FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百八章・裏:人類に降りた神の権能

「――そ、その声は……っ!」

 

 地を踏みしめ、走り出したその足音が当たり前みたいに止まった。

 

 その直後――エジソンの踏み出そうとした、その一歩先を、そのさらに一歩向こうにいる目玉の塊諸共に……紫電の稲妻が容赦なく薙ぎ払う。

 上がる魔神柱達の悲鳴。焦げ臭い匂いと共に、巨大な柱が一歩、捻じれるように後ろに向けて仰け反っていく。

 

 だが……そんな事をエジソンは気にしていない。

 声の聞こえた方向に、エジソン振り向いた。その顔は……多分だけれども、今まで一番顔が険しい。というか……なんだあの、フレーメン反応とGを見た時の鍛冶屋の親父混ぜ込んだみたいな、形容しがたいあの顔は。

 

 今までで一番目が険しいんですけど。ナイチンゲール婦長と交渉決裂した時よりも、俺らが襲撃かけた時よりも、なんならついさっき、めっちゃ追い詰められてた時よりも、何時にも増して凄い顔してない? ライオンの顔でそんな人間臭い顔できるんだ……

 

「此方の神経を逆なでするような、その明らかに取ってつけた『発明王』呼びはっ!!」

「……そんな呼び方してた?」

「え、えっと……分かりません」

 

 取り敢えず、近くにいた式部さんに話題を振ってみるが……まぁでしょうねという。

 そっかぁ……式部さんが分からないなら、多分だけどご本人の感性の問題になってくるのかなぁ。まぁ、それは兎も角として。

 

「フハハハハハハハッ!!! この天才の言葉にそのような感想を覚えるとは! 自らが凡骨であるという自覚があるのではないかえぇ凡骨ぅ!」

 

 けたたましいまでの高笑いが、絶望的な空気を蹴っ飛ばすようにして響き渡る。釣られるようにして、エジソンの向いている方を振り返れば。負傷兵たちが担ぎ込まれたテントのその奥から……背筋を伸ばし、胸を張って、進み出る一人の男の姿。

 

 堂々と掲げられたその右の腕には、黄金の籠手が身に付けられ。戦場の風にマントを靡かせて、自信に満ち溢れたその表情を蒼く彩るのは、体から迸る雷電。

 

「であれば! 貴様がこの私の前に立ち塞がる資格など無い! さっさと後ろに引っ込んで、我が天才的な所業を目の当たりにしつつ自らの非才に震えるがいい!」

「間違いない……このっ、この他人の神経に鑢をかける様な高笑いに、一々癪に障る言い回し……まさか貴様はっ!!」

「そのまさか、だ!」

 

 その雷電が――再び、天に掲げられた掌の先から迸り、アメリカ本陣周辺を再び薙ぎ払う。その光に、再び肉の柱達が仰け反る。

 その一瞬に、男は

 

「真なる天才、雷電の化身であり、雷霆をもって惑星の未来を切り開く我が名は――」

「すっとんきょう! ミスター・すっとんきょうかぁぁああああっ!!」

「ニ コ ラ ・ テ ス ラ で あ る !!」

 

お、おう。力強いお返事だこと。というか、エジソン先生、さっきまでの悲壮さは一体何処に行ったんですか。寧ろ先程よりも活気取り戻してませんか大統王。

 っていうか……ニコラ・テスラって確か、第四特異点で藤丸達と戦ったっていう話を聞いていたが、今度はこっちの味方に付いたのか!?

 

 カルナとアルジュナがいるなら、それこそ電流闘争にてライバルだったエジソンの元にテスラが現われても不思議じゃないが……

 

「ぐぬぅぅうう……っ! このタイミングで現れるとは貴様……本当に毎度毎度ぉ! なんと美味しい男なのだ貴様ぁ! しかも、貴様が、私を助けるだとぅ!!」

「戯けェ! 百度千度召喚されても貴様など絶対に助けるものかぁ! 私が救うのはこの時代であり――そして、借りを作った彼らだ! 何しろ、英国では迷惑をかけたしな」

 

 ……うーむ、さっきまでの緊張感は一体何処へ行ったのやら。ぴしゃーん、やらどっかーん、やら。顔つき合わせて言い争う度にエジソンからテスラから撒き散らされた電気が四方八方に飛び散って、容赦なく魔神柱の横っ面を張り飛ばしているんだが。完全に向こうの勢いが殺されまくってるんだけど。

 

 あぁほら見ろ、アサシンが目を点にしてるし。ネロ陛下が地面に剣を突き立てて呆然と見てるぞ。うぅむ……なんというか、

 

「……なんか、スゲー元気になったなエジソン。何時もあんなんなのあの二人」

「えぇ。顔を突き合わせるとずっとあんな感じ。仲いいんだか悪いんだか」

「いや少なくとも良くはない気がするけど……」

 

 ……いや、生前のお知り合いたるエレナさんに確認したかったのはそこではなくてデスネ。あのー……

 

「えっと、止めて頂けるとありがたいんですけど」

「まぁそうね……二人とも、一旦始めると、本当に長いから。ちょっとー、そこの天才のお二人! 言い争ってないで先ずは現実に対処してくれるかしらー! 幾ら二人の電気の力でも、この状況を一発で解決できるわけじゃないでしょー!」

 

 と言う事でこの状況で口を挟めるわけもないマスターの代わりに、エレナさんがキッチリ口を挟んでくれる。ありがたい。あのままの勢いで互いに言い合いまくって雷撒き散らしてそのまま耐久終わっちゃったら余りにもアレだし……

 

 んで。

 漸くエレナさんの仲裁で言い争いを中断し、僅かに呼吸を荒げながら獅子と紳士がくるりとエレナさんの方を振り向いた。

 

「……うむ。確かにエレナ女史の言う通りではある。が、しかし心配はいらないとも。私が『あの男』に召喚されたのは、アレを倒す為ではない」

「……えっ、リンボがマッチポンプしたんです?」

「阿呆かそこの光るマスター!! 流石にこの状況を悪化させた悪趣味な術師に協力する程に分別を知らない訳ではない!」

「はっ、分別を知らぬ自覚があるとは、語るに落ちたな自称天才め!」

「話の腰を折るな凡骨ぅウウウウウウ!!!」

 

 ……な、成程。普通にニコラ・テスラを呼べるほどの術師で、こっちで限界迎えてない奴は敵方のリンボくらいしか思いつかなかったのだが……どうやら、此方に助けを寄越してくれたのは、別の人らしい。じゃあ味方として信じても大丈夫か。っていうか誰が頭頂部が稲妻でピカるマスターだその鼻っ柱殴り合いでへし折るぞ天才。

 

「ふぅ……兎も角! 私がやるべきなのは、あの古い遺物どもを我が雷霆の輝きにて閉じ込める事である」

 

 が、俺の睨みなんざ気にする事もなく。テスラは天へとすっと金の籠手を嵌めた方の手を掲げ、天を指さすように一本だけ、指を立てる――ばちばちと、その先から再び電流は流れ始める。

 自らを雷霆の化身と言うだけあって、先程魔神柱を焼き焦がした雷は、直ぐにちょっとした川程の量に膨れ上がっていって――

 

 ……いや、それ以上か、コレは。

 指先だけではない。何時の間にか、彼の周りで円を描いて雷が渦巻き始めている。膨らみ上がる電流の総量は……とっくのとうに大河を思わせるレベルにまで、膨らみ上がっていた。コレは、ただの攻撃じゃない。

 

「……成程、電気檻か」

「流石にここまでヒントを出せば貴様でも理解できるか凡骨」

 

 電圧が、加速していく。

 

「古き時代の遺物共よ、その目に焼き付け、慄くがいい――今や我らが手に握られた神々の雷霆の姿に!」

 

 ――顔が引きつる。

 

 これが現代の英霊?

 何の冗談だ。今も周りを焼く雷鳴の輝きも何もかも――頼光さんの最大出力にだって匹敵するじゃねぇか。地面を焦がし、否、若干削ってるレベルの破壊力。神々の雷霆、と言うその言葉、ハッタリでも何でもねぇ。

 何処かで聞いた事がある。テスラの本当にヤバい部分は、エジソンと言う『群』を操る英霊を相手に、殆ど『個』で対抗せしめたイカれた天才性にある、と。

 

 俺だけじゃない。式部さんも目を見張っている。ゴルゴーンさんも……じぃっとその雷を見つめている。これが、神様の権能を地上に下ろした、天才の力か。

 

「――さぁ、御覧に入れよう! 『人類神話・雷電降臨(システム ケラウノス)』!」

 

 手の動きと共に――雷霆が落ちる。

 

「うぉわっ……!」

「きゃぁっ……!?」

 

 一本どころではない。二本三本四本五本……正しく、檻の如く、大量に。

 雷鳴と共に響き渡るのは――耳ざわりな、凡そ生き物が発したとは思えぬような、金切り声だ。間違いなく、魔神柱が苦しんでいるその音。

 殺し切れては――いないがしかし。雷霆に撃たれ、その動きを確かに止めている!!

 

「……ううむ、凄いな、コレは!」

「これでも加減はしているのだよ、純白のレディ。あくまで今の私の仕事は、アレを抑え込む事だからな。それ以上は過分に――」

 

 ――だが。

 

『いや……全部じゃない! まだ動いてる奴らがいる!』

「何!? 加減が過ぎたか――っ!?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの報告に、全員が雷霆の先を見つめる。

 

 その先で痺れつつも、それでも蛇の如くにじり寄ってこようとする魔神柱を、忌々しそうにテスラは睨みつけた。

 抑え込むことを意識し過ぎたか、と愚痴っているが……多分違う。普通にやってたなら、抑え込めていた筈だと思う。その辺りをニコラ・テスラがしくじるとは思えない。

 

「リンボのやつの狂暴化が効いてるのか……!?」

「……成程、そちらか! ええい、余計な真似を……! だが、今からそれを計算し電圧の調整となると――!」

 

 ……最後まで余計な真似を。

 今すぐにでも他のサーヴァントの皆で応戦を――そう思った時。

 

 もう一条の稲妻が、此方へにじり寄る魔神柱の、その肌を焼き焦がした。

 

「――何!?」

「フン。美味しい所で調子に乗るからこうなるのだよテスラ君。昔からあと一歩と言う所で詰めが甘い、そんなんだから貴様はロクに伝記も書いてもらえんのだ」

 

 その電気は、見覚えのある色だった。

 テスラの傍ら。そこに堂々と並んだ獅子頭の大男からの援護射撃。そうだ。テスラが大天才ならば、その男――エジソンもその大天才と鎬を削った大天才だった。

 にっこりと満面の笑みを浮かべながら、エジソンは口を開く。

 

「ちなみに私の伝記は全世界レベルで流通しているぞ。うん」




こっからまだ後二人程暴れ回る事が確定しているこの戦線……
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