百五章・裏:危鬼決戦 後

『――何? 素早い相手に術を当てる方法?』

『はい』

『『あの』クー・フーリンの師匠なんだろ? 最初にクー・フーリンと出会った時は、キャスタークラスでルーンでの火球でボンボン敵を薙ぎ払ってたのが記憶に新しく――』

『……アレがキャスター? 火球で敵を……???』

 

 お前は何を言っているんだ? と言った感じで。

サラリと紅髪を靡かせる可愛い小首の傾げ方と、強い意志の感じられる眉間と皴とがあいまった、実にシュールな表情をさせる所から、我らのスカサハ師匠への『指導願い』は始まった。

 

 ……まぁ、サーヴァントを知っているものなら、『サーヴァントに指導』と言う言葉がそんなスカサハの表情以上にシュールな意味合いを持っている事は分かるだろう。

 サーヴァントというのは、基本的にその人の『全盛期』を写し取って召喚される『影法師』である。写し取る、と言うその言葉に偽りはなく、その全盛期の実力から、劣化する事も成長する事も無い。

 

 劣化にしろ成長にしろ、主に肉体面での事を指すのだが……重要なのは、サーヴァントというのは『成長』というモノに非常に縁遠い存在だ、と言う事だ。

 そんな彼らに対する指導、というのは、果たして意味のある行為なのか。

 

『……まぁいい。要するに、術を使い『狙い撃ち』にする方法が知りたいという事だな』

『そうだ。相手は攻撃をものともしないパワータイプじゃなく、一切の攻撃すら掠らないスピードタイプ。がむしゃらに撃ってもまぁ当たらん。なんかないか』

『ふぅむ――まぁ、無い訳ではないな。技術と言う程のものでもなく、ほんの少し、意識を変えてみるだけでも劇的に変わる場合はある。サーヴァントでも、技術を学べぬかと言えばそれは一概でもない』

 

 結論を言おう――必ずしも、それはNOとは言えない。

 

 肉体的な成長はなくとも、新しい技術……小手先の工夫であれば、それこそ習得はさして難しくない。人間として思考するだけの脳があり、きちんとした自意識がある以上はその記憶の中に『動作』を記憶させるのは、霊長を模した英霊として最低限『出来なければならない』事だからだ。

 

 故に……成長に縁遠くとも、成長を『しない』と言う訳ではなく。

 召喚された『その影法師』のみの話ではあるが、技術的な更なる向上がある事は決して珍しい事でもないのだ。

 

『イケるのか』

『私を誰だと思っている。武芸百般を収めたが、ルーン魔術に関してもそこらの魔術師如きには遅れは取らん。いや、向こうの方から教えを乞うてくる程度には腕も立つ』

『成程、心強い――流石は『師』の英霊だ』

 

 そして……もう一つ。

 

 サーヴァントに干渉できるのはサーヴァント――教育、育成、そう言った逸話のあるサーヴァントの指導であれば、それこそサーヴァントが『成長』するのも決してあり得ない事ではない。サーヴァントというのは、何処までも『概念』の話だ。

 『傷つける』という概念が形を取ったような武器で傷つけられれば、どれだけ守りを固めようと防げないし……伝説の英霊を多く育てたという『教育』の概念のようなモノでぶん殴られれば否応なしに成長もする。

 

 スカサハは、戦士と言う一面を持ちながらも、『師』という概念そのものに近い特殊な英霊だ。彼女の指導であれば……式部さんも、あの女武者に対応できるかもしれない、と俺は踏んだのだ。

 

『……が、お主たちにはそれは向いてはおらんだろう』

『『えっ』』

『そもそも。その娘、戦士ではなく学者、識者であろうに。それを畑違いの戦場に引っ張り出して更に戦のコツを教えようというのが間違いであろうよ』

 

 ……が、相手が師匠としてグレードが上過ぎたせいで普通に諭されて終わる結果と相成りました。なんてこったい。これでスカサハ師匠のぱーふぇくと魔術教室おしまいおしまいと――

 

『が。しかしだ。識者であるならば、寧ろ『頭』を使う方向で何とかするのが良いのではないか?』

 

 ――は、ならなかった。

 

 確かに、戦うための術を当てる方法は教えてはくれなかったのだが。

 

『例えば――そうだな。私のルーン魔術で言えば、これは何かに刻んで使うモノで、これそのもので攻撃するようなやり方は普通せんが……応用の仕方によっては、面白い使い方も出来ない訳ではない』

 

 その代わりに、ある『実践』の仕方を見せてくれた。

 指先が、何もない空中を走り。その度に描かれていく、『ルーン文字』。それは、式部さんも良くやっている、空中に文字を描く術……なのだが。

 

『――す、スカサハ様、まさかこれは……っ!?』

『ただ空中にルーンを浮かべた訳ではない』

 

 明らかに違ったのは……そのルーンに、俺達が『触れた』事。

 

『これは、空中に『固定』してある。分かりやすく、お主たちに触れるようにしてはあるが、触れる様にせずとも、足場として用いたりすることが可能だ』

 

実際、俺がこの文字の刻まれてる『空間』を足場にして、軽く二段ジャンプ擬きをやって見せた時の式部さんはと言えば、それを見て、真っ白すべすべな頬を更に蒼くさせながら、気絶しそうになっていて。

曰く、簡単にやっては見せているが、何気に自分の師である晴明レベルの超高等テクニックであり。生中な魔術師では真似どころか影すら踏めないレベルらしかった。

 

『こ、コレを今から私がやろうとなりますと……あわわわわわっ……!?』

『まぁ、お主は専門家ではないにせよ、才能はある方だ。百年もあれば確実。私のスパルタコースに耐えられたなら、最長でも三十年程度に短縮する事も難しくはないが……今すぐには無理だろう』

『ですよね……』

『――だが、このルーンを空中に固定する、というのは、存外と使い道がある。それこそ足場にするのであれば、相手に干渉し……』

 

『罠のように、使うとか、な?』

 

 ……故に。スカサハ師匠が教え込んでくれたのは。

 そう言った、魔術を『当てる』為の考え方ではなく。魔術を活かして『追い込む』為の言わば……狩人的な、思考論理だった。

 

『後はソレをお主が如何に活かすか、だ――さて、それはちょっとした実践の中で見せて貰うとしようか。なあに、思いつくまで、存分に追い込んでやるとしよう……!』

 

 

 

 

 

 

 ……あぁ、戦っている時に思い出しもする。

 思い出すというか、刻み込まれているのだ。マジで。俺と式部さんとは、一緒になってこの戦法を思いつくまで追い込まれまくったのだ。クー・フーリンの師。影の国の女王。武芸百般……その意味を知る事となった地獄のような時間だったのだが……

 

 しかし、そのおかげでこの戦法を思いつけたのだから感謝する事にしよう。素早い獣には対し直撃を狙うよりも、射撃を『置く』つもりで動いた方が宜しい、と言う事を……!

 

「式部さん、第6射いけぇっ! さっきまで潰れてたのを差っ引いても二重のラインは割ってない、この調子だ!」

「はいっ! こうして……こうです!!」

「えぇいっ……! 小賢しいっ、真似をっ!」

 

 相手を削る火力もいらない。素早い弾丸もいらない。何なら相手を追尾するようにしなくても良い。その代わりに、付与した効果はたった一つ……特定の相手、要するに『女武者』だけが、この術に触れた時に影響が出るように。

 実に単純な仕掛けを施した術を、限られたフィールド内に、フラフラと漂わせるのだ。

 

「ええいっ、狭苦しいっ……ここまで苛立たしい仕掛けをされたのは……っ!?」

 

 地面を蹴り、結界の壁を蹴り飛ばし、まるでスーパーボールのようにぽんぽんと好き勝手に自由に動き回る。

 そんなに限られた空間を縦横無尽に動き回れるのなら。その動く直線上に、機雷のように、ばら撒いておけばいい……日本人なら良く分かるさ、このイライラ加減。

 見えている地雷に気を遣い、精密な動作でそれを掻い潜りながら。

 

「ほぉれ……そっちだけ見とってもあかんよ?」

「貴様っ、この、こんなっ――!」

 

 ど ご ん

 

「――ご、げぇ……っ」

 

 迫りくるタイムリミットに背を押されながら、焦燥感を煽られるのは、流石に彼女にも経験はなかっただろう――遂に、直撃だ。

 

 自分の突っ込む先、浮かぶ紋様速度を出し過ぎて、あわや接触、再び動きを鈍くさせられそうになったところで身を躱し……その懐に現れた隙に、飛び込むようにして叩き込まれた鬼の膝が、女武者の体をくの字にへし折って。

 

「が……ぁっ……!?」

 

 めき めきめきめきぃ――!

 

 ふっ……飛ばす!!

 

「……ふぅっ」

 

 降り立つアサシン。着物を軽くはたき、靡かせながら漏れる僅かな吐息と共に。

 

 結界に叩きつけられて――ばちん、と弾かれた女武者が地面に転がった。

かなりのクリティカルヒットなのは間違いない。それでも立ち上がろうとするが……足が震え、膝を突き、流石にグロッキーなのは見て取れる。

 

「――呪詛の直撃、『十六発』か。やっぱ厄介だよ、アンタは」

「……ぬ、かせ……」

 

 直撃だけではなく、掠って消えた呪詛もカウントすると……喰らった術の数は総合計で三十にも上るだろう。

 

それだけの大量のバフを受けて、体中に、その動きを呪い、阻害する呪詛を纏わりつかせ。更に空中には常に二十以上に接触したら更に動きが鈍るトラップが浮かびまくるキルゾーンの中だ。

 それでも尚、最強クラスの鬼の少女相手に、僅かとはいえ競り合って見せるとは……単騎で俺達を追撃し続けた実力と執念は、やはり伊達ではなかった。

 俺を……なんだろう、多分。狙って来ている勢力が、満を持して送り込んだサーヴァントなのも頷ける程の強さだ

 

 とはいえ……それだけ強いなら、知ってる事も、かなり多い筈。サーヴァントを捕まえて情報聞き出すなんざ、人生初めての経験だが……!

 

「大人しく、捕まって貰うぜ……! 式部さん、周囲の警戒と結界の解除を……アサシン、悪いが頼む」

 

 二人が頷きを返してくれたのを確認し、地面に倒れ伏した剣客に向け、一歩、一歩と歩みを進めていく。

 此方を視認し、向こうも一歩――踏み出そうとした所でしかし、向こうは完全に体が動かないようで、ガクン、と力なく再び膝をつく事しか出来ない。

 

 ちらり、と式部さんの方を確認し……黒髪が左右に靡く。特に何もない様で。なら、とさらに一歩を踏み出す。アサシンが彼女の背後に回る。そして――

 

「――ンンンンンっ! どうやら! 保険の一手が効いた模様にて!」

 

 突如。

 

 そんな男の声と共に。

 

「っ!?」

「甘いですなぁ……あの男なら兎も角、弟子の貴女に悟られる程、温くも、非ず!!」

 

 周囲から、黒い影法師たちが、湧き出し始めた。

 




ここで捕まっちゃったら活躍の機会減っちゃうから……(言い訳)
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