FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第百九章・裏:裏のお仕事

「――間に合ったか。全く、ただでさえ潰れた面目が叩かれて粉微塵になる所であった」

 

 スカサハさんは、一つ、大きな大きなため息を吐きながら此方に歩いてくると――肩を一つ落としながら、開口一番に良く分からない事を口にした。というか、向こうで藤丸と合流しているはずのスカサハさんが、どうしてこっちに来ているのか。それがそもそも分からないのだが……というか、アレ?

 

 そうだよな、確か藤丸と一緒にクー・フーリンの討伐に動いてたはず、だよな。それにしては、スカサハさん……傷一つどころか、クー・フーリン討伐に出発した時と全く変わらない様に見える様な。

 

「スカサハさん、どうしてここに……?」

「……はぁ。全く情けない話だがな。先ず、お前達の仲間が文字通り速攻で、バカ弟子とその傍らの女王を仕留めたのは把握しているな?」

「あぁ、そりゃあまぁ」

 

 今こうして、カルナ対アルジュナの大決戦を背後にのんびりしているいるのは……まぁロマニに連絡とって、聖杯の回収をちょっと待ってもらってるからで。本来は向こうの藤丸達が聖杯を確保してそのまま退去しているはずだ。

 

「……それが、私が奇襲を仕掛ける丁度その直前の出来事だ」

「えっ?」

 

 ……そもそもの話、藤丸とスカサハさんの二人が合流して、万全の態勢で戦いに向かったもんかと思ってたんだが。そっか、藤丸と他のサーヴァントだけでクー・フーリンと、その相方は何とかなったのか。

 んで、そうなって来ると……スカサハさんがこうして無傷で戻って来てるっていうのを考えると……成程。そう言う事か。

 

「アレの厄介さは良く知っているからな。多少なりとも機を伺っていた訳だが……その結果、メイヴの奴めが放っていた精鋭兵の群れに捕まってな。そ奴らを『全て』始末するのに些か以上に手間取った……はぁ」

「な、成程」

 

 そっかぁ……仕事が早すぎると、他の人の仕事を奪っちゃうこともあるんだなぁ。カルナとアルジュナにも匹敵するレベルの最強のサーヴァントが、まさか俺達の活躍で遊兵と化していたとは……いやもうこれ逆に誇るべきなのかもしれんな。大英雄に暇をさせる位に俺達が戦えるようになったと。

 

「その結果として私は何か仕事をする事も無く、手持ち無沙汰になった訳だ」

 

 ため息を一つ吐いて、スカサハさんが肩を落とす。。

 ううむ。俺達が悪い訳ではないけど、なんか申し訳なくなってしまう。別に悪いことしてる訳でもないんだけども……ちらり、と背後の式部さんと目線を合わせる。こういう時、何を言えば良いのか……式部さんも若干微妙な顔をしてる。

 

 ……というか、なんでアサシンはすっげぇニマニマしてるんだろう。アレかな、スカサハさんが存外役に立たなかった事を嘲笑う……タイプじゃねぇな。コイツ。いやでもスカサハさん見て笑ってるんだよなぁ。にっこにこだし。

 

『――あ、本造院君、勘違いしちゃいけないけど、彼女が討ち取ったシャドウサーヴァントの群れは敵将たる『メイヴ』のとっておきだ。総数たるや一個大隊のソレ。本来はクー・フーリンと共にこっちを迎え撃つために準備してたらしいけど――』

「あ、ハイ理解しました」

「ひぇ」

 

 あぁ、その匂いを嗅ぎつけたから笑ってたのか……ナニ? シャドウサーヴァントの一個大隊? 何ならこっちに向けた戦力より全然多いじゃねぇかよ。

 それを傷一つなく片手間で始末して、んで何事もなく戻って来たってか。大戦果だよ!!! どうしてくれるんだよ、申し訳なさそうな口から吐き出される益荒男過ぎる戦果に式部さん真っ青になっちゃってるじゃねぇか!!!

 

 ダ・ヴィンチちゃんの呆れた様な様子にも理解が出来るってもんだ。

 マジで肝入りだったんだろうなっていうのが想像も付くバケモノ的な戦力だ。それが投入する前に全滅したわけか……あった事もねぇけどメイヴって言う人に若干同情する気になってくる。

 

「私に任せるな、とは言ったが本当に一切任せず終わらせられると、まぁ困る。ああして大口叩いておいて、ほぼ役立たずで帰って来た訳だからな」

「えっと……そりゃあ、何ともまぁ」

 

 何ともまぁ壮大な嫌味をありがとうございます、というしかないというか……いや、当人には嫌味を言っているつもりも何も無いんだろうし、心からのため息で本当に『大口叩いておいてこのザマとは情けない』って思っているんだろうな。

 

 ……うん。話題を変えよう。これ以上掘ってもこの人の基準がぶっ壊れてるって事しか確認できない。

 

「……えと、それで、なんでこっちに戻って来たんすか?」

「あぁ。流石に、此方としてもこのままで帰るというのも据わりが悪い……故に、一つお主らに土産を一つと思ってな。向こうのマスターの小僧にはもう渡してあるが」

 

 此方の問いかけに対し、彼女が取り出したのは……黒い石、だった。よく磨かれてつやつやの。それを此方に向けて投げつけてきた

 

「っと……」

 

 掌で受け止めて……その中に視線を落とすと、磨かれた石の表面に文字らしい何かが刻まれているのが見える。確か、冬木で力を貸してくれた『キャスター』が使っているのを見た事がある。確か、ルーン文字、だったか?

 それが、割としっかりと刻み込まれている。なんか品の良いインテリアしても使えそうな位に雰囲気があるような……「ひゅっ」……今の、式部さんか? なんだ?

 

「式部さん、これがどうかした――」

「――ま、ますたー……そ、そちら、そのっ……」

「いや本当にどうしたの!? 顔真っ青だよ!?」

 

 こっちを見てる式部さんが、さっきと違ってハッキリ顔色を悪くしながら手元を指さしている。えっと……待って。そんな顔色になるような代物なの、これ。文字の刻まれた石にしか見えんのだが。

 

 式部さんは喋れそうにない……となると。

 その傍らに立つアサシンに視線を向ける。僅かに笑いながら、アサシンは此方の手元を見つめて頷いて見せる。

 

「――うん。それ、結構な『護符』やねぇ」

「……アサシン、分かるんだ」

「ま、詳しい訳とちゃうけど。この肌に来るような感じは、都で苦労させられたからよう覚えとる……晴明の奴と遜色ないんと違う?」

 

 ぎょっとして視線を戻す。だからその安倍晴明がヤベェってのはさっき話したばかりなんだけれども。えっ、そのレベルのモノなのこの石。うーん……えっ、マジで言ってらっしゃる? いや、アサシンがこんな無駄なウソつくタイプだとは思えないし。

 

 そっかぁ……

 

「えっと、因みに此方ってどんな?」

「単純な『厄除け』の代物だ。持っていれば勝手に発動する。懐に入れておけ」

「あ、うっす……」

 

 そっかぁ……その単なる厄除けがどれだけ信頼できるかっていう話ですよね。だってシャドウ君達のとんでもない数の群れを駆逐して『はー……仕事できんかったわ……』とかいう様な暴力の極お姉さんが言う『単純な』程信頼できないことは無いんですよね。

 ……手りゅう弾でも懐に忍ばせている気分だ。ちょっとした衝撃で弾け飛んで、自分に致命打の一つでも与えてくださるような危険な匂いがする。

 

「んじゃあまぁ、ありがたく頂いておきますね」

 

 とはいえ折角貰ったモノだ。ありがたくポケットにしまっておくとしよう。

 まぁこんな世界の危機だ。何でも使うに越したことは無いだろう……目に見えて『あっやっべぇわ』って思えるような危険物でも、だ。いや、スカサハさんを信用していない訳ではないんですよ。ただその……ちょっと俺達とはスケールが違い過ぎて。

 

 視線を目の前のスカサハさんに戻すと、彼女は少し困ったように笑ってから……すっと表情を消し。此方を真っすぐに見据えてくる。

 

「……あのシャドウサーヴァント共を組み上げた輩は、間違いなく心の底から性根が捻じ曲がっている。それは、私でも分かった」

 

 こっちの眼を覗き込んで来る、その紅い瞳に宿っているのは……冷たい、けれど何処か柔らかな輝きだ。厳しくも、何処か温もりが宿る……あぁ、それは見守っているというのがこれ以上なく似合う、そんな視線だった。

 

「『お前にとっての地獄』はここからであろう……その底を目指して進む、貴様へのせめてもの手向けだ。精々生き残れよ。ひよっこ」

「……うっす」

 

 英雄の師、というのはこういうものなのか――その本質の、一片を見た気がする。

 その師匠からの、せめてものお節介。改めてポケットの中のお守りを握りしめ、その感触を確かめる……不透明な霧の中へ突き進むには、十分すぎる励みだった。

 

 背筋を伸ばして、ゆっくりと頭を下げる。世話になった事への礼として。もうエジソン達にはしていたから――恐らく、これが最後になるだろうか。

 

「……しかし、くくっ。最後の最後、こうして戻ってきたのは正解であったな――あのような勝負の決着が見れるとは」

「俺達が見ていいもんなのかは、分かりませんけどねぇ……」

 

 後ろを振り返る。

 

 視線の先で、空気を裂いて、一条の矢と、槍の一閃が交わり、火花を散らす。

 特異点の終わり。神話大戦の最後を締めくくる――かつての神話の続き、あり得ざるリターンマッチの決着が、近づきつつあった。

 




第五特異点マジで長かったなァ……えっ!? まだこれ以上の特異点が二つ残ってるんですか!?(畏怖)
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