FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:調査二日目

 ……結局、一晩考えても分からなかった。

 

『見つけたいのなら、かおるっちのトコだけ探してちゃダメだよ』

 

 その言葉の意味が。余りにも曖昧で、伝えられたことが最低限に過ぎて。

 そもそも、まるで自分達が探しているモノを知っている様な口ぶりだった。思わせぶりなだけ? いや、それにしては、あの闇の中から自分を見つめていた瞳は――

 

「――さぁ! 今日も張り切っていきましょう! ます……『主任』!」

「頑張りましょう! 先輩! ……先輩?」

「……ん? あ、あぁ。頑張ろう、マシュ、リリィ」

 

 ……しまった。完全に意識が明後日へ行ってしまっていた……いけない。分からない事よりも、先ずは目の前の事に集中しなければ。

 

今日は……自分とマシュ、それにリリィの三人と、蔵で待ってる香子さんと共に、再び書物の調査を行う事になっている。

昨日調べられた事を鑑みて、今回は『この村の成り立ちに繋がる古い伝承』と『記録されていた五人の本造院家』に狙いを絞って調べる事になっている。全体を広く浅く狙って調べるより、狙いを絞って探索した方が効率も良いだろうという事で。

 

昨日は、万が一の可能性を考えてリリィを本造院家に待機させていたのだけれど。

巌窟王からの報告で、少なくとも今日、明日に即時襲撃をかけてくるという事も無いだろうと判断し――万が一の場合は、巌窟王が先行して戻ってくれるらしい――今日は、凡そ投入できるフルのマンパワーで調査が出来る。

とはいえ不慮の事態が起きて、万全の体制で調べられなくなる事も、もしかしたらあるかもしれない――出来る時に、気合いを入れて調べなければ。

 

「……所で、主任って何?」

 

 ……と、その前に。変に会話が漏れたりしない様に。声を潜めてから、会話の中で気になった所について問うてみる。自分只の現地調査員だけど……そんな意も込めた問いに、リリィは少し困ったように首を傾げた。

 

「えっと……マスターを『マスター』と呼ぶのは、ちょっと色々とどうかという事で……マシュさんと相談して決めたんですが……ダメでしょうか?」

「先輩の立場から考えて、調査チームの『主任』が一番的確かと」

 

 ……うーん。まぁ間違っては、いない、のか。ロマニとダ・ヴィンチちゃんと通信が取れず、康友もカルデアのマスターとしては動けない……消去法的に考えると。

正直……主任なんて呼ばれるだけの器が自分にあるかはちょっと微妙だが。多分だけどロマニとかの方が適任だと思うけども。

 

……いや、気持ちを切り替えろ。

自分達は今も、おばあさんと康友との約束を守って取り敢えずは二人以外には正体を隠す方向で動いている。いやもうなぎこさんの一件を考えれば話してしまってもいい、と思いきる選択肢もあった……それでも、話すには時期尚早と決めたのは自分だ。

その自分の選択に責任を持て藤丸立香。自分に今求められているのは、調査チームの主任研究員として振舞う事だ――

 

「……良し! そう呼ばれるのに不足ないように頑張ろうか!」

「その意気です、先輩!」

「大丈夫ですよ、今でも不足なんてありませんから!」

 

 頬を叩いて気合を入れて、三人で天に拳を掲げる。

 

 そうだ。それこそ、自分が切っ掛けて、新たな成果を上げる、位の勢いで頑張らねば。気持ちを入れ替えろ。何時までも新米マスターではいられないのだから――

 

 

 

 

 

 

「……自分は新米です……っ!」

「あ、あの……」

 

 蔵の前、思わず両手両膝を地面に突き、崩れ落ちて絶望する事しか出来なかった。

 

 全くと言っていい程に空振りに終わってしまった。

 お昼終わり。朝から始めた作業。何時間もかけて蔵を調べ、休憩時間に至るまで……自分はそれらしい成果すら上げられず……

 

 おおカルデアのマスター。貴様、自分が有能だと勘違いしちゃいないかい? 間違えちゃいけない。今まで、特異点の調査が上手く言っていたのはダ・ヴィンチちゃんやロマニのサポートがあったからだろう? それが無い今、自分はペーペーのマスター以外の何者でもないのだよ……

 

「うぅ……何か、何か少しでも出てきたらと思ったけど……」

 

 びっくりする程成果は無かった。それらしいものは結構見つかったのだが……どれもこれもなんというか、浅い表面を撫でるだけ、というか。肝心要の部分には何処にも引っ掛かってくれない。

 

 例えば『二代』と書かれている人物について……何時産まれ、どのように過ごして、亡くなったか。個人のパーソナルについては、ちょっと詳し過ぎる位に書かれている。

 のだが……『二代』と呼ばれているその辺りの事となると、途端に記載が少なくなってくる。一応、村の祭事の時にちょっとした役目を果たした、位の記述はあり『特別な立場にあった』位の事は書かれているのだが、詳しい内容に関しては……と言ったような感じで。

 

 この村の過去の事に関しても、あくまで『歴史』でしかなく、その当時の事について研究したり、とかいう資料が、まぁない。

 これだけ自分の村の歴史を残せるくらいの教養がある人達だったのだ。自分の村の古い歴史を客観的に分析してみた、というのも一冊くらいあるかなと思ったが……全くといって良い程に手応えは無かった。

 

……一応、村の祭事に関しては、香子さんにも聞いてみたのだが。

 

「……昔、村のご老人の方々が、これと似たような事を話していた覚えはあります。けれど内容に関しては『大切な事だから、みだりには話せない。君も参加する年頃に成ったら教える』とは言われるばかりで」

「そう、ですか……」

 

 ごめんなさい、と申し訳なさそうに頭を下げる式部さんに大丈夫、と軽く手を振りながら伝えつつ……少し、ため息を吐く事しか出来なかった。

 村に馴染める程度の知識を植え付けられながら、しかし『幼い頃の事件』によってのミッシングリンクがある。ここまで来ると、その辺りの年齢も彼女の偽の記憶に違和感を持たせないための敵方の上手な設定に思えてくる。

 

 ……容易く、掴ませない。じっくりと、村全体の事に、自分達が浸かっていかないと、謎が解けない――そうなるように仕向けられている。

 

「ふぅ……」

 

 ……ぱしん、と軽く頬を叩いて気合を入れ直す。

 望む所だ。こうなったら、こっちも頭の上まで浸かり切るつもりでやってやる。日が暮れるまではまだある――なんて生温い事は言わない。もうこうなったら、明日の朝日を拝むつもりで書籍に浸かり切ってやる。

 

「し……書籍をもっと見せて貰えませんか、香子さん」

「え? あの、何か入っていそうなのはあそこにある箱で全てだと思うのですが」

「いいえ。最初の方で仕分けた以外の奴も。当然、この後、分けて貰った本は全て調べますが……今の内に、それ以外も流し読みする位はしておきたいな、と」

 

 という事で……この休憩時間も、ちょっとした調べに回す。あくまで、どんな本があるのか程度の確認にしかならないが、それでも『まだ何か調べられそう』か『本当に関係なさそう』を区別する位は出来るかもしれない。

 

「――そっちの箱も、多分そうですよね」

「え、あ、はい。皆様が見たい、とおっしゃっていたモノは全て蔵から母屋へ運び出したので、恐らくは……」

「見せて貰えませんか」

 

 恐らくは、中から目的のモノを運び出す時に、一旦脇に避けて置いたものか。流石に数が多すぎて、全て片付け切れていないのだろうが……今回はそれが幸運だった。丁度いい、今かして貰って調べる事も出来るだろう。

 

「わ、分かりました……あの、目が、据わってらっしゃいますけど……」

「大丈夫です」

「え、えっと……出来れば、丁重に扱って頂けると……」

「任せてください。傷どころか劣化一つさせません」

 

 いやもう、さっきまでの余りにも不甲斐ない仕事ぶりに情けなさすぎて何かしたいんですよ。何かしないと堪らないんですよ……という事で、若干顔を引きつらせながら此方に本を渡してくれる香子さんに頭を下げながら、その本を受け取った。

 

「さーて、ここから挽回出来ればいいんだけど……!」

 

 手元の書を開く。さて、この本は――

 

「……地図?」

 

 見開きに大きく書かれているのは……何処かの、地図の様である。

 ……いや、何処か、じゃない。描かれた屋敷、沢へと下る道、そして……地図の外れに書かれた、この岩場は……見覚えがある。

 

「間違いない……この村の地図だ」

 

 今自分が滞在している古郷。その村の地図に相違なかった。

 




という事で、今回の更新はここまでとなります。

次回の更新は多分二月ごろになると思います。その時、もし宜しければ暇つぶしに見ていただけば、幸いです。

……終章が来る……FGO君も新体制になったばっかりだし、まだ続いていってくれると信じております……
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