FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:エンカウント

「……『血筋』、か」

 

 思わずつぶやいた。

 

「やっぱり……思い上がった言い方をすれば、俺達の血は、『特別』だったって事か」

「そうだね。狙われるだけの希少性を持つ。その理由も、何となくではあるが、察してはいるのではないか」

 

 ……少し、俯きながら思い返す。

 

 昔から、疑問が無い訳でも無かった。

 どうして、この村はこんなに『閉じた暮らし』をしているのか。外へ出る出ないの話じゃなくて。自分達『のみ』で完結できる暮らしをしているのか。

 この小さな集落から出る『選択肢』すら考えないのはなんでなのか。どうして外から来た人まで、こんな『なんもない』辺鄙な集落に留まってくれるのか。

 

 ――何かがあったんじゃないか?

 

 ここに住むだけの何かが……ここに『留まらざるを得ない』だけの理由が、俺達の一族の中にあったんじゃないか。

 

「……鬼の血を引く一族。あぁ、ただの『カビの生えた昔話』だと思って来た。でも、それがもし万が一、『事実』だったりしたら」

 

 目の前に現れた角持つ人ならざるモノ。そしてソイツと敵対しているカルデアの人達の話。今も行われている戦い――それを見て、信じない訳にも行かない。

 

 俺や、なぎこ、婆ちゃん……本造院の一族は本当に『鬼の血』を引いていて。

それも、カルデアの人達が言っていた、始まりとなった女の話やら、俺の家の無駄に長い歴史を考えれば……まぁ、それは千年物の厄ネタという言い方だって出来るだろう……だが、そこまでなら、まだいい。

それが、事実だとしても。その血を引く俺は只のクソガキだし。なぎこも婆ちゃんも、そんな特別な力を振るえるわけでもない。

 

世界に厄災をバラまくだなんて、昔のご先祖様の願いなんざ、叶えられる訳もない。

 

「でも、そうじゃないんじゃないか」

「……」

「俺が……俺達が知らされてないだけで……村の大人達は、この血の『真実』を知ってたんじゃないか。だから、ここにいた。それは……何代にも渡る位の長い時間、何人もの人間をここに縛り付けるに足りる、『理由』だった」

 

 ……そして。

 

「――君達の村の多くの住人たちが亡くなった、『あの一件』も。その血筋が原因で起きたのかもしれない、と」

「っ!」

 

 キャスターが口を開く――俺が口にしようとしていた、その言葉を。

 思わず立ち上がり、目の前の男を見つめる。キャスターは……座ったまま、真剣な面持ちで此方を見つめ返した。

 

 ごくり、と喉が鳴る。背筋が、ゆっくりと冷えていくのを感じる。

 

「……やっぱり、そうなのかよ」

「あぁ。彼らが殺害されたのは、正体不明の外的要因ではない……君自身も、不審に思った部分があるのではないかね」

 

 ……ぎり、と奥歯を噛みしめる。

否定は出来ない。婆ちゃんは記憶違いだと言っていたが……浮かび上がって来たあの景色が、湧き上がってきた恐怖が、ただの幻とは思えないのだ。

そして、コイツの言う事を信じるなら、その記憶は本物だったという事になる。

 

あの日、俺は……あの殺戮の現場の真っただ中にいた。そして……『どういう訳』か生き残っちまったという訳だ。

 

「……全く、ここへ来た分際で言えた義理じゃないが……あん時の事は、俺達以外に知っている奴がいる訳が無い。だってのに、こうもあっさりと人の内心まで。逆に怪しく見えてくるな。あの時の事とか、何処でご存じになったんだか」

「はは、まぁそれは仕方ない。私が話している事は真実だと胸を張って言えるが……それを保証できる要素は一つもないからね。寧ろ、そうやって警戒するのは正しい」

 

 ……警戒、っていうか。気持ちの整理がつかなくて、八つ当たりしてるようなもんだからそうやって言われると余計に……うん。

 

「それに……その当時の事に関しては、私が君へ教えた、等と偉ぶって言えるようなものではない。ただ『返却している』様なものだしね」

「はぁ? 何を言って――」

 

 くつくつ、とキャスターは笑いながら、此方へと視線を向け――

 

 瞬間、その顔から表情が消え失せた。

 

「――っ!?」

「い、いかんっ――避けてっ!!」

 

 上がる悲鳴のような叫び。

背筋に走る悪寒に従って、咄嗟に地を蹴って横へ飛ぶ。

 

瞬間、視界が――横に『飛んだ』。

 

「あ゛ァ゛っ――!?」

 

 跳躍なんざ比較にならない爆発だった。

全身が、押し出されて、吹っ飛ばされて――叩きつけられた。

 

「――……~~~~~ッ!」

 

 ……呻け、ない。肺から、息を、出す事も、難しい。身体が、思う通りに、動いてくれない。足も、手も、引きってるみたいだった。

何度やっても、やっぱり慣れないモノは慣れない――残念ながら、都会の便利な暮らしと違って……色々と、自分でやらなきゃいけないから。

 

こういうのも、慣れてる。とはいえ……結構高い所から落っこちて、背中打った時と、同レベルが来る、とは思わなかったが……っ! くそっ、ここまで来て本当に……いや、罠だったら今、避ける様に言う意味もねぇか……?

 

「あ゛……が……はぁっ……!」

 

 なんとか、体を起こす。息が詰まっていたのはほんの一瞬だった。臓器にダメージが行ってたら、こうも行かなかっただろうし、ラッキーだった。

 キャスターは……階段から背後の墓の方へと吹っ飛ばされてしまっている。くそ、一見して戦えるようなタイプには見えなかったが、それにしたって離れた大の大人を吹っ飛ばすレベルのパワーか……あの黒武者って比較になるかコレ

 

「例の、黒幕とかかよっ……漸く本題に入ったばかりだったってのに……っ!?」

 

 愚痴りながら顔を上げ。

思わず声を詰まらせてしまう。

 

巻き上る土煙。その向こうに――確かに、影を見た。

丸みを帯びて伸びたシルエットは、蛇にも似ていた……その大きさが、ちょっとした丸太程の、常軌を逸したサイズでも無ければ。

 

「……っ!」

 

 咄嗟にその影を辿る。

 土煙のカーテンのその向こうに、確かに見つけた。

 

 金色の鱗を纏った――人の脚を。鎧を纏った黒武者のモノではない。妖しく、そして艶めかしくも感じる……女の脚だった。

 

『――不躾な視線を向けるな、痴れ者が』

「な――っ!?」

 

 聞こえたのは、低く。そして……涼やかな、美しい声。

 直後、立ち上っていた土煙が内に向けて渦を巻き始める。土煙の中にいるであろう尻尾の『主』を中心にして。

 

 一瞬。

 荒れる風の隙間から紫紺の瞳が、此方を覗き込む。まるで、宝石のように一瞬、妖しい光と放った――その直後の事。

 

『――ふんっ!!』

「うわっ!?」

 

 ごう、と。此方に吹き付けるのは嵐の様な一陣の暴風。吹き荒れる空気の流れに、渦巻く土煙のヴェールは、瞬く間に吹き散らされ。顔に派手にぶちまけられる土埃を目をつむって凌ぐ事しか出来ない。

 

 ……風がやんだ。

 恐る恐る、瞳を開く。土埃はすっかりと晴れて――視界に、それを捉えた。

 

「う……おぉっ……!?」

 

 ……デカい。

 

 尻尾から、足をへて、ゆっくりと、見上げる様にして。

 そんな、馬鹿みたいな感想を抱いてしまった。

 

 こちらの身の丈等、まるで比較にもならない巨躯。

 此方を見下ろす瞳は、靡く御髪の色は……高貴なる『紫紺』。白磁の肌は、彫刻にも匹敵するそれ。人ならざる――とは、こういう事を言うのだろうか。

成程。こっちを矮小な『虫』みたく、冷酷な瞳で見てるのも、納得だ。

 あの鬼とは違う意味で……人とは、根本的に違う。

 

「――まどろっこしい。此方の方が、手っ取り早いであろうに」

「は、はは……鬼だけじゃなくて、今度は、神様かよ……っ!?」

 

 人ならざる――『女神』が、此方を見下ろしていた。

 

「……ん?」

 

 ……いや。

 なんでか今、首を傾げた。

 




期待していた反応:ば、化け物っ……!?

なお。
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