FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
――俺の目の前で、黒い炎に焼かれた黒武者が崩れ落ちる。
……が、倒れた原因はどっちかと言えば全身を焼く炎というより、その炎の塊で胴鎧をぶち抜かれた事だ。身体全体を焦がしている炎は直接浴びせかけられたモノではなく、炎によってぶち抜かれた胴体の傷口から燃え移った形になる。
「……あ、ありがとうございます」
「気を抜くなよ。運よく近くに居ただけだ――フンッ!」
いや、炎が身体を貫くって何なんだよ、とは思う。最早炎って言うかゴルゴーンさんのレーザービームとかそう言う類じゃねぇのか、とか一瞬考えたが。
ちらりと顔を上げた先で、巌窟王に顔を鷲掴みにされた黒い鎧武者が、赤い面皰諸共に顔面を一瞬で滅却消毒され。がらん、と地面に倒れ伏すのが見えて――マジで人形染みて生気のない潰れ方だった――もうそう言うのを気にするだけ無駄だと悟った。
「――そう何度も助けられる状況ではない」
「あ、うっす……」
俺が取り敢えず頷いた直後、僅かな閃光を残し、黒いマントを翻して巌窟王は何処かへと飛んでいった。ジェット噴射みたいな勢いで。本当に人間なのかあの人。
いやはや、白い髪の癖毛でちょっと薄幸っぽいイケメンな見かけから想像も程の火力ガチ勢なんだよなぁ……ゴルゴーンさんといい勝負してる。
とか考えながら膝を立て、ゆっくりと立ち上がり……森の奥から、更なる追加の影霊武者が現われたのが視界に映り、顔を歪めそうになってしまう。本当に何度か巌窟王の手を借りたくなってしまうレベルになって来てるなこりゃ。
「はぁ~……マジで」
「――マスターっ」
取り敢えずは――此方を視認したのだろう、大太刀を構えて突撃してくる影霊武者に正面を向けたまま、急いで一歩後退する事にする。確認せずとも、後ろには頼もしいサーヴァントが待ってくれていると思うので。
――そんな思いに応える様に、俺の傍を無数の黒い弾丸が通り抜け。
「大丈夫ですか!」
「ありがとう式部さん――ったく、さっきから殺意マシマシでやんなるねぇ」
そう言って、視線を前に向ければ――やはり、此方へ向かおうとしていた黒い影達を悉く打ち抜いて。バタバタとあっさり倒れ伏していくのが見える。うーん、流石にブーストされているだけあって、普段よりとんでもない威力してらっしゃる。強化されたであろうシャドウサーヴァントを相手に一発でダウンとは。
……さっきから、こうやって一応何時もの護衛スタイルしているんだが。離れる前まで全く敵を寄せ付けていなかった。
背後から襲い掛かって来る二体が居なければそのまま無双できていた筈だ。まぁ、対応した護衛があんまりにもダサかったせいで、逆に足引っ張った形になるが。
しかし……式部さんの化け物染みた強さからも分かる通り、敵のサーヴァントへの対応は十分に出来ている。そんな此方のサーヴァントが六人がかりで大暴れしているというのに、まるで敵の攻勢が弱まる気配がしない。
「ったく、強くなったのは兎も角、マジで数がイカれてやがる……!」
「……いいえ。恐らく強化出来ていなければ、相当に苦戦していたと思われます。恐らく私では、一撃で鎮める事など」
……ちらりと、倒れ伏す怪物達を見る。
本物のサーヴァントを相手に、ここまで言えるレベルに強化して来てくれるとは。まぁ随分と無駄に気合い入れてくれたもので。
「ブーストはまだ持つけど……この数を一々相手にしたくもないし」
「……ですが、法師様は守りを固めていらっしゃるので、そう簡単には」
式部さんに言われ、ちらりと視線を向こうにやる。
流石に数を揃えているだけあって、それを活かしてしっかり守りを固めている。最初に突撃してきて、幾度かアサシンと矛を交えていたが、しかしその直後にリリィが乱入し、ゴルゴーンさん及び巌窟王ら後衛組の援護も受け、あっさりと撤退。
その後は、特に戦うでもなく静かにこっちの様子を伺っているが……
「……まぁアレが居ると一向に数が減らねぇんだよなぁ」
時折やって来る――アレが、厄介に過ぎる。
ちらり、と式部さんの手によってダウンし、まだ消滅していない何匹かに目をやると。すっとその片手をあげて、指先で何らかの印を結んで見せると……リンボの傍に、何やら靄の塊の様なモノが浮かび上がって来て。
――黒武者へと飛んでいき……その身体に沈み込んでいった。
「急急如律令――立て、未だ終わってはおらぬ」
その直後。
倒れ伏していたその身体が、がくん、と揺れて……物言わぬ躯となった筈の影霊武者が、再び地面に手を突いて、起き上がって来る。確実に顔面とか胴体ぶち抜かれて動けなくなっていた筈なのだが。
舌打ち一つ。再び息を一つ入れてから、再び拳を構え成す。
「無限に再生してきやがって……とんだクソギミックだよホント」
「マスター、お下がりを――」
「そう言う訳にもいかんでしょ。幾らブースト掛かってるって言ったって、相変わらずインファイトは得意じゃないんだから」
……正直、アサシンとかが式部さんの護衛に付いてくれるのが理想ではあるのだが。アイツはそう言うの得意なタイプじゃないし。『出来ない』事はないだろうが、モチベは間違いなく下がるだろう。
武者共の向こうで、地面に尻餅をついた一匹の胸倉掴んで、思い切り頭突きかましてる辺り。器用ではあるが、だからって言ってそれに甘んじているとその実力は発揮できないのは丸わかり。たおやかに見えて、ゴルゴーンさん以上に血の気が多いんだ。
「ま、いつも以上に頼りない壁にはなるけど、頑張ってもらえるとありがたい。」
笑いながら、背後に振り返る。口元を、きゅっと引き結んだ式部さんは……少し心配そうに此方を見つめていた。以前も、死ぬほど心配させてしまったようで。
それを思うと。どうしても無茶しなきゃいけないとはいえ、前に出るのが、少し申し訳なくなるわけだが……それはググっと呑みこんで。
「――大丈夫だ。今回は……こうやって一緒にいる。はぐれるような事にはならない」
「……マスター」
「万が一そう言う事になったら……いやじゃなかったら、こんなクソガキの手でも握ってくれや。そしたら離れないからよ」
……一瞬、キョトンとした顔される。うん。物凄い恥ずかしいし、なんて言うか、何様だよっていう発言した自覚はあって……そんな顔の赤さを誤魔化すように出来るだけ、勢いよく立ち上がり――
「――ま、そうなんないように、努力はするからさ」
そのままの勢いで、突っ込んで来ていた一匹の顎先を拳で捉えた。
顔面の先端。突き出たそこに引っ掛かる様に直撃した拳は、『てこ』の原理を再現するかのように、相手の顔を上へと跳ね上げる。ふらついて、武者はそのまま背後へとたたらを踏む様によろけ……その黒い胸に、輝きを纏った更に濃い黒文字が、ばしっと刻まれて。
今度こそ――その身体は、黒い霧となって、崩れていく。
「……はい。出来るだけ。離れぬよう。貴方のお手を握らせていただきます。どうにも危なっかしいお人ですから」
「ははは。いやはや、本当にお恥ずかしいこって!」
少し困ったように。けれど……確かに優しく。彼女は微笑みを返してくれた。全く、勘違い小僧にも、この人は本当に優しくて困る――改めて、再び黒武者共に向き直った。
「――取り敢えず、今は機会を待つしかない。頑張ろう!」
「はいっ」
……問題なのは。
その機会が何時になるかはサッパリな上に、もしも今――あの野郎が再び、直接ちょっかいをかけてくると、非情にマズいって事なのだが。一応、リリィとマシュちゃんが前線で藤丸を守りつつ、奴を見ていてくれているのだが。
それでも、手が足りているか。正直、藤丸へと殺到する奴らを捌くので、精一杯な気がしている。先ほど巌窟王がすっ飛んでいったのも、藤丸側のピンチをサポートする為だったのだろうし。
そして。そんな結構な膠着状態だからこそ――
「フフフ――戦場も、良き煮詰まり具合」
奴は、動くのではないか。
視線の先。静かに佇むばかりの術師、リンボが――その手を、ゆっくりと広げるのが見える。ちらりと右手の令呪を確認。後は二画。万が一の場合は、俺の令呪を早めに切る事も視野に入れなければ。
リンボの動きを見逃さぬ様、目を凝らし。僅かに歯を軋ませる――
「であれば、拙僧も再び――」
『――リンボ。一旦、そこまで』
……ふと。
戦場に似つかわしくない。静かで、穏やかで――そして。何処までも冷たい。
そんな男の声が、聞こえた気がした。
こっちの黒幕登場が本編の黒幕登場より遅いってマ!? 引っ張りすぎだろJK……
追記:今回の更新はここまでとなります。最近色々と所用が重なり……申し訳ございません。次の更新は、十月ごろになると思います。