FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:新しいタスク

「かおるっちどうだった?」

「大丈夫――特に異常はなかったよ」

「そっかー! 良かった良かった、ばあちゃんに知らせてくるーっ!」

 

 楽しそうに走っていくなぎこさんを見送ってから。改めて、香子さんが寝ている部屋の方へと振り返る。やはり精神的な疲労が祟ったとの事で、しばらくすれば目も覚める、というのがロマニの診断である。

 ……なぎこさんの元気な声で起きなくて良かった、と口には出さずこっそり思う。とりあえず、今はただゆっくりと休んで欲しい。

 

 ――さて。

 

『どうにもならない事が分かったのは一歩前進だ。それをしっかり噛みしめつつ、今はどうにかなりそうな方から、改めて片付けていこう――残念ながら心強い司書さんは今ダウン中なので、今回は改めて、村全体を調べてみる事にしよう』

 

 ロマニのその一言に、改めて頷く。

 

蔵の情報を知っている、香子さんが寝ている間に書物を調べるよりは。

お婆さんも知らない古い墓を見つける方向へと、今日は舵を切ろう――という事に、先ほど決まったのだ。何処かに目星でもついていれば楽なのだが、そんなものは存在しないので、地道な調査になるだろう。

 

『とはいえ、何にも手掛かりがない訳じゃない。確か、この村の古い地図があったよね』

「はい。『なげきぶち』が書かれていた古地図が」

『それを見れば、お墓が立てられそうな場所とかも絞り込めるはずだし――それに、もう一つ、というか……『一柱』の行く先についても、アタリを付けられるかもしれない』

 

 ……まぁそんな地道な調査で目的一点追いっていうのもどうなんだろう――色んな達成目的を定めて、纏めて調べるのが吉ではないか、という結論になった。今回定めたもう片方も、間違いなく大切だけど一切それらしい手がかりも無く、最優先にするのは少し『難しい』類のものだ。

 

「ゴルゴーンさん……ホント、どこ行っちゃったんだろう」

『こちらからもそれらしい反応を確認できない辺り、向こうからの妨害を受けているかそれとも――って結論にはなるけど』

『彼女の実力をずっと見て来た身としては。あの暴虐の化身がそう簡単に『敗ける』姿は想像できないよねぇ――酒呑童子も脱出出来てたし、それを考えれば余計に』

 

 まず間違いなく生きている、というのは自分たちの総意ではある……のだが。それにしたとしても、こうも大人しいとは思っても見なかった。色々な調べものとかで調べるタイミングを失っていた、とはいえ。

 

 正直、村への襲撃があった時点で、相当目立った音やら何やらがしていたし。それを目印に出て来てくれても不思議じゃないと、思っていたのだが……

 

『まぁ……サーヴァントとマスターの関係上、そこまで大きく距離を置けるとは思えないから――まぁ、村の近くの何処かしらに潜伏しているのは確か、だとは思う』

『だから、こっちの事も認識しているとは思うんだよねぇ。何かしらの事情があるのか』

 

 故に。今回は、ゴルゴーンさんの捜索に本腰を入れるのと並行して、欲しい情報が眠っている可能性がある古いお墓の捜索を行うのが目的である。

 どちらも同時に達成できるとは思っていない。寧ろ、今日の時点では何方も達成できない見積もりではあるが……それでも、やらないよりは、だ。

 

 まずは部屋に置いてあるそれを回収することから始めるか、と歩き出す。すると、向こうへ歩いて行ったなぎこさんと入れ替わりになる様に、康友がこちらへと歩いてくるのが見えた。向こうも此方に気が付いたのか、此方へと軽く手を振ってくれた。

 

「よう、蔵行くのか? 香子さんいないし、手伝おうか?」

「いや、今日もう一回くらい村の近くを探してみてみようかなって」

「そっか。えーっと……」

 

 目的を告げれば。彼は少し考え込むような仕草と共に、どうすっかなぁ~、と呟いて。

 こちらを見つめる瞳に、どうしたのだろうか、と思い……しかし、何処か申し訳なさそうな様子と共に、困ったように頬を掻くその仕草から――おおよその想像もついた。

 

「――大丈夫。俺たちだけでも何とかなるよ」

「あー……そっかそっか、まぁ、そうだわな。うん。行ってらっしゃい。藤丸も……マシュちゃんも」

 

 多分だけど、妙な力が目覚めた直後という事で……何か役に立てるんじゃないか、と考えてたりしたのかもしれない。

村を背負っていく立場の若人としての自覚が、そうさせたのか――そもそも、カルデアに来た頃から、やれるのだから自分がやらねば、と命を張って前線に立つようなタイプの少年であるから、当然の反応ではあったのか。

 

いきなりヒーローみたいな力が手に入ったならちょっとお試し……みたいな浮ついたそぶりが見えたなら、メッ、としないといけないなとか一瞬思ったが、しかし。あからさまに『足手まといだろうし、やめといた方が良いな』とでも言いたげな目の前の彼を見ていると、それもないであろう事は想像もしやすかった。

 

「お気遣い、ありがとうございます」

「あぁ、いや……うん。気にしないで、ホント」

 

 マシュもそれは理解しているのだろう。彼女の浮かべた微笑みに、康友は余計に居心地悪そうに額を何度か撫でて――

 

「――それなら兄貴! アタシに名案がごぜーますぜ!」

「うぉっ!? んだなぎこ急に!?」

 

 急に脇から飛び込んで来たなぎこさんに飛び退かされていた。

いや、こっちもびっくりしてちょっと仰け反ってしまった。ともすれば香子さん本当に目が覚めちゃうんじゃないかっていう良い声だった。

 

「っていうか……名案? なんの話だよ?」

「そんな『俺は何もできないのか……!』的な顔しておいてそりゃあないぜ兄貴! やれること、あるんじゃねーの?」

「いや、分かりやすくそんな顔してたの俺……?」

 

 まぁ、大分していたとは思う。と言いかけた言葉は何とか呑み込んだ。

 

「……まぁ、それは良いか。んで、その事での名案ってなんだよ。これから村の外調べに行くっつってんだから、お前行っても足引っ張るだけだぞ」

「いや、流石にアタシちゃんもそれはせんが」

 

 物凄い真顔でそう言われ、かなり困ったような視線をこちらに向けてくる康友。

 とはいえ、彼の妹さんからのご提案なので正直そちらさんに何とかしてもらわねば、とも思うので、こちらももう真っすぐに見返す事しか出来ない。

 という事で、そういう反応を返された彼は、一つため息をついてから、改めてなぎこさんの方へと向き直った。

 

「じゃあ何をするんだよ。えっと……多分、古い方の墓を探すんであってるよな?」

「うん。場所の心当たりがないなら、地道に探すしかないかなって」

「そうだよな……だから、俺たちに出来る事なんもねぇだろ。俺も婆も、当然お前だって墓の場所なんざ覚えもないんだしさ」

 

 そんな康友の呆れた様な視線に……ちっ、ちっ、となぎこさんは康友へと見せつけるように指先を揺らして見せた。

 

「別に――調べるなら新しい方のお墓でもええじゃん!」

「……」

 

 ……二度目の困惑気味な表情が飛んでくる。その後ろから、我ながら何と名案を思い付いたのだろう、と言わんばかりのピカピカの笑顔がこちらを覗き込む。

 どちらに何を返せばいいのか。古い方の墓を態々指定したんだから、そっち探すことに意味があるんだろうが、とでも言いたげに不満そうな康友。我ながらナイス提案、と言わんばかりのドヤ顔をバッチリ決めているなぎこさん。

 

 思わずマシュと視線を交わし……まぁ取りあえず、なぎこさんの方へとお礼とごめんなさいとしなければならないだろうか――

 

「だって新しいっていうけど、アレだって大分時間たってるしさ!」

「いやでもなぁ」

「えっと……何代前だっけ? 新しい方のお墓」

「あぁ? 知らねーよ。『四代』とかは書いてたけど、それと関係ないんだろ、ウチの当主の数えってのは――」

 

 ――が。その一言に、言葉が詰まる。

 

「『四代』の人のお墓、あるの!?」

「えっ? あぁ、まぁ……妙にはっきり書いてあったから、覚えてたんだけど――」

 

 マシュと顔を合わせる。自分たちが古いお墓を見に行きたいのは、歴代の当主に――特に、村の中でも特別視されている人たちの事を知りたいからだ。

 その内の一人の墓があるのであれば……それを確認しに行かないのは嘘というものだ。

 

「えっと……『もう一つ』については、どうしましょうか」

「……分かった。手分けしよう。マシュは巌窟王と一緒に……えっと」

「そちらの方が危険な任務かと思われますので、私が」

「分かった。お墓の方にはリリィと行く。康友、なぎこさん、案内してもらえるかな?」

 

 目の前の兄妹に向けてそう言えば。一瞬、互いに目を合わせて。それから、何処か得意げな笑みを、二人して浮かべて見せた。

 




サスペンスとかミステリーとか書ける人を本当に尊敬したくなる毎日です。
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