FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:襲撃後 後編

「……もう良いか?」

「え、エドモンさん!」

 

 ……暫く漂っていた微笑ましい空気を打ち破ったのは、巌窟王の何処か呆れた様な一言だった。久しぶりのやり取りで、張り詰めていた気が抜けてしまっていた。ここは未だ特異点。しかも敵地同然の場所だ。

 リリィも、こっちに気を使ってくれて『もう少しくらい』と言ってくれているが、この場合は彼の方が正しいだろう。

 

「うん。ごめん。ちょっと緩み過ぎてた」

「それ自体は責めてはいない――が、それにしろ先に話すべき事がある」

 

 ちらり、と。ポークハットの下の瞳が、先程の戦場の跡に向けられた。

 

「……そう言えば、結局二人がどうやって撤退したかは、まだ聞いてなかったっけ」

「最初に奴らと矛を交えた時、相馬は突如として空間を歪めて現れたのを覚えているか」

 

 その言葉に、こくりと頷く。

 巌窟王曰く――リンボとの会話の最中、その渦が再び現れて。地面に倒れ伏していた女武者を、その向こうへと引きずり込んだらしい。

 リンボの戦いの最中、彼が気が付いた時には……女武者の身体は地面に生じた渦の中へと、半ばまで呑み込まれていたのだという。

 

 恐らくは完全な不意打ち――リリィも、酒呑童子も、完全に一手遅れていた。そして突然の出来事は、会話中も一挙手一投足へと配っていた彼の集中を、ほんの一瞬だが途切れさせるのに十分な衝撃だった。

 瞬間。背後に出来た渦へと自ら飛び込み、リンボもまた姿を消した。

 

 今まで、敵側は何処からでもあのシャドウサーヴァントを送り込んで来た。しかしそれはあくまで、此方へと『進軍』する形が多かった。しかし……今回は、違う。

 

『……どこからでも、撤退路を作れる、って事なのか。だとすれば……厄介だね。空間を渡る、なんて魔術でもそう簡単に出来るもんじゃない。いや、というか魔法にも等しいレベルの超技術、って言えば良いのか』

「……相当の魔術の使い手、という事でしょうか……?」

『いや、やっかいっていうのはそこなんだよ。それだけの魔術を行使したなら、流石に此方の探査の網に引っ掛かる筈なんだ』

 

 ……そう言えば。先程も、ドクターは『二人の反応が消えた』としか言ってなかった気がする。しかも、リアクション的に二人が消えた後に察知したのだろう事も分かりやすい。

 

「って事は……単純に考えて、その魔術行使を隠すための色々な細工もしてたのかな」

「しかし、空間を操作する程の魔術と、その行使を悟られない程の隠遁術となると……少なくとも、何方かは何方かに集中する必要はあるかと」

『そして、話を聞く限り、リンボは巌窟王が見ていた……如何に彼が凄腕の陰陽師だとしても、空間を歪ませる様な超高度な魔術を、戦いの最中に速攻で行使する、というのは』

 

 ……つまり、その『渦』が魔術によるものである場合……少なくともその『渦』を行使したのは『相馬』である可能性が高い。魔術とは根本的に『違う』と称される『魔法』と呼ばれるそれにすら近い、超高度な魔術を相馬が使えるかもしれないのだ。

 

 それが本当だとすれば……あの、突如として部屋に敵を送り込んだ反則業にも説明がついてしまう。あまりシャレにならない話になってくるのではないか。

 

『……それこそ、ソロモン王に匹敵するレベルの魔術の腕だよ』

 

 ――人理焼却の主犯と目される人物。

 

 それと、同レベルの術の行使。しかも、である。

 

「かの将門公に、そう言った魔術の逸話は無かったはず……ですが」

『いやー……現代日本でも、畏れ敬われるレベルの神格であり荒魂だし、正直そう言う人って割と何でもありな気がしないでもないんだよねぇ』

 

 その勇ましさや武将としての才覚は、千年近く経っても伝えられるレベル。

多くの武士を従えるだけの将としての器に加え、当時としてはトップクラスの勇士をもってしなければ追討も叶わなかった強さ。先ず、全盛期は当時に並ぶ者は居ない、文字通りの傑物だっただろう。

 

 その高い将としての手腕に、搦め手としての魔術が加わったとなれば……分かりやすく厄介というしかない。ましてや、此方はその脅威を真っ向からぶつけられる立場にある。

 

「……魔術ではなかった場合は、どうなるのでしょう」

『いや、それはそれで厄介極まりないっていうか……魔法級の魔術でも厳しい所をそれ以外の方法でって、不可能に近いと思うんだけど。そんなジョーカーみたいなの握ってるとか怖すぎる……』

 

 ……考えれば考える程、なんだか空気が重くなっていっている様な気がしている。

 ここは一旦空気……というか、話題を一旦変えるべきか。という事で。まだ話は終わっていないのだから、と。目の前に立つ黒いサーヴァントに視線を向けた。

 

「他に気付いた事とかあるかな、巌窟王」

 

 そして――話題を変える意味もあるが。それ以上に目の前の彼が、ただ報告で済ませる気がしないというのがある。

 

 何しろ『彼』である。何かがある――そんな、確証も無い、勘にも近いような理由で問うてみれば……ちらり、と此方を見てから。彼は、視線を自らの傍らに向ける。

 その先で。焦げて地面に落ちた符が、風にさらわれて塵になって飛んでいくのが見えた。

 

「――あれは、そう利便に扱えるものでは無かろうよ」

『へぇ? その心は?』

「救出されたに、しては……アレは、安堵よりも苦心が勝っていた――くくっ、咄嗟で隠すのをしくじったと見えたが」

 

 かつて……鬼の無く監獄塔。そこから、僅かな隙すらも見逃さず逃れた、その窮地に置いても輝くその知啓は。此度も、敵の僅かな『ほころび』を見逃す事は無かった。

 

「あの渦は……出来れば、使いたくなかった、って事でしょうか?」

「さてな、もしかすれば『出来れば』すら付かぬ程かもしれんが……何れにせよ、勝負の佳境において、懐で温めていた『切り札(エース)』を『吐かされた』事――それが見抜かれては、勝負師としては二流だろうよ」

 

 相手を嘲笑う様に紡がれる言葉に、リリィは金の尾を揺らしながら首を傾げた。些かにもったいぶった言い回しだが――何となく分かる。いや、寧ろ事実を『正確に』口にしているまである、かもしれない。

 通信先でも、それに気が付いたのか。ダ・ヴィンチちゃんが、面白そうな玩具を見つけたかのような声で、口を開いた。

 

『――成程。あの渦は敵側としても、何発もそう使える代物じゃないって事か』

「……! そっか、『リソース』!」

 

 ……大規模な魔術行使に欠かせないもの。世界を焼き払われた側であるカルデアにとっても、常について回る問題だ。

 

「あり得ます。魔術の行使か、それ以外か。何方にせよ、空間移動は並大抵の事で成せる業ではありません。今回の一件がアクシデントで使わさせられてしまったとなると……!」

『あの反則染みた空間移動は、暫く使えない、使えたとしても、そう簡単には切れなくなってる……! うぉおおおっ! コレはかなり嬉しい気づきだぞぉっ!』

「確定ではないがな」

 

 ……盛り上がっていた所に容赦なく刺された彼の一言。しょぼんとしたロマニに少しクスリとしてしまうが。しかしながら、低い可能性という訳でもない、と思う。

 

 魔術には詳しくない自分でも、戦車と燃料で考えてみれば分かりやすい。燃料の無い戦車は只の鉄の塊に過ぎず。過剰に恐れる必要はないだろう。

 それが何時まで続くか分からないのは怖い所だが。しかし。

 

「少なくとも、さっきみたいに背後にいきなり敵が現れる、って事は暫く無いって考えて良いんじゃないかな」

『それだけでも大分ありがたい。流石に、この集落全体の建物一軒一軒に、ずっと四六時中目を光らせないといけないってなると、まぁ疲れるからね……!』

 

 それに。結果として……向こうが『そう言う事』をしてくる、と分かったのであれば。それを前提として戦い方を考えられるのだ。カルデアからのバックアップ込みで。それだけでも相当に力強い。

 なんなら、敵のリソースが不足して全力を発揮できない間に、皆と知恵を合わせれば。何か明確な対策も思いつくかもしれない。

 

「――おーい、話は終わったか~?」

 

 ……さて。

 

 解決した、とは言えないが。敵の脅威に対する一応の『道筋』も見えて来た。

 となれば……残る今の所の課題はもう一つだろう。

 

 背後を振り返る。

 屋敷の玄関から顔を覗かせて――康友は、少し困ったような笑みを浮かべている。

 

「だったら、序でいいんだけど……こっちも気にして貰えるとありがたい、かな。流石に急に角が生えて、平静でいられる程、俺だって心臓強くない訳で、さ?」

 




これでこの章の折り返し行くかどうかとかマ???
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