FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

34 / 373
第十六章・裏:城門前の攻防 前編

「――此奴ら、ジル・ド・レェの私兵じゃなかったのか……!?」

「マスター、此方へ!」

「ええい、何度も何度も……ここで根絶やしてくれるわ!」

 

 異変は、藤丸様がエトナ火山に辿り着いた、という連絡が付いた時に起きました。

 何処からか湧いてきたのは……黒いシャドウサーヴァント。その片手には紛れもなく太刀が煌めいています。あのフランス特異点の時よりもさらに数を増やして、しかも今度は、彼らだけで。ゆらりゆらりと、此方へ攻め寄せてきているのです。

 即座にネロ陛下は迎撃の為に出陣し。私達も直ぐに打って出ましたが……しかし。

 

「一人に最低でも十人で当たらねば、足止めにもならんとは……!」

「皇帝陛下、次々! 急がないとマズいっすよ!」

「分かっておる! ええい、なんとも地味に強いのが面倒だ!」

『気持ちは分かりますけど頑張ってください陛下!』

「ええい姿の見えぬ魔術師、お主らも客将であろう! 仕事をせい!」

 

 シャドウサーヴァントは、やはり一体毎の強さがしっかりとしているので、これだけの数に一気に攻めて来られる、というのは苦しいです。

兵士の皆様では足止めが精一杯で、シャドウサーヴァントはネロ陛下と私達で一人ずつ狩っていく行くしかありません。しかもそれなりに数も居ますので、どうしても時間がかかってしまいます。

 

「……というかお主!? なんでそんなに全力で逃げておる!?」

「何の因果か、此奴らこっちを狙ってるんですよ! 俺が前に出たら確実に狙われますんで理由も無くそんな愚を犯すわけにはいかんというか」

「なに? あ奴らの狙いはお主らか!?」

「あ、いえ俺個人ですけど。いや、アレを呼び寄せたのが俺って訳じゃないですからねいやマジで!」

『それに関しては此方も保証します……本当にすみません……』

 

 更に言えば、マスターも護衛しなければなりません。

マスター曰く『勝てる相手であれば相手もするが、しかし命がけで立ち向かわねば勝てない相手が複数いる時に前に出るのは間抜けすぎる』との事で……一応、私と一緒に後方に下がりつつ、ネロ陛下を援護しています。

 

「分かった、だが……それでも前に出てきて欲しいものだな! 我が兵達もそう長くはもたんのだぞ!」

「そんな事言われましても!」

「ぐぬぬ……せめて、せめてあ奴らを纏めて仕留められれば……っ!」

 

 確かに。私達が前に出て、もっと積極的に援護を出来れば、と思いますが……とは言えここでマスターが出て行って、マスターが倒れても、それはそれで大変な事態です。迂闊な事はできませんし……

 

「ど、どうすれば……!」

「――いや待て、じゃあ俺が前に出ればいいのか!」

「そうそうマスターが前に出れば……マスター!?」

「要するに俺が狙いなんだろう!? だったら、俺に集まってきた所を纏めて……! 理由があるなら前線にも出ないとな!」

「どうしてそんな危ない事ばかり考えつくんですかマスター!?」

 

 た、確かに理屈は間違ってはいないのですが……だからといって、そんな軽々に自分の命を投げ捨てるような真似をしなくても!

 

「――うむ、それだ!」

「こ、皇帝陛下も説得を……ってもう承諾してます!?」

「了解了解。んじゃまぁ式部さん、警護ヨロシク」

「ひーん」

 

 取り敢えず前に出て行くマスターを追いかけようとして……瞬間、黒いサーヴァント達が一斉にぐるり、とマスターに視線を向ける光景を目にしました。

 これにはネロ様も、当然ながら対象となったマスターも、少しばかり顔色が……あ、いえ少しどころではありません。『余計な事したかもしれない』って感じです。脂汗もかいてます。

 

「――ふぅ。早まったかもしれへんなぁ、式部はん」

「だから申しましたのに!」

 

 案の定、足止めをしていた兵士の皆様など、当然その後ろの都市など知った事ではないと言わんばかりに、黒い影は此方へと歩みを進めようと――

 

「成程」

 

 したその一歩目で、幾人かがその胴を真っ二つに割られ、地面に倒れ伏しました。

 そのまま、マスターの傍に駆け寄ったのは、ネロ陛下。文字通り、黒い影を後ろから一閃し、そのままの勢いで、我々を守る様に立ち塞がったのです。

 

「まことにお主狙いか。無秩序に攻め寄せようとしていたのが、一気にお主ただ一人を狙う動きになった……故に、分かりやすいぞ!」

 

 振り切った剣がさらに一閃。

 周辺に迫っていた黒い影を牽制するように。

 

「おぉ~……」

「ふふん、余を余り侮るでないぞ。狼藉者共め」

「皇帝陛下ってホントに人間? 別の種族にクラス替えしてない?」

「……助けられた者から人間かどうか疑われるのは心外なのだが」

「あらそう? ゴメンゴメン」

 

 黒い影は、ネロ陛下のその一閃に怯んだのか、はたまた本能的に相手の脅威を察して動かないのか。少なくとも、サーヴァント相手にすら引かずに戦うネロ陛下に、悪しき影達が敵う道理が無いのは確かです。

 最早、この勝負。凡その趨勢は見えたか。

 

 ですが、黒い影達は。私の甘い認識など嘲笑うように、ネロ陛下へと走り出しました。しかし直線的で、余りにも分かりやすい攻勢の構え。ネロ陛下にとっては、紅い大剣を構えながら迎撃に動くのは、実に容易い程で。

 その総数、凡そ二、三人。全員が突っ込んで来るという事はありません。

 

 ふと覚える、違和感。

 ネロ陛下と、私の援護射撃。そして周辺の兵士達に動きを止められていたというのに。ネロ陛下一人に、何故少数でかかるのか。寧ろ多人数で襲い掛かった方が、当然の様に戦いやすいというのに。

 

『――!』

「ふん、その様な見え見えの一撃で……!?」

 

 振り抜かれようとしたその剣に……駆け出して、突っ込んで来た筈の影が、飛びついたのです。自ら、剣に切られるような軌道に。

 皆、目を丸くしてその暴挙を見ていましたが。しかし。その本当の狙いに真っ先に気が付いたのは、その暴挙を受けたネロ陛下――ではありませんでした。

 

「――陛下! 剣を引け!! ()()()()()()()!」

「何ッ!?」

 

 突如響いた大声に、反応した陛下が無理矢理に剣を引き戻しました。

その時、ハッキリと私にも分かったのは。その黒い影が飛びつこうとしてしたのは、陛下の剣だったのだろう事。引き戻した動きに無理矢理合わせる様に、黒い影が、赤い刀身を追いかけて、地面に倒れて行きました。

 

「――余の剣を奪い取る為だけに、己の身を……!?」

「「……!」」

 

 驚いて、しまいました。

 シャドウサーヴァントとは、あくまでサーヴァントに成れなかった者。不完全な影。意思疎通が出来るものと出来ないものが存在しますが……しかしながら。彼らはオルレアンの時と同タイプ。オルレアンの時は、複雑な思考が出来ている様には見えません。

 

「……式部さん、後ろの奴ら」

「は、はい……倒れた瞬間に、一歩、前に踏み出しました」

『――今、こっちもモニタリングしてた。間違いないよ。彼らは、意図的に仲間を使って此方を無力化しようとした』

 

 それが。どうでしょう。目の前で彼らは、仲間を犠牲にし、確実にネロ陛下を無力化しようとしたのです。それが正気の行いかどうかは兎も角として……仲間を捨て駒として戦局を有利に動かそうとする、策を一手打ったのです。マスターが気が付いていなければ、危なかったかもしれません。

 それが、どういう事か。入って来た通信、そこから聞こえるロマニ様の声色で、凡そは理解出来ました。

 

『学習した……間違いなく、強くなってる』

「マスター」

「あんな猿知恵が使えるようになってるんだ。今度は俺だけを狙ってくるような事もするかもしれないねぇ……」

 

 冷たい汗が流れます。

 マスターに人一倍気を付けなければ。乱戦の内に近寄られたら……そう思って、マスターに目を向けて。

 

「――あぁ。ったくよぉ」

 

 マスターは、焦っている様に見えませんでした。ならば、相手が強くなっているのにも冷静に対処できている……そんな風にも、見えませんでした。

 マスターは、笑って居ました。それは、今まで見た事がある笑い方では無くて。

 

「忌々しいこった」

 

 酷く、冷たい……薄笑いを、浮かべていたのです。

 




無駄に長くしてはいけない(前後編)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。