FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
『――しかし、不思議な話だよ』
「何が?」
『この村の人にとっては、本造院家の人達は言わば『英雄』として見られている――この村を存続させるために、多くの危機に相対し、決断した事によってね』
ダ・ヴィンチちゃんのその言葉に、少し首をかしげてしまう。それはまぁ、彼らが代々この村のまとめ役を任されて、そして多くの舵取りをやって来たのだから、ごく普通で、納得も出来る話だ。何処にも不思議な部分は存在しない。
寧ろ……英雄視されるのは、自明の理ではないのだろうか。
なのになぜ――そう思って問いかけてみれば。ダ・ヴィンチちゃんは『あぁ違うよ、気になったのは『そこ』じゃあない』と。
『私だってバカじゃない、その辺りはまぁ極まって閉鎖的なこの村社会でなら、当然の帰結だとは思っているよ……私が疑問視しているのは、もっと別の事――その『結果』さ』
「結果、っていうと――そうなってからの話、って事?」
『そうとも――具体的に言えば、『モニュメント』さ』
――歴史に曰く。
偉大なる支配者、というのはやはりモニュメントを『残す』か『作られる』事は往々にしてあるものだ。
その威光を知らしめるための自発的な物か、はたまた後世にまで残るようにと周囲の人間によって作られる物か……この村では、そこまで大々的な物を作るマンパワーないであろうが、しかし。
ダ・ヴィンチちゃんはそんな中で。
この村にあっても『おかしくないモノ』があると言った。
『さて。ここで突然、歴史のお勉強をここ最近特に頑張っている藤丸君にクイズだ』
「えっ……わ、分かった。どんとこい」
『良いお返事だね。それでは……仁徳天皇、クフ王、始皇帝。この三人に共通する、最も有名な要素はなんだろうか?』
……突如並べ立てられた三人。
生まれた場所も、国も、成した事も全然違う。そんな三人の、最も分かりやすい共通点というのであれば――少し考えてから、自分でも一応は知っている、『その施設』の名前をおずおずと口にしてみる。
「……お墓?」
『うーん……正解で良いかな?』
「――より詳しく説明するのであれば、世界最大規模として知られる三つの墳墓、というのが正しいかと思います、先輩」
情けない自分の回答だったが――それを、後ろからの声が完璧にフォローしてくれた。
振り返れば、そこには此方に微笑みかけるマシュの姿。そのまま彼女は、自分の隣へと腰を下ろそうとして……流石に直に座るのは、と思って近くにあった座布団を差し出すと、小さく頭を下げてから、その上にちょこんと正座してくれた。
何処から、と問うてみると。先輩が堂々と胸を張った辺りから、とはにかみながら返してくる。
「えっと……それで、ダ・ヴィンチちゃん。どうしてその様な問題を?」
『うん。藤丸君とも話してたんだけどね。この村には……無いんだよ。お墓が』
「……お墓が?」
『正確に言えば――英雄たる彼らを、丁寧に埋葬したであろう言わば『墳墓』とも呼ぶべきものが、だ』
……言われて見れば、確かにそうではある。
この村で全てが完結する形をとっているのであれば、当然埋葬までカバーしていても不思議じゃないというか……死体の処理というのは、やっぱり今以上に重要な事だ。十数年前の事件で死体を埋葬したというのは、本人から聞いた。
でも……こうして村の中を散策したり、周りを見回って見てもお墓らしいものは見当たらなかった。
「お墓、というのは死者の供養の象徴であり、人々の生活に密接したモノでもあります。ですので、こうした集落の近くに造られていても、不思議ではないと思われますが……」
「でも、何処にも無い」
『村の中とは言わずとも、ちょっと行った所に偉大なご先祖様を埋葬して、村においての権威の象徴とする、なんて珍しい事でもない。寧ろ、この村であれば……』
「寧ろあり得る話、って事だよね。でも……」
成程、見つからないというのが不思議だとダ・ヴィンチちゃんが言うのも、ごく自然な反応だ。普通とは違って、どこか遠くに造られているのだろうか。少なくともこの村の周りは多少は調べているのだから、それ以外の処に――
「……そう言えば、そもそもどうしてお墓の話に?」
「えっと……ダ・ヴィンチちゃんから、だよね」
『うん。今日の探索自体は色々手詰まりだし――別方向からのアプローチを考えて、頭を解してみるのも悪くないんじゃないかな、って思ってね?』
……えっ、と。思わず声を漏らさなかったのは。ダ・ヴィンチちゃんのその言葉に不意を打たれた衝撃からだった。
「それって……?」
『お墓っていうのは『個人情報』の塊だよ? その名前や、何時没したかだって刻まれているし、先程言った通り丁寧に供養されているのであれば、その個人の人柄すらも多少は測れてしまう』
そう言われれば、確かに。お墓に掘られた名前だけじゃない……その裏側に、ご先祖様の名前が彫られているのは当たり前の事だ。没した時代についても、その人が何年ほど生きられたことを図る大切な情報ではないか。
……今、何も引っ掛かりが無いのであれば、その辺りを探ってみるというのも、悪い手ではないだろう。否、寧ろ良い。
「ここで特に何も見つからなかったのであれば……先輩!」
「うん。取り敢えず、終わった後に訊いてみよう――おばあさんならきっとお墓の場所も知ってるよ!」
「――墓ぁ?」
「はい。本造院家の、歴代の当主の方々が埋葬されているお墓を拝見させて頂きたくて。案内して頂けないでしょうか……?」
「あぁ、成程ねぇ……ん~……」
という事で、早速尋ねてみたのだが……此方の期待とは裏腹に、夕飯の支度をなぎこさんと共にしていたおばあさんは、困ったように首を捻るばかり。
暫く、うんうんと唸ってから――おばあさんは、一つ、大きなため息を吐いて。ゆっくりと此方に頭を下げてくる。
「すまないね」
「えっ?」
「私が知ってるのは、後から出来た新しい方なんだよ――古い方の墓は、もう参る事も大分少なくなったし、危ないからって、他の奴……というか、歴代当主と、一部の村人で管理してたのさ。んで、その場所に関しては教えて貰う前に、ね」
……思わず天を仰いだ。十数年前の事件で途切れることになったモノが此処にも。
確かに。長い歴史を持つ村だ。土地が足りなくなることだってあるだろう。そうやってお墓が新しくなれば、使われなくなった方のお墓の場所が分からなくなることだって、あり得ない話じゃない。
折角の新しい光明――それが此処まで盛大に空振りしてしまうと、ちょっと哀しくなってくるが……そう言う事であれば、仕方ないか。
「なぎこさんは……」
「知らん!!!」
「うん。ありがとう。うーん、そっかぁ……」
……さて。万が一の可能性も無くなったところで、ちらりとマシュと目線を合わせる。となれば、こうなったら自分達の脚で、村の周辺をじっくりと探すしかない。大分時間はかかるだろうが、それでも……今の所『これ』という光明は、他に見えないのだから、そこに掛けるしかないだろう。
おばあさん達に一つお礼をしてから、その場を後にしようとして――丁度そのタイミングで、部屋に入って来た康友と目が合った。
「――ん? どうしたのお二人とも」
「あの……ちょっと、おばあさんにお墓について聞きたい事がありまして」
「墓? それだったら――」
「アタシらが使ってる方じゃないよ」
おばあさんのその言葉に眉を顰める康友。
取り敢えず、今まで話していた事を説明した所――康友は一度、成程、と頷いてから。改めて、不思議そうに首を傾げて見せた。
「どうしたの?」
「あぁ、いや……婆ちゃん、あんた本当に知らねぇのか?」
そう言って、彼が視線を向けたのは……再び台所で包丁を握り直したおばあさんの方。
「どういう意味だい」
「どういう意味って……だって、皆が死んだ時よ」
「母さんたちの死体は――皆とは、別の所に埋葬してたじゃねぇか。なぁ?」
話が動きそう……と言った所で、今回の更新はここまでとなります。
次回の更新は十二月になりそうです。またじっくりのんびり、頑張りたく思います。