FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:襲撃後 前編

「――どうやら、決着は着いたようだな」

「……その様で。ンンン。何ともまぁ、『善き』鬨の声かと。全く」

「『仕込み』はこれで終わりか陰陽師。であれば……そろそろ、その胎の内を――っ!」

「えぇ、ここでもっとよくやれていれば幸いでしたが。しかしまぁ、此方の不手際から考えれば、最低限『及第点』はある仕上がり――此度は我ら、ここでお別れとなりましょう」

「……何?」

 

 

 

 

 

 

 ――ドサリ、と。その巨体が地に落ちて。黒い霞となって消えていく。

 

「ドクター、他に……敵性反応は、ない?」

『……うん。大丈夫。目の前の黒武者が最後だよ』

「そっか……取り敢えず一安心かな。後は……」

 

 取り敢えず眼前の脅威は退けられた。先ずは、そこは喜んでおく。そして……問題はもう一つ。まだ、ドクターには言っていない事だ。

 ちらり、と。縁側に立つ彼を見つめる。風に乗る黒い塵を追いかけていた――その視線とぶつかる。無表情だったその顔が――すっと綻んだのが見えた。

 

「……ごめん。出来るだけ隠す約束だったんだけど」

「はっ、このタイミングで言うかよ……気にする必要ねぇさ。寧ろ、ここまで助けに来て貰って助かったまであるさ」

 

 ……その片手が。そっと額へと伸びる。

 ばちり、という音が響く。怯える様に、僅かにその指先が震え――そっと、その形をなぞる様にして、触れた。確かめる様に――自らの身体に『突然』生えたモノを。

 その仕草は……彼の記憶に、それが刻まれていない事を示している様に見えた。

 

「ついで、で悪いんだけどさ……『コレ』、なんだか知ってたり、するか?」

 

 そう問うてくる彼――彼の中の力が改めて目覚めたのだから、その序に失われた記憶も一緒に目覚めてくれたら、と。一瞬だが期待していたのだが……どうやら、そうは問屋が卸さないらしかった。

 

「……それは――」

『――藤丸君、緊急だ!』

 

 ……話すべきか、それとも。僅かに迷いながらも、口を開いた所で――見なくても酷く血相を変えているのが分かる様な、ドクターの慌てた声が耳に飛び込んで来る

 

『外の敵サーヴァントの反応が『突然』消えた! リンボ、女武者の二人共だ!』

「っ……マシュ!」

「は、はいっ! 行きましょう!」

 

 そのドクターの声色に釣られるように、胸の内が逸り出すのを感じて、慌ててマシュと共に走り出す。あ、ちょっと、と背後から引き留められたが、今は外の方が優先だ。

敵側の二人は、リリィを含む此方のサーヴァント三人で抑えていたのだ。それでも尚、敵方の二人の反応が突如として消失していたという事は、何かがあったのだろう――通信先のドクターに声をかける。

 

「エドモンたちは!?」

『えっと……反応に異常はないから、多分無事だとは思う』

「それなら……敵方からの何らかの干渉が入った、という事なのでしょうか」

 

 その一言に、取り敢えずほっとしつつも……その敵の一手に、どうしても眉を顰めざるを得なかった。マシュや自分、そして突如として復活したカルデアの『眼』までも完璧に把握したうえで……室内に向かった隙を狙ったような、完璧なタイミングと言って良い。

 

 いや、『完璧すぎる』とすら言い切ってよかった。先ほどまでの、雑と言ってすら良いほどの襲撃から考えれば……まるで指示をしたのが別人かのような、見事な対応だった。

 ……今の所、『相馬』一派で確認できている敵幹部は、その当人と、リンボと、女武者の三人だけだ。今回、前線に出て来ていた二人を除けば……指揮を取れるのは、相馬ただ一人であろう。

 

 普通に考えれば。今、指揮を取っていたのは相馬で……あの雑なやり方で攻めて来ていたのは、女武者も『雑な仕事』と言っていたリンボの方、と考えるべきなのだろうが……

 

「――あ、マスター! 皆さんは!?」

 

 ……と、そこまで考えて、吹っ飛ばした玄関から外へと出た所で、リリィが此方へと駆け寄ってくるのが見えた。見た限り、大きな怪我をしている様子はなくて。

ドクターからの報告で無事であるのは分かってはいたものの……実際に目にして、漸く心の底から安心できた気がした。

 

その奥を確認してみれば、此方を見つめるエドモンの姿が見えた――のだが。もう一人の姿が、何処にも見つからない。

 

「巌窟王、酒呑童子は……」

「――あの鬼の娘ならば、もう居ない」

「え……そ、そっか」

 

 ……が、帰ってきた答えに、即座に納得するしかない。

何時の間にか力を貸してくれていたが。思い返してみれば、彼女は此方に合流する、とは一言も言っていなかった。となれば……さもありなん、と言えば良いのか。

 

ある意味、鬼らしい自由な行動と言えるだろう。

 

「何か言ってた?」

「ン……『まだまだ』とだけは言っていたな」

「んー、そっかぁ……」

 

 まるで、此方の事情を見通した様なメッセージだった。康友のその力が戻って来たのだから、黙っているのもそこが区切りだろう――とばかり思っていたのだが。

 ……何となくだが、このタイミングで姿を消したのも、釘を刺すような一言を残している辺りも、やっぱり彼女が何かを知っているのを色濃く匂わせている様な。

 

 と成れば、か。

 

「――ドクターごめん、ちょっと口裏合わせて貰える?」

『えっ、口裏って……』

「康友の記憶の事。まだカルデアに居たって事は知らせない様に、って……」

『まだ……あ、あぁ。酒呑童子の『まだまだ』メッセージってそういう……ん? えっ? なんで?』

 

 それは、残念ながら分からない。

 とはいえ、先に言った通り彼女は今回の特異点について何かを勘付いている、または何か重要な事を知っている――その可能性が非常に高い。

 

「……彼女が無意味な忠告をするような性格とは思えないんだよね」

『まぁ、それはそうだけど……理由は分からないんだね、うん』

「ごめんね。でも、お願いできるかな」

 

 一つ溜息を零すドクター。お疲れの所に、また心労を重ねる様なお願いをしてしまうのを申し訳なく思ってしまうが……それでも、彼女の言葉を無視する事は出来なかった。

 

 後で、もっとちゃんと謝ろう。そう胸の内で決めて返事を待ち――しかし、帰ってきた声は、ドクターのモノではなかった。

 

『――オッケー』

 

 若い声ながらも、その奥に年を重ねている様にも思える、そんな女性の声。

 

「ダ・ヴィンチちゃん!?」

『ああいうタイプの言葉は無視しちゃいけないっていうのは、同意見だからね。同じ天才タイプだから分かるのさ――やっほー、藤丸君。遅れてしまって済まないね』

 

 そう言えば。カルデアとの通信が回復した時から、管制室からのサポート組で話せていたのはドクターだけだった――自分達の事を助けてくれる頼れる大人はもう一人いる。その言葉通りの、頼れる天才。ダ・ヴィンチちゃんが。

 

 基本的に、自分達にはドクターがついてくれて、此方と通信を行って色々と知らせてくれるわけだが……時折飛んで来る彼女、または彼のアドバイスも、旅の確かな助けだ。

 此方も通信が回復したてで、全然気にする余裕が無かったが……よく考えてみれば普通に通信に割り込んで来ても不思議ではなかった。

 

「いや、遅れたとかは思ってないけど……」

『レオナルド! キミ、まだ休んでなきゃダメだろ! 幾らサーヴァントだからって言って、天才は普通の人の三倍は働けるのさ、とか無茶な理屈言って……!』

『おいロマニ、そこは言わないのがロマンってもんじゃないのかい』

 

 ……それをきっかけに、ギャーギャーと言い合う声が、通信先から聞こえてくる。

 

 どうやら、自分達は思っていた以上に大人達に心配して貰っていたらしい。

 ちらりと隣のマシュと目を合わせる。彼女が、少し照れくさそうに微笑むのを見て、思わずつられて笑ってしまう。

 通信先で続く大人たちの微笑ましいやり取りは、まだまだ終わりそうになかった。

 




ダ・ヴィンチちゃんはカルデア天才組の中でも倫理感トップクラスだと思う(個人感)
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