FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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断章:虎口に挑む

 ……自分は、集団行動に向いていない、という自覚はあった。

 

「どうやら、見事に目を引いてくれているらしいな」

 

 とはいえ、こうして彼女に『囮』を任せて、自分が単独で動いているのは、二人での探索が面倒になったから、という理由では絶対にないし。あのまま、二人で探索するのも問題は一切無い。ではどうして今は、こうなっているのかと言えば。単純明確な話だ。

 

 そうした方が『何方にとっても良い』と思ったからだ。

 少なくとも……このままの形で、目の前の盾の少女が探索を続けても、やる気の空回りで悪影響を与えかねない。

 

『問題ないのなら――ここで二手に分かれる、というのも手だ』

『と、言いますと……』

『正直なところを言えば、だ。カルデアの示していた位置は、凡そではあるが俺の頭にも入っている。俺単独でもある程度はアレの行方を探る事は問題ない』

『……っ』

 

 暗に『お前の助けは必要ない』という言い方をしたのは……態とではある。マシュ・キリエライトという少女は聞き訳が良い様に見えて、その実自分に課せられた仕事をそう簡単に放棄するような『人間』ではない事を知っている。

 

 だからこそ……多少なりとも強い言い方でなければ。次に持っていく布石にすらならない、と考えた。

 

『だから――此方にとっての不測の事態に対応も出来るだろう』

『え?』

『お前も、俺も、ルートを把握している。であれば、背後の追跡者を『本命』から引き剥がす事も不可能ではない。違うか?』

 

 自分はゴルゴーンの探索を継続する――その間、マシュには敵の目を引き付けつつ、本命の場所から離れる様な動きをしてもらう。彼女が、きちんと場所を頭に居れていなければ出来ないやり方。

 探索は自分に、背後の敵に対する警戒はマシュに、それぞれ割り振って単純化する。

 彼女自身が感じる責任からのプレッシャーに関しては……言ってしまえばどうしようもない。しかしながら、何方も熟さなければ、という二重苦に追い込むよりは……

 

『――もっとも、ククッ。俺一人ではゴルゴーンの探索は到底無理だと。それほどに頼りないと思われているのなら、話は別だが……どうする?』

 

 そう言ったのは、そう言えば彼女は少なくとも断れないだろうし――この娘であればその奥の意図をくみ取る事も出来る筈、と。

 彼女は、一瞬目を見開いて。それから……少ししてから、くすりと微笑んで見せた。

 

『……ありがとうございます。エドモンさん。お願いしても、構わないでしょうか』

『あぁ――出来るだけ、自分にとって有利な場所を選ぶと言い。負担はそちらの方が大きいだろうからな。此方の事は気にせずに動け』

 

 ……戦力の更なる分散という行動に問題が無いかと言えば噓になるが。

 十中八九、脅威となるサーヴァントの足取りを追う為の『手がかり』を、自ら潰しに行く程に敵方が『間抜け』ではないだろう……と、エドモンは考えている。

 そして。他の者が思う程、あの盾の娘は柔ではない、とも。

 

 あの共犯者と共に、人理の防人として先頭に立っている女だ。

 自分にも劣る様な悪漢共の尖兵相手など、物の数にもならないだろう。

 

 頼れる娘だと思っているからこそ……彼は、目の前の事に集中できている。それはゴルゴーン探索もそうだが――マシュには告げていない、もう一つの目的についても。

 

「……やはり、僅かに残り香があるか」

 

探索ポイントから、一歩離れ。エドモンが辿り着いたのは……山間の一本道。と言っても、足元が整備されているような真っ当なものではなく。邪魔になる藪を切り払い、何度も歩いて、踏み固めているから、辛うじて『路』になっている。殆ど獣道の様なそれだ。

 

 よしんばそこに『道』があると認識できていなければ、気づく事すら不可能に近い様なそんなエリア――つい先日の、村への襲撃。リンボとの戦闘の最中である。彼が、この道に気が付いたのは。

 

 村の中に僅かに残っていた『残り香』とでも言うべきだろうか。

 それは、死体と共にあの島から逃げおおせた経験からなのか。エドモン・ダンテスだからこそ気が付けた――清廉なる死の匂い。黒武者たちの混ざり合った雑味塗れのそれとは、明確に違うといっていい。

 あの時、村から伸びた一筋の空白の様に透き通ったそれを辿り。ついに見つけた。

 

「……厄介な事だ。魔術的に隠蔽するのではなく。そもそも、此方の意識に引っかからない様に整えるとは」

 

 逆に、そうしてたどり着けなければ、見つけられなかった。

 

 魔術による隠蔽であれば、何かしら違和感が残るかもしれないが……しかし。あくまで魔術的な干渉は最小限に。あくまで森の自然の中に紛れる様に『場を整えて』いる。

 前者が、壁の傷を巨大な絵画で隠しているのなら。目の前のこれは、壁の傷が目立たない様に色を塗り。周りに別の傷を彫っているかのようですらある。

 

「腕がいい――という訳ではないな」

 

 エドモンにも、多少の魔術の造詣がある。

 その知識に照らし合わせて見れば、だ。その方面の高い技量がある様な物の仕業には思えない。見事な仕事ではあるが……些か、偽装が甘い部分もある。

 しかし。それを踏まえても尚、空恐ろしいのは。

 

「それを理解している――そして、それを踏まえて仕事をしている、か」

 

 一つの岩から彫像を彫り出すのは技量がいる。人の形だったり、獣の頭だったりを、美しく作り出すのであれば、繊細かつ、大胆な腕が必要になってくる。

 

 では。そういった技術を持たない物が――その『荒さ』を上手い事利用して、作品を作ったらどうだろう。

 

 一つの岩から、例えば――巌の様な巨人の彫像を彫り出したとするとしよう。岩のごつごつとした質感で、鍛え上げられた鋼の様な筋肉を表現した逸品だ。

 

その作品の魅力は、寧ろ『粗削り』なその形状から現れるダイナミックな迫力と力強さにあり。精緻な掘り込みは……寧ろ、その作品の魅力を下げる結果になりかねない。

決して『不可能』ではない。技術の荒さを、逆に一つの『強み』として落とし込むというのは。目の前の光景が、正にそれと言っていい。自らの荒い隠蔽を『自然の生み出す不規則性』に見事に当て嵌めている。

 

――けれど。

 

それを成立させる為に必要になってくるのは……芸術性とは程遠くなる程に、極限なまでの緻密な計算だ。一枚の景色を俯瞰した時の絵図、見られ方に関しても、静止している時、風に吹かれている時など……無数と言っても良い程のパターンを想定する必要が出て来る――そして、それだけではない。

 

「……人の目を惹きつける要素を、理解している」

 

 自然の持つ『美』をも使って、偽装されたものであるという匂いを消そうという意図がはっきりと見られた。どういう物かを理解する深い『審美眼』が無ければ、こんな細工を施す事は出来ないだろう――

 

「敵方の仕業か――いや、違う。あの獣であれば、もっと上手く、最低限の仕事で、隠しているだろう」

 

 当然ながら。普通に隠蔽を上手くやれるのであれば……そんな所まで意識せずとも、もっと効率良く隠せる。上手く隠せてはいるが、これは労力に見合わない仕事だ、と。エドモンは冷徹に判断する。稀代の絵画の芸術家に、壁の傷を隠す為の仕事を依頼するようなものである。

 

 であれば――他に誰が?

 

「……特異点において呼ばれる『カウンター』」

 

 この特異点は、敵方の用意した舞台だ。しかし……今までと違い、この場所には土地や人理が呼びだした『カウンター』と呼ぶべき勢力が全く見当たらない。今まで殆どカルデアだけの戦力で戦ってきた、と言っても過言ではなかった。

 

 恐らくは、居る。この先に。

 土地が呼びだした、人理側に付いているサーヴァントが。

 

「……だが、なぜここまで動かなかった?」

 

 合流できるタイミングは幾らでもあっただろうに。

 敵を恐れ、怯えて引きこもっているのか――否。確かにこの隠蔽の仕方は念入りなものではあるが……それならあの敵の強襲に態々合わせて行動したことに説明がつかない。

 

 必要があるのか。

 

 自分の姿を相手に見せない必要が。出来る限り、自分という手札を明かさない、明確な理由が。

 

「ならば――その腹の内、見せてもらうぞ」

 

 踏み出す先には、鬱蒼と茂る木々、緑の檻はここからより深くなる。

上等だと彼は嗤う。『監獄』であれば、自分のテリトリーも同然である。

 片手でポークハットを深くかぶり直した。その陰で……虎の瞳に再び、強い意志の劫火が灯り出す――!

 




メルブラ巌窟王ルートとかも見返して書きました。
いや共犯者ってこんなに甘かったっけかなぁ……???(自己崩壊)
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