FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百七章・裏:使徒顕現

 激しい火花と共に。

 

 天から小柄な影が降って来て――着地と同時に、地面を蹴っ飛ばして走り出した。楽しそうに笑いながら。まるで恋する乙女みたいな軽い足取りで弾んでいっている。アサシンが楽しそうに削り合いを始めるのが目に見えてくる。

まぁ、完全に色んな事に気を遣わずに好き勝手に暴れられるってお墨付きだし、そりゃあ楽しいだろうなぁ……

 

「……そうなったアイツが負ける姿は思い浮かばないけど、でも普通に負ける可能性も絶対に排除できないのが厄介だよなぁ。どっちも楽しめるなら楽しんじゃうタイプだし」

 

 だから、正直アサシンにサシでの勝負をさせたくないのだ。なんというか『敢えて』勝負に徹しないっていう悪癖があるから。享楽的過ぎるのが、アサシンの一番の魅力で弱点な気がする……でも、今回はこうせざるを得ない。

 

 取り敢えず、サシでの戦いをある程度させて、詰めはキッチリ詰める的なやり方は式部さんもゴルゴーンさんも居ないから不可能。

 こうなった所で、自分から『じゃあうちが回り見とくわ』とか言い出した辺り、今度こそサシでの削り合いが出来ると見ての行動だろうし。というか、アサシンが自分から周辺の警戒とか言い出して、敵の中に潜んでいたのも……うん。

 

「……まぁ、一回逃がして、もう一度捕まえようかって事にはならないだろうし。最後まで『やれる』って判断なんだろうな」

 

 爪牙を駆使し、振るわれる二刀と幾度目かの交戦に打って出るアサシンは、実に躍動的な動きをしてる。楽しそうと言うか……あっ、噛みついた。

 口の端に、僅かに裂けた女武者の肌を咥えて、アサシンが凄惨に笑う。正しく魔性、完全にテンションテン上げだなぁ、ありゃあ……

 

「ま、小うるさいマスター君はこっから動けないし。間違っちゃいないけどさ……さて」

 

 状況を、頭の中で整理する。

 

 報告にあって今まで姿の見えなかったベオウルフ。ここぞいう所で、台無しの手を打ってきたリンボ、そして……一度手痛くやられて尚、それでも突っ込んで来るあの女武者。

 確認できる手札は、全て切られた、筈だ。

 アルジュナっていう隠し札があった以上、絶対とは言い切れないが……流石に、あのクラスのサーヴァントを二人も三人も秘匿しておく意味は薄い、とっくに前線に投入していても可笑しくない。

 

 が……リンボと言う、別勢力の奴が介入してくるまで、ケルト側にはまるで音沙汰無しと来れば、流石にあのレベルの切り札も残っていないと判断しても良い。

 

「――これでいい加減、向こうの弾も尽きたか?」

 

 ここで、戦線を崩さず、ケルトの一団を敗走せしめることが出来れば――こっちの仕事は花丸満点。後は藤丸達次第だが、ほぼこのアメリカ特異点は攻略せしめたと言っても良いと思う。

 どんでん返しは無く。ヒヤリとした時もあったが……それもギリギリの所でなんとかなった。ここまで来て思うが、順調にも程がある戦いだった。終わってみれば、意外にも時間も経ってない。

 

このまま、特異点の親玉を倒して、聖杯を回収して……それから……

 

「……後、可能性があるとしたら魔神柱位か」

 

 その聖杯を回収した後の魔神柱降臨が何時ものお約束だが、基本聖杯の近く、つまり引き受けるのは藤丸になる。俺が経験したのはオケアノスの頃の魔神柱だが……なんつーか強かったは強かったけど、絶望的ってレベルではなかった気がする。

 それこそ、藤丸と同行してるサーヴァントの人数は多い。サーヴァント同士を連携させて戦うって言うなら、圧倒的に藤丸の方がお得意だろう。人数多い=つよいを体現したような伝説の超マスター君だし。

 

「スカサハさん次第ではあるけど……クー・フーリンと女王を討ち取れるかが、藤丸達の山場になるかなぁ……」

 

 状況の整理、完了。うん。特に不安材料も、無し。

 こっちは一つの懸念だった『もう一つの勢力』による介入を見事に止められたのだからある種……なんというか、肩透かし的な感じにはなるが。特に大きな波乱もなく、このまま勝ちに突き進めそうな感じがする。

 

「……正直、ダ・ヴィンチちゃんとかも、その辺りは不安視してたしなぁ」

 

 どのタイミングか、どんなやり方か……そこまでは兎も角、ここまで大っぴらに、サーヴァントを使って俺を狙って来たのだ――カルデア首脳陣も、情報を共有していたアメリカ側も、この大きな戦の中で動かないという事はないだろう、と言う意見だった。

 だからエジソンは、突如として現れたシャドウサーヴァントに対し、『完全な不意打ちによって驚愕する』のではなく『想定以上に戦線をズタズタにされた事に対して怒る』という態度を取れたわけだし。

 

「ともかく、ゴルゴーンさんが抑えてくれてるなら、リンボがなんかしでかす事はもうないだろうなぁ」

 

 ……しかし。

 リンボ、意外にも戦い方はパワフルだったが。やっぱり、前に出て行って色々と自分の手ですり潰す――そんなタイプには見えなかった。

 さっきのゴルゴーンさん相手にも、何時の間にか背後を取って不意を打とうとしていた辺り、その辺は完全に筋金入りだと思う。

 

 やっぱり、真っ向から戦う人間じゃない、という見解は間違っていない。それにも関わらず、こんな前線まで出てきた事。

 状況を整理し、色々考えて……無理にひねり出すなら、そこくらいか? 疑問点は。

 

「でもそれだって、あの女武者を救出する為に出てきたって理由で……ああいや、そっちは成り行きか? 本来、奴の狙いはカルナと戦っていたアルジュナの開放だった。要するにケルト側への加勢だ」

 

 って事は、もうそれで奴の目論見は終わった、って事か?

 

「……ん? んんんん……?」

 

 なんか引っかかる。

 ケルト側への加勢だったら、それこそカルナへのちょっかいでアルジュナを解放するなら本人が出張る必要あるか? アイツキャスターだろ? それこそ、遠距離から幾らでも細工は出来た筈。戦場の中を駆け抜けて、直接殴りに行く理由……?

 

 『前線にいなけりゃいけない』その理由……が。

 

「まだ見えてない……?」

 

 ――ぞわり、と背筋に冷えたモノが走る。

 

「――カルナと、アルジュナの一件は、あくまで……オマケだったとしたら」

 

 奴はまだ、仕事を終えていないんじゃないか……?

 

「――ダ・ヴィンチちゃん。聞こえるか」

 

 不吉な予感に焦り、思わず通信を取る。式部さんはネロ陛下と共にベオウルフ、アサシンは武者と一騎打ち中、ゴルゴーンは先ほども言った通りリンボを相手取ってる。現場の人に共有できないのは苦しいが、それでも話さないよりはマシだ。

 まだ出ない。ちらりとゴルゴーンさんがいる方向を見る。今の所、土煙とか上ってるからやり合ってるのは間違いないが……出来れば早めに……

 

「――っ、もしもし!」

『――本造院君かい!?』

 

 繋がった――俺が声を報告するよりも先に、ダ・ヴィンチちゃんの方から凄い声量が飛んで来た。思わず怯みそうになったところで、ハッとする。

 

『良かった、今連絡しようとしてた所で――』

「何かあったのか!?」

『あった、と言うかあるかもしれないというか……! こっちはちょうど女王メイヴの撃破に成功した所だ……なんだけど、スカサハから『アメリカ側に気を配っておけ』って忠告が!』

「スカサハから……?」

 

 ――どうやら、藤丸達カルデア組、及びスカサハ師匠の王様狩りレースは、藤丸達に軍配が上がったらしく。諸々の妨害を、人数有利による速攻で突き進んでいった藤丸達が先んじてクー・フーリンと接触。

 スカサハが到着する前に戦端を開き……苦戦しつつも、最後に間に合ったスカサハの力を借りつつも、両者のコンビを相手に辛勝を上げたとの事で。

 

「……んで、スカサハが『情けない所を見せたから、もうひと働きする』って、確かに言ったんだな!? んで、その目標が――」

『そっちだ! 最後の力でメイヴが何かやらかすと彼女は見てるらしいけど……』

「生前の知り合い故の知識か……ダ・ヴィンチちゃん、こっちも少し気になる事があってもしかしたら、それと関連してる可能性も――」

 

 スカサハのその言葉は、自分の感じた不安要素に確信を覚えさせるのには十分な一言であり……急ぎ、リンボの事を伝えようと――した、その時だった。

 

―― ど ぐ ん ――

 

「――っ」

 

 胸を、何かが、貫いた。

 痛みはない。形も無い。何かだ。

 

 周りを見回す。暗がりの中、皆がそれを感じたのか、アメリカ兵たちが、戸惑ったように一歩下がって俺と同じ様に――いや、待て。

 

「……夜の暗さじゃ、ない」

 

 山の中で感じた、あの暗さとは、質が違う。明らかに……!

 

 ――空を見上げる。

 

 空が黒雲に包まれている。雷電がひび割れの様に、その雲の表面を焼き焦がす。俺が見上げる先で。その黒が突如として、引き裂かれていくのが見える。赤い色に……いや、違う。引き裂かれてるんじゃない。

 

「……オイオイ、二度目の邂逅にしちゃ、ハード過ぎんじゃねぇか……っ?」

 

 俺の視線の先で、生えて来てるのが見えた。

 

 空を覆い尽くすように……蠢いて、睨みつけて、悲鳴を上げて。

目玉塗れの肉の柱が――魔術王とかいう奴が使役する怪物、魔神柱が。それも、一本だけじゃない。

 

 何本も、何本も……何本も。

 このアメリカとケルトのぶつかり合う戦場全てを、睨みつけ、覆い尽くす程の数の魔神柱が――今、この戦場の上に、顕現しようとしていた。

 




改めて見直すと第五章の北部戦線ミニソロモンマジで地獄でワロタ。メイヴちゃんこわすぎぃ……
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