FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百六章・裏:台無しの一手

「――ヤロウ、一体何処行きやがったっ……!! 式部さん、本当に大丈夫なのね!?」

「は、はいっ、一応は何処にも、一切傷は……」

「そうか……良かった」

 

 もし彼女に迂闊な事でもしてようもんなら、この拳に込める殺意の濃さが更に高まる所だったんだが……うーむ。流石に

 

「……なんでそないに残念そうなん?」

「えっ……? ま、マスター、私、何か粗相を……?」

「いや良いやそう言う事じゃなくていや、別に式部さんに傷ついて欲しかったとか、そんな事は世界が三順くらい加速しようが絶対にあり得ないんだけども!?」

 

 もし、もし仮に、式部さんの珠のような肌に傷なんぞつけようもんなら付けた奴をソイツの総体を千々に引き裂いてやるつもりだが……そうなってたら、奴のお陰で僅かにでも傷ついてたら、もう更にリンボの野郎の鼻の孔に指突っ込んで突き抜けるいい口実になる、と思ってたんだけど。無傷となるとさすがに虐めるのは自重しないとダメかぁ……

 

 まぁそれでも、奴をブチ転がさんと決めたこの足は、アイツから敗北に歪む表情を勝ち取るべく止まらない訳なのだけれども。

 

「まぁそれは兎も角……折角苦労して組み上げた結界と、捕らえたと思った捕虜……どっちも台無しにして逃げられたんだからな……こっちも、ちょっと腹に据えかねてるんだよマジで」

 

 ……突如として四方八方に湧き出したシャドウサーヴァント達の襲撃と共に。声と共に戦場に現れたのだろうリンボは最高の――こっちにとっちゃ最悪の仕事をしてくれた。

 二人のキャスターによって強固に作られた結界に大穴が開き、地面に崩れ落ちていた女武者が居なくなったのを確認したのは、周りの影の剣士を蹴散らした後の事で。

 

 しかも嫌がらせとばかり更に追加のシャドウサーヴァント達が表れ始めた所で、ダ・ヴィンチちゃんから報告が。敵の送り込んで来た追加戦力、その総数は三桁にも上るという事であった。

 そして反応的に……このシャドウサーヴァントを呼び出した術の行使は、何処か探知できない遠方ではなく、ここで行われた事も含めて。

 

「そりゃあエジソンだって、限界とばかりに吠えもするよ」

「吠えとったねぇ」

「……とても、悲痛な叫びでした」

 

 ……それでアメリカ側の戦線は崩壊。撤退と仕切り直しの判断が早かったお陰で人的被害は軽微で済ませてるようだが、折角頑張ってみんなで作った優位を一発で崩された事への不満は大きかったのだろう。その怒りも背負って、俺達は各戦線のシャドウサーヴァント、及び、リンボの捜索を請け負っている。

 

「……エジソン的には、アイツが何するか分からないから、先に叩いておきたいって言う方が大きいんだろうけどな」

「そう、ですね。姿をくらませたとはいえ……どうにも、不気味です」

 

 そもそも、あの女武者を回収したのだから、それで撤退してても、何ら不思議ではない状況で……それでも、アイツを追跡するという選択を取ったのは――

 

『さぁさ、ここで一気呵成! アメリカ首脳部の皆様、頂いてしまいましょうや!』

 

 あの、『シャドウサーヴァントから』聞こえた、自信満々な態度だ。

 シャドウサーヴァントによる奇襲は確かに脅威ではあるが……しかし、それでエジソンやエレナを伴った俺達を纏めて倒せる確信を得ていた、とは流石に思わない。

 どうにも、一見すると愉快に思えるくらいに印象の強すぎる(喋り方とか)サーヴァントではあるのだがしかし……

 

 アレだけ自信満々に『やれる』という態度を見せておいて、アレだけの仕掛けでお終いとかいうおまぬけな面白キャスターおじさん――だとは流石に思えない。特徴的な声の中に、何というか……確かな悪意を感じる気がする。

 

『――おやおや、コレはいけませんな。しからば取り敢えずは、どろん!』

 

 そう言って風の中に消えて行ったシャドウサーヴァント……アレを操っているであろう本体には未だダメージすら負わせていない。ぴんぴんしてる。もう一つ程、なんか悪さをしでかしても不思議じゃない。

 

「おっ、また出てきたか!」

「っ!」

「んもう、これで何度目やろか。ほんま、元気のええこと」

「少なくとも追加を律義にこっちに向けて送り込んで来る辺り、ここから逃げてるって事はないんだろうが……さて」

 

 しかし……アイツの言い方からして、リンボが今回目標としてんのは、俺じゃなくてアメリカ側、つまりリンボはケルト側の目標を果たそうとしてる。

 だってのに、首脳陣から離れてリンボを追ってる俺達に対し、こうやってシャドウサーヴァントを送り込んでるって言うのは、どうにもちぐはぐだ。

 

「……何を狙ってやがる?」

 

 首脳陣を更に叩くんであれば、シャドウサーヴァントもまとめてそっちに向かわせればいいだろうに……こんな風に戦場全体に散らせて、追加の敵もこっちに回してる。ケルトの兵隊達じゃ、首脳部を固めてる兵隊を突破するのも難しいだろうに。

 ……自分が単騎で打って出て……いやぁ、一度会っただけだけどそんなこう、パワフルな戦い方するようなタイプには思えない。

 

 それよりも、こつこつと積み上げてきたものを、土台を軽く蹴っ飛ばしてぶち壊すみたいなやり方を好むタイプじゃないのか? それこそ、一手で全部がひっくり返りかねない様な――

 

「……この混戦の中で、何か狙って大きな効果を上げる様な場所があるのでしょうかっ……一体、討ち取りましたっ!」

「ナイス! あー分かんねぇ……正直、さっきのエジソン、エレナの二人を討ち取れてたら、一番の効果を上げてたとは思うんだがそれもしくじったし……」

 

 狙うとしたら、それ以上に致命的な『何か』である事は間違いないのだが。けどこの戦場の中に、そんなもんあるのだろうか。一手でこの周りが全部崩壊するような爆弾とかそう言うのが……?

 

「なんかすごいサーヴァントとか投入する準備とかしてる? 第二特異点の時のあのセイバーみたいな……」

「一騎で全てを覆すような、強力なサーヴァントを、ですか」

「そう言う奴を投入する為に陣を敷いてるとかだと、それが完成する前に叩かないと、とんでもなくマズいが……」

 

 ……ダメだ、ハッキリした確証が持てない。

 出来れば、こうやって走って彷徨ってる所から、確信以て動けるだけの、『それはヤバイ』って思って行動できるくらいのハッキリした……指針が……

 

「……うち、そう言うの詳しくないんやけど」

「ん?」

「あの二人は、どっちが自由になっても、周りは迷惑なんちゃう? 少なくとも、うちとかゴルゴーンはん位しか、白い方の弓使いは抑えられへんと思うわぁ」

 

 そう言われ、ちらりとアサシンの指差した先を見る。

 未だ相争うカルナとアルジュナ、宿命の戦い。凄まじい戦いだ。確かに、今でも回り巻き込むレベルのとんでもない戦いを引き起こしてはる。

 確かに、あの空中を飛び回って爆撃してくる色黒のアーチャーくんがカルナさんから解放されたら、あの位置だと……少なくともアメリカ軍の横っ腹は食い破られるか?

 

 成程なぁ……

 

「――いやアレだぁああああああっ!!?」

「はひぃっ!?」

「……うち、こない担当とちゃうんやけど」

 

 ち、チクショウっ、なんで気が付かなかった……っ! そりゃあそうだ、今一番、奴に茶々入れて欲しくない所をもっと考えるべきだったっ! も、もしアルジュナで手いっぱいなカルナを、背後から突かれようもんなら、マズい!

 

「わ、悪いアサシンっ、ここは任せて先行してくれっ! このままマジでカルナさんやられたら、あの化け物アーチャーが解き放たれるっ!」

「はぁ……狂言やっとるんとちゃうんやで? 気いつけてな?」

「お願いしますっ……!」

 

 俺の必死の懇願で、アサシンが軽く跳躍して、カルナとアルジュナの戦いの場へと向かってくれるが……しかし、これ間に合うだろうか。

 さっきまで結構探し回ってて、十分準備をするだけの時間はあった。カルナとアルジュナは二人ともお互いに集中してて、何時だって横やり入れられるだろう絶好のタイミングである。

 あそこから、リンボが何処にいるか探して、それでカルナさんへの横槍を防いでそれから……時間がないわりにやる事が多い!!

 

「……アサシンを信じるしかないかっ……!」

 

 最早鬼種という、人知を超えた怪物の第六感にかけるしかないだろう。即座に奴の悪意を見抜き、そしてその魔の手を食い破ってくれることを……っ!

 

 未だ現れる黒い影。焦る思考。狭まる視界。

 俺でも探せないかとは、一応やっては見るが……しかし、一介の人間の視界では、コレだけ乱れた戦の中で個人を探すなんざ、それこそ――

 

「――生温く信じられたい訳ではない。想像しただけでも、鳥肌が立つが」

 

 ――女神のような、高い視座でもないと。

 

 耳を埋める戦場の喧騒……そんな中で尚――するりと俺の耳に届いたその声に。はっと顔を顔を上げる。酷く静かで、そして、酷く冷たい。

 

「ハナからアテにされない、というのも……」

「おっ――おのれっ、一体何時からっ……!?」

 

 天を仰ぐ。

 屈強な尾が、その大柄な体を天に押し上げる……そしてその先から伸びた無数の蛇が、天に逃れんと跳躍した、見覚えのない男を追っていた。

 白、黒に分かれ、若草色の着物を着崩したその男は。

 

「それはそれで、頭にクるものだな? マスター」

 

 世界最高クラスの、麗しき蛇妖の手によって、その耽美な顔を苦々しく染め上げていた――!

 




ゴルゴーンさんがずっと蚊帳の外だったのはこういう理由があったのさ!!(大嘘)

今回の投稿はここまでとなります。次は五月に投稿再開しますので、その時、お暇があれば読んでいただけると幸いです。
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