FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:獣と盟する者

「――全く、本当にしぶとい物だな。カルデア」

 

 豪奢な装飾の中に、少し似つかわしくない男が立っている。整った服装ではあるがしかし周りと比べれば些か見劣りする。

 男は、魔術師――に、擬態した刺客であった。

 それも、ただの刺客ではない。人間たちが過ごして来た世界。歴史。すなわち人類史全てに対する、余りにも巨大なテロを敢行する為の使徒。

 

 男は……かつてカルデアにて、その任の為に暗躍していて。

 その時には自らをレフ・ライノールと名乗っていた。

 

「自分達の滅びを受け入れず、あぁも醜く足掻くとは。全く、私自ら捻り潰してやりたくなるという物だ。触れたくもない、というのはそうだが……アレを見ている方が気分が悪いという物だしなぁ」

 

 人類を滅ぼす為の任務に従事していただけあって、男は人類という物を疎んでいた。蔑んでいた。否んでいた。もっとあっさり滅んでくれれば手が掛からないのだが。と思う程度には人類を否定していた。

 

「――独り言か。マスター」

「いいや? 私がどれだけアレを視界にも入れたくないかを説明すれば、貴様の様な使い魔風情にも、やる気を出して貰えるか、と思ってな」

「言われずとも。(ローマ)はそなたの命令を遂行するとも」

「あぁそうか。心配する方が愚かだった……貴様は私の命に逆らえぬ、哀れな英霊風情だったか。ではいい。すまなかったな、余計な事を言ってしまって」

 

 ――否。従事していた、という言い方は正しくない。その任務から今も、彼は離れてはいない。寧ろ、精力的に人理を亡ぼす為の細工をし続けている。

 彼が居る場所は特異点だ。第一特異点の最期を、如何なる手段かを用いて知り……そしてよりカルデアを叩き潰す為に、更なる細工を弄するようになった。

 

「さて、貴様はもう行け。愚かな民衆を導くがいい。自らを亡ぼす為の道ヘな」

「……」

 

 その為のサーヴァント、そして駒が、目の前の大柄な男だ。まるで樹木の如き大槍を携えた、浅黒い肌の英霊である。

 恐らくは、この特異点において、最適な『圧力』にして『強権』となり得る怪物的な存在だ。確実に勝利する為に、先ず『レフ』が召喚した切り札だった。一切の容赦をしない為にも呼び寄せた。コレが存在する限り負けは無いとすら思っている。

 

「――一つ聞きたい。何時も、ここで何と話している?」

 

 ……ただ、この男の少し出しゃばりな所は非情に忌々しいとすら思ってはいるが。

 

「貴様、私に質問できる立場だと思っているのか? さっさと行け。貴様は貴様の仕事を全うしろ。これ以上は言わせるな」

「……了解した」

 

 取り敢えず、改めて適当に退散させて……改めて、この玉座の中心に視線を向ける。今は定期連絡の時間だ。

 レフは、その相手を好んでいる訳ではない。人類と同じくらいには疎んでいる……が、しかし同時に、人類以上に警戒している相手でもある。現状の人類よりも、相手は自分達の脅威なり得るのだ。

 

『――』

「……来たか」

 

 ――中心に、黒い霧……否、染みのような何かが溢れだす。それは、取引相手が作り出すゲートのような物だった。

 

『――』

「調子はどうだ、だと? 良い様に見えるか? 貴様が我々に貸し与えている戦力もさして役に立たんというのに」

『――』

「……必要は無いのか? ふざけるな、さっさと寄こせ……まぁ万が一の予備選力程度にはなるからな。精々、利用して――」

 

 瞬間、溢れ出す黒い靄のような何か。

 凄まじい圧力。それは、恐らく自分達を束ねる『王』にも届き得る力だ。

七つの獣ですら司りきれぬ、人の悪性を知る者。今は人理焼却を成す為に、あれと敵対するのは些か以上にマズい。

 

「……分かっている。我々と貴様の目的は衝突し得ぬのだからな。貴様にとってはあの小僧が必要。逆に我々にとっては焼却の邪魔にしかならん……それを貴様に引き渡せば更なる支援が来る。利益しかない話だ」

『――』

「だが、これが終われば貴様と我々は敵対するのだ。それを忘れて貰っては困る。一時的な協力関係に過ぎないのだからな」

 

 そこまで言い終えた所で、黒い靄から溢れ出した靄は少しずつ戻って行って。

 それは、『レフ』の言葉に、分かっている、とでも言いたげな様子をしていた。レフは冷や汗などかいた事は無かったが、しかしながら今、恐らく人生で初めて、それに類する物を彼は体験していた。

 

「それで……今回此方に寄こすのは何体ほどだ」

『――』

「ほう。五十……待て。五十だと? 以前の特異点ではそれだけの数を投入はしていなかったはずだが……!? 何故それだけ増やせる。成り損ないとはいえ、サーヴァントだぞ!?」

 

 それは、彼の尽きぬリソースにも理由があった。

 シャドウサーヴァントとは。サーヴァントとなるには霊基の足りなかった者。サーヴァントの成り損ない。故に、その力はサーヴァントに大きく劣る。

 

 ――だが、それが弱いかと言えば決してそんな事はない。

 

 霊長類の守護者たるサーヴァントは、幻獣種にも匹敵する力を発揮する存在である。それに足りずに成り損なうという事は、逆にそこに辿り着ける可能性があった。

 その事実だけでも、そこら辺のゴーレムや、魔獣風情とは一つ程格が違うのだという事は分かる。しかし、それ故に。リソースも、十分に必要だ。

 

 だが。今までの所、『レフ』が目の前の相手がリソースで苦労している所を見た事が無いのである。

 

 汲めども尽きぬ無限の盃。そんな伝承は世界各地にあるが、目の前の相手は実際それを持っているのではないかという程に。彼はシャドウサーヴァントを、気軽に此方に回して来る。気軽に、である。

 

「……まぁ良いだろう。十分だ。カルデアのマスターは必ず其方にくれてやる」

『――』

「約定を違えるな、だと? 人間と一緒にして貰っては困る。契約は果たす」

 

 それが、特異点での穴埋めに役立っているのも確かだが……何れ敵対する相手が、それだけの力を持っているのは、脅威としか言いようがない。

 それに……何よりも。

 

 目の前の黒い闇の向こうに居る存在は、ある意味で自分達よりも容赦が無く。

 そして、用意周到だ。

 自らを()()としか名乗らず、自らの本名を明かしていない上、此方からの干渉が出来ぬよう、自らも滅多に干渉してこない。不文律を守り、隙を見せない。そして、無駄に主張をせず徹底的に実だけを求める。

 間違いなく切れ者だ。

 

「では、そろそろ失礼するよ。其方もまぁ……頑張ってくれたまえ」

 

 人理焼却という大業を成し遂げた後。

 アレ、という最後の難敵が待ち受けている事。群として成る存在の『レフ』はしかし。ただ一人『厄介だ』と思わざるを得なかった。

 




藤太さんきてー早く来て―




此方の小説は、来月から再開いたします。
三月中は……何か別の小説を投稿するかもしれません。その時は、またよろしくお願いいたします。
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