FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「――多分だけどねぇ……見た目で惚れたって訳じゃねえのよな」
取り敢えず……もうこの流れが止められないなら。いっそ突っ込んで聞いてみる事にした。式部さんと、康友をくっつけて向こうが喜ぶ、とはなんか思えなかったけど。こういう何気ない会話から、ヒントを得られたりするかもしれない。しないかもしれない。やって見なきゃわからない。
いやまぁ……ぶっちゃけ下世話な好奇心が働かなかったって言うと全然嘘にはなってくるけれども。と言う事で、取り敢えず、どうした好きになったのか辺りから聞いてみる事にしました。はい。
「まぁ、かおるっちはちょっとお清楚パワーに加えて色気までカンストしてるし、アタシちゃんから見ても『うっわ何の女、こりゃナンパするしかねー!』って普通に思うレベルだとは思う。うむ……エロい……」
「えろ……? まぁ、美人さんだよね」
「なんだけどまぁ……アレはねぇ、そういう表面で好いたホレたのレベルじゃあねーのはあたしちゃんじゃなくても分かるわ、流石に」
つーか恋人に成ろうって気がないんだな、アレは、と。なぎこさんがしみじみと空を見上げながら呟いた言葉に……視線を、彼女に向ける。
「かおるっちって貸本してるって言ってたじゃん?」
「あぁ、そう言えば」
「兄貴、そこで借りて読んだ本の内容とか、かおるっちと話したりしてるんだ。そのお陰で、全然興味が無かった事にも色々興味が出てきたって笑ってたなー」
なぎこさんは、此方とすっと視線を合わせてから。ニカッと白い歯を見せ、快活に笑って見せて。それから、再び空を見上げて、口を開いた。
「それからそれから! かおるっちも流石にフィジカルまではさいつよって訳にも行かんわけじゃん? んで兄貴、そこを進んでサポしにいってー……んで無茶して怪我して、怒られてやんの!」
「えぇ……か、貸本屋の手伝いとかで力仕事して、って感じ?」
「それ系! いやもう、あのゴツイ顔でめっちゃしょぼんとしながらかおるっちに怒られてんの! いやー、流石にウケたね!」
その時の事を思い出して、なのか。やっぱり、けらけらと、なぎこさんは笑う。
ぷんすかと怒る式部さん。爆笑しながら指さして笑うなぎこさん。二人の中心で、そっと正座をしながら身体を縮こまらせる康友の様子が――あんまりにも想像しやすくって。思わず、釣られるようにくすり、と笑ってしまった。
康友がマスターとして式部さんと向き合っていた時もそうだった。
彼女といろんな話をしていたし、美人さんである事を褒めていた事もあった。だけれども、ナンパする様な話題を出す事無かったし。前線に立って彼女を守った時も、それを彼女に誇るって訳でも無く、というか無茶をして怒られてばっかりだった。
そもそも、戦場で背中を預けて戦って――信頼できるパートナーって言う側面が大きかったようで。ロマンスよりも――そう。
「なんつーかさ。らびゅらびゅ♡って感じじゃないけど……かおるっちの傍に、当たり前みたく立ってさ。アレはなんつーか……」
「――相棒!」
「そうそれ! すっげぇエモい感じの!」
相棒としての浪漫に溢れていた。
今度は、なぎこさんと揃って、ニカッと笑った。
作られた記憶か、それとも特異点の中でも、彼女達はそういう道筋を辿ったのか。何方にせよ、なんだか……何処まで行っても、あの二人の関係って、あんまり変わらないんだな、と思ってしまって。
「ま、だから相棒にダサい所なんてそんな見せてらんない、的な? いやー、かおるっちは今更そんなこと気にせんと思うんじゃがなぁ~……つーからびゅってるって兄貴が認める所からか! がはは!」
「あはは……やっぱり、男の子ってカッコつけな所があるからね」
「りっちゃんもそういうの分かるクチ?」
「いやぁ、まぁ……俺も、マシュの前では、ちょっとカッコつけたいって思う事も、無きにしも非ずだし」
でも、それは悪い事だと思わないし。寧ろ男の子として気持ちが分かる分、やっぱり康友は何処まで行っても彼のままなんだな、と思って、なんだか嬉しくなってしまう。
が、なぎこさん的にはちょっとそれはご不満らしく、ジト目で唇をとんがらせて……その姿は、アヒルの様に可愛らしいけど。
「全くぅ、男子ってのはコレだからな~……もっとこう、粥の木でつつき合って、やったなこのぅ! 的な遠慮の無さをだねぇ」
「あははは……粥の木?」
「あー……菜箸! 飯作ってる間に、ちょっとイタズラ的な!」
いやもうそれは遠慮がないって言うか、家族同然と言うか……流石にそこまで一気に距離を詰めるだけの情緒は、男子高校生にはまだ育ってないし。というか。菜箸を粥の木なんて呼ぶの、初めて聞いた。
「ここの方言とか、そう言う感じ?」
「いや、め~っちゃ昔の……レトロ語彙?」
「へぇ、良く知ってるね」
「まぁ、あたしちゃんも、かおるっちの貸本屋には出入り、してるし? 兄貴が本選んでる間に、ちょちょいっと本棚覗いたりもしてさ、うん」
そこで本を読んで覚えた、と言う事だろうか。外で遊んだりするのが好きなギャルっぽい感じながら、するりとそう言う語彙が出て来るレベルで読み込んでるとは。快活な雰囲気に加えて――意外と、と言うのは失礼だろうが――知性派らしい。
いやだって、本当に会話の流れにすんなりと入って来て。一瞬スルーしかけた。まるで普段から『そう言う言葉』に慣れてるみたいな、そんな感じがしたほどに、言葉に親しんでいる様な気がしていて。
「そ、それよりさ。兄貴の事、何か聞きたい事ない?」
「えっ?」
「ここまで話したんだし、なんか質問の一つくらいあるっしょ! なぎこさんが、赤裸々に教えて上げちゃうぜ――」
――うぉわぁああああああっ!!
その声に――思考の海から浮上して、立ち上がる。なぎこさんも立ち上がって、周りを見回してる。誰か悲鳴……じゃない、あれは……雄叫びだ。聞き覚えがある。彼と共に立った戦場で、何度も聞いた。
拳を固め、敵に殴りかかる時の。
「今のって……!?」
「康友の声――向こうの方だ!」
その一言と共に、声の聞こえたであろう方向に指をさす。そこに釣られるようにして視線を向けたその途端……なぎこさんが顔を青ざめさせた。
「あっちって、兄貴がマシュちゃんと一緒に様子を見に行った方じゃねぇの……!?」
「――っ!?」
獣か何かではないか、となぎこさんが言っていた件か。
であれば獣と遭遇したのか……いやまて、この山に住んでいるのであれば、獣程度なら慣れている筈。それで、あんな腹の底から吐き出す様な、あんな気合いの入った大声を出すか? いや、流石に、それはあり得ないんじゃないだろうか。
となると……それ以外の何か――そう仮定したその一瞬で、急いで地面を蹴って走り出す。マシュが居る。直ぐにやられてしまうってことは無い、筈だ。なら今、出来る事は一体何だ。エドモンと、リリィを呼ぶ? いや、あまり時間をかけるのはマズい。
なら、と。思考は最初から一点に決めている。
サーヴァントが一番力を発揮できるのは……自分が出来るだけ近くに居る時。マシュを援護するなら、一刻も早く向かうべきだ。
「ちょっ、待って!?」
「なぎこさんはここに! 俺が見てくる!」
いよいよリンボの襲撃か、それとも……あらゆる可能性を頭の中に叩き込んでから改めて、闇の中へと、急いで駆けだす。
リリィと、巌窟王も、大きな騒ぎになったら気が付くはず。そこで応援に駆けつけてくれることを祈りつつ。先ほどの雄叫びについて考える。アレは、何だろう。大声で牽制しようとしているのだろうか。
それとも――と考え、歯を食いしばる。康友が、遭遇した何かに『抵抗しよう』と思ってあげた声で無い事を、願うしかない。
今の彼は、カルデアの記憶の無い状態だ。一般人だ。普段戦っている時の、あの力は持ち合わせていなだろう。そんな状態でもし、遭遇したのがあのシャドウサーヴァントクラスの敵だったら。
「下手な抵抗は、命に係わるかもしれない……!」
尚コイバナから一気に緊張感走るのはFGOの標準装備の模様