FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
切り結び、弾き返し、打ち合う。
紅い二つの長剣、白い大剣。三つの剣が奏でる金属音のベースは、徐々に加速し続けている。お互いの手の内を探り合う様に。打ち合わせては下がり、間合いを測って剣先を削り合せる所から始まり……
「ふっ――はっ、やぁっ!!」
「いいぜぇ、悪かねぇ!!」
そして今や。両者ともに顔を突き合わせるほどの超至近距離で、互いに一歩も引かずの真っ向勝負にまでもつれ込んだ。既に二人の間は、一歩間違えば、互いの剣先が腕を、足を、腹を、顔を引き裂く斬撃の応酬が続く危険地帯と化している。
両者の戦い方は、対照的だ。
「はぁあああああッ!!」
「おぉおっ!」
流麗かつ華麗、実に真っ直ぐなネロ陛下の剣。只管に前へと攻め立てる、情熱的な彼女らしい戦い方。大上段からの正面への振り下ろしなんかは、見ている俺も惚れ惚れするような『華』に溢れている……けれど。
「良い剣だ」
「ぬっ、手応えが……つぁっ!?」
「だが、ちっとばかしお行儀が良すぎんなぁっ!」
力任せに、豪快に。なれど――実に、老獪。
重量級の長剣を二本、自らの手足のように使いこなし、受けるも攻めるも実に堅い。ネロ陛下の攻勢を時には真っ向から受け止めて、時にはするりと受け流し。守りの剣がくるりと回り、返す刃に変わるまで。瞬く間も無し。
僅かにヴェールを掠る程の鋭い斬撃に、たまらずネロ陛下が後退させられる。
ネロ陛下が咲き誇る『華』ならば、ベオウルフはその先にある『実』そのものだ。一瞬の輝きよりも確実な勝利を――戦士として、単純な戦いの技量であればやはり、ベオウルフの方が一枚も二枚も上手だ。
「おのれぇ、余の衣装を――はっ!?」
「喋るなんざ余裕だな皇帝サマよぉ!」
小技で崩し――そして、揺らいだそこに、今度は返しどころではない、致命の一撃を。
振り上げたのは、両手に握りしめた二本の剣である。跳躍から、飛び掛かる様に
確実に自分の通したい札を、ここぞというタイミングで撃つ。まるで戦士と言うより軍師の様な戦い方……極まった戦士と言うのは、荒々しいながらも、何と整った攻撃をするのだろうか。
崩れた姿勢に、渾身の振り下ろし。渾身のネロ陛下も、これに何もしないのはマズいと思ったのか、剣を掲げて。
……防ぐ、のではない。
「おぉっ!?」
「せぇぇええいっ!」
そこから、更に無理矢理に踏み込んで、前へと、飛び出して――切りかかる!
守りに入れば押し切られる、と思ったのか。寧ろ、此方から更に攻め立ててやろう、と言う事か。だがしかし……相手は万全、此方は姿勢敵にも不利。
ぶつかり合った赤と白――僅かな拮抗の後、弾き飛ばされたのは白の方。
「良い判断だが、残念だったなぁ!」
「ぬぉおおおおおっ……!!」
力比べではやはり不利か、完全に仰け反ってしまった。先程よりも、懐を晒す隙だらけのネロ陛下、次はもう凌げない――所から。
「――なんてなっ♪」
「――ぬっ?」
弾かれた剣の、その勢いを活かして。ネロ陛下の流れた身体は、くるんと一回転。
手元へと引き戻し、懐に抱え込む様にどっしりと構え直した大剣が。次の一撃を狙わんともう一歩踏み出そうとしていたベオウルフに向けて――伸びる!!
「はぁあっ!」
「どわっ!?」
避けきれず……受けた。
「――射ぇっ!」
「えいっ!」
その甲高い音が響いた一瞬。叫ぶみたいに合図を上げる。
途端、ネロ陛下の頭上を掠めるように飛んでいく二つの墨色の光弾。目標は、僅かに一歩下がって、ネロ陛下の突きを受けたベオウルフだ。
舌打ち一つ。だが、背を向けて逃げはしない。ベオウルフはさらに一歩下がって、受けたのとはもう片方の剣で、体をねじる勢いも合わせ、二つ纏めて薙ぎ払って見せた。
式部さんの完璧なタイミングでの攻勢を弾いた事……先ずは褒めてやりたい所だが。しかしながら。
「っ、中々面白れぇ事をする――っ!?」
――その大ぶりは、完全な隙だ。
先程の一発から、どっしりと腰だめに構えたネロ陛下の大剣は、既にチャージ完了済みである。一歩は既に踏み出している――地面を蹴っ飛ばす爪先の加速に乗せて、城野花嫁は今一度……否、先ほどを大きく超えて、旋り始める!!
「最早――止まらぬぞぉっ♪」
がぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ――っ!!!
「ぐぉおおおおおおおっつ!?」
弾むようなテンションと共に、回る回る回る――!
独楽の如く、振り回されたはちゃめちゃな剣閃が、何とか盾代わりに構えた双つの剣も諸共に、一気呵成にベオウルフを押し返す!
「っし、ナイスぅ!! 完璧なタイミングだぜ式部さん!」
「はいっ、これなら――!」
問題ない。形勢は『再び』、此方に傾いた。
練り上げられた強さ。積み上げられた経験値から生まれる老獪さ。此方三人を相手にしてなお、戦えるレベルの超人ベオウルフ。互いの長所を理解しきっている、と言える程でもない状態で下手な連携なんぞすれば、付け入って破壊しかねない――なら。
「戦場の主人公は、ネロ陛下にお譲りいたしますってな」
ネロ陛下は、ガンガン前に出るタイプだ。目立ちたがりともいう。それの何が良いってゴルゴーンさんやアサシンと違って分かりやすいのだ。まぁ、どっちも何と言うか、お一人で暴れるのが一番最適、みたいな戦い方するので……合わせるのがむずいのだ。
そこへ行くとネロ陛下の前線で輝く、みたいな華のある戦い方はまぁ分かりやすい。
その前に出る手助けと、相手が押し返して来た時の保険……式部さんのキャスターとしての仕事に終始すれば、無理に息を合わせずとも上手い事噛み合ってくれるって訳だ。大層な事言ってる訳じゃないけど、こういう時の譲り合いの心は大切。
それにネロ陛下自体も、俺以上の指揮官だ。今の所はそう言う事もないが、欲しいと思えば援護の命を此方に寄こすようにお願いしてある――ベオウルフも優秀な王だとは聞いているが、しかしローマの大軍を率いたネロ陛下には一歩及ぶまい。
「追撃だ! 逃がして態勢立て直されたら面倒だしな!」
「はいっ」
……なんだったら、多分ゴルゴーンさんとアサシンと一緒にいる時よりも『連携』出来てる気がする。
俺達三人って、基本的にゴルゴーンさんとアサシンの二人が奏でるギリギリスタンドプレーで蹂躙しつつ、その間を式部さんの攻撃でそっと繋ぐ……くらいのささやかなチームワークしか存在しないし。
こんな感じで、ちゃんと何方の強みも生かして噛み合って戦う、みたいなのは意外と初めてな気がする。なんていうか、どっちも我が強いんだよねぇ。だからまぁ……
「アサシンにはああいう仕事を任せた方がまぁ上手く行くんだよな。だからって何時も好き勝手させたらマズいからそこは引き締めてるけど……」
ちらり、と周りを見つめる。
一体何処にいるのか。ベオウルフが引き連れていたシャドウサーヴァントを蹴散らした後に、ネロ陛下を追いかけて来たのだろうケルトの兵士共の中に潜んでいるのか。
……ベオウルフだけに戦力を回さなかったのは、確信染みた予感があったからだ。
絶対にこういう時に横やりを入れてくる。撤退して時間も経っている。サーヴァントであれば、この程度の時間でも十分戻って来れるだろう。
戦場の中、銃弾と、刃の鎬を削る不規則な音が耳を掠る。
ベオウルフとネロ陛下の激突が目の前まで近づいてきている。周りを意識する事は忘れない。戦いの音の中――
「――来た」
背中に、ぞわりと走る悪寒。
一般人素人の自分でも、否応なく感じさせられるこの感覚は――間違いない。
式部さんに一言入れて、ぐるりと体を回しつつ、その場に足を止める。式部さんは俺より先に、ネロ陛下への援護に向かってくれた。後は――そう思って振り返ったその先で。華やかな着物が翻るのが、ちらり見えた。
その直後……がいん、と。戦場に鳴り響く金属音。
振り抜かれたのは、武者の双剣。割り込むは、鬼の刃。
「ええ顔してはる――元気いっぱいで、よろしおすなぁ?」
「――好きなだけ邪魔をしろ。今度こそ、貴様諸共切り刻んでくれる……!」
似たような展開を書いている事が心苦しく……されども、こういう部分を省くと後の展開に影響が出るのが……