FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第十三章・裏:狙われる者

「藤丸の奴、大丈夫かねぇ。相手は大ボスだ、なんかとんでもない切り札とか準備してあったら笑い話にもならないよなぁ、なんてフラグかね」

「物語とかでは良くあるよねー」

「……なんか凄い調子良さそうだな音楽家殿」

「そうかい? 気のせいだと思うけど?」

 

 ……一瞬見えた『エリザベートのクソみたいな音色が聞こえないのは最高に心地が良いと思うアマデウスであった』という心の声は、私の心に仕舞っておくことにしました。

 どうしてこう、要らない所でこの術は発動してしまうのかと思ってしまいます。今言ったら間違いなく士気が暴落するような一言を。しかし、アマデウス様をして……それだけ酷い音色と言い切られるそれが一体どれだけなのか。若干気になる所ではありますが。

 

「というか、なんでこう俺の周りには、この黒い奴が集まるんだか!」

「藤丸に聞いて来るように頼んだんだろう? 知りたいなら、それ待ちするしかないんじゃないかい?」

「俺こんなまっくろくろすけに恨み買った覚え、本当に……ないんだけどっ! 助けて式部さん恐ろしい化け物がやってくる!!」

「わっ、わかりました!」

 

 そう。

現状、あまりにも黒い影法師が襲い掛かって来る今、そこに気を取られては命取りになりかねません。以前の数を軽く上回る、十数人の黒い影。一人一人の質は落ちている、とはジークフリート様のお言葉でしたが……こう数が多いとあんまり関係ない、とはマスターの切実なお言葉でした。

 

「というか! 分かった! あの黒子ども明らかに俺だけに狙いを定められてるんですよねぇ!? どうして!?」

「それを聞く様に頼んでるんでしょ?」

「そうじゃない! 向こうから明らかに狙いに来てる!! これジル・ド・レェ由来じゃない気がする!」

「呼びましたか!?」

「呼んでないです!」

 

 ……それは間違いない気がします。他のサーヴァントに付き添っていない今の状況の方が明らかに生き生きと、そして、やはりマスターを狙っています。

 

「ったく、藤丸頼むよ……何でもいいから、情報を……!」

「マスターよそ見はなさらぬよう、どんどん来ます!」

「分かってるよ、ったく。一人一人妙に固いんだからもうさぁ!」

 

 ――しかし、不思議なのが。

 此方に向かってくる敵の全てが、その手に携えているのが……太刀なのです。源氏武者の方々が携えているようなそれ。鋭く、刃渡りもそれなりに長い一本。どうやらその全てが私の故郷由来のようなのですが。

 

「全く、ジャパニーズ・カタナは切れ味が良くて、切られても気づかないって聞いた事あるけど、それをここで味わいたくはなかったよ!」

「なんかそれ色んな逸話が混ざってないか!?」

「多分どれもジャパニーズの逸話だから同じだよ! って言うか、君もジャパニーズだろう!? こういう怖い話とか知らないのかい!?」

「これ怪談カテゴリ!? シャドウサーヴァントだっつってんだろ!」

 

 まぁ刀を振り回すその姿が恐怖を演出するのは間違いないです。そしてそれ以上に厄介なのが……戦力としては、戦うのが得意とはとても言い切れない私でも、何とか対応できる程の強さなのですが。その代わりと言わんばかりに、数がいることです。

 少なくとも、もう私は三人程打ち倒していますが、まだまだ戦場のそこかしこにちらほらと黒い姿が見えます。

 

「というか、無限に湧いてるよーに見えるんですけども」

「聖杯ってリソースがあるんだから、ちょっと強いだけの兵隊なら何とでもなるんじゃないかい!?」

「そんなもんなのかね」

「今は考えてる場合じゃないだろう、こっちは手一杯なんだ、早く向こうが決着を付けないとマジで……!」

 

 そう、アマデウス様がぼやいた、その時の事でした。

 

「――っ?」

「なんだ、ワイバーン達が……」

 

 戦場のワイバーンが全て、ぴたりと止まったのです。時でも止まったかのように。

 そして……その場で、空に溶ける様に、霧散していくのが見えました。

 

「消えていく、って事は……」

「藤丸様達が勝ったのですね」

「どうやらそうみたいだな。あー、ったく寿命が縮んだよホント」

 

 我々が勝った……そう見て取ったお二人の反応は、早かったです。

 マスターはもう、立っていられない、とでも言いたげに腰を地面にどっかりと下ろしてしまいました。偶に向かってくるスケルトンなどを蹴っ飛ばし、四方八方から襲い掛かるシャドウサーヴァントに気を張ってらしたのでお疲れなのは間違いないでしょう。

 そんなマスターと一緒に、アマデウス様も腰を下ろしていたのは、ちょっと謎なのですが。サーヴァントって、そんなに疲れやすかったでしょうか。

 

「はぁー……ようやく終わったのかい。ったく、本当に音楽家に重労働なんかさせるんじゃないよ。疲れすぎてケツに火が点きそうだ」

「ケツは使って無くない?」

「気分だよ気分」

「あっそ」

 

 ――そうして、お二人は一つ、息を吐いた後、空を見上げ。

 

『――お疲れ様、本造院君!』

 

 そこで、ドクターからちょうどマスターの通信機に連絡が入りました。

 

「あぁ、お疲れ様ですよ本当に……」

『うん。それに関してはありがとう。なんだけど。今は急いでこっちに来てくれ! 特異点からの退去が始まる! 一緒に居ないと取り残しちゃうかもしれないから!』

「……あぁん!? んだよそりゃあ!? 聞いてないっすよ!」

 

 ……確かに血相を変えても仕方ない程の事態でした。

 急いで立ち上がったマスターに、私も急いで駆け寄ります。そんな私達を見て、アマデウス様は笑ってらっしゃいます。

 

「はは、随分と忙しないね」

「うるさいですね……」

「事実を言ってるだけなんだけどなぁ。ったく、別れの挨拶の一つでもして行けよ。ジークフリートとか、ゲオルギウスとかにさ」

「あー……それもそうだな」

 

 ――最後に、マスターはアマデウス様に。アンタへのは必要ないのか、といって。

 アマデウス様は、湿っぽいのは嫌いなんだ、とだけ。返されました。

 

 

 

「――ったく! また式部さんを抱えて走る事になったじゃねぇか……!」

「す、すみません!」

「物凄い形相だったよね」

「清姫さんが怯えていらっしゃいましたね……」

 

「皆、お帰り」

 

 カルデアス前にて。無事にレイシフトを終え、カルデアに帰還した私達を、ドクターが出迎えてくださいました。その隣には……まるで絵画から抜け出たかの如き美人が一人。

マスターがお会いしていた、カルデアの英霊召喚で呼び出されていたサーヴァントのお一人。ダ・ヴィンチ様が。

 

「無事、第一特異点は修正された。これで、僕らは漸く第一歩を踏み出せたわけだ」

「こんなのがあの七つもあるんだろう? 悪夢みたいだなぁ」

「まぁまぁ……あ、そうだ。本造院くん。一応確認しておくけど、君の家って本当に古いだけの家なんだよね?」

 

 ――その時、ロマニ様が浮かべていた笑顔を消し。真剣な表情でマスターに問いかけられました。

 

「……一応、ね。何度も言うようだけど、封印指定も、魔術も、何も聞いた事はありませんからね。マジで」

「そう、か。じゃあどうして……」

 

 以前、ご自分の出生に付いて話されていた時に、そう言ったモノとは一切縁がない、とはしっかりと言い切ってらしたのですが。

 それを聞いたドクターは、その表情を怪訝な物に変えられました。

 

「……なんなんすか?」

「いや。ジル・ド・レェの私兵があのシャドウサーヴァントだったって事は……」

「一応、それっぽい事は聞いた」

「そうか。それで、ジル・ド・レェはアレを『至高のパトロンからの借り物』と言っていて。そして……その捧げ物として君を探して居る、と言っていたんだ」

 

 バーサーク・セイバーもそんな事を言っていましたが。どうやら彼本人が、マスターとかかわりがあった、という訳ではないようで。

 パトロン、というのは出資者、だったでしょうか。という事は……

 

「そのパトロンってのが、黒幕という可能性も?」

「それがどうかは分からないけど。どうやらジル・ド・レェのパトロンというのは、君に相当執心しているみたいなんだ。心当たり、ある?」

「……いや、ないですけど」

 

 マスターは、此度の一件に。何らかの形で関わっている、という事なのでしょうか。

 当のマスターはと言えば。心底不思議そうな顔をしているばかりで。何がどうなっているのか、分からないという表情を浮かべているばかりでした。

 




小説を書いていてわかった事。

伏線を撒き過ぎると回収が難しい。
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