FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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ただいま(小声)


断章:稚拙な強襲

「――マスターっ、香子さんのお屋敷への避難誘導、完了しました!」

「ありがとうマシュ……ところでなんて言ってお屋敷に行ってもらったの?」

「……しょ、少々大規模な熊の大移動が起きた、と」

「まぁ、旅の調査団なら熊の対処も慣れてる……のかな」

 

 身に覚えのない冤罪を押し付けて、熊さんごめんなさい――と、こっそりと頭の中で謝罪しつつ。ちらり、と村の入り口方面の木々の合間へと視線を向ける。

 一、二、三――ギラつく刃の光が。木立の影の中で次々と増えていくのが、ここからでもハッキリと見える。

 

 詳細な数はまだ分からないが……この小さな村一つを潰すのであれば、十分過ぎる数と言って良い。これで『ただの様子見』なんて事はまずありえない。

 しかしながら。

 

「どうして、こんな急に」

「気が変わった……にしても、ちょっと遅すぎますよね」

 

 ……マシュの隣で、剣を構えるリリィがそう呟く。

 

 今まで、相手は不気味な程に、閉じ込めた此方の動きを見て来た。そこからこの襲撃である。誰だって疑問に思う。

 

もし『ここなら仕留められる』と欲を出し、急に気が変わったという一番分かりやすい理由だったとしよう。だとしても、もっと『納得できる』タイミングは幾らでもあった。戦力を分散させていた時も、村から離れていた時も、幾らでも。

 よしんば他の理由だったとして……何れにせよ、戦術判断に関してはド素人の自分でさえも、流石に『遅きに失している』事は分かる。

 

 なんなら、エドモンも直ぐに戻って来れる距離に居て、準備できるほぼ全力を投入できるような状況……相手が此方を監視しているのなら、寧ろ避けたいタイミングの筈だ。

 

「エドモンに気づかれて、奇襲にもなって無いし……」

「……その辺りにしておけ。気もそぞろな状態で対処しきれる数でもあるまい」

「あ、うん」

 

 ……そこまで考えた所で、エドモンの一言が思考から意識を浮上させる。

 

 森の前にずらりと居並ぶ『黒武者』達が、太刀を構えて突進してくる――しかしながらどうにも動きは散発的だ。一斉に躍りかかって来るでもなく。

 

 まだ村には入っていないが……あの大太刀で暴れられたら、村の建物に被害が出るかもしれない。出鼻をくじいて、間際で堰き止める。

 

「マシュはシールドで突撃した先頭を叩いて、後続の動きを妨害。エドモンは動きの止まった敵をかく乱、そこでバラバラになった奴から順に、リリィが叩いて欲しい」

 

 素早く。サーヴァントの皆に作戦を伝達。正直、各特異点の王や将に比べれば拙いモノではあるが……それでも、サーヴァントに名を下す立場にあるのは自分だ。皆に任せるだけ任せて何もしない、という選択肢は無い。彼らを指揮する責任がある。

 

「それで、礼装の援護は……前線のマシュに集中させる――で、良いかな?」

「了解しました!」

「お任せください!」

「……悪くはない。堂に入って来たな。共犯者」

 

 ……僅かな逡巡と共に問えば、皆から返って来るのは、実に力強い返答。素人指揮官にはもったいない程に頼もしい仲間だと思う。故に……後は、信頼して任せるだけだ。

 

「――マシュっ!」

「はいっ!」

 

 号を切るのは自分。多分だけど――先頭の黒武者が一番突出したタイミングを狙えたと思う。

 

 大楯を構え、マシュが飛び出す。『重さ』で言うならばカルデア一の『チャージ』が、襲い掛かろうとした黒武者へのカウンターとして放たれ――当然の様に、その太刀の一撃だけでは突破しえず、逆に押し返されてしまう。

 勢いを乗せたからこそ、弾かれた時の反動も大きい。マシュよりも二回りは大きな体が仰け反り、たたらを踏んで下がらされ……後ろから突撃して来ていた、同じ黒い巨体への『壁』となってしまう。

 

 そしてやはり――勢いが乗っていた分、機先を潰された時の『ロス』も大きい。

詰まってしまった前の武者達の動きを見てか、慌ただしく足をバタつかせながら先頭集団も次々と動きを止める。当然、十分にもたつきながらも。

 

「……随分と、悠長だな」

 

 玉突き事故のような有様の黒武者達――かの巌窟王にとっては、その大きな隙を潜り抜ける程度、難しくも無いだろう。

 

 ぼう、と。

 青白い炎が、一瞬黒武者たちの懐に灯る。照らし出されるポークハット。その下から覗くのは煌々と輝く虎の瞳。

 

――瞬間。

 

黒を引き裂いたのは、蒼い流星。

 焔を抱いた掌が、黒の鎧を焼く。文字通り、疾風の連撃が灼熱を伴ってがりがりと、黒武者達の身体を『削る』。キャンパスの上を滑るように自由に飛び回りながら。

文字通り、『増える』事も可能な高速移動。しかし、今回は身一つで事足りると言わんばかり、深緑のマントを翻しながら影一つがよろめく敵集団の前に降り立つ。

 

「――助けは要るか。放浪の騎士姫」

「いいえ! 十分です、エドモンさん!」

 

 その影と入れ替わりに――今度は白い一閃が刻まれる。

 

 すぱん、と。

 大柄な身体に据えられた、その身体に見合うだけの太さの首が。あっさりと切り飛ばされて宙を舞う。エドモンの連続攻撃で体勢を崩された相手に、剣の英霊たるリリィの一撃を避けられる道理も無し。

 

 大上段から振り下ろした剣は、そのまま剣を腰だめに構える為の予備動作として繋がっていく。剣に振り回されず、ぐぐっと力強く柄を握りしめたまま――第二撃!

 もう一歩の踏み込みで……二体目は愚か、固まっていた『二体』の胴が纏めて薙ぎ払われて。これで、最初の犠牲者を含めて三体が地面に倒れ伏す事となった。

 

『『『――っ!!』』』

 

 反応した他の武者達が、漸く襲撃者に襲い掛かるが……しかし既に、最初の一撃を終えた頼もしい盾の英雄が、カバーに入ってくれている。

 

 が ぎ ん っ!!

 

「……させませんっ!」

 

 鉄壁。大地を思わせる程に不動。

 三対一であっても、巨大な十字のビッグシールドは、怯む事は愚か退く事すらない。英霊の力を振るうだけじゃない。彼女は、自分等よりも遥かに逞しく成長している事を、誰よりも立香が知っている。

 それが、喜ばしいというだけで無くても……それでも、信じている。

 

 一瞬の拮抗――も、砕けない壁に棒切れを振るったらどうなるか等、子供の頃に経験していれば良く分かる。

 

「はぁあああっ!」

「――やぁっ!!」

 

 自分達の乗せた勢いは、やはり最初の様に自分達へ返って来る訳で。マシュの鉄壁の守りに弾かれた太刀は大きく後ろへと流されて――その崩れた体勢を見逃さないリリィの一閃が、そのうち二人を切り払って見せた。

 

 そして、残り最後の一人も……

 

「逃がさん」

 

 他と合流しようと思ったのか、踵を返そうとした所で。何時の間にか、背後に幽鬼が如く佇んでいたエドモンに面を鷲掴みに。掌から立ち上る焔に、その身体『深く』まで焼き尽くされ……僅かな身じろぎを最後に、地面に崩れ落ちる。

 

 都合、六体。

 英雄達の連携攻撃によって、第一波はあっさりと殲滅に追い込まれた。

 

「――第二派、来ます!」

「礼装の援護、まだ出来るから声かけてね!」

「はい、マスター!」

 

 とはいえ、まだ敵の攻勢は終わっていない。後続は次々と押し寄せてくる。間髪入れず戦闘を継続する事となったのだが――やはり、違和感が残る。

 

 ……数は、多い。

 だがやはり『稚拙』な印象を抱く。特異点最初の苛烈な一戦に比べれば、正直手緩いという印象を抱いてしまう程に。

 気が変わって強襲を仕掛けて来た――という感じは、どうにも薄い。寧ろ、焦って押っ取り刀で駆け付けて来たような、そんな感じすら……

 

「……あれ?」

「どうしたの?」

「いえ、黒武者も居るんですが……先ほどよりも数が少なくて。敵の主力は『ゴースト』です。マスター」

 

 盾を構えながら首を傾げたマシュの視線の先――確かに、ぎらつく太刀の輝きは少なく三体程。その周りを固めている透き通った敵性体の数は、倍以上はいるであろう事は間違いないのだが。脅威、かと言われると……

 

 ……アレだけの黒武者を最初に運用しておいて、今更ゴースト?

 

 適切、とは言えない攻勢。稚拙な戦術。主力と思われる敵性体の少なさ。

 そこからは――敵の確かな『焦燥』が見て取れた気がした。

 




今日からまたぽつぽつ投稿していきます。
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