FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:急を告げる異変

「――と言う事で、調査三日目、張り切って開始したいと思います!」

「「わー」」

 

 ぱちぱちぱち……と拍手が部屋の中に響きわたる。若干やる気が無いというか、緩い感じなのはご愛敬だ。

あんまり真剣過ぎても、空気が悪くなってしまうというか。この室内にこもりっきりでずーっと調べものするというのも、少し息が詰まってしまうし。焦らずのんびり行こう、というのが今日の方針だった。

 

「えー、今回探したいのは、この村の儀式に関する書物です。参考となるキーワードを本造院のおばあさんから聞いてきましたので、此方のメモを見て確認して頂ければ」

「おー、流石マシュ。仕事が早い」

「はい! お話を聞いたのは昨日と聞いておりますので、正に疾風の如き、ですね!」

「そ、そんなに褒められてしまいますと、こう……あの……照れてしまいますね……」

 

 マシュによるバックアップも十全と来た。これならばもう何も怖いものは無い――と言いたい所なのだけれども。

 

そもそもの話、今日かなりのんびり方向で考えているのは……目的のモノが無いという一番恐ろしい可能性が色濃く残されているからで。焦って探しても空振りの可能性が高いなら、逆に気負い過ぎず、取り敢えず見つかったらラッキー……位の気持ちで挑むのが丁度良いんじゃないかと。

これに関しては如何にマシュが優秀でもどうしようもない――と言う事で。

 

 別にその儀式について以外も、色々と見つかるかもしれないし。そうなったら今回探したのはそっちの方を見つける為だった――と言う事にしようかとも思う。悪い方向、悪い方向に考えてしまうよりも、今回の探索に成果があった、と言った方が全然精神衛生上良いのである(ロマニ談)

 

「今日も張り切って参りましょう!」

「「おーっ!」」

 

 ……もし本当に何も見つからなかった場合は。

 まぁ……お昼におばあさんがわらび餅を用意してくれているとの事で。それで糖分を補給しつつ、どうしようかを考えることにしよう。

 

 

 

 

 

 

『――さて、そろそろ此方からも一石を投じるとしようか』

 

 

 

 

 

 

 ……これは……うん。関係なし。こっちのは……あ、昨日読んだ奴だ。別の所に置いておかないとまた混ざっちゃうし……うーん整理整頓っと。良し。

 大分座りっぱなしだったからか。身体がガチゴチに固まってしまっている。首の後ろ辺りに、言いようもない疲れがたまってるのが、分かる。

 

「っはぁ~……あぁ、もうこんな時間か」

 

 軽く一伸びしてから……くるりと周りを見回す――視界に入った時計の針が、もうお昼近い時間になっている事を教えてくれた。

 朝早くから始めて、ぶっ続けで何時間ほど調べていたのだろうか。そりゃあ身体も……こうして、肩がゴキゴキと鳴る位に、凝り固まるというモノ。ちょっと回しただけでこれだもの。まぁ凄いもんだ。

 

 ……調査はスムーズに進んでいた。と言うより、『進んだ』だけだ。昨日のように何かのとっかかりがある訳でも無く。ただただ、ずっと『外れ』が続いていって……まぁ、ここまで二つ、この蔵から情報が出て来ている。二匹目は愚か、三匹目のドジョウを狙うのは無理があった、戸は自分でも分かってはいるのだけれども。

 

「ハッキリと目の前に示されると……なぁ」

 

 とはいっても……ここまで『空振り』だとこう。若干悲しくなってくるものがある。

 しかも『あ、これもう薄れちゃって読めそうにないな』とか、調べてみても『全然関係ないし何か手がかり的な情報が乗ってるとかもなし』と言う事ばっかりで……『おっ?』とか何か引っかかる事すらないと来ている。

 

 ……そう。『全く』だ。

 

「……やっぱり、何かおかしいよな」

 

 例えばこれが……ちょっとした記述の中にその行事の名前だったり、様子だったりがちらとでも書かれていたりはする事は、稀にあって――でもそれもあまりに断片的過ぎて、殆ど参考にならない、と言うのであれば、まだ分かる。

 が、どんな本にも、まるでその『断片』すらない。そんな行事が存在したのかも怪しい程に全く、だ。

 

「でもおばあさんも、康友も、確かに……」

 

 嘘を吐いてるなんて到底思えない。喋る時に感じた陰鬱な空気も、眉間に刻まれた深い皴も――行事と共に起きた『惨劇』が真実である事を疑わせない迫力があった。

 そして、その惨劇が起きたという真実は――同時に、村人全員が亡くなるだけの状況が実際にあった事を裏付けている。

 

 あの日、あの家に、村の人たちが集まっていなければ、それはトラウマになる程に残酷に過ぎる『惨劇』になる事は無かった。であるならば、確かにあるのは間違いない。間違いないのだ――しかし。

 

「……これも隠されている」

 

 ……そもそもの話。

この村の最初の代表となった『初代』から始まる『鬼の血』がこの村でどう扱われていたのか、未だはっきりとは分からない。

 

本当に、色んな本を見ても、最早徹底的と言わんばかりに、その関係の情報が出てくることが無く……先に見つけた二冊に関しても確認してみたがが……やっぱり、確認できた情報以外の事は、殆ど載っておらず。

 

「この、鬼の血について……」

 

 ――『なげちぶち』が記されたのも、かなりの説得の末の事だ。

 

 遥か昔からこの村に伝わる、鬼の血について――明確に残されているのは、例の昔話たった一つだけ。

 

 自分達は、本造院康友という一例と、カルデアでの戦いで神秘や常識の外にある多くの事と向かい合ってきたから、疑う事なくその血を追えている。

 だが……普通の人が調べたなら。これだけの資料を揃えても尚、『不思議な言い伝えのある辺境の村』以上の事を考えられるだろうか。

 

 村自体を隠遁する努力――それに加え、まるで村の内情が『改められる』という前提に立ったかのような、徹底された隠ぺいの匂い。まるで、何重にも重ねられたベールを、一枚一枚剥がしながら奥へと向かっていく様な、徒労感を感じている。

 

「……もし、当時の情報を持ってるとしたら」

 

 昔の事がここまでわからないとなると……やはり、その事について直接知っている人に聞くのが一番なのだろうか。聞けるとすれば……おばあさんか、康友か。それとも当時の惨劇の中で生き残っていた後二人。

 だが……彼女達にとっては、余りにもつらい記憶であると、康友も、おばあさんも口にしていた。巻き込みたくない、とも。

 

 そんな彼らの想いを裏切ってまで、彼女達に話を聞くべきなのだろうか。

 実際、もうその手段が頭に思い浮かんで来るレベルで、再び行き止まりにぶつかっているのは確かだけど……だからと言って。

 

「……どうすればいいんだろう」

 

 ――どさっ

 

「――ん?」

 

 視線を上げる。

 目の前に、一冊の本が落ちていた。

 

 先ず――しまった、と言う思いが頭を過った。

 結構大きめの落下音だった。かなり高めから落ちたのは一発で分かった。となると……多分自分が何処かに足か何かをぶつけて落っこちて来たのではないか――古い本だ。落下の衝撃で大変な事になっても不思議じゃない。

 

 考え事で頭がいっぱいになり過ぎていて、管理してる香子さんに大変申し訳ない事をしてしまったのではないか――そこまで考えた辺りで、漸く手を伸ばす事が出来た。

 

「こ、これ大丈夫かっ……!?」

 

 本を手に持って――が、特に傷がついたようには見えない。取り敢えずダメージは無さそうではあるが……万が一がある。香子さんに見て貰わないといけない。

 この本は――えっと、題名が書いてない、か

 

「こういう本多いよなぁ……中身見るまで分からないのが厄介だよなぁ」

 

 腰を上げて、周りを見回す。

えっと、香子さんは……向こうに座ってる。本を整理しているらしい。其方へと爪先を向け、一歩を踏み出そうとした――その時だった。

 

「――緊急だ」

「うぉっ……!?」

 

 ギリギリ悲鳴を上げそうになった所で、何とか声を抑えることに成功した。

 まるで影から滲み出たかのように、不意の出現。何時の間にやら傍らに佇んでいたエドモンからの、不意打ち染みたその一言。良く耐えられたな、と思いつつ背後を振り返った。

 

「ど、どうしたの……?」

「村の入り口に、シャドウサーヴァント共が迫ってきている――しかも、集団でだ」

 

 ――が。

 

 それ以上に背筋に冷たいモノを伝わせる様なその言葉に、思わず目を見開いてしまう。山間の村を、嘗ての惨劇以上の恐怖に陥れるだけの脅威が、迫りつつあった。

 




今回の更新はここまでとなります。

次回の更新は……少しばかり遅れますが、恐らく五月位になるとは思います。もしその頃また見かけたら、見て頂ければ幸いです。
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