FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:鬼の巣食う村

「――酷いものだな」

 

 開口一番。洞の中を覗き込んだエドモンは、そう呟いた。

 正直な所、彼――巌窟王エドモン・ダンテスの『特異さ』を自分はある程度知っている。こういった事について、彼ほどの専門家はいないだろう。そう思って見て貰ったのだが、流石と言うか。得心が行った様子で口を開くまで、一目しか必要としていない。

 

「分かるの?」

「コーヒーの染みの如くにべっとりとこびり付く代物だ――監獄の中にも、死んだ囚人の嘆きの声が『染み付いた』壁があったが、それとは比べ物にならん」

 

 監獄塔を知り尽くし、見事脱獄せしめたその知啓からか、目の前の血文字の書かれた岩壁を二度、三度と撫で、此方に向けて振り返ってからそう断言して見せた。

 

「ここまで来ると……恐らく、土地にまで根付いていると見ていいだろうな」

「この場所だけじゃなくて、村全体に、ですか?」

「専門的な処置をしている様には見えんからな……物理的に入り口を閉じただけでは、この影響を完全に封じる事は不可能だ」

 

 ……エドモン曰く。この洞に巣食っていた『モノ』は、土地にとっての巨大な病原菌そのものだという。隔離も何もされていない状態で放置され、少しずつ、時間をかけて、この回りを汚染していった――もう既に、生中な手段では取り除けない程に、深く。

 端的に言うならば――この『ふるごう』一帯は、女の怨念によって呪われている。それも巌窟王が見た限り……もうその浄化が不可能な程に。

 

「先ほどの怨霊共が良い証拠だろう――女が渇望したのはあの『鬼』だ。アレは自らの恩讐を叶える為の存在として、『鬼』という魔を強く求めた。故に……それに属する者が現れたからこそ、あそこ迄強く反応した」

「……酒吞童子が此方に合流しないのって」

「『呼び寄せる』事を本能的に察していると見えるな。奴が迂闊に合流しようものなら村全体に悪霊が湧きかねん」

 

土地そのものが大した霊脈が走っている訳でも無い土地だからこそ、影響がないように見えているが……適した呼び水があれば、あの程度は容易く呼び寄せてしまう。

最早、手遅れだ――巌窟王は、そう溜息を一つ吐いて見せた。成程、これで彼女が合流しない方の理由、その一つが分かった。これは一旦、合流は諦めるしかないだろうか。

 

「……私には、ただ平和な村にしか見えないですけど」

「影響は既に出ているだろう――『本造院康友』と言う実例となって、な」

「――えっ?」

 

 その言葉に、巌窟王の方へと視線をやって――はっと気が付いた。

 

「まさか……あの『力』そのものが!?」

「最初が本当に鬼の子供だったとして、だ。それが何百年もの積み重ねの中でどうしてその力を保っていられる。如何に閉鎖的な村だったとしても、ここは神秘に詳しいモノが居た村でもあるまい」

 

 神秘というモノは、時を重ねるごとに力を増すが……しかし時代が進めば進む程、その影響力自体が弱まっていく。神秘と言う存在の扱いの難しさは、カルデアに来てから勉強してある程度は知っている。

 

 では、鬼という魔に属する神秘は――どうやって現代まで脈々と残り、康友の中に宿ったのか。奇跡ではなく、それが必然だったとすれば。

 村人たちにはそんな事が不可能でも……他に要因があるとすれば。それが現代まで続くような根深い『モノ』だとすれば――

 

「託すって言うより……死んでも尚、この世に仇成すようにって唆してた!?」

「あの男も言っていたのだろう。そんな昔の事をここまで長々と伝えるなどと可笑しな家だと――そう『する』だけの理由があったというのは、何も可笑しい事ではあるまい」

「じゃあ、もしかして……あの名簿の印のつけられた方って……!?」

 

 ……成程。これで一つ謎が解けた。

 

 自分達は、そもそも『本造院康友』及び『貴族の女性の子供』――その二人しか『鬼の力』を目覚めさせた人間はいない、と言う前提の元で考えていた。

そんな特殊な事例が何人もいるとは思ってもみなかったというのもあるし……加えて康友の住んでいたこの村は、勿論特異点などではなく、普通に現代社会にあった集落だ。神秘に明るくないというのもあって……『稀有な事例』だと思っていたのだ。

 

「如何に土地に根付いたとしても、及ぼせる影響には限度があった。その限度と言うのが恐らく――ここに至るまでに産んだ、五人の資格者だったという事だろう」

「……現代に残った、鬼の『生まれる』村か」

 

 先ず――敵が思う、一つのヤマを越えたような気がした。

 『相馬』を名乗るサーヴァント――平将門が此処を調べさせる理由、その一片がようやく見えた。現代の中でも、特異な現象が起こる集落……それも、飛び切りと言ってもいいレベルの神秘が。

 彼らが此処へといざなった理由。自分達にここを調べさせるという回りくどい真似をさせるだけの何か。確かに、そこにあるという確信が抱けた。

 

「――取り敢えず、あの五人に重きを置いて調べる必要があるのは間違いないね」

「香子さんの家の文書について、改めて調べ直す余地が出来ましたね、マスター」

「うん。今まで気にならなかった事も……この事実を知ってからなら、今までスルーしてた所にも、何か引っかかる所が増えてるかもしれない」

 

 さっきまでは何も見つける事は出来なかったけれど――そのパーソナルの一部でも分かったのだ。大きな一歩であり、そこから何かの手がかりを掴める可能性も十分に出て来たといって良いだろう――しかし、だ。

 

 分かった事は増えた。だが……改めて、初めから見えてはいたであろう疑問が、ここではっきりと姿を現してきた気がする。

 

「……そもそも、なんだけど」

「はい?」

「彼らは、何処からこの村の事を――村の秘密を知ったんだろう」

 

 口元に手を当てながら、考えてみる。

 自分達がこの村の事を深く知る事が出来たのは、こうしてこの中に入って、そして村の人達の全面的なバックアップを得られたからだ。普通にやったらそこまでたどり着くのは困難極まりないだろうし――そも彼らが過去の英霊ならば、一体何処でこの村の事を調べられたというのだろうか。

 

 ……外界に情報が残っていた、とは考えづらい。

 この村自体が相当閉鎖的な場所だ。近くに真面な道が通っていないのは確認済み。外と積極的に交流を持っている、と言う訳でも無さそうで――思い出すのは、あの屋根の模様。

 近くの木々に紛れる様な迷彩柄の模様……アレは、明確にこの村を隠そうとする意志の顕れだ。何故屋根に、というのは、現代人であれば凡そ想像もつく。

 

 上空からの撮影――衛星写真などがそれに当たるだろうか――に対しての対策、と言うべきだろう。少しでも視覚からの発見を遅らせる為の処置だ。徹底的に自らを隠そうとするあの執念染みたモノを考えると。

 

「……生前に関わりがあったのかな。この村自体に」

「でも……平将門ってお名前は、何処にも見かけませんでしたけど」

 

 ……リリィが首をひねりながら言う通りで。そんなビッグネームの名前は、今まで調べても尚、全くと言って良いほどに出て来ていない訳で。

 

「ここがどれだけ外界の情報を仕入れていたかは知らんが……時の政府に叛逆を翻したような怪物的な男だ。訪れていたならば、何かしら残っていそうなものだが」

「ないって事は、可能性はかなり低いって事かな」

 

 ……もう一つ可能性があるとすれば、キャスター・リンボこと蘆屋道満なのだろうが。しかし何方にしろ、どうにも可能性は薄いような気がしている。

 特異点と言うのは、言ってしまえば歴史の『IF』だ。もしも何方かが生前にここを訪れていたというのであれば――もっと手っ取り早く、何方かが此処を支配し、大きな都に変えていた……と言う方にでも持って行った方が分かりやすい、簡単だろうと思う。

 

 リソース自体も、大量のシャドウサーヴァントを刺客として用意できるだけのものがあるなら。この村に対して大それた改変をするのも不可能ではない筈。直接の『縁』があるというのなら、なおさらだ。

 

「やり方が回りくどい辺り……そういう直接的な関係は無かったんじゃないかと思う」

「じゃあ……どうやってなんでしょう」

「彼らが此処の事を知り得た理由。そこの辺りにも、何かが有ったりするのかな」

 

 腰に手を当て、天を仰ぐ。日は大分、西に向けて傾き始めている様で、木の葉をくぐった日の光が、岩場の床へと伸びているのが見える……次の方針は決まったか。

 

「……平将門、及び芦屋道満。この二人とこの村の関係も、並行して調べていこう。あるかどうかは分からないけど、やらないよりは大分いいと思う」

「やる事が一杯増えて、進展したって感じがしますね! ただ……」

 

 ちらり、と開いたままの『洞』をリリィが見つめながら……若干困ったように呟く。

 

「……これ、薄まったって言っても……開けっ放しになってると、あんまり良くない、ですよね。多分ですけど」

「――仕方あるまい。どうせ追跡の任が終わって俺の手も空く……この辺りの見張りも兼ねて何かしらが出ないかを探っておく」

 

 それに応えるように、ため息一つ吐いて申し出たのはエドモン。

 まぁ流石にここ放置はあまり良くないだろうし……専門家に任せるのが一番ではある。毎度のことながら単独行動をさせてしまうのは申し訳ないが。

 

「ありがとう。交代したいなら何時でもマシュと代わるから」

「ハッ――俺が愛想良くできる質にでも見えるか? 気にせず、精々村の住人共との交流にでも、神経を注ぐがいいさ」

 




漸くすると

『酒吞童子ぃ-ッ! ウォオオオオオオッ!!』→ピーポーピーポー……

って感じです。そう考えるとあのゴーストたちもあっという間に〇マ吉君に!!
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