FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:聞きたくて、振り返って

 一つ息を吐いて、部屋から一歩外へ。

 

 目の前に広がる屋敷の庭は、すっかりと闇に包まれて。ここが時代としては現代である事が到底信じられない程に暗い。特異点の夜といい勝負だが……空気の澄んだ古い時代と比べると、星の見え方は、少し見劣りするか。

 

 蔵で出来るだけの事を調べ、そこから集落についての話を聞き……もう少し色々と出来ればと思っていたが……規模だけで考えるなら、今までで最も小規模だし、戦闘もあまりない筈なのだが……今までで一番疲れてる気すらする。

 

「……マシュ達は、今頃お夕飯の準備かな」

 

 縁側に腰を降ろす。

 

 ……状況を改めて整理しよう。

 今、自分達は敵の勢力によってこの集落に閉じ込められている。敵方の目的は不明。ここへ閉じ込めた探る為に特異点の調査を行ったのだけど……それによって、色々な事が分かって来た。

その中でも……敵方の目的と関係しそうなのは、今のところは二つぐらいだろうか。

 

 一つ。『初代』から『五代』と書かれていた人物たち。

おばあさんには書物自体が心当たりが無く、康友が『五代』と書かれていた事も理由は分からない――何かの間違いなのではないかとは言っていた――と言う事らしい。

あの蔵に安置されていた事から、本造院の家のモノである事は間違いなく。本自体も間違いなくかなり古いものだ。それこそ……この村が作られた時代からのものではないか。

 

あの本に書かれた五人は、この村を仕切っていた家が、時間をかけてずっと『記録』していた人物だ。筆跡の違いを見れば、何人もの人間があの本を記すのに関わっている。気合いの入れようはひとしお。

 

「……それに、『初代』って書かれてた人は『本造院家』のルーツだ」

 

 二つ目。この村の成り立ちに纏わる諸々。

 古い時代から語り継がれた、この村に関わる悲劇的なお話――悪霊を宿し都を追われた女性が産み落としたその子は、母の望んだ通りに鬼の子として産まれた、と言い伝えられていて……本造院の家は、その末裔であるとも。

 

 それが真実かはおばあさんは分からないと言っていた――けど、康友に表れたあの『鬼の血』の力を見ていると、嘘とは到底思えない。

 そして……彼らがなぜ康友を狙うのか。一番分かり易い理由となりえるのが、その血である事は疑いようもない。

 

 彼が『五代』と書かれていたのも……その血に関係する事なのだろうか。ダ・ヴィンチちゃんやロマニ曰く、彼の様に先祖返りのように力が目覚めるのは、本当に何百年かに一度あるかないかのレアケースであるという話だが。

 

「……彼らは、大前提として康友を狙っている。でも、一度確保した彼を記憶を消してこの村の一員として配置した。そして自分達と一緒に、閉じ込めてる」

 

 ……本来の目的の『本造院康友』に関連しているのは、彼が『五代』とされているこの村においての何かしらの立場か、称号か。そして彼の血の元を調べるにあたり行き当たる事になるであろう村の過去。

 向こうも、此方に狙いがバレているのは承知の上で、彼の情報がたくさんあるこんな舞台を……彼の故郷の村を準備した。それらを調べろ、と言う意図は見て取れる。

 

「それを調べさせて、その先に何を狙っているのか」

 

 調べるだけじゃないけない。その調べた情報から、彼らが何を企んでいるのかを焙り出して、先んじて対策を打つことも必要だ――後者に関してはカルデアとの通信の回復を待ってからになるが、ロマニとダ・ヴィンチちゃんが手をこまねいてみているだけとも思えない。きっと通信は回復すると信じよう。

 

「後、並行してやらなきゃいけないのは……アサシン、酒呑童子の捜索と、ゴルゴーンさんの安否の確認と所在……か」

 

 式部さんも此方に引き戻せれば一番イイのだが、彼女だけは何故か念入りに記憶操作までされてこの村の一員として配置されている。記憶を取り戻させる方法は、流石にカルデアの方で練って貰わないと厳しいだろうから、これも通信の回復待ち。

 

 ……こんな所だろうか。

 

「いやー……多いな」

 

 思わず苦笑い。

 しかも、細かい調べ物が得意そうな式部さんが居ない上に、ダ・ヴィンチちゃんやロマニが居ないという事実がまぁ痛い。普通だったらもうちょっとだけ上手に調べられたかもしれないが……根が真面目で、そう言った書類仕事にも慣れている賢い後輩、マシュが居る事が不幸中の幸いではあるが。

 

 しかし……彼女を頼りにし過ぎてもいけない事は分かっている。マシュの身体には限界が来ている。たとえそこにリミットがあったとしても――そのリミットを縮めさせるような事はしたくない。

 

「今みたいに、料理とか色んな事して欲しいんだけどなぁ」

 

 もっと料理の手伝いとか、趣味の読書だとか、スポーツだとか……そう言う、ごく普通の事をしているマシュを見ていたい。彼女が、普通の幸せの中にいる姿を――

 ……先程、お屋敷の厨房を見た所、大なべを必死に大きめのお玉で掻き回しながら自身も目を回しているマシュを見てしまったので、普通の調理風景とはちょっといいがたいのかもしれないけれど。

 

「……美味しそうだったなぁ、煮物。あ、ヤバイ。お腹減って来た」

 

 凡そは考えなきゃいけない事は考えたし、これ以上は何をしても無駄にしかならないだろうし――と言うか普通にお腹ペコペコでこれ以上は考えられない。食欲に任せて、縁側から立ち上がって、食事場の方へ身体を向けて

 

「――あ」

「おっ?」

 

 琥珀色の瞳と、目が合った。

 

「なぎこさん」

「りっちゃんやっほー! そっちも腹減った系?」

「うん。考え事してたらねぇ」

「あー分かる分かる、頭使った後ってクッソ腹減るわなぁ……一緒に行く?」

「うん」

 

 どうやら彼女もお夕飯を食べに部屋から出た所らしかった。目的は同じなのだし、折角なのだから、と。頷いて、歩き出す彼女の背に続く。

 

「マシュっちとリリちゃんは?」

「向こうでお手伝いを……俺はもう一人の仲間とちょっと打ち合わせを」

「あー、ちらっと見たなそういえば。あのシリアス成分マシマシの白い髪の兄ちゃん……あれ? 一緒じゃないん?」

「あはは……真面目な人で、まだ調べたい事があるんだって」

 

へぇ~、という声には明らかに『なにやってんだろ』という興味の色が滲み出居てるのが分かる。そりゃあなぎこさんからしてみれば、『なんか謎の調査をしている学者集団』である。何をしているのか知りたくもあるだろう。

 

……調べなければいけない事が分かっている。けれど。

それとは別に、一つ気になっている事がある――彼女達には事情を伏せる事の、その直接的な原因となった一件だ。

 

「つーか、りっちゃん達も物好きだよねー……自分の住んでる所悪く言うのもアレだけとさぁ、何も無いよココ?」

「そんな事ない。色々興味深い事、沢山あるよ。本当に」

「そーかねぇー……」

 

 直接関係があるかは分からないにしても……この特異点自体の中心となっているの誰であろうは、『本造院康友』であり。彼自身の事を良く知る事は、自分達が特異点を解決する為に、必要とは言わずとも、意義がある事ではあると思う。

それを考えると、彼自身の人生の中で、恐らくは最も大きな事件だったのではないだろうか――彼と仲の良かった村人が多く亡くなったその一件を、無視するというのは出来ない気がするのだ。

 

「なぎこさんにも聞きたい事、結構あるし……」

「え~? アタシちゃんなんかこう、村の伝統的な感じ? 特別に詳しいって訳じゃないんだけど?」

「ううん。村で暮らしてる人から情報貰うだけでも意味があるんだよ――他の方々が村の外に出てしまっていたのは、ちょっと残念だけど」

「あー、兄貴がおっちゃん達の予定調べてたのってそれかー」

 

 

 ……故に。

 

 あの日の一件を、間近で見た人たちの話は……出来るだけ聞いておきたい。例え、ほとんど覚えていないとしても、本当に細かいちょっとした事でも、何かしら閃くかもしれない。

 

 話を聞くべきは、おばあさんと、康友の二人と、もう二人。

 かの一件の渦中にいた、香子さんと、そして……目の前のなぎこさんにも。

 今は、流石に真正面から聞く事は出来ない。心の傷を抉らねば話を聞けないとは言え、やるのであれば、ちゃんと時と場所を選び、礼を尽くすのは当然の事だろう――

 

「だからまぁ、なぎこさんにも色々インタビューとかする事になると思う」

「おっ、いいぜい! このなぎこさん、兄貴のえっぐいエロ本の場所からばあちゃんの秘密の趣味、かおるっちの趣味の小説まで、全てをゲロる準備がごぜーます……」

「いや、それは流石にやめて上げて……」

「――それとも、十年くらい前の事件とか聞きたい系?」

 

 ――えっ?

 

 顔を上げる。

 

 ……暗い渡り廊下の真ん中で。くるんと、なぎこさんが振り返る――此方の瞳を覗き込むように僅かに身体を倒しながら。

 

 その瞳に、静かな、でも、確かに引き付けられる様な、強い輝きを宿して。

 




デ ー タ が 吹 っ 飛 び ま し た

でも復旧は出来たから許し亭許して
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