FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「――ゴルゴーンさん!!」
「被害を出したくなければ周りを下がらせろ。巻き込んでも私は責任を持たん」
思わず駆け寄ろうとした所で。
此方を見もせずに言われた一言に、足を止めた。目の前の術師を睨みつける瞳は、闘志によってかそれとも、忘れ得ぬ憎悪の残り火なのか……いずれにせよ、この特異点に来てから一番、煌々と燃え盛っている。
今のゴルゴーンさんなら、本当に周りに誰がいようが普通に大暴れするだろう……そうする前に警告してくれただけでも、ありがたい!
「――アメリカ軍全員、一旦離脱しろ! 敵は倒さなくていいが、出来れば釘付けにしておいてくれ! 我がカルデア最強クラスのお方が、全部纏めて蹂躙してくれる!」
出来るだけ大声を張り上げる。こっちの思惑が知れるとかそういうのは考えない。今は深い思慮よりも速攻の判断が全て。折角のお心遣いを無為にはしない。
出来るだけ大声を張り上げたのが功を奏したか。周りの兵隊たちは、皆一様に慌てたように敵に向けて弾丸をばら撒きつつその場を離れ始める。
取り敢えず、これでアメリカ側の皆が巻き込まれる事はないだろう。と言いたい所だがしかし……一番非難させないといけない人が避難できていない。
「――カルナもだ! アルジュナ諸共消し炭になりたくなけりゃ、こっから離れろ! ゴルゴーンさんのパワーは、相手したアンタが一番よく知ってるだろ!」
そう言って、その非難をしてもらいたい最後の一人に声をかけた――訳なのだが。
「はぁあっ!」
「オ゛ォォォオッ!」
……舞い散る爆炎。飛び交う光の矢。
その中心で激しく撃ち合っている二人は、相も変わらず相手しか見えていない様だ。いやぁ。コレはダメだ。どっちも聞いてないや……聞こえてるなら、間違いなく一旦休戦くらいはするだろうと思うのだが。
仕方ない。もう一度声をかけるか――
「――邪魔だ」
ビャーッ!!
「「ぬぉおおおっ!?」」
そう思ったところでいきなり二人に向けて魔力ブッパが飛んだ。
いやもう、いきなり過ぎて、もうちょっと反応遅かったら付き合わせていた二人のイケメンフェイスがゴルゴーンさんの邪魔ビームによってちょっとイイ感じに焦げていたかもしれない位にギリギリ……ちょっと問答無用が過ぎて完全に度肝抜かれた。
いやはや……容赦ありませんなぁ、流石はゴルゴーンさん。完全に二人とも戦いどころじゃなくなって一歩退いたぞ。
「な、何をするのです!」
まぁその代わり、勝負にいきなり水を差され、ブチ切れなアルジュナが此方を睨みつけて来てるが……しかし、ゴルゴーンさんこれに対し睨み返す訳でもなく涼しい顔。
「貴様、頭が間抜けか。私が敵に何か遠慮をすると?」
「私ではありません! 今は一歩間違えばカルナにも直撃していました! 味方でしょうが! 巻き添えにする気ですか!」
「退かないそこの白いのが悪い」
「なっ……!?」
あ、怒るのそっちなんだ。
……まぁ何方が悪いとかは敢えて言わないが。強いて言うなら、ゴルゴーンさんはその言葉とは裏腹に、割と遠慮したやり方をしている、と言う事だ。
さっきので二人まとめて狙って吹っ飛ばして強制的に退かすようなことはせず、その間を狙って下がらせる……容赦って物から最も遠いスタンスが基本のゴルゴーンさん的に言うなら、寧ろ温情マシマシまである。
「大体、これから私は本気で暴れ回るつもりだ。その時、お前が執心しているランサーに遠慮してやる程、私はそ奴に好印象を抱いても居ない」
「……っ」
「警告してやっただけ、温情をかけたと思え――次は、無いぞ」
……とはいえ、警告にしちゃちょっと威力に振り過ぎな気はするが。
それだけ強めの警告だからこそ。ゴルゴーンさんの言葉に説得力が出て来ている。次は如何にトップサーヴァントとはいえ――体の芯まで焼き焦がす様な一発をお見舞いしてやる、と。
如何にインドの神話の伝説的英雄とはいえ、相手も神話に名高き大怪異だ。その全力に巻き込まれるか、さもなくば――
「――下がるぞ、アルジュナ。仕切り直しだ」
「……あぁ。業腹だが。彼女の戦いの間合いにいるのは、得策ではない様だ」
流石に……その二択を迫られれば頭も冷えたか。二人とも漸く武器を下ろして踵を返して歩きだし、足早にその場を立ち去っていく……カルナvsアルジュナの仕切り直しと同時に、目の前の元凶野郎の目論見は、完全に瓦解した事になる。
「いやはや……やってくれましたな。気持ち良く崩す機だと思っていたのですが」
「ふん。貴様の気持ちの悪い薄ら笑いが歪むところが見られただけで、満足だ」
「ンンンンン――言ってくれる」
さっきの二人を引き離す為に使った紫の光の一条。そして残りの全ては……まぁ凝りもせずカルナに奇襲を仕掛けようと、一歩を踏み出そうとしていたリンボに全て降り注いでいた。
足元を払う、とかじゃない。着物の表面を焙る程にすれすれの所を狙って――まるで光の檻を形成するかの如く――あらゆる行動を『制して』いたのだ。
……が、リンボは自らの体から、僅かに焦げた香りがしているのにも、眉一つ動かさないまま。まるで猫のようにするりとした足取りで、ゴルゴーンさんの前に踏み出した。
「いやはや……厄介ですな。如何に口を滑らそうとも、撒いた油諸共に焼き尽くされては何ら意味もなく。所謂『まじれす』と言う奴でしょうか」
「貴様の様な輩の話は耳に流す必要すらない。その一つ一つに如何にペテンと詐術を仕掛けようとも、それを諸共に灰にすれば何ら脅威ではない」
「いやはや! 拙僧の如き『悪』の天敵が同じ『悪』とは! 皮肉の効いた事!」
そして、踏み出された最後の一歩から繋ぐように――どん、どん。と。
まるで太鼓の様な、腹に響く足音が聞こえた。それと共に突如として、男の周りに噴き出す禍々しい気配は、戦闘態勢に入った合図か。
「――なれば拙僧、天敵に睨まれた鼠の如く、噛みつく事しか出来ませんなぁ!」
人の癖に、『牙』も『爪』も剥き出しに、まるで人型の肉食獣の如き形相を見せ……人にして法師なれども、俺には目の前の大男が、人食いの獣にしか見えなくなっている。
山にいた頃から、獣の恐ろしさって言うのは嫌って程、叩き込まれてきた。夜道に獣が一匹、それだけで人を殺すには十分な状況だと……誰かに聞いた事がある。誰かは覚えとらん。
んが、そんな俺が目の前のケダモノにビビらないのは……それ以上のお人が傍にいるからである。
「猫ではなく、私は蛇だ――まぁ、噛み砕いて喰うか、丸のみにして喰らうか、その程度の差ではあるが、な」
「……ンンン、可笑しいですな。拙僧バックアップを受けているので、そうは容易く負けぬ筈なのですが。これ――もしや負け試合と言う奴では?」
紅い舌がちろりと覗き――リンボを見下ろす顔は、最早『無表情』と言ってすらよかった。怒りに顔を歪めるでもなく、笑うでもなく……完全な真顔である。舌覗かせてるから凄惨に笑ってるとか思った!? 残念真顔でーす!
……見なきゃよかった。下手な怪談、B級ホラー映画なんざ鼻で笑えるレベルで肝が冷えたぜ。『あ、俺今日死ぬな』ってこの旅でふと思ったのは初めてだよ。
「試合? 妙な事を言う」
――あ、いや。ちょっと待ってまだ終わってなかった。我がサーヴァントから感じる圧力がどんどん膨らんでいってるわ。
「まだ私と対等に戦える、と思っているのか――勘違いをするな。貴様の様な小賢しい人間の末路は、怪物の足の下で無様に間際の泣き言を喚き散らしながら、最後には赤いしみになるモノと決まっている」
感じる圧力はどんどん膨らんでいく。
それに圧されるように、一歩、一歩と下がってしまう。一応、ゴルゴーンさんの最大のパフォーマンスを発揮する為、マスターとして出来るだけ近くにいるつもり、だが。
コレは……そんな悠長を言っている場合ではないのか、もしや。
「退屈しのぎに――弄ばれながら、な」
そうして見つめる先で――肌で感じる圧力は、突如としてその膨張を止めた。
爆ぜる。
瞬間の感覚に従って――額に角が生えた事を確認すると同時に――思い切り地面を蹴っ飛ばした。勿論、ゴルゴーンさんに思い切り背を向けて。
逃げだしたのだ。端的に言えば。だがしかし。彼女の事を信頼していな訳ではなくて寧ろ……絶対的な信頼しかなかった。
俺の事など考えず。彼女は本気で暴れてくれるのだろうと――!!
「死ぬがいい」
呟くようなゴルゴーンさんの声が、耳に伝い。
その直後に、俺の脇を駆け抜けたのは、ゴルゴーンさんお得意の紫紺の光条。地面を擦るように、遥か彼方へ向けて薙ぎ払う様にして。
たらり、と冷たい汗が背を伝い。
思わず、背後を伺った……その、目に飛び込んで来たのは。
「ぬぉおおおおおっ!?」
「あ ハ は は は ハ は ハ は ッ!!!」
――即ちは、光の『神殿』。
四方八方、否、十六方……それ以上か!?
ゴルゴーンさんの全身から吐き出された無数の光の矢が、槍が、魔力の波が――全て一斉にリンボに襲い掛かっている。着物どころか、白黒の髪すら、避け切れずに焼き焦がされたリンボの顔は、完全に引きつっていた。
最早、攻撃しているというより、空間を制圧しているというのが正しい密度。先程のカルナ、アルジュナの戦いにも劣らぬ程の圧倒的火力!!
「――侮っていた! サーヴァント! ゴルゴーン! 『これほど』とは!! いやはやコレは……『二つ先』にも劣らぬ威容ではないか!!!」
「たまの憂さ晴らしだ――精々、簡単には壊れてくれるなよ、キャスタァァアアッッッ!!!」
恐るべきギリシャの怪が。
アメリカ大陸に、新たなる神話を刻む――!!
Q:もしかしてゴルゴーンさん大好き?
A:うん☆ 宝具五さ☆
と言う事で更新再開です。何時もより短めですが、どうかよろしくお願いします。