FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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ただいま(小声)


断章:だれそれ あれこれ

 そうして――話をし終えた康友の背中は、もう大分小さくなって、煤けていた。本当に彼が言える事を全部言い尽くして、搾りつくされた感がある。

 

「……とまぁ……俺が、話せる、っていうか……その、諸々の話は、これが、本当に限界でして。あの、詳しい話は、後ろの、皆様方に」

「はい分かりました――申し訳ありません。その、私にも説明をお願いできると、幸いなのですけれども……」

 

 ……そこから香子さんの余りの切り替えの早さに、もう何も言えないまま頷く事しか出来なかった。康友から翻って、此方は記憶が戻る前よりも下手すると迫力が上がったまである。

 一応、ちらりとおばあさんの方を確認してみる。ここにはなぎこさんも一緒にいるが、それは大丈夫か、と。

 

が。おばあさんは……小さく一つ、ため息を吐いてから、ゆっくりと頷いて見せる。アレだけ力強いところが見れたなら取り敢えずは大丈夫、という判断という事だろうか――という事で。

 

「……な、成程。俄かには、信じがたい、ですけど」

「あんなのを見せられちゃあ、なぁ……?」

 

 もう一度……此方のカルデアの事情を――やっぱり、康友関連だとかの、話せる部分を掻い摘んで説明する事となって。

 

香子も、なぎこも……話を聞いた二人は、当然ながら目を丸くしている。

目の前で起きた事を前にして。自分達が口にしている話がどれだけ荒唐無稽だったとしても、事実として認識せざるを得ない――それで動揺するのは当たり前なのだけれど。

しかし。我を失う位に、酷く取り乱してしまったりは、していない様に見える。

 

「……平気、なのか。二人とも」

「んー……平気って言うと、嘘にはなるかなー、めっちゃビックリしてる」

「はい。本の中でしか見た事の無いお伽噺が、目の前で実際に起きている、と言われて動揺しない方が、難しいとは、思います」

「いや、そうじゃなくてだな……その」

 

 ……そんな二人の様子に。逆に戸惑い気味になってしまっているのは、彼女達を心配していた側の少年だった。

 

 彼からすれば――決してそうなって欲しかったという訳でなくて――自分が思っていたような流れにならなかった事に、驚いているのだろう。それはきっと……少年が見た景色がどれだけ色濃く記憶に『焼き付いて』いるのか、その証左だ。

 

 だから。あの日の景色が、傷が、痛みが。まだ疼いてしまっていないか。悲鳴を上げていないのか……そうしてどれだけ心配していたとしても、そこに触れられるのかは、またそれは別の問題で。自分の行動一つで、彼女達を傷つけてしまうのが怖くて。

 

「あー……こういうのも、アレだけどさ」

「んだよ」

「兄貴ってば……心配し過ぎ! あたしちゃん達のコト好き過ぎか! 過保護か!!」

「んなっ!?」

 

 ――そんな彼の葛藤へ。

 

ある意味、容赦なく踏み込んだのは……やっぱりというか、なぎこさんの方だった。

 

「き、君ねぇっ……人が真剣な話をしてる時に、過保護ってお前っ……」

「真剣な話ならアタシちゃんもしてます~っ!! 心配してくれんのは嬉しいけど、にしたってそんな甘やかしてたら子供の教育に悪い!」

「何処目線の話をしとるかお前は!? つーか子供はお前ェ!」

 

 そうして。

何時の間にやら、互いに座っていた所から真正面に額を突き合わせ喧々諤々――しかしながら。お互いへと牙を剥く勢いで言い合いをしているのに、何処か微笑ましさを感じるのは果たして気のせいか。

 

 なんというか。なぎこさんの『ノリ』が。康友がまた背負おうとしていたその重苦しい空気を吹き飛ばしたようにも感じる。

 

「俺の事見て、あんだけビビッてたくせに……強がってんじゃねぇよ。怖いだろ」

「そりゃそうだけど! そりゃいきなり兄貴に角生えてびっくりしない奴がいるか!?」

「いやいや違う、待て、そうじゃ、そうじゃなくてな?」

「――怖くないよ!」

 

 言い合いの最中――ほんの一瞬。康友は視線を伏せて。

 でも。そんな少しの暗い空気すら……『そんなのダメ!』と、言うみたいに。

 

 ふ、と。しょぼくれた顔の康友が顔を上げれば。

なぎこさんは、にかっと、元気に笑って見せる。

はなまる満点。わははっ、と今にも大声が聞こえて来そうな位、元気印がぴっかぴか。見てるだけでこっちまで笑みが零れるみたいなにっこりえくぼ。

 

「……なぎこ」

「アタシちゃんは……アタシちゃん『も』! 怖くない!」

 

 その一言が――どれだけ、彼の心を揺らしたのだろうか。

 

「だって、兄貴だぞ! 『うち等』の!」

 

 目をまん丸にした彼に向けて。少女は、ピースサインをびしっと決めて見せた。

 康友の顔が……みるみるうちに、くしゃくしゃになる。食いしばる様に結んだ口元も、ぎゅっときつく絞られた目元も――彼の内からあふれ出る、声にならない温かな想いの、表れだった。

 

「……もう良いだろう、康友」

「婆ちゃん……」

「要するに、私達はこの娘達の胆力ってもんをナメてた――それだけの話って事さね。悪いのはこっちだよ」

 

 ……故に。

 

 もうこれ以上の『無駄な心配』は要らないだろう、と。線を引いたのは……二人の保護者のおばあさんだった。彼女は、ちらりと改めて香子さんとなぎこさんを見つめてから。

 くるりと、後ろへ――此方へと振り返った。

 

「だとすれば……問題にするべきはもう片方だ」

 

 此方へと視線を向けてくるおばあさんの顔は……先ほどよりも大分険しい。

 

「問題は、屋敷の中に『アレ』が急に湧いて来た事だよ」

「黒武者、ですか」

「そうだ。本当に何の前触れもなく表れて……なぎこに襲い掛かって来た。あんなデカブツが、だよ。アンタ達の言う魔術っていうのは、そんな理不尽も出来るもんなのかい」

 

 そして。表情以上に、おばあさんの声色には、明確な『苦悩』が溢れ出て来ていた――実際の所、此方も完全に度肝を抜かれた。いきなり、守りを固めていた内側に敵の戦力が現れるなんて、それが許されるというならもう安全地帯もクソも無くなって来てしまう訳なのだが……

 

『――可能です』

 

 その疑問に。あらかじめ出ていた結論で回答してくれたのは――通信先で話を聞いているドクターだった。

 

「……誰だい?」

『ご挨拶が遅れました。彼らの――カルデアの臨時のトップを務めさせて貰ってます。ロマニ・アーキマンと言います』

「アンタが。成程……微妙に頼りがいの無い感じだねぇ」

 

 そして即座に沈没した。

 同時に、康友が物凄い顔をすると共に、天を仰ぐのも見えた。今度の顔は、感動とかではなく、『コイツやりやがった』という苦悶の皴をたっぷりと刻んでいた。

 

『……本当に、あの……良く言われます』

「悪い。どうにも取り繕えない質でね」

「ババア、フォローしろそこは」

「でもま、信頼は出来るタイプだとも思うよ――聞かせて貰えないかい?」

 

 ……そこで、ドクターは改めて。先程まで話していた事と、『リソース』の事について話し始めた。当然、出来るだけ分かりやすい様に、かみ砕いて。おばあさんは、そんなロマニの話に静かに耳を傾け続け――話し終えると共に、ゆっくりと頷いて見せた。

 

「成程ね。可能ではあるが、今すぐにまた来るわけじゃない」

『はい。それに、此方も手をこまねいてばかりではいません。必ず……次は、敵の一手の予兆を捉え、事前に対処して見せます』

「……分かった。信じさせてもらうよ。アンタの言葉」

 

 ありがとうございます、とドクターはそう言葉を締め括ってから。

 

 ――それで、と。言葉をつづけた。

 

『一つ、調べさせて欲しい事が』

「なんだい?」

『先ほど、我々の方である仮説が出ました――我々の中でも例を見ない程の高度の術式、空間転移の真似事……実行には、そこへと狙いを定める『マーカー』の様な何かが必要なのではないのだろうか、と』

 

 ドクター曰く。空間転移というのはただ普通に動くのよりも『格段に』難しい。それは実行する為の技術的な課題だけではなく……ただ単純に、何も考えずに転移した場合に怒りかねない『事故』という物もある。

 

 即ちは――分かりやすく言えば、『いしのなかにいる』状態。

 空間転移する先の座標を少しでも間違えれば、その転移した当人が無事では済まないというのは、幾らでもある。故に……必要になってくる。確かに『安全な場所』へと相手を送る為のリアルタイムの情報――もしくは目印が。

 

「あの部屋にある、と?」

『可能性はあると思います。既に役目を果たし消滅していたり……『今は』件の部屋にはないという事もありますが』

「――成程ね。分かった。少しばかり……時間を貰うよ」

 

 ……ドクターの言葉に、深く頷いたおばあさん。

 

 その視線は。どうしてか……後ろの香子さんやなぎこさん達『三人」へと向けられていた――それも特に、先程まで二人の少女に詰められていた、康友に。

 




という事で帰還しました。今日からぼちぼち更新していきたいと思います。
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