FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:調査四日目

『――という事で、今日からは僕らも参加するから、頑張っていこう!』

「「「おー!」」」

『と言っても、私とロマニが出来る事は本自体を解析したり読めない所を解読したり位なもんで、大元の本を読み解く作業は現地の君たちがやるしかないんだけどねぇ』

「「「お、おー……」」」

 

 ダ・ヴィンチちゃんのあんまりな一言は、一旦置いておいて。

 

 改めて、書物の調べ作業再開である――まぁ結局の所、この特異点解決を目指すのであれば、この場所を深く知ることが必要なのは変わりはない。

一応、朝から村周辺の探知を改めて行って貰ったのだが、特筆する様な発見が無かったというのもあり……ならば早めに、とやっておくべき作業をやる事となった。

 

「それで……香子さん」

「はい。言われた通りに、昨日迄で調べた本も、改めて全て出してあります」

「ありがとうございます。すみません、何度も」

「いえいえ――そろそろ他の本も、虫などが巣食っていないか確認しなければならない頃合いでしたし。その序で、この村の異変を解決して頂けるのですから」

 

今日行うのは……今まで調べた本の『総ざらい』である。

調べ物をするにも、ドクターやダ・ヴィンチちゃんのバックアップがあるのと無いのとでは色々と大きく勝手が違って来る訳で。だったら今までの本からも新しい発見が、ある、かもしれない……という可能性は捨てられない。

 

「……いやー、結構あるね」

「はい。私達が頑張った成果です……」

 

一応、今まで目を皿にして呼んで来たので、本の内容はある程度記憶に残っている。そこから気になった部分や、掠れて読むのが難しかった処などを、重点的に絞って見て貰うのは前提だとしても……それでも、単純な作業量であれば一番の量になるだろう、と。目の前に詰み上がった本の山を見ながら、思う。

丸一日かけてぎりっぎり処か、明日まで丸々潰れてもおかしくないレベルだろう。思わずマシュと並んで苦笑いする事しか出来ない。

 

「わ、私もお手伝いしますので……その、全ては難しいかもしれませんが」

「いいえ、それだけでも十分ありがたいです」

 

 ……パシン、と頬を叩いて、気合いを入れ直した。

 弱気になればなる程に、気が滅入るだけである――寧ろ、昼前には何かしらを発見する位の意気込みでいかねば――心強い味方が、後ろにも、隣にも付いている。これ以上は望むべくもない。

改めてマシュと目を合わせ、頷き合って。お互いの、ここ数日の定位置となった座布団へとゆっくり腰を下ろす。一時間ごとに、体を起こすのも忘れちゃいけない。

 

 ぺらり、と。部屋に響くページをめくる乾いた音。先ずは、これをBGMとして聞き流せるようになるまで頑張ろう――

 

 ――と。

 

「やっては見たけどねぇ……」

 

 そうなってからは、文字通り光陰矢の如く、時間はどんどんと過ぎていって……気が付けばもう中天に日は昇り。差し入れのおにぎりを頬張りながら、目ぼしい情報が出なかった事に途方に暮れる自分が居た……なんだか似たような事をつい昨日やった気もする。

 

 しかしながら。今回は、ドクター他、頼もしいカルデアスタッフのサポートを受けていたので、余計に空振りという成果がずしんと重たく伸し掛かって来るような。

 成果らしい成果と言えば……『本造院家』は、やはりこの村で特別な立場――まとめ役であった事を再確認出来た事くらいか。

 

「……まぁ、でもそれも当然なのかな」

 

 ――この村は、歴史の中で何処かから大々的に人が入って来た、という事が無い。

 

極稀に外から人を村の一員として引き入れているとはいえ……それ以外の殆どの村人の血筋が、元を辿れば本造院家の何処かに繋がる――村の家は、ほぼ全て本造院家の分家の様なもの、らしい。

 

 故に、この村の多くを取り仕切る立場にあり……そして正しくこの村の『総意』を司る家として。多くの舵取りを取って来た――驚くべきは、その的確さというべきか。

 

『――日本には『機を見るに敏』という言葉があるけど、正にその典型と言った所かな』

 

 ……そんな此方の思考を読んだかの様に。

通信先から言葉を繋いで来たのは、ダ・ヴィンチちゃんだった。

 

『いやはや、小さな村落のまとめ役とは言え、そこらの権力者に爪の垢を煎じて飲ませたい位の即断即決ぶりだ。そのお陰でこの村は、インフラの殆ど全てを、時の権力に一切依存しなくても問題ない様に、整える事が出来ている訳だ』

「冷静に考えたら、本当に凄い事だよね」

『――そして、何もそれは『何かを得る事』だけに対してだけじゃない』

 

その、何時も通りな軽快で、何処かおどけた調子が――途中から、鳴りを潜め。何処か硬さを含むようになったのは。きっと気のせいじゃなくて。

一つ、呼吸を入れる――思い返しているのは、きっと同じところ。

 

 本造院家の人達は。

襲い来る災害や、疫病の波にすらも、本当に……機敏に、的確に、対応していたのが伺える。それが、例え――『身内を切る』という苦渋の決断が必要な事であったとしても。

 

改めて調べ直し、漸く正確に解読できた書物の中には……本造院家の当主が、危機的状況下した、情を差し挟まない決断と、それによって引き起こされた凄惨な光景が、綿密に、克明に、正確に、記録されている。

正直。こうしてここで休憩して居るのは……単純な疲れだけじゃなくて。その時の記録の中身に、ちょっとやられてしまっているのも、ちょっとあった。

 

『ある意味で、人間臭くはない、かな』

 

 ダ・ヴィンチちゃんが、口を開く。

 

「……どういう事?」

『まぁ、当たり前だけど――人間は万能じゃない。私の様な天才だって、完全なる万能とはいかないのが現実だよね』

 

 それは……彼女、または彼が言うからこそ、説得力がある言葉だった。万能の人、という異名を持ち、それを否定せず天才かつ万能として自らを定義していて……それでも、ダ・ヴィンチちゃんは自らの『足りない部分』もきちんと自覚して冷静な判断が出来る人だ。

 

『特に、感情なんて言うのはそう容易く御せないモノの典型例さ――焦って、惑って、誤って。人が、自らの内に抱いた理想通りに生きるのは、とても難しい。でも……』

「でも?」

『本造院家の人達は、いざとなった時に、殆ど身内ばかりの村人を『切る』事に、何の躊躇いもない――そしてそんな彼らの内には、しっかりと人としての情がある。あそこに書かれていた、目を覆いたくなるような惨状が、皮肉にも表している』

 

 ――連座。

 

 飢饉によって滅びかけた時、口減らしの為に病人や老人を『当主自ら』が一軒一軒巡って手に掛けて――そして、飢饉が収まり、危機が去ったと見るや、その責任を取って実行役の自らが、村人の前で『飢えて死ぬ』事を選んだ。

 

 苦しみと絶望の中。嚙み切った口から、瞼の裏から、滂沱と滝の如き血を流して……自らが奪い取った命、その一つ一つの名を繰り返し、そして……

 

『……自分でやった事に、深い後悔と、自責の念が無ければ、そこまでしない』

「情の無い、冷たい人達じゃ、無かった」

『けれども彼らは――決断をする時に、それらを廃する事が出来た。そして最後には、死者への手向け、そして殺された遺族の納得を得て、村が安全に存続できる様に、『禍根』を残さない様に、と。自らを……『切って』終わらせた』

 

 ……重なる、部分がある。

 

 マスターとして先ず前線に打って出て――その上で、自らが身体を張る事も厭わない。多少の荒事に慣れている、という自称ではあっても……本来であれば、殺し合いの中に急に放り込まれるだなんて、初めてだったろうに。

 それでも……自ら拳を固めて、立ち向かい続ける、彼の生き方に。

 

『それを異常、と括るのは簡単さ。けれど……彼は『そうして』人理の危機に立ち向かって来た訳だ。その姿をずっと見て来た側として、それをただの『異常』と括るのは、当然無理な訳だよ』

「……うん」

 

 ――ああいや。

 

 発見が、無かった訳じゃないかもしれない。

 

「でも……そんな彼の言葉と、重ならない」

『……そうだね。この村で生きて来た『身内』である彼の故郷に対する評価は――『イカれた伝説をずっと信じてる気の狂った連中』だった』

 

 読み進め、こうして理解する度に、そんな悪意を持った一言で括れる人達ではない、という確信がある――そもそもおばあさん自身が、彼が口にした様な狂気を宿している様には到底見えなかった。

 

 しかしながら、だ。

 彼が、自らの故郷の嘘の悪評をバラまく理由が何処にあるのかも……これまた、全くと言って良いほどに、見つかりはしない。

 否、ばら撒く、と言って良いほどに口にした訳でもない。此方から聞かれて、漸く話した程度に過ぎなくて――

 

『最大限悪し様に考えるなら……此方の同情を引いて、何とか危ない処からは遠のけて貰おうとする逃避手段――なんだけど、そのセンだって、彼が常に前線で、サーヴァントと一緒に戦い続ける姿を見てれば消える』

「そもそも、そんな可哀想な自分に同乗して貰う、ってタイプでもない」

 

 こうして見つけた記録と、彼の言う言葉――その何方もが『真実』であるならば。

 そこ繋ぐミッシングリンクこそが……自分達の探すこの村の秘密である『鬼の血を引く一族』の部分に、隠されているのだろうか。

 




伏線を回収するって難しいと改めて考える今日この頃
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