FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百八章・裏:焔と光の競演

「『W・F・D(ワールドフェイスドミネーション)』ッ!!」

「『人類神話・雷電降臨(システム ケラウノス)』!!」

 

 ――二つの雷電が、天より地に満ちていく。

 

 天に上った黒い太陽の光すら跳ね除ける様な輝き……降りてくるのは、神様が下ろしたみたいな、物凄い数の光の槍。氾濫し続ける怪物どもを、今度こそ深々と射抜いて、その身体を焼き尽くす。

 痛みか、それとも怒りからか。何れにせよ、蛸の腕にも似た体を、どれだけ激しくよじらせても、無数の雷電の集中砲火の中からは、抜け出せない。二人の雷電博士の生み出した電の檻が、今度こそ、その動きを完全に封じ込めた。

 

 アメリカ兵達から上がる歓声。

 それを聞いたところで身体から勝手に力が抜けて――尻餅をつきそうになった所で、背後に立っていた式部さんに、抱き留められた。

 

「……ありがとう」

「いいえ、お疲れさまでした」

「うん。今、身体起こすから……っと……」

 

 ……地面に縫い付けられたように、身体を起こす事が出来ない。

そこで、漸く気が付いた。そもそももう、体に力が入らなくなっていた。

兵士を運んだり、敵を追い払ったり、相手の攻撃にカウンターしたりと。そう言えばずっと前線を支える為に、全身をフル稼働させていたのだった。必死過ぎて分からなかったけれど、もうとっくに俺の身体は限界を超えていたらしい。

 

「……ごめん。やっぱりこのままで」

「はい」

 

 流石にこればかりは気合いでどうなるもんでもない。潔く諦めて、後ろの式部さんの胸の内に頭を預ける。背中で感じる人肌の温もりに、酷く安心する。

 生きてる。生き延びた。強張った体が、安心感でほどけていく。肺の奥から、漏れだしてしまった。

 

「……後は、藤丸が聖杯を回収してくれれば、こっちもなんとかなるかね」

「そうですね……恐らく、ですが」

「……なら安心して任せて、良いかな」

「はい、きっと。こんなに頑張ったのですから」

 

 その言葉に安心して、改めて式部さんの抱擁に身を任せる。

任せて良いかな、なんて偉そうな事言ってるが、実際はもう何も出来ないから任せるしかない、っていうのが正直な所だった。

周りを見回せば……本当に数少ないが、最後まで前線に立っていた兵士達も、尻餅をついて、地面に寝転がって、膝を突いて……俺みたく、力なく動けなくなっている。

 

もう皆、限界みたいだった……それ位みんな必死になって頑張った。俺達みたいな生きてる人間だけじゃなくて、サーヴァントの皆も。

兵士の中心に居るネロ陛下を見る。剣に寄り掛かる様にして、天に拳を突き上げてる。その近くで、エレナさんがレディらしさをかなぐり捨てて、地面の上に寝転がっていた。

アサシンを見る。近くに転がっていた、ボロボロの機械化装甲の上に腰を下ろし、大きなため息を吐いていた。

 

エジソン、テスラは言うに及ばず……後は、ゴルゴーンさんか。四方八方にレーザーばら撒いて大暴れしてたし、如何に彼女でも疲労しているんじゃないだろうか、と思いながら周りを見回すと……アレ。

 

「……まだ見てるな」

「何が、ですか?」

「ゴルゴーンさん。さっきもテスラの方見てたんだよ。と言うかさっきから」

 

 テスラが気になるのかな。確かにイケメンな顔ではあるとは思うけど……ゴルゴーンさんが面食いとか絶対あり得んし。そもそも人間相手にそんな事を考えるとも思えないし。

 ……あ、いや今見えた。眉間に皴よせてんの見えた。テスラの事、見てるんじゃなくて睨んでる。明らかに不機嫌だアレ。

 

 でも、前に睨んでたのはエジソンだったし、テスラとは初対面……だよな、流石に。どっかの聖杯戦争で顔つき合わせた、とかはないよな。

 

「……なんだろうなぁ、一体……?」

『――休んでるところ申し訳ないけど莫大なエーテル反応を確認した――サーヴァントの反応が二つだ! 直ぐに来る!』

 

 ――そこで、ダ・ヴィンチちゃんの声に、ハッとする。

 

 莫大なエーテル反応……二つ。そのヒントを聞いて、頭に過るある可能性。というか殆ど確信染みている。この戦場の中で、そんな『莫大』って言えるレベルのエーテルを纏っている『サーヴァント』なんざ……

 

「……あの二人を呼んだ……としたら、一体どうやって?」

「――単純明快だ、そこなるマスターよ」

 

 零すようにつぶやいたその疑問に。

 テスラが、稲妻を手繰りながら、此方を振り向いて、答える。

 

「呼んではいない。ただ、自分達の戦いを邪魔するモノ共が邪魔になっただけだ――そこを上手く突いただけだとも」

「……貴様、そう言う交渉が出来たのか?」

「いや別に。ただ『決着をつけるならば、周りを片付けてからやった方が効率的ではないかね』と言っただけだ」

「……成程。実に分かりやすい説得の仕方だ」

 

 なんていうか。

言われてしまえば納得せざるを得なかった。多分、あの二人には一番効くんじゃないだろうか。片方は、基本的にこっちの味方で。もう片方は……自分の宿敵との勝負に凄い拘っていた。

 

加えて。ゴルゴーンさんの一発を喰らった時、あの男は自分じゃなくて相手の方を気にかけていた。自分も焼かれそうな時に、相手に意識を向けられる様な奴は、まぁ根本的に悪い奴ではないというのは想像も出来る。

勝負の邪魔になる敵を片付けて……『ついでに』周りの当たり前に生活している人の脅威を取り除けるっていうなら、やるんじゃないだろうか。

 

「「――はぁああっ!!」」

 

 地面を舐め尽くしながら走る轟炎と、空気を破って飛来する光の矢が、雷の檻に閉ざされた目玉の塊達に次々と突き刺さり……その身体に深い傷を刻み込む。

 先ほど以上に高く上がる悲鳴。この破壊力は――間違いなく、インド神話クラス。

 

「――カルナ、落ち着いて出力を落とせ! 周りを巻き込むぞ!」

「その辺りの調節は心得ている。それに俺は冷静だ」

「ええい、その浮かれようを見て信じられると思うかこの馬鹿! 全く、何故そんなに楽しそうにしてられるんだこの状況で……!」

 

 彼方に視線をやれば。

 金色の槍を構え、凄い炎を纏ってる……顔は平静でも全身で明らかにやる気マンマンですって言うのが丸わかりのカルナと。そんなカルナの炎を物ともせず、そのドタマをシバキながら此方に歩いてくる、アルジュナの姿が見えた。

 

「カルナ! 無事だったのかね!」

「そちらも無事で何よりだ、エジソン。貴様の雷霆、此方からでも見えた――見事だ。大統王。王としてではなく、発明王としての面目躍如と言ったところか」

「なぁに、私にかかればあの程度はなんて事もないとも!」

「貴様ぁ! 何を自分の手柄だけのように語る凡骨ぅ!」

 

 不敵に笑いながらエジソンと談笑するカルナ。そこから一歩離れて此方に近づいてくるのは、意外にもアルジュナの方である。

 

「申し訳ありません。どうやらカルナの奴、少しばかり上せてしまっているようで……離れた方が良いかと思います。巻き込まれる可能性が高いので」

 

 そう言ってぺこり、と頭を下げて、再びカルナの元へと歩いていく。なんだろう。この人って確かケルト連中陣営だった筈なんだけれども、あの脳筋髭親父のイメージ付いてたから余りにも紳士的で……カルナと戦いたかったのかは知らんけど、多分もうちょっと陣営選んだ方が良かったんじゃねぇかな。合わなさすぎると思うんだけど。

 

「……そうね、離れた方が良さそう! マハーバーラタの大英雄二人が揃って大暴れするって言うんだから、並の宝具の展開より凄い事になる! ここら一帯纏めてチリになっても不思議じゃないわ!」

「うっわぁ……ごめん式部さん、肩貸してくれるか?」

「は、はいっ。急いで離脱しましょう!」

 

 ……とはいえ、紳士的でも破壊力は全然紳士的じゃなさそうなんだけれども。うん。英霊と英霊、しかも宿命のライバル。その破壊力は足し算じゃすまない、乗算になる。マジで巻き添え食って消し飛ぶかも――

 

「――虚仮にしおって」

 

 ……ん?

 

「神の雷霆? 奴の権能に助けられただと? ふざけるな。アレに尻尾巻いて逃げ出せというのか、ふざけるな、ふざけるなふざけるな……っ!!」

 

 ……んー、そう言えば。あぁ。

 

「ダ・ヴィンチちゃん」

『ん? なんだい?』

「ゼウスさんって有名な逸話に『雷』出てたよね。やっぱ権能なの、その辺り」

『そうなんじゃないかい? 少なくともゼウスと雷の関係は神話的にも深いのは確定して――あ』

 

 ダ・ヴィンチちゃんが何かに気づいたように言葉を止める。それと同時に……俺の傍らでとんでもない殺気が膨れ上がる。成程、『神の雷霆』って言ってたねテスラの奴。そうかそうか、テスラが気に入らなかったんじゃなくて、雷が気に入らなかったと。

 んで……エジソンの事毛嫌いしてたのは、人格的な所だけじゃなくて……そもそも電気を広めたって言う功績そのものも、微妙にイラっとしてたのかなぁ……成程成程。

 

「――式部さん! アサシン! 逃げるぞ! 多分チリすら残らんここら辺!」

「え? え? え?」

「……荒ぶ神さん『三人』おる様なもんやし。おへそとられてまう前に退いた方が良さそうやねぇ」

 

 漸く体に気合いが入った。

 ……神話の戦いは、まだ終わっていないらしい。

 




ゴルゴーンさんが第五特異点内でちょっとだけ機嫌が悪そうな場面が多かった理由がコレ。
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