FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:四代目

「――ここだな」

「……ホントだ。『四代目』って掘られてる」

 

 お墓の側面へと、名前と共に掘られたその文字を、そっと撫でる。

 現代のお墓の様につるつるピカピカ、という訳ではないがそれでも丹念に磨き上げられた目の前の石の表面は、彫り込んだ文字をくっきりと浮かび上がらせてくれている。他の墓と比べても、明らかに『特別感』が凄い。

 

 しかも……康友のご先祖様。つまりは比較的新しめの歴代の『当主』の名が彫られた家の墓と違い、個人の為の墓だ。心なしか丁寧に整えられている様な気も。

 

「やっぱり……他と比べても特別視されてる」

『――うん。他のご当主さんが雑に扱われてるって訳でもなさそうだし『その中でも』って表現が一番正しいだろうね』

「うぉびっくりしたぁっ!?」

 

 此方の言葉に、ダ・ヴィンチちゃんも同意してくれる――そして、突如として聞こえて来た声に、康友が物凄い勢いで飛び下がっていた。こういう所を見ていると、本当に記憶を失っているんだって事を再認識させられて、少し寂しくなってしまう……が、それは置いておいて。

 

 リリィ、と。お墓の後ろに回った彼女に声をかけた。

 

「どうかな?」

「こっちには何も書かれてません」

『普通なら、建てた人の名前が書いてある筈なんだけど……それで、左側には享年だったっけ。日本式の普通の墓とは、やっぱり色々違う部分が多いね』

 

 形自体は似ていても――と言われ。目の前の墓の正面に刻まれた文字を見上げる。

 そこには……ただ、『本造院家 御子』とだけ彫り込まれていて。個人の名前は一切記されていない。他の部分を抜きにしても尚、ただその部分だけで、この墓の異常性は理解できてしまう。

 

 名前すらも無いままに、こうして葬られ。他のお墓に一緒にしてあげる、という訳でもなくて……たった一人で。

 

「……やっぱ、可笑しいのか、コレ?」

『うーん……単純な奇妙さで言うならばスリーアウトチェンジって所かなぁ。厄っぽさでいうなら試合終了レベル?』

「33-4!?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの言う通りではあった。名前のない墓、というのも正直に言えば不気味というか。わざわざ『御子』という刻み方をしているのも、ちょっと気になってしまう訳で。

ちらり、とリリィに目を向ければ。後ろからそのまま左側へと歩み寄って、そこに刻まれた享年へと目を向けて……少し、悲しそうな表情を浮かべながら呟いた。

 

「――生まれた年も、享年も、一つしか書いてません」

「……そっか」

 

 ……重苦しい空気の中、ぽつりと零れたその一言が意味する事は、あまりにも残酷に過ぎて。思わず、顔を歪めてしまう。

 

「病気、とかだったのかな」

「赤子の命の光は、どうしても儚いものですから……それも、あり得るかと」

 

 リリィの、何処か実感の籠った一言を聞いて。それから……とりあえず一つ、大きく呼吸を入れ直す。同情するのは個人の勝手だ。しかしながら、自分たちがやるべきはこのお墓から出来るだけの情報を獲得する事である。

 

 きゅっと唇を引き締めて。

ゆっくりと立ち上がってから……先ずは、という事で。背後に立っている二人へと向けて振り返った。

 

「何か聞いたことある? 『四代目』について」

「あー、いや……残念ながら全然。なぁ?」

「うん。つーか、そんなちっちゃい……とかいうレベルじゃない子の墓だとか、マジで全然知らんかったし」

 

 今更ながら――と、一つ置いて、彼は話し出す。そもそも、ここに至るまで新しい方の墓だって、まともに参った記憶はまるでなく、ここに埋められている人たちについても、考える余裕なんて全くなかった訳である。

 その言葉に、多分嘘はない。目の前のお墓もそうだが、この墓全体もかなりの間放置されてしまって、雑草が生え、苔むしてしまっている部分もあり……ギリギリ荒れ放題と呼んでも問題ないレベル。先ほどまでは、なんと森から伸びて来ていた蔦が絡みついてしまっていて、それを取り払うのに少し苦労してしまっていた。

 

「んで……分かる事、なんかあるのか? 俺たちはこのザマだし」

「いや、ここは連れて来た責任として『当然なんかあるやろ』位の顔をしておく方が良いでしょ兄貴」

「えぇ?」

 

 ……何処か心配そうな彼の声にこたえたのは、自分ではなく――先ほどから静かに話を聞いていたであろう、ロマニだった。

 

『うん。十分なくらいさ。寧ろ、連れて来て貰って感謝したい位だよ』

「え、そんなに?」

『此方の解析から分かった事は幾らかあるんだけど……特に『四代目』の墓に関しては興味深い事が分かったよ――墓そのものではなく、墓に生えている雑草から、ね』

 

 言われて、目の前の墓に生えた雑草を見てみるが……良く見る、というか、雑草と言われて真っ先に想像するような、青々として、細く薄っぺらい葉っぱの、何の変哲もない桃にしか見えない。

 しかしながら、それを問うてみれば。ロマニは苦笑したように『違う違う』と口にしてから。

 

『同じ、十年近い経過時間があっても――やっぱり生え方に違いはあるものだよ』

 

 そう言われ……先ずは『本造院家』とだけ刻まれた墓に目を向ける。

 下に敷き詰められた玉砂利の下からも雑草が生えているし。苔生した緑の色はかなり青々としているしで、中々の有様。

 続いて、四代目の墓の方へと視線を向け――そこで、はたと気が付いた。

 

「……あれ?」

「ん、どした」

「苔むしてるのは、同じだけど……砂利の下から出て来てる草、なんか……小さいっていうか。立派なのは生えてないっていうか」

 

 ……本造院家のお墓の方は、しっかり枝葉まで伸びている様なかなりしっかりめの雑草まで生えてしまっている、のだが。

一方、四代目のお墓の方はと言えば……確かに雑草は生えてはいる、生えてはいるけれども。そのままつまんで、軽く引っこ抜けるような、そんなレベルだ。

 

『手入れ次第ではあるけれど……雑草への対策をすることは多少はできる。そして、その対策がされているか、いないかの差がはっきり出てるよね』

「お墓の仕立てだけじゃなくて、その後の手入れまでしっかりされているんだ」

 

 墓だけがきっちり作られているというのではなく。その後も念入りに墓の掃除やメンテナンスをしっかり行っている。それだけ、大切にされているという事だ――家のお墓よりも個人の為に建てられた墓の方が。

 

『まぁ正直、ここまで明確な『格差』が出るとは思わなかった……ダ・ヴィンチが言っていたのも、あながち間違いじゃない気がするなぁ』

 

ダ・ヴィンチちゃんの言っていた『村の英雄』という言葉。あくまで、お墓の例を示すための言い回しだったのだろうが、まるでそのまま真実になったかの様である。

死後も、他とは扱いが明らかに違う――今回に限って言えば、生まれたばかりで、直ぐに亡くなってしまった名前も無い子供すらも、だ。

 

 そういう扱いをするという行為自体にも思う所はない訳でもないが。しかしながらそれ以上に、これだけの……半ば『崇拝』にも近い様な敬われ方をするのには、やはり『積み重ねた時間』が足りない。

 

『藤丸君たちからの報告以上に、この村にとっての『彼ら』は重要な存在である――憶測にはなってしまうけど……その彼ら、というのは、本造院君の様に』

「――『こいつ』が生えてきた奴ら、って事になる可能性が濃厚、と」

 

 ――その重ねた時間の代わりとなるとすれば。

 

とんとん、と。見せつけるように額を叩いて見せる康友。それが何を示しているのかはカルデアメンバーならすぐに分かるし。なぎこさんも、少し彼をじっと見た後、あ、と声を漏らしていた。

 

「……角」

「鬼の伝説……んで、鬼の血を引く一族。そいつらに崇拝される、角の生えた特別な一族の長ってか。はっ、元からそうだったが……鼻が捻じ曲がる位には、きな臭くなってきやがったなぁ、おい」

 

 ……康友は、笑っている。

しかし、それは到底、謎を解いて喜ぶような類のモノではなくて。歪んで、獰猛で、そして――今にも、爆発しそうな位に、煮えたぎっている。

 

 胸の激情があふれ出したかのような……酷く、攻撃的なものだった。

 




という事で、今回の投稿はここまでになります。
次の投稿は二月ごろになると思いますので、その頃に見かけたら暇つぶしがてら読んでやってください。
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