FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章・裏:蠢く者共

「――予定通り……というには、些か手早くこの村の秘密を解き明かしましたなぁ。カルデアの者達は。サーヴァントの方が優秀なのか、それとももう一人のマスターが想像以上に優秀と言う事なのか」

 

 言外に『このペースで大丈夫なのか』というニュアンスを込めて、リンボ――改め、芦屋道満は背後の『主』へと問いかけた。

 

「ふむ。良い事じゃあないか。何か、問題があるのかな?」

「いえ、そうは申しませぬが……担ぐ神輿は、操りやすいように適度に無能である方がよろしいのではないか、と考えた次第でして」

「仕事は真面目に、早くやる事に越した事はないさ。そうだろう?」

 

振り向いた視線の先で、館の奥座敷に腰かけた主はと言えば……静かに此方へと微笑むばかり。手元の盃を煽る、そのゆったりとして落ち着いた所作。滲み出してくるのは、確かな余裕と、機嫌の良さ――言外に『寧ろ願ったりかなったりだ』と返されたのだと気が付くのに、そう時間は要らなかった。

 

 彼にとっては、彼らの好調ですら予測の範疇に過ぎないという事だろうか――背筋が冷える様な感覚を、リンボは覚えていた。

政治に関してはさして得意とは言えないと苦笑気味に言っていたのを覚えているが、恐らくその優秀な頭脳を其方の方面に活かす気概さえあれば、ともすれば――都をその手に収める事も不可能ではなかったのだろう。

 

「彼らの方が、偉そうな物言いだけの識者擬き等よりも、よっぽど信頼が出来る――ああいう友人が、生前に欲しかったものだよ」

「――藤原との確執に手を貸してくれていたやもしれない、と?」

「そうだね。アレだけの逸材が居れば……私の末路も、変わっていたやもしれない」

 

 だが……目の前の男が迎えたのは、そんな華やかな栄華の未来ではなく。少しずつ腐っていくような破滅への道。

 

 もう一杯、手元の酒を煽ってから。

嘗てのその無念に思いを馳せる様に、『主』は大きなため息を一つ吐くと……此方に視線をやって僅かに苦笑して見せた。

 

「もちろん君が我が右腕として居たなら、私は間違いないなく、梅の花咲く我が自宅で大往生を迎えられていたのだろうがね」

「ふふふ。そのようにお褒め頂き、大変にありがたいですが……その様な辛気臭い顔で言われても、素直には喜べませんなぁ」

 

 その悔恨は深い事この上ないだろう――と、その辺りを突いてみたくはある。

勿論ちょっとした興味だ。その未だ燻る火種が再び爆ぜた時、普段涼しい顔をしているこの男がどんな顔をするのか……ムクムクと膨れ上がる『悪戯心』をぐぐっと堪え、にこやかに言葉を返した。

 

流石に『今は』、ひと時の興味よりも厚遇による利を取る事にした。たった一時の興味本位で虎の尾を思い切り踏みつけ喉首を嚙み千切られては笑い話にもならない。

 

「――兎も角。そう言う事であれば、『彼女』への連絡はせずとも問題はない。と言う事で宜しいですかな?」

「勿論だよ。気になっていたのは、そこかね」

「えぇ。折角の伏兵、ここらで一つ奴らの戦力を削る為に打つ、と言うのも一興かと思ったモノですから。敵は勢いに乗って猪突猛進――背後が疎かになっております故」

 

 ――それに、その悪戯心で喉首を掻っ切るのであれば、自分よりも適役が居る。

 

 カルデアは今。五里霧中の中で漸く光明を見つけた様な状態だ。そんな時にこそ、人間というのは得てして緊張の糸が緩みがちになる……『勝って兜の緒を閉めよ』と言う言葉もあるように。

 其方へと駆けだすその道すがらに――縄の一本でも張ってやれば、その走り出しを盛大に挫いてやれるだろう――と。

 

「今が相手の快進撃を挫くのであれば最適のタイミングではあるだろう」

「でしょう?」

「――しかし、だ」

 

 此方の提案に対し、主は一度頷いて見せてから――改めて、不敵な笑みを浮かべると共に指先を左右に振って見せた。

 

「たかが相手の走り出しを挫く程度の事で、彼女と言う伏せ札を切ってしまうのは些か以上に惜しい――できる事なら、此方の『想定外』の出来事が起きた時のカウンターとして切るのが理想だよ」

「ふむ……と言いますと?」

「圧倒的有利な側が先ず警戒するべきは、想定の範囲を超えたラッキーパンチによる、優位性の致命的な瓦解だ――君の言う通りなのだよリンボ。順調に行っているからこそ、油断はしてはいけない」

 

 先ほど、自分が言っていた事を引き合いに出され、思わずして詰まったような声を出してしまいそうになった。

確かに――自分達は、カルデアに対して圧倒的な優位を保っている。それは間違いない。リンボとしては、その優位を保ちつつ、相手の抵抗する力を削いだ方が、より安心できると思っていた、が。

 

「優先すべきは、我々の目的を確実に遂げる事――その路線から、彼らは外れていないのだから、今は無駄にリソースを消費したりせず、じっくりと行こうじゃあないか」

 

 ……そう言われると、自分が焦っていると言われている様で些かと不快ではあるが。

 

 しかし、そこでリンボは考え直す――そうだ。自分達の圧倒的優位な立場を忘れてはいけない。自分達の手の上で、思った通りの動きをしているのだから、妙な手出しをして逆に痛手を負ったり、間隙を晒したりする必要が何処にあるというのか。絶対に此方の優位が崩れない様に、キッチリと隙無く詰め切る、と言うのは理にかなっている。

 忘れるな。背後の主もいずれは『敵』になりえるのだ。ここで焦ればそれこそ付け入る隙を与えるばかりではないか。

 

「ンン――であれば、このままで」

「それで頼むよ、リンボ。その分、監視の目は緩めない様に。酒呑童子の合流、及び発見できていないゴルゴーンとの接触は、許してはいけない」

 

 今は素直に頷いておくか、と肯首したその直後――柔らかな笑みに弧を描いていたその瞳が、一瞬で鋭さを帯びた。

 

「酒呑童子の方は、敢えて距離を取って機を伺っている。恐らく、最後まで我々の隙を見逃す事は無いだろう。ゴルゴーンの方は、未だ発見すら出来ていないのが不気味だ」

「気配遮断のスキルは持っていない筈なのですがね。何者かが協力しているのか」

「忘れるなよ。ここも特異点には違いない。我々へのカウンターとして別のサーヴァントが召喚されている可能性は十分にあるのだ。協力が難しいように隔離はしてあるとはいえ、それらと手を組まれれば……」

 

 ――万が一がある。

 

 此方に向けられる槍の穂先の様な鋭い視線。それに対し、承知しております、と告げてからゆっくりと腰を折って頭を下げた……当然、理解していない訳がない。

 カルデアのマスター二人には、確かに天運があると言って良いだろう。藤丸立香であれば巌窟王、本造院康友であるならば酒呑童子――それぞれに、自分達の動きに対応できるだけの知恵者が揃っている。

 

 しかも、巌窟王であればこのような窮地においての知啓に、あの鋼鉄の如き意志が合わさって、このような相手方にとって不利を背負った盤面ではこれ以上ない厄介な敵になる。

酒吞童子ならば、単純に良く頭が回る。おまけにそれを活かすだけの悪知恵も備えていると来ている。身体能力の高さも合わせ、単独暗躍するのであれば最も厄介な手合い。アサシンと言うクラスは、ある意味彼女に最も似合っていると言えようか。

 

……そして本造院康友であれば、もう一人。

 

「ゴルゴーンの実力は、君も『知っての通り』だ。如何に遠く及ばぬ影法師とは言え余裕ぶっていれば此方が喰われかねない。マシュ・キリエライトと共に、此方への『鬼札』となりかねないだろう」

 

 

 

 

 

 

「――全く。いい加減にしろ。何時までこのような場所にいなければならない」

「今暫く、お待ち頂けませんか……御身は、彼の者達の思惑を打ち砕く為の重要な『鍵』なのです。されど、機を誤ればあたらに切り札を無駄に捨てるばかり。必ずやその時は訪れます故、しばし、しばし、お待ちを……」

「全く……であれば、ハエ共の排除に心血を注げ。名前も明かさず、目的も口にしない。そのような輩の言う事を聞いてやっているのは、私を追い立てる下郎と、貴様が明確に敵対してるのを示し続けている故だ」

「それに関しては、言い訳の仕様もなく……」

 

「うーむ……しかしどうしたモノか。事を動かすには、先ず彼をここへおびき寄せねばならぬしなぁ……しかし、かと言って敵がその様な事を許すかと言えば……うむむ」

「――ん? おや、君は……『ごーすと』、ではないようだね」

「……ふむふむ。あぁ、成程。かの鬼の首魁殿の残り香で、偶然に……成程」

「であれば、君に頼むとしよう。彼を誘う為の案内役は、ね。敵に紛れる形で動いてもらう事になるだろうか――」

 




進展……しない……っ!(苦悩)
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