FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:彼の者は何人目か

 ――この村の成り立ちは、正確に言えば平安時代にまで遡るようだ。

 

 記された筆文字は、かなりの達筆ではあるが……何とか自分でも読める。隣のマシュが読めない部分をフォローしてくれるのが、頼もしい。

 

 ……かつて康友が言っていた『とある女が、悪い鬼に見初められて子供を産んだ』、という言い伝えはかなり正確だった様で――最初にこの土地へと流れついたというのは、さるやんごとなき出自のお嬢様と、その供回りであったらしい。

その頃のこの辺りには、あばら家の一つも無かった。彼らが身を寄せたのは、近くの岩場だったようだ。

 

「私達がい――見つけた、あの岩場でしょうか」

「そう、じゃないかな。ここから大きく離れてるって訳でも無いし……でも、貴族の女の人が、硬い岩場で暮らしてたって考えると……」

「……苦労は、察するに余りありますね」

 

 香子の言う通り。

そこまで年経ている訳でも無い若い少女が、豊かな実家から出てそんな所へと好き好んでやって来た、寝泊りをしていた……とは、流石に思えない。では、どうしてそんな少女が此処に来たのかといえば――これが、サッパリと分からない。

 そもそも、彼女が一体何処の家の出なのか。なんという名前だったのか――それに関しても記されてもいない。

 

「……ですが、理由があるとすれば、恐らくは」

「うん。あまり考えたくないけど……」

 

 ただ――ここに辿り着いたその時点で、彼女のお腹には『出自不明』の子がいたという事だけは、ハッキリと書に記されている。そして……度重なる苦難にも負けず、彼女がその子を出産した、と言う事も。

 

 彼女は、相当にお腹の子供に執着していた事が伺える。こんな状況下でも産む事を選択した程だ。それが、家で産む事を許されなかった故だとすると……

 

「……それでも、子供を死なせることだけは、選べなかったのでしょうか」

「うん……凄い、お母さんだ」

 

 ……兎も角。

 子を産んでから、供回りを含む彼ら六人はこの土地に本格的に根を張り始めた――洞窟の硬い岩の上で眠り、自生していた植物や動物を取る生活から、粗末な畑やあばら家を作って、近くの植物を乾燥させた簡素な寝床を作って眠る様にまでなった。

 

 その女性が産んだ子供を、皆で育てながら。

 

「……それが、初代本造院の当主、って事になってる」

「ここへ辿り着いた、女性の方ではなく、ですか?」

「うん。あくまで、本造院の名を名乗り始めたのはその子供の方みたいだ」

 

 戦や、飢饉で住処を追い出され、ここへ流れ着いた人達を引き入れながら……少しずつではあるが、小規模な集落を形成し始めた頃。この村のまとめ役として、その少年の家が独自に苗字を名乗る様になった。

 

 それが、今の本造院家の始まりであり……同時に、この『ふるごう』という村の始まりでもあった、と。

 

「……」

 

 ……康友が言っていた言い伝えと符合する部分は、多い。

 

 だが、この歴史書には、康友の言っていた『要素』が含まれていない。出自不明とは書いてあるが、その父親が化生の類であったとは何処にも記されていない。

 康友の記憶違い……と言うには、あの酒呑童子を見た時の彼の反応は、余りにも真に迫り過ぎていた気がする。人理修復の旅の中で、彼の中での『鬼』と言う存在は、かなり大きいんじゃないか、というのは朧気ながら分かって来ていた。

 

「……どういう事だ?」

 

書物の中での歴史の記し方はかなり細かいもので、分からないであろう物はそもそも記されていなかったり……としている中で、この子供の父親の部分だけが、『正体不明』とぼかした書き方をされている。

 

これをただの偶然、と言うには……自分は人理修復の旅の中で多くのモノを見て来た。

 

「――香子さん」

「は、はい」

「この、村の成立について……他に何か、香子さんが知ってる事はありますか?」

「い、いえ……私は、詳しくは。その、本造院のおばあさまでしたり、他の村人の方であれば詳しく知っているのやもしれませんが……」

「そう、ですか」

 

 此方の質問に、香子はふるふる、と首を横に振ってそう答えた。

 

 ……彼女が持っているのは偽の記憶ではある。しかし、康友達が語った内容と合わせて考えれば、『幼かった頃に聞かされる前に、語るだけの知識を持った村人が亡くなった』という理由で説明がつく。

 

 やはり、彼女はこの村にキチンと馴染めるようなしっかりとした記憶の改ざんをされている。この分だと、色々村について聞いていって何か記憶に矛盾が出る、と言った感じのボロは出してくれないだろう確信が出来た。

 

「……分かりました。これからも、分かる範囲で良いので、ここの住人として知っている事を教えて頂けると助かります」

「はい、承知いたしました」

 

 しかし、それだけしっかり記憶の改ざんをしているという事は、此方が村の事を聞く分には『彼女が知っていても不思議じゃない情報』は聞かせてくれるのではないだろうか。

仮に話を聞いて、村人として普通に知っている様な事すら、変に情報を与えたくないから、と言わせない……そんな事すれば、出かねない。違和感が。

 

こうして村人の一人として彼女をこうして態々配置して、早々にその偽装が剥がれかねない……そんなハンパを、あのキャスター・リンボがしてくれるとは思えないのだ。

 

「……」

 

 最低限与えているであろう知識と照らし合わせれば、何かしら分かる事もある筈。

そう思い、読み終えた和綴じの本を脇に置いてから。先程この本を見つけた箱に視線を向けた……積み上げられた他の箱と同じ様な木箱へ。

手を伸ばし、次の本を取り出してみれば……それもやはり、同じようなしっかりとした和綴じの本の様である。他にも何かしら、気になる事が書いてある、だろうか。

 

「結構あるな……マシュ、手伝ってくれる?」

「分かりました」

 

 隣に座っている彼女にも、その箱の中の一冊を手渡してから……自分も取り出した一冊を開く。これも、先程の一冊と同じく、何とか読めるレベルだ。少し慣れて来て、マシュのフォロー無しでも行ける。

 

 ……が、その先を読み進めて行っても、これと言う情報は出てこない。

 おばあさんの言っていた話の延長線上だったり、マシュが康友から聞いていた話であったり、本当にただの日記みたいな感じの本が出て来たり。

 何かしら、彼らが此処に自分達を閉じ込める、そんな理由になりそうな情報とは、ちょっと言い切れない様な。

 

「……むぅ」

 

 自分達が本当に、ここらの調査をしに来ただけなら、この村の事を深く知るだけでもいいのだが……残念な事にここは特異点で、自分達はその特異点に人理焼却を解決する一環としてやって来て……仲間と引き離され、この村の中に閉じ込められている状況なのである。

 

 何処を目指せばいいのかも分からない今、これと言う『何か』が欲しかった。

 

「えっと、他には……」

 

 次の本に手を伸ばした所で――触れた指先が、明らかに今までと『違う』感触を捉えた。

 

 視線を、その本に向ける。

 同じような紐を使った和綴じ、なのだが……装丁は先の歴史書より、全然簡素だ。しかも明らかに年経て、劣化して……ボロいと言う印象を覚える。

 

「――これって」

 

 下手な扱いをすれば、直ぐにでも崩れてしまいそうなソレを……そっと手に持った。

 

 ボロさのわりに、かなり厚ぼったい印象を覚える。ページの大きさも、一定とは到底言えないし――先ほどまでの本と違って、ページ自体の肌触りも、かなり荒い。表紙に書いてある文字は掠れていて、全然読めない。

 

 ……慎重に、表紙をめくった。

 

「……名前?」

 

 そこに書かれていたのは……人の名前だった。右から左、一ページに三人ほどの名前が並べられたそれは、名簿と呼ぶにも酷くシンプルなモノ。今まで読んでいたものが、かなり洗練された書面だったのを考えると、違和感すら覚えるレベルの。

 

 ……『初代』と書かれた下の名前は、先の歴史書に書かれた彼女の息子さん……なんだろうか。しかし……その次の名前には、『二代』とは書かれていない。

 そこから五人程、名前を追っていくと……その辺りで、筆跡が変わった。そこからさらに二人程の書かれた後……『二代』と上に書かれた名前を発見した。

 

 ここに書かれている人物が、全て『本造院』という名字をしている辺り、当主の名前を書いている訳でも無い、とは思うのだが……そう思っていると、『三代』と書かれた名前はそう時間を置かずに見つかった。

 では四代はと言えば、今度は、十人程名前を置いてからである。

 

「……随分不定期だな」

 

 ……そこから、何ページか、書かれた名前を追って行って――ふと、そこで見慣れた名前を発見する――『本造院康友』を。

 そして。

 

「……五代……康友が、五代?」

 

 その上に書かれた、『五代』の文字を。

 




因みに埃を払った時にマシュがくしゅん、とした下りを書こうと思いましたが、親父ギャグになっているのに気が付き血涙と共にカットしました。
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