FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百八章・裏:デッドライン

「一旦下がれっ! 兎も角、出来る限り負傷を避けるのを優先せよ! 致命傷を負っては耐える事もままならん!」

「りょ、了解っ!」

「ここから押し上げるのはサーヴァントの仕事だ! その後、押し返すのを僅かでも遅らせるのは諸君らの仕事、僅かでもいい、休んでおきたまえ――行くぞ、再反撃だ!」

 

 ……例え余りにも濃密な神秘に対し傷をつける事は出来ずとも。しかし、この特異点のアメリカ兵達は、少なからず神秘を相手に戦って来たという実績がある。戦う為の手段を持っている。

通じなくたって、無数の機関銃の弾丸が、巨大な柱の動きを、ほんの僅かに堰き止める事は出来る。千の直撃を束ねた僅かな衝撃で、照準をブレさせる事は出来る。

 

その一瞬で――他を一旦無力化したサーヴァント達が取って返し、兵士が担当していた方面の敵を必死に叩く。やってる事は超高速のもぐら叩きだ。しかもそのモグラを一匹でも残せば自分達は死出の旅路へまっしぐら。

 

「ったく……奇跡に奇跡積み重ねてここまで来れたなら、もう後一つくらい奇跡を起こしたかったな! 具体的にはカルナさんの回収とか!」

「ここまで退けたんだから贅沢言わない! 逃げ場も無いって言ってた所から、ホントギリッギリの所で持たせられる所まで行ったんだから!!」

 

 エレナさんに叱られつつ、負傷兵を背後へ担ぎ込む。

 ……実際、残った令呪全部注ぎ込んで、ゴルゴーンさん及びアサシンの宝具の二連打で一発大穴開けて――そこから撤退できたのは、マジで奇跡だった。

 そこから本陣に辿り着き、生き残っていた兵士たちを纏め上げられて防衛陣地を構築出来たのも、これまた奇跡だし。

 

「今までの特異点だったらウルトラCレベルの奇跡二つで、漸く最終防衛ラインをキープできる……レベルとかよぉっ!!」

「コラ負傷兵を投げるなぁ!!」

「時間ないっす申し訳ないそれじゃっ!」

 

 控えめに言って地獄も地獄だ。

この戦場じゃ、俺は前線に立てるわけもない。陣地の防衛が良い所だ。じりじりと減っていく兵士を、ナイチンゲール婦長が鍛え上げた救護班の元へと運び込み……リンボの野郎が生きているからか時折、此方に向けてにじり寄って来るシャドウサーヴァントを殴り飛ばす。

 

……後は、まぁ観測手って所か。

 

『――反応確認! 場所は――』

「――式部さん、丑の方向! 上下に二体!」

「は、はいっ!」

 

 ――敷かれた陣の上、ブーストされた式部さんの射撃が、此方を睨みつけていた瞳をぶち抜く。僅かに怯んで仰け反る肉の柱。これでまたひと時くらいは稼げたか。一つ呼吸を入れて。

 

『次弾来るよ、場所は――』

「エレナさん十時の方向!!」

「了解っ!」

 

 間髪入れずにもう一発――さっきからこんな事を繰り返している。

奴らが攻撃する時は、基本的にこっちを『見て』攻撃する。狙いを付けるのもノーモーションで、殆ど外から判断できるような攻撃のサインもない。

が、しかし一切予兆を感知できないかと言えば――それはカルデアを舐めるな、と言わせてもらいたい。俺の手柄ではないけど。

 

今までの魔神柱との戦いで、データは蓄積している。攻撃時、平常時、その差分から相手がどのタイミングで仕掛けてくるか、位は此方も判断できるようになってきてる。故に迎撃位なら問題ない。

 ……まぁ伝達を最速にする為にそれぞれに合わせて言い方変えなきゃならんのは何時か事故りそうなので不安にはなるが……

 

「藤丸の方はどうだい!」

『クー・フーリンが想像以上に化け物でね! もう少しかかりそうだ!』

「ああそうかい最高の知らせじゃねぇか! 皆に伝えておくぜ!」

 

 ……それくらいしないといけない位に、余裕もクソも無い。

 

 

「――エレナさん、残念なお知らせがあるんだが……っ!」

「まだかかりそう!? あぁもう! もう皆ギリギリだって言うのに!」

「ゴルゴーンさんもアサシンもさっきから暴れ通しだからなぁ……!」

 

 ……皆、限界まで頑張ってる。

 誰か一人でも欠けていたら、この現状はあり得ない。サーヴァントは勿論、アメリカ兵の皆、彼らが必死になって時間を稼いでくれているから。

 

「――くそっ……前線に戻らないとっ……!」

「傷が癒えてないんだぞ! 無理をするな! クソっ、薬も包帯も……っ!」

「いてぇ……くっそぉ……あいつ等ぁ……っ!」

 

 ……でも。

 

「おのれ、キリがない……余の衣装に見惚れるのは分かるが、少しは加減せぬか!」

「そんな冗談が言えるなら、余裕はありそうだな……っ! こっちは……くそっ、目を閉じる暇もない、視界が霞んできたところだっ……!」

「うちの酒でもさしたろか? 流石に、血ぃに酔ってしもて、これ以上は、吐き出してしまうさかい……!」

 

 何もかもが足りない。リンボのやつの狂暴化が、嫌って程効いてる。カルデアのデータをフル活用し、エジソン以下サーヴァントの皆が必死になって抗って。アメリカ兵の皆が体を張って戦って。

 ……それでも、目の前のエジソンの、酷い顔色を見ればわかる。

 

「――キツイか……っ!」

 

 全員が全力を尽くしても、それでも。

 こうなったら藤丸達が一刻も早く奴らを無力化してくれることを祈るしかないが……ダ・ヴィンチちゃんの焦った様子を見てると、それも期待薄、なのだろうか。

 

「……クソっ」

 

 空で蠢く、肉の柱と目が合った。

 

 何を見てやがる。イカれた目でこっちを見るな。

 イラつく。誰にでもなく、一人毒づいてしまう。余裕がなくなって来る。人間って言うのは、限界になって来ると、ここまでイラつくのか。初めて知った。

 呼吸が荒くなる。頭が俯きそうになる。歯が、カチカチと鳴る。

 

 ……いや、コレは……イラつき、なのだろうか?

 少し、体が震えている。思考が、上手く回らない。

 

「ああくそっ……なんだよっ……これっ!」

 

 コレを、自分は知っている。

 周りは皆、恐ろしいモノばかり。血走った瞳で四方八方から射竦められて、俺達には逃げ場は無い。蠢くモノ達の群れから――何本も、『手』が伸びてくる。

 あれに捕まったら、もう駄目だ。連れて行かれてしまう。何処に。怖い所に。

 逃げなきゃ。隠れなきゃ。出来るだけ小さく、見つからない様に――!

 

「クソ……違うだろ、逃げるんじゃない……向かって来るって言うなら……!」

 

 ……違う。『昔の俺』じゃない。『今の俺』は――竦まない。

 もう、ただ怯えて、一人で縮こまってた小さな子供じゃない。向かって来るなら、その鼻っ柱に拳を入れてやる。

 歯を食いしばる。拳を握る。向かって来るロクデナシ共に――いや。

 

 待て。これは――なんだ。

 今、俺が見ているこの景色はなんだ? 知らない。こんな景色を。でも、どうしてだ、この後どうなるか、俺は知っている気がする。そうだ、目の前に俺は、背中を見たんだ。迫りくるモノ共の前に立ち塞がる、背中を――!

 

「――はっ」

 

 ……その一瞬、顔を上げる。

 

 そこに居たのは、エジソンだった。陣頭で指揮を取ってる。アメリカ兵が引っ込んでいく中で、彼だけが残って――丁度、俺達を背中に背負うような形になってて。

 

 酷く静かに、真っすぐに目の前を見つめていた。その視線は、余りにも透き通って見える。戦場には似つかわしくない、その顔を見て――背筋が冷たくなるのを感じた。

 今までのエジソンはあんな顔をした事は無かった。けれど、あの顔を知ってる。とても静かで、穏やかな湖の様な、顔を。俺は、知っている。

 

 一体その瞳を何処で見た。何処か頑固そうで、でも実直なその瞳を。

 いや、そんな事は関係ない。分かるのは――止めなきゃだめだって言う事だけ。

 

「……私には責任がある。君たちを少しでも長く生かす、責任が!」

「――待てよ」

 

 手を、伸ばした。どうしてか声が震えている。

 それは――死に逝く、先人の目だ。自分を薪に誰かを逃がそうとする顔だ。勝ち目がなくても少しでも時間を稼いでやるって。後ろにいる誰かを、置いていく背中だ。

 止めないと、行ってしまう。

 

 死んでしまう。

 

「……エジソン、アナタ何を――っ!」

 

 大きな背中が、一歩を踏み出す。

 光を纏う。目を焦がす程の、光と共に。真っすぐに――化け物の蠢く、真っ只中へ向けて。駆け出していく。

 

「宝具の、オーバーロード……っ!? まって、エジソンっ……!」

「さらばわが友、エレナ君。後は任せる。諸君! 少しでも長く、『生き残れ』!」

「よせ、待て、止まれっ――」

 

 手を伸ばす。間に合わない――!

 

 

 

「――ふん、やはりその程度が限界か、『発明王』」

 

 

 

 ばちり、と。

 耳元で、なんというか聞きなれた――でも、明らかに、もっと力強い。電の弾けるような音を、聞いた。

 




よく考えてみれば、彼この小説では初登場になるんでしょうか……?
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