FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百八章・裏:神話降臨

 片手を上げる。シグナルを出したのは……テスラに向けて。

 エレナさんは他のアメリカ兵に避難指示出してる。コレを邪魔したら被害は軍全体にまで広がっていく。取り敢えず置いておく。エジソンはカルナと話してる。多分気づかん。

 と言う事で、実質消去法だ。

 

 アルジュナの方を見ている都合上、視界に俺の手の動きも入って見えてるだろう……二度、三度と繰り返していると、漸く気が付いたのか、テスラは視線を、手信号の先にいるゴルゴーンさんの方へ向けて――僅かに、顔を引きつらせた。

 

「――おい凡骨。一度だけしか忠告せんぞ。もし巻き込まれたくなければさっさとこの場から離れろ」

「は? いきなり何を言い出す貴様」

「忠告はしたぞ。何も言わないでエレナ女史に睨まれるのも嫌なのでな」

 

 ……怪訝な顔をしたエジソンを残し、先ずテスラが走り出す。先ほどまでの堂々とした態度は完全に鳴りを潜め……いや、寧ろ堂々と、と言えるレベルの気持ちイイ逃げっぷりでその場から走り出した。

 

 その背中を、エジソンと、その隣のカルナの視線が追いかけて行って。

んで、やっぱり角度的に俺の姿が見えるのだろう。繰り返し送っている手信号を見つけ、再び釣られてそちらへと顔を向け……今も膨らみ続けているこの戦場での最大の爆弾を見つけ、エジソンの方は一気に顔色が悪くなっていく。

 

「……か、カルナ君。その、大丈夫かねアレ。物凄い睨んでるけど」

「あぁ。問題ない……とは言えないが、アレを止められるだけの言葉も、手立ても存在しない以上はやるしかないのだろう――ふ、アルジュナに加えて、彼女とも轡を並べられるこの興奮と、幸運の代償と思えば、安いものだ」

「カルナ君、なんかキミ浮かれてない? どうしたの?」

 

 続いて、エジソンが離脱。んで、流石にエジソン、テスラの二人が撤退した時点で、流石に状況に気が付いたのか……エレナさんが周りに避難を呼びかけつつ、此方に駆け寄ってくるのが見えた。

 

「……物凄い顔してるけど、彼女どうしたの?」

「いやぁ……神の雷霆、とか言わなければもしかしたら耐えられたのかもしれないんだけれどもなぁ」

 

 どうやらギリシャ的には、ゼウスの雷電を語る奴には一過言以上は申さないと気が済まないらしい。まぁ俺でも知ってるゼウスの逸話を聞いてればさもありない。何ならゴルゴーンさんはオリュンポスの奴ら纏めて呪い殺しても飽き足らない位だろうし……

 寧ろ暴れる、だけで済ませてくれる辺りホント理性的な女神様だなぁ、とすら思う。

 

 が、理性的でも周辺全部をぶっ殺しはするので、私はエレナさんと式部さんとアサシンと共にお先に失礼させていただきますね……

 

「……カルナ。私達が巻き込む、と言う話をしていたが……もしやこれは、私達が巻き込まれる側なのではないか?」

「それ程に暴れねばこれだけ氾濫する魔性を討ち果たす事も敵わぬだろう。何、戦場で命を賭すことなど何時もの事だ。気軽に戦えばいい」

「……ちょうどいい。この憂さは、改めて貴様らで晴らさせてもらうとしよう――先ほどまで好き勝手やってくれた、その苛立ちも全て纏めて、返す……!!」

 

 そして、残るのは――超ド級のサーヴァントが三騎。どれも神話級。さっきよりも数は減った筈なのに、どうしてだろう、先ほど以上に背筋が冷える。

 ため息を吐いたのか。一度肩を落としたアルジュナが、改めて弓を構え直す。

 手の中でくるりと槍を回すカルナは、何処か楽しそうにすら見える。

 蛇が、苛立つように顎を開き。瞳孔まで開き切ったゴルゴーンさんの顔がコワイ。

 

『うわぁ……あそこ一帯の魔力がどんどん上昇していくぅ……サーヴァントの霊基で叩き出せる馬力じゃないよこれ』

「……英雄にとっては、自分の限界を超える程度は造作も無いという事なのかしら」

「考えてる場合じゃありません! き、来ます――っ!」

 

 青と紫の光が、相反するように弾け合う。立ち上る焔が、地面を奔る。

 周辺を囲む魔神の瞳が――ただ一点に収束していく。雷に焼かれようとも、人類を焼き尽くした黒幕の刺客だ。まだまだやれるとばかりに。

 

 ――数百の目が一斉に、瞬いた。

 

「「「――っ!!」」」

 

 大爆発。

 

「「「――ハァァアアああアあああアアあ゛ああっ!!!」」」

 

 ――を更に内より。

 

 無数に飛来する光矢が。焔の斬撃と刺突が。爆発を超えて炸裂する呪詛が。

更なる破壊の暴威の塊達が、一瞬で食い破っていく。拮抗する暇すらなく。

 

『『『―――――――――ッ!!!!!?????』』』

 

 とんでもない絶叫が、耳をつんざいた。

 

「きゃぁっ……!?」

「……ひっどい鳴き声やねぇ。耳割れそうやわぁ」

「人外でもこんな声って上げられるんだなぁ」

 

……耳を抑えつつも、前を向いて走る。目の前の光景と合わせて、マジで、本当に他人事みたいな、小学生みたいな感想しか出なかった。

 

 ガトリングみたいな矢の群れが、目玉も本体も構わず射抜いて消し飛ばす。一射で何発もぶっ放すのはイカれた弓の力か、はたまたアルジュナ自身の技量か。兎も角、一々瞳で見つめて力を収束させて――なんてやる前に、十以上の矢がその瞳を打ち浮いている。

 

 というか……その目玉達は、アルジュナに目線を向ける前に、もう一人、ジェット機みたいなバカみたいな動き方して空を舞う、カルナに釘付けにされていた。飛翔しながら肉塊に接近し、槍の穂先が巨大な一文字の傷を刻む。それが、もう何度繰り返されたか。

 

 ……なんでカルナが飛んでいるか。地上にいて足を止めたら間違いなく、単純な呪いから石化、溶解吸収に至るまでの呪詛の爆撃、それに加えて英雄の矛にも匹敵する牙と爪を振り回すゴルゴーンさんの猛攻に巻き込まれるというのがある。

 

 光が、焔が、爪が。襲い来る怪物を、真っ向から引き裂いて打ち倒す。

 尋常では決してあり得ないそれは……

 

「……マジの神話だわなこりゃあ」

「ううむ……古き時代の遺物にも、使えるモノはある、とは思っていたが……これは我が雷霆にも、更なる開拓の余地がある、と思わねばなるまいか」

「素直に『神話のスケールを舐めてたから自分も追いついてやる』って言えばいいのに」

「そこのすっとんきょうが素直に負けを認める様なタチかねエレナ君」

 

 うーん。これでサーヴァントっていう規格に『収まってる』、っていうレベルって言うんだから一体何の冗談だっていう話なんだよなぁ……後何本残ってるんだろうなぁ、あの触手。って、あ。

 

『……魔神柱の魔力反応、消失。いやぁ凄いねコレは、本当に彼らだけで削りきっちゃったよ、あの怪物を!』

 

 ……そして遂に。

俺達の見ているその先で。無数の斬撃と射撃と呪詛塗れになっても、必死に暴れ回っていた最後の一本が……糸が切れた人形みたいに、地面へと力なく崩れ落ちた。

 

どずん、と言う音と共に……そのまま、動きを止めた魔神柱は……さらさら、と黒い塵となって空気に溶けていく。

アレだけアメリカ軍を苦しめ、壊滅一歩手前まで追い詰めた魔神柱の集合体、リンボによって強化されたホンモノの化け物の最後は……余りに呆気ないものだった。

 

「……終わった、のか」

 

 エジソンがつぶやく。呆然として、実感がない、と言った感じだ。

 そりゃあ、あの化け物をたった三人のサーヴァントが削り切ったっていうんだからそうもなるか。俺自身、若干呆けそうになってるけど――

 

「――いや、まだだ!」

 

 ――頬を叩いて、気合いを入れ直した。

 

 結局、藤丸が奴を倒さない事にゃあ、この特異点は終わらない。んで……向こうの決着がついていない状態で。敵は潔く、諦めるだろうか。

 ちらり、と天を仰ぐ――黒い太陽は未だ、健在だ。

 

「――式部さん! アサシン! 急いで周辺警戒! まだ奴らは残ってる!」

「はいっ! 酒吞童子様!」

「はぁい……ほんま、粘り強くて、宜しおすなぁ」

 

 何処から来る。

 アレは奴の宝具だ。宝具を展開したまま来るか? いや、それが出来るなら、魔神柱の外からでも、こっちに嫌がらせを仕掛けてきたはずだ。と言う事は、流石にアレだけの宝具を展開しつつ、戦うなんて荒業は出来ないらしい。

 

「どこからだ……どこから……?」

 

 周囲を見回す。

 背後にはアサシンがいる。前も後ろも、上下も。油断なく見回している。見逃している隙はない筈だ。けれど……それこそ、地面の下とか、思わぬところから現れたら、対応も追いつかないかもしれない。

 

 僅かな予兆を見逃さないように。意識を、研ぎ澄ます。

 

「……」

 

 ……意識の隙。地面以外なら何処だろう。そんな所から現れるか、というなら。逆に一番目立つところから……一番目立つ……っ!?

 

「――はっ」

 

 顔を上げる。

その先には、リンボが顕した天に輝く黒い太陽が――その黒い表皮が、ぴきり、と音を立てて、ひび割れたのが、見えた。

 

 ――ぱりん

 

 黒が、崩れる。茜に変わる――その茜の中に。

 

「ンンンッ、引き際でしょうが――」

「まだ……まだだ、逃がさぬぞ!」

「拙僧らは、生憎と強欲なれば!!」

 

 二つの影が、滲んでいた。

 




漸く第五章の終わりが見えてきました(疲労困憊)
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